【第6話】勇者召喚②
国王との謁見が終了し、別室へと連れてかれ、この世界についてと今後についての話を第一王女様からされた。
別室はさすが王城というべきか、真ん中に置いてあるテーブルは大理石の様なもので出来ており、椅子はふかふかで装飾も凝っていて、値段を聞くことも怖くてできない。
「それでは勇者様と滞在者様方の今後のお話からさせていただきたいと思います。」
「ちょっと待ってくれ、第一王女様。滞在者ってなんだ??」
颯太が聞いた。
「はい、先ほど勇者召喚に巻き込まれた方々の名称が正式に決まったのです。いつまでも巻き込まれた方々というのは失礼にあたるということで。あと私の事はエリスとお呼びください。」
「なるほど。滞在者という言葉には違和感を覚えるが、巻き込まれたってのよりはましだな。
今後ともよろしく頼むよエリス様。」
隼人が眉間にしわを寄せながら言った。
「それで、今後の方針お話っていうのはー?」
瑞樹が軽そうな口ぶりで言った。
「はい。今後は勇者様と滞在者様には5年後に復活するとされている真なる魔王という存在を討伐していただきます。
その為に皆様方には強くなっていただく必要があるのです。
まずは身体測定、魔法の適性検査、そして武術訓練、魔法訓練、そして実践訓練を積んでいただきます。」
「なるほどな。だが、俺は魔王を討伐するつもりはないんだが、その訓練とやらは受けさせてもらえるのか?」
と先ほどまで聞いているのか聞いていないのかわからない表情をしていた力が聞いた。
エリスは女神の様な笑顔で答えた。
「はい。もちろん受けていただけます。クロノ様が魔王討伐に赴かれないとしてもそれは私共がクロノ様に強制できるものではありません。
あくまで私たちが必要としているのはサヤマ様ですので、他の滞在者様はお好きに生活してくださっていて構いません。
ただ、どんな生き方を選択するにしても、この世界は元居た世界とは違い、命の危機というものがすぐそばに存在しております。
ですので、滞在者様方にも受けていただきます。」
「なるほど。了解した。」
力は納得した様で再び口を真横に結んだ。
「方針はわかりました。それで、魔法適正とか身体検査っていうのは何をするんですか?」
僕は興味津々に聞いた。
「その説明はこの世界だったり魔法についての説明をしてからのほうがわかりやすいかと思いますので、まずはそちらから説明させていただきます。
まずは世界といいますか、この大陸のお話からさせていただきます。
この大陸は世界から見て西にある大陸、ウエスティ大陸と言います。
ウエスティ大陸には大きく分け3種類の種族が存在しております。
先祖が獣と交わった獣人、先祖が魔力保有量が多い土地に住むようになった魔族、そして私たち普人です。」
颯太が首を傾げながらうんうんいいながらエリスに質問した。
「へー、普通俺たちの世界の物語だと魔族と人間は対立してることが多いんだけど、この世界ではそんなことないんだな。」
「以前はそういったこともあったと聞きます。魔族だけでなく獣人ともいさかいが絶えなかったと。
それに我々人類はそのいさかいが発展し、大きな大陸での戦争を2度起こしています。
それを止め、各種族の調律を図ったのが賢勇者と呼ばれる方なのです。」
エリスは学校の先生のように諭すような声で言った。
「お、もしかして歴代の勇者には何か賢勇者の様な名前が付いたりするのか??」
隼人が興味を持って質問する。
エリスは慈愛を湛えた目で僕を見てこういった。
「ええ、そうです。歴代の勇者様には功績とその生涯から民衆の内からそのような呼び名が付けられるのです。
ですからサヤマ様が今後どのように勇者として活躍し、どのような名前で呼ばれるのかが今から楽しみです。」
僕はそのエリスを見て胸がドキッとした。
エリスはとても美人なのでそんな目で見つめられると僕だってドキドキするものだ。
「素敵な名前を付けてもらえるように頑張ります。」
「ええ。頑張ってください。それでは話を戻します。
このウエステリア大陸には3つの大国が存在しています。
まず大陸中央部にある私たちの国『ソルーニア聖王国』、大陸西部にある『インディカル帝国』、そして大陸東部にある『サルノー共和国』です。
その他にも小国は多数存在しますが、一旦はこの3つの大国を覚えておけば問題かと思います。
一般的にはサルノー共和国は商業が発展しており、インディカル帝国は実力主義の国で軍事力が、そしてソルーニア聖王国は魔法技術がずば抜けているという印象です。
次に貨幣の価値について説明します。
この世界ではゴールドという共通通貨が使われております。
そして貨幣には銅貨、銀貨、金貨、白金貨が存在します。
銅貨は1ゴールド、銀貨は100ゴールド、金貨は10000ゴールド、そして白金貨は1000000ゴールドです。
ちなみに大体パン1つで100ゴールド、宿屋で1泊は5000ゴールドと言ったところでしょうか。」
「なるほど、大体日本円と同じレートって考えでいいんだろうな」
颯太は納得しながら言った。
「それでは我が国の身分制度について説明します。
わが国には大きく分けて3つの階級があります。
王族、貴族、平民の3つです。
そして貴族にも階級があります。
上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵です。
ちなみに勇者様であるサヤマ様は侯爵、滞在者様方は伯爵と同等の権力があります。」
「ええ、僕達そんな権力あるんだ…ふーん」
何処か満足気な顔をしながら瑞樹が言った。
「それでは最後に魔法の説明をさせていただきます。」
「魔法!!!!待ってました!!!!!」
大きな声で立ち上がりながら隼人が言った。
すぐ後に隼人は赤面して席に座った。