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1人の創作能力者  作者: 一途一
1/1

神、ガイア、クソ男

どうぞお楽しみ下さい。

タイミングが悪い―――人生でそんな事を思うことは多々あるだろう。


折角書類を完成させたのに更に追加の書類が舞い込んでくる。


50m走で今まさに走り出そうとした時、足が滑って転んでしまう。


愛しの彼とデートしている最中に、別々に行動している筈の親と鉢合わせてしまう。



これは『運が悪い』と捉える者も居るだろう。しかし考えてみよう。

もし、今自分がこうではなくああしていれば良かったのでは。そう考える事は無いだろうか。


この世の事象は、単なるタイミングで総てが片付けられてしまう。


あの時コーヒーを買いに行かなければ上司にまだまだ余裕があると思われる事は無かった。


あの時自分があのレーンで走ることを選ばなければ転けることは無かった。


あの時買い物ではなく遊園地で遊ぶことを選んでいれば親とは鉢合わせ無かった。



内でも外でも関係なく、予測不可能な分岐によって世の中は回っていく。


…そしてこの話は、最悪な分岐を選び続けたある男の話である。





◆◇◆◇




「貴方の事がずっと好きでした、付き合って下さい。」

「…えっと、これって告白…?」

「はい。」

「あっ。そうなんだね、うーん…」

「どうでしょう…?」

「ご、ごめんね?今ちょっと気になる人がいて…」

「あ…そうですか…」


僕は校舎の四階から告白シーンを眺めていた。


告白するシーンというものはドラマでは数百回と見たことがあっても、実際に見ることはない。

OKしたのでも微笑ましい気持ちに多少なるが、逆に振られたとなるとついほくそ笑んでしまう。

ほら、気が抜けたような顔で男が去っていく。笑いが押さえきれなくなってきた。


「……ッぷ…」


我ながらクズみたいな人間観察をしているな。とは常々思うのだ。

ただ、彼女の出来ない一般中学生男子(15)としては、やはり振られている姿を見ていると面白おかしくなってしまう。一周回ってアルカイックスマイルしてしまうぐらいだ。


「あぁ…面白、満足満足。」


哀れな姿でお腹がいっぱいになったのでさっさと廊下から退散していく。

やはりストレス発散はあの手が一番だ。何かありそうな雰囲気を醸し出しておいて、結局は振られてしまう。

勿論明日には学校の噂になるだろうし、黒歴史を作ったと絶望している顔を見る所も含めればなんとも長い間ストレスを発散できるのだ。


少し便意を催してきた。授業まではまだ10分あるし、トイレに行っても十分間に合う時間帯だ。

近くのトイレに入り、個室の便座トイレに座る。


狭い空間の中、微かな匂いが鼻を突いてくる。じっと扉を見つめ、全て出しきるまで力む。


「…ふぅ。」


スッキリした、顔を上げて、ズボンを上げようとしたが、途中でその動作が止まってしまった。


「ぇえ…?」


白い空間に居る。ズボンを半分下げたまま白い空間に1人佇んでいる。

何も無い。そこに存在するのは空気と僕のみ。


「君を此処に召喚したのは私だ。鑑 蔵五(かがみぞうご)君。」


いや、もう一人。露出的な格好をしている不審者だ。


妙に胸元が強調されていて、しかもその一枚意外何も羽織っていない。


「もしや特殊なご趣味の御方で…?」

「違うわっ!」


そう言って胸元を隠す仕草をする謎の女。おお、なんかその方が興奮するぞ…


「邪な視線で私を見るんじゃない!」


キッと此方を睨んでくる謎の女。止めてくれ。熱り立ってしまう。


「まさかこんな変態野郎と話をすることになるなんて…私も落ちたものね。」


初対面から失礼だなお前。


「貴方は神を殺す役目にめでたくも選ばれたのよ。このガイアにね。」


神?神と言ったか?ガイアって一体何だよ。ググらせろ。


「心の中が五月蝿い男ね…良いから、適当に能力をあげるから後は自分でどうにかしなさい。」


不親切だぞ。


「…能力って何をくれるんだ?」

「そうね…私も分からないわ。」

「は?どうにかしてるだろそれ。お前此処にいたいけな一般人を呼び出しておいてそれは酷いぞ。」

「此処にあんたを呼び出すように指示したのはガイアだし、能力を授けるのもガイアよ。私は只の使者、何の関係も無いわ。」

「だからガイアって何だよ。」


それを聞いた謎の女は暫く考える仕草をした。


「…そうね。私のような神が管理者だとすると、ガイアは自然上の存在、つまり管理される側よ。」

「そんで?僕がその管理される側のガイアって奴に選ばれたってこと?」

「そう。ガイアの存在自体は曖昧なモノで、考えてるか物質として何処かに存在しているのか、はたまた生きているかどうかも判らないわ。」


それから謎の女(神?)は僕の周辺を品定めでもするように見つめた。


「本当はガイアに心なんて無かったのね…見ただけで駄目そうな男を選ぶんだし。」

「失礼だな。本当に。コンビニの迷惑客並みに失礼だ。」

「まあ良いわ。さっさと能力をあげるから。後は頑張ってね〜。」

「は?」


視界が突然揺らぐ。返すんならさっきみたいにスッと返してくれよ。視界がぐるぐる回って気持ちが悪い。


「うぷっ…」


やばい、吐いてしまう。今日は吉日かと思ったら飛んだ凶日だった。


…気づけば僕はトイレの中に居た。吐くには丁度いいサイズの便器がある。



おかしいな。普通能力を貰うとしたら無様に便座の中に吐く事なんて無い筈なのに。


『…ガイアの力により、能力を作る能力を獲得しました。』


あぁ?なんか聞こえる。けど、今は胃の中の物を出すので精一杯…



















…ああ、この世はなんて面白く無いんだ。




「おぉお゛うぇ…」

不定期更新です。

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