【第7話】勇者召喚③
「それでは最後に魔法の説明をさせていただきます。」
「魔法!!!!待ってました!!!!!」
大きな声で立ち上がりながら隼人が言った。
すぐ後に隼人は赤面して席に座った。
その場にいるすべての人の視線が隼人に向く。
「あれ、もしかして、隼人君って、そういうの…」
「言ってやるな…瑞樹よ…」
隼人を弄ろうとした瑞樹を颯太が宥めた。
だけどそのフォローはかえってつらいのではないかと僕は思った。
エリスが僕にアイコンタクトで続けてもいいかと問いかけているので僕は頷いて先を促した。
「ゴホン。それでは改めて魔法の説明に移ります。
この世界には魔法が存在しますがその魔法にも3つ種類があります。
属性魔法、精霊魔法、そして呪術です。
属性魔法と言うのは自分の中に存在している魔力を外部に放出して使用できる魔法です。
精霊魔法と言うのは精霊という存在と対話をして精霊に魔法を行使してもらう魔法です。最後の呪術はz属性魔法とは逆に外部の魔力を体内に入れさせる魔法の事を指します。
一般的には属性魔法の事を指して魔法と言うことが多いです。
精霊魔法、呪術に関しては使える人が珍しいので、今は気にしなくても良いです。」
「精霊かあ…会ってみたいな…」
僕は言った。
「サヤマ様は勇者様ですので、そのうち精霊に会うこともあるかもしれませんね。
歴代の勇者様は精霊との感受性が高い人が多かったので精霊魔法を使われていた人も多かったそうです。」
「そうなんですね。楽しみにしてます。」
僕は精霊という存在にいつか会うのをこの世界での目標にしようとひそかに決意した。
「属性魔法の説明に戻りますね。
属性魔法には主に7つの基本属性と特殊属性と呼ばれるものが存在します。
基本属性は火、水、風、土、雷、光、闇の7つです。
特殊属性というものはこの他の属性について指しています。
例えば時を自在に操ることが出来るとき属性、毒を操る毒属性、召喚に特化した召喚属性、回復などに特化した聖属性などです。
たまに未発見の特殊属性があったりもします。
次に魔法の階位について説明します。
魔法の階位は1から9で分けられています。
1から2が初級、3から5が中級、6から8が上級、そして9が神級魔法と呼ばれています。
一般的には上級魔法を一つ使えればどの国に行っても将軍クラスの待遇をもらえます。」
「なるほどな。参考までに聞くんだけど、エリス様は魔法はどの程度まで使えるんだ?」
颯太が興味深げに聞いた。
「私はこれでも聖属性と召喚属性の魔法使いでして、聖属性と召喚属性だと第8位まで、他の属性は第6位までです。」
少し誇らしげにエリスは教えてくれた。
「エリス様、それって結構すごいんじゃ…」
「実はこれでも聖女と呼ばれているのです。一応この国では一番魔法が使える人間です。」
瑞樹の質問にエリスはやはりちょっと誇らしげに答えていた。
「魔法についてはこのようなところですかね。
次は今後行っていく身体測定、魔法適性検査について教えていきます。
身体測定は皆様が魔力を開放できるようになると自ずと身体能力も向上します。
この国では魔法も大事ですが武術というものも大切にしております。
ですので一般的な身体能力を図ることも大切です。
魔法適性検査は先ほども言った属性魔法の適性属性、所謂使いやすい属性ですね。
その判断ができます。
もちろん適性がない属性を修練を重ねて使えるようにすることは可能ですが、自分に適性のある魔法のほうが伸びる速度も伸びしろも長いので行っております。
そして、適性検査では皆様の魔力総量と魔力質を測ります。
魔力総量は使える魔力の多さ、魔力質は魔力の密度ですね。
それを測っていきます。」
「はい!質問!魔力の総量はわかるんだけど魔力の質っていうのはよくわかんないんだよね。」
「魔力の質というのは重さと例えるとわかりやすいかもしれません。初級魔法に使う魔力量というのは一般的には25から50と言われております。
25から50の重さが耐えきれる器と考えてください
例えばタチバナ様が持っている魔力総量が1000だとして、この魔力の質が1の重さだとします。そうするとタチバナ様は魔力を25から50程を使って初級魔法を使うことになります。
次にサヤマ様の魔力の質が2の重さだとします。その場合サヤマ様は13から25の魔力の消費で初級魔法を使えることになるのです。」
颯太の質問にわかりやすくエリスが答えてくれた。
なるほど、そうなると魔力総量が高ければいいという問題でもないんだなと思った。
魔力総量が50でも魔力の質が50であれば魔力1で初級魔法を発動できるわけだ。
逆に魔力総量が1000で魔力の質が0.01とかならそもそも初級魔法を発動すらできないってことだ。
「以上で魔法の講義は終了です。本日は突然の召喚でもありましたし、各自部屋を用意しましたのでごゆっくりお過ごしください。
明日は魔力の解放と身体測定、魔力適性検査を行います。」
そう言ってその日はエリス様との講義は終わった。
僕らは僕の部屋に集まり今後の話をすることにした。
「とりあえず今後の方針としては力が訓練終了後は自由にこの世界を生きる、その他はトオルに付き添って修行そして魔王討伐ってことで間違いないよな。」
「ああ」
「間違いないよー」
「それでいい。」
みんな大まかな方向性は認識しているみたいだった。
とりあえずは訓練を受けて自分の身を自分で守れるようにならなければ話にならない。
それに勇者になった自分の力がどれほどのものなのかも早く試してみたいと思っていた。
「…おいお前らさ、怪しいと思わない?エリス様。」
と力が突然不穏なことを言い出した。
「そうかなー?美人だし、いい人だと思うけどなー、怪しいところあった?」
「俺も怪しいところはなかったと思うな。」
「僕も。」
「いや、怪しいところはあったぞ。」
隼人が力に同意した。
「力、召喚してすぐだろう。」
「ああ。やはりおかしかった。」
二人は同じところを怪しんでいる様だった。