【第5話】勇者召喚①
魔方陣の光の眩さに目を瞑り、次に目を開いた時には薄暗い大きな部屋の中にいた。
壁と床は石でできており、閉鎖的な空間だ。
頼りになる光は部屋の中の蝋燭と足元で光り輝く魔方陣だけだった。
魔方陣の中には僕を含めて5人の人間がいた。
最高神が説明してくれたように僕以外の巻き込まれた4人は無事にこの世界に来られたようだった。
「はあ…はあ…無事…成功したようですわね…」
目の前にはドレス姿の美しい女性の姿があった。
神は透き通るようなブロンド、誰もが振り返るような出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいる体系に、魅惑的な声に思わず女神ではないかと疑う存在だった。
どうやら彼女が今回の勇者召喚の召喚者の様だ。
彼女の後ろに控えている魔導士然とした風貌の人たちは成功した、ついにやり遂げたなどと口にしている。
「勇者様…この度は召喚に応じていただきありがとうございます。私、この国『ソルーニア聖王国』の第1王女のエリスと申します。」
「ああはい。僕は佐山徹です。」
「俺は藤木颯太。」
「立花隼人だ。」
「僕はー吉田瑞樹だよー!」
「…黒野力。」
「つきましては勇者様方には国王陛下との謁見をしていただきたいと思っております。」
最初に国王との謁見とは正に勇者だなという感想を抱いた。
第1王女様に連れられて謁見の前向かう際中に巻き込まれた4人と話をした。
「一応最高神から説明してもらってるとは思うけどさ、本当に一緒に戦ってくれるんだよね?」
「まあな、徹一人だけだと心配だしな。」
「少し楽しそうだと思っちまったんだよな…魔法が使える世界って。」
「俺はこの世界の女の子は美人ばっかりって聞いたから来ることにしたー!」
と颯太と隼人と瑞樹は言った。
仲間が一緒に戦ってくれるというのはとてもありがたいことだと思う。
「俺は好きにさせてもらう。」
力はそう答えた。
「なんでだよ。」
颯太が聞いた。
「俺はあの世界、親から離れられればそれで十分なんだよ。この世界に来て魔王退治??そんなもんはそこの本物の勇者様に任せるよ。」
それを聞いて一同は黙ってしまった。
それは仕方ないことだなと僕は思った。
確かに僕の召喚に巻き込まれた、召喚に応じることにしたとしても、魔王討伐の依頼は僕が遂行しなきゃいけない。
だから力がどう生きようがどうしようがそれは力の勝手だと思った。
きっと他のみんなも同じことを思ったんだろう。
「皆様。ここから謁見の間となります。国王陛下は慈悲深いお方ですが、出来る限り無礼の内容にお願いいたします。」
王女様はそういうなり、扉が開くなり、先導しながら優雅に謁見の間を歩き始めた。
僕らはその王女様におどおどしながらもついていった。
謁見の間の両端にはたくさんの貴族の様な服装をした人たちが集まっていた。
きっとあれは貴族なのだろう。
本物の貴族に囲まれているというのでやっとこの世界に来たんだという実感がわいてきた。
周りをきょろきょろしていると第一王女様がおもむろに立ち止まり、片足を地面について臣下の礼をとっていた。
僕らも見よう見まねで同じような例をとった。
「我がソルーニア聖王国第21代国王ヘンドリックス6世である。
この度は勇者召喚に応じてくれ感謝申し上げる。
はて…勇者召喚で呼ばれる勇者は1人のはずだが…どうなっておるエリスよ。」
「はい陛下。この度、私が魔力を込めすぎたことが原因で魔方陣の効果が従来より増大してしまい、勇者様の近くにいた方々を巻き込んでしまったものかと思われます。誠に申し訳ございません。」
「エリス…誠か?それでは4人も巻き込まれてしまっているというわけか??
エリスよ。この責任どうとる。勇者殿の召喚条件は勇者殿が別の世界で死んでいることであるはずだがが、巻き込まれた者どもは生きていたのではないのか??」
この話を聞き、颯太がおもむろに立ち上がった。
「恐れながら国王陛下。我ら巻き込まれた者どもはこの世界の最高神様に選択肢を与えられた上でこの世界に参りました。
その選択肢は召喚を拒否できるというものでした。
ですから私共がこの場におりますのは自らの意志であります。
故に第一王女様には何ら責任はないと思います。」
颯太の言葉に謁見の間はざわついた。
最高神様の意志が介在していたとすれば話は別になってくるという言葉が節々から聞こえてくる。
「最高神様が…それならば…エリスよ!今回の責は問わないものとする。
しかし、勇者殿とその巻き込まれてしまった方々の支援についてはお前に一任する。」
「はい。承りました。」
そして国王陛下は僕たちに困惑した目を向けた。
「…して、どなたが勇者殿であるか?」
僕は恐る恐る手上げながら答えた。
「は、はい僕です…佐山徹、こちらの世界だとトオル・サヤマと申します。」
「そうかそうか。そなたが此度の勇者であるか。期待しておるぞ!何か困ったことがあれば聖王国がバックについていることを思い出すのだ。
それは巻き込まれた方々も同じである。
我ら聖王国はそなたらの味方である。」
その言葉で初の謁見は終了した。