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勇者と英雄の育て方  作者: 結城ラン
【序章】
8/8

【第8話】勇者召喚④

「力、召喚してすぐだろう。」


「ああ。やはりおかしかった。」


二人は同じところを怪しんでいる様だった。


二人以外は全く怪しんでいなかったため困惑していた。


「どこがそんなに怪しかったの?」


僕は聞いた。


「何故エリス様は勇者召喚の際に勇者以外の4人が召喚されたにも関わらず、あんなに平常心を保っていたんだ?」


「「「!!!!!」」」


「確かに…国王陛下はあんなにも困惑していたのに…」


僕は納得しながら答えた。


「逆に考えればそんな不足な事態だったからこそ慌てないで行動したとも考えられないか?王女様ってそういう修羅場とか沢山くぐってそうだし。」


颯太が顎に手を当て考えながら言った。


「確かにその可能性は捨てきれない。だが、あまり信頼しすぎるのも危ないのではないか?」


「俺もそう思う。少しそういう可能性もあるなということを頭に置いて行動しよう。」


「僕はよくわかんないからみんなに従うよー。」


そういう方向で話はまとまった。


どうやら僕らのソルーニア聖王国は一筋縄ではいかない国の様だ。





ソルーニア聖王国第1王女のエリスは今日の夜を待ち遠しにしていた。


部屋の窓を開け放し、夜風を浴びながら至福の時間を待ち望んでいた。


部屋には高級ワインとワイングラスが2つおいてあった。


一瞬強い風が吹き、カーテンが荒れ乱れる。


風はエリスまで届き髪が顔にかかる。


髪をうっとおしそうに除けたときに気が付いた。


ソファに座っている人物に。


「エリス、お疲れ様!」


「はい。疲れました。」


エリスが待っていた人がついにやってきた。


エリスの顔は勇者たちと応対した時とは別人のようにまるで乙女の様な純粋な笑顔をその人物に振りまいていた。


「それで、一応把握はしているけど、報告を聞こうかな?」


「はい。」


エリスの顔が引き締まり、緊張感のある面持ちへと変わった。


「無事に勇者召喚の儀を終えることが出来ました。魔方陣の改変には気づかれず、魔力過多により勇者召喚の巻込みも成功しました。

後は明日の身体測定、魔力適性検査で魔方陣改変の効果を確認するだけです。」


謎の人物は微笑みながらエリスを見た。


「うん、よくやったね。流石エリスだ。」


「はい!ありがとうございます!」


「後はそうだね、エリスから見て勇者たちはどう思う??」


エリスは少し考えながら謎の人物に勇者たちの印象を語り始めた。


「そうですね。まずは注意しなければいけない人物が一人。


リキ・クロノです。彼は何事にも注意深い反面、唯我独尊己の道を行くと思われます。


我々の計画の邪魔になる可能性があるので、要注意かと。」


謎の人物は少し考えながら、ニヤッと笑った。


「なるほどね。でも逆に考えるとさ、そういう人物こそ扱いやすいと思わない?


寧ろ計画に彼も組み込んじゃってより良い計画を目指すのも一考かなって僕は思ってたよ。


つまり、勇者とクロノくんの二本立て計画!どう?これ?」


エリスは謎の人物の言葉に目を見開き、驚いた。


何て頭脳をしているんだ、やはり彼は私の一歩も二歩も先を考えている。


「全てあなた様の御心のままに…」


「うんじゃあクロノくんの計画についてはまた話し合おうか。


それで他の人たちは??」


「はい。まずはもう一人私に違和感を抱いたハヤト・タチバナですが、そこまで注意しなくても良いかと思われます。」


「ふーん、どうして?」


「ハヤト・タチバナに関しては心の底に自分ではない何かになりたいという欲があることが会話にて見え隠れしていました。


ソウタ・フジキの発言からこの世界に酷似した物語が存在することがわかりました。そして、ハヤト・タチバナは欲のはけ口としてそうした物語などをよく読んでおり、同じようなシチュエーションでの展開を読んだことがあり、アンテナを張っていただけだと思います。その為、別段気にする必要はないかと。」


「なるほどね、じゃあそのソウタくんはどう??」


「ソウタ・フジキは洞察力もあり、理解力もあり、対応力もあり、リーダーシップもあり、召喚組の中でもリーダー格として機能しているようです。


ただ、召喚組2人が私に疑念を抱いた時に彼が疑問を抱かなかったわけがないと思われます。


彼はその疑念を勘違いだと切り捨ててしまったと推測します。


自分が信じようとした人間の悪い情報を遮断する傾向にある人間なのかなと思います。


少々危ういとは思いますが、勇者パーティーとしては抜群に機能するのではないでしょうか。」


「ほう、案外悪くない評価だね。ヨシダくんは??」


「ミズキ・ヨシダは論外です。


まずは私に邪な視線を四六時中向けてきたことは万死に値します。


そして何より、彼は何も考えてなさすぎです。その点では勇者パーティー向きではあると思いますが、そのうち女性問題を起こしそうで、パーティークラッシャーの可能性も否定できません。」


謎の人物は大きく笑った。


「ははは、辛辣だね!」


「はい、あれは女の敵です。」


そして謎の人物は真剣な眼差しでエリスを見つめた。


「それで…肝心の勇者は…?」


「勇者トウマ・サヤマですが…あまりいいとは言えないのかもしれません。


まずは主体性が無さ過ぎます。


勇者として召喚されているとわかっているのにも関わらず、全ての決定権をソウタ・フジキに委ねている様に見えます。


更に、私に疑念を抱いた時の彼の身代わりの速さです。


あんなにも信頼感、いや、恋心にも近いものかもしれませんが、それを寄せていた相手をすぐ切り離すことが出来る。


流されやすいにもほどがあるのではないでしょうか。


そういったところを鑑み、私は危うい存在であると判断いたします。」


謎の人物は勇者の人物像を聞き、一息おいてからワイングラスを手に取り、飲み干した。


口の端からこぼれるワインの水滴が首元を伝るのが妖艶に見える。


ワイングラスを置いた謎の人物はエリスに向き直り、エリスの頭に手を置く。


「そっかそっか、じゃあそこからやらないとだね。


ありがとう、よく観察してくれたね。」


エリスは恍惚とした表情だった。


「はい…。ありがたき幸せ…。」


「よし、じゃあ勇者達の身体測定と魔力適性検査が終わったら招集をかけるから、また気づいたことがあったらその時に教えてね。


お疲れ様、エリス。」


「はい…。ありがとうございます…『イグジス様』。」


こうしてエリスとイグジスの夜の報告会は終了した。

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