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高円寺ほるもん短編小説集  作者: 高円寺ほるもん
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今日は年に1回、君を愛でる日……

 毎日、君と顔を合わせているのに、実はあまり君をよく見ていない。


 なんでだろう?


 たぶん、そこにあるのが当たり前のようになっているからだと思う。


 もう、めったに注視することなどない古女房と同じなのかも。


 なにせ君とは古女房より、ずっと昔からの付き合いだからね。


 それに俺は、絶対、君なしにはやっていけないんだ。


 普段から、それほどお世話になっているというのに、君のことをあまり気にかけていないことを、とても済まなく思う。


 だから、こうやって年に1回だけは、君を()でる機会があるんだ。


 そして、俺に反省の気持ちを起こさせる。


 ……いつもチラッと見て、すぐに無視するようなことばかりしてごめんね。


 本当は、もっと普段から君を気にかけているべきなんだ。


 そんなことは、わかっているはずなのに……つい……


 こうして、君が横たわっている姿をまじまじ見ると、なんとも興味深い。


 そうか、君はこんな姿をしていたんだね。


 昨年も確か、同じような姿だったように思う。


 さあ、今年も俺は君を()でようじゃないか。


 右手に持っている小さな棒を使って。


 今日の君は、いつもより硬くなってはいないかい?


 いつもは、もっと柔らかな感じがするんだが。


 俺は、むしろ柔らかい君の方がうれしいんだが、まあいいだろう。


 こんな時もあるさ。


 それなら俺は、君のところどころにある(しわ)の間の柔らかいところを少し、コチョコチョしてやろう。


 よし。これでいい。


 さあ、今年はこれで終了だ。


 また来年、君を愛でる機会を楽しみにしているよ。


 おや、古女房が外で何か言っている。


 ――あなた、トイレで何をぶつぶつ言っているの? 早く健康診断の採便(さいべん)を終わらせて出てきてよ。あたしも入りたいんだから。

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