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病み憑き  作者: 雪鳴月彦
第二部:秋本夢美 ②
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第二部:秋本夢美 3

         2


「――どうだった?」


 騒がしい教室の窓際で。


 角田 貴秀はそれまで下げていた視線をゆっくりと上げ、目の前に現れた幼なじみへと固定し問いかけた。


「特には何も。見た感じは普通っぽかったよ。やっぱり気にし過ぎなんじゃない? あの子、わたしらのことなんてわかってないと思うけど」


 ひょいと肩を竦めて空いていた隣の席へ座りながら、風岡 夏純はつまらなそうに口を開く。


「わかんねぇだろ。万が一ってこともあり得るし。スマホだって調べられてたかもしれねぇ……」


「考え過ぎよ。大体、あんなとこにスマホ忘れる角田くんだって悪いのよ。ロックとかは掛けてなかったの?」


 舌打ちをしながらスマホを操作する角田へそう告げたのは、箱沢 茜。


 昨日の放課後、暇潰しに立ち寄ったカフェで起きたアクシデント。


 角田たち六人が座るすぐ近くに、自殺した秋本 真美の妹がいた。


 本人はイヤホンを付け音楽を聞いていた様子だったが、自分たちの会話も聞かれていた可能性があるのではないか。


 店を出てからずっと、角田はそんな不安感に苛まれていた。


 おまけに、秋本 真美を犯している最中を撮影した決定的過ぎる証拠を残したままのスマホを店内に置き忘れるという凡ミスまでやらかしてしまい、余計に不安が増大してしまっている。


 幸い、スマホは忘れていたことに気づきすぐ回収できたが、そのときにはもう真美の妹は姿を消しており、中を見られたりはしなかったかという疑心暗鬼は胸と頭の中でモヤモヤと大きく渦を巻き膨らみ続けている状態だった。


「んなもん、いちいち掛けてねぇよ。毎回解除すんのかったりぃだろうが」


「さっさと消しとかないから、こういうことになるのよ。本気であの画像見られてたら、わたしたちまでとばっちりくらうじゃん。さすがにもう消したんでしょ?」


 苦い表情でガリガリと頭を掻く角田へ、夏純が咎めるようにそう声をかける。


「当たり前だろ。つか、お前今更文句言うんじゃねぇよ。便乗して金稼ぎしてたくせによ。あの中の何枚かは、お前が撮った写真も混ざってたんだからな」


「はぁ? 何その言い方。そもそも貴秀が一番楽しんでたじゃん。あんた、真美に対して猿みたいに発情してたこと自覚してんの?」


「それで金になるとかせこいこと考えたのはそっち側だろ? おれ一人のせいにしてんじゃねぇぞ守銭奴野郎が」


「なっ……!」


 八つ当たりのように暴言を吐く角田を、夏純は血の気が引いたような顔で凝視する。


 怒りと戸惑いで二の句が継げなくなった彼女がどうにか口を動かそうとするより一瞬早く、


「やめとけ二人とも。声でけぇぞ」


 むっつりした様子の岩沼 竜次が牽制するように言葉を割り込ませてきた。


「今更うだうだ言って取り返しつくわけでもねぇんだ。堂々としとけ。大体、あいつの妹が俺らのことに気づいてんなら、とっくに親や教師に情報流してなきゃおかしいだろ。それがこの時点でも特に音沙汰がないってことは、ばれてねぇってことなんじゃないのか? いずれにしても、慌てるような段階じゃない。大人しくしてろ」


 そう告げて、岩沼は手にしていた缶コーヒーへ口を付けた。


 周囲にいるクラスメイトたちのほとんどが、驚いたように角田と夏純を盗み見している。


 それに気づき口をつぐむ角田は、己を落ち着かせようとしてか大きく一度深呼吸をするとそのまま椅子へと寄り掛かった。


 夏純の方も、納得がいかない雰囲気をまとったまま俯き黙ってしまう。


「……何にせよ、ばれてさえいなきゃこっちのもんだ。あんましオタオタして墓穴掘るような真似は勘弁だからな」


 付け足すように放たれた岩沼の台詞に、全員無言のままリアクションは見せなかった。

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