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夏休みの良き日に

作者: といもちM

読んでもらえたら幸いです

勢い良く水を吹き上げる噴水の前で、俺は友達を待っていた。

場所は、俺が住んでいる地域で一番に栄えている街の駅前である。

夏休み真っ只中の休日なので、やけに人が多いい。

ただでさえ暑いというのに、困ったものである。

待っている友達というのは、高校の同級生で名前を佐上一郎という。

お互い帰宅部同士で、クラスでもよく話す友人である。

「暑い…」

思わず言葉にでる。立っているだけだというのに、額から汗がにじみ出てくる。

日射病にでもなりそうな日差しである。帽子でも被ってくればよかったけれど、

残念ながら守ってくれるのは短めの頭髪だけだ。

周りを見回すと、俺と同じように待ち合わせをしている人が多いことに気づく。

半分くらいはカップルだろうか。待っている相手が同性の俺としては、呪いの

言葉を投げかけたくなる。

駅の壁にはりついている時計を見る。10時5分だった。約束の時間から5分程すぎている。

溜息をつく。俺は10分前からついていたので、15分待っていることになる。

ジーンズのポケットから折りたたみの携帯を出して、メールでもきてないか確認するがきていない。

遅れるならメールくらいくれてもいいのにと思う。

少し遅れるだけだからいいかと思ってるのだろうとポジティブに考えてみた。

「暑い…」

同じ言葉が口からでる。噴水の前から離れて、駅の構内に移動することにした。

なにも馬鹿正直に太陽光線の降り注ぐ噴水前にいなくても、そこが見える場所にいれば問題はないだろうということに気づいたからだ。

移動してもクーラーなどは効いていないが、だいぶマシになった気がした。

移動する人の邪魔にならないように、噴水の見える柱の前で待つことにした。

なにもすることもないので、今日の予定を思い出すことにした。

10時に待ち合わせをして(これは今の時点で少しくるっている)、お昼まで適当にぶらつく。その後に安くすむ昼飯を食べて、1時20分からはじまる映画を見る。

映画が終わるのが4時でそこからゲーセンにいって遊ぶ。飽きたら解散という感じだったはずだ。

佐上がきてないかを確認するために、噴水の周りを見たが、やはりきていない。 

時間は15時10分。

待たせるのは好きではないが、待つのも好きではない。当然ながらイライラもする。

もしかしたらこないのではないかという心配も浮かんできた。

このままカップルの楽しそうな様子や、同性同士で大勢で集まってる集団を一人で見つづけるのも気が滅入るので、佐上に電話をして確認することにした。

携帯からお決まりの呼び出し音が鳴るが、なかなかでてこない。

10コール目で、そろそろ切ろうかと思ったころに相手が出た。

「…もしもし」

かすれた声は間違いなく佐上のものだった。一瞬で今まで寝ていたことを理解する。

「升鳴だけど、なんの用かわかる?」

俺は多少なりとも不機嫌な声を意図的に出した。実際に不機嫌でもあったのだし。

「…えっと、今何時?」

相変わらずの寝ぼけ声だ。どんな状況かも理解できてないに違いない。

「10時15分だな」

俺は駅の時計を見ながら告げる。

「…今日、土曜だよな?」

「そうだな。本来なら佐上も駅前の噴水にいる日だな」

しばしの沈黙、俺は黙って返答をまった。

「悪い…。寝てた」

「薄々は気づいてた」

「そっか。察しがいいな」

俺はしょうがないといった溜息をついた。

「いつ頃つきそうなんだ?」

「一時間はかかる…」

「わかった、適当に時間を潰しとく」

「ほんとすまん。速攻でいくから勘弁してくれ」

寝ぼけたトーンから、反省を感じるトーンに変わったので、不機嫌なのはそろそろやめとくかと思った。

「わかった。ついたら連絡くれ」

「ほんとすまん。じゃあ後でな」

携帯を切ってまた溜息をつく。とりあえず連絡がとれたのでそこだけはほっとした。

そして、待っている間はなにをしてようかと考える。

とりあえずクーラーが効いている場所がいい。そして金をかけずに時間をつぶせる場所。

「…本屋でもいくか」

冷やかしの客になるので、本屋の店員には悪いがそうすることにした。

時計を見ると10時20分だった。幸先は悪いが、今日ははじまったばかりである。

これから楽しくなればいいと思いつつ、俺はその場を立ち去った。

ありがとうございました。

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