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第五十八話 名将の最期

 勝つには勝ったが、犠牲は大きかった。特に最後の毒をまき散らした爆発が痛い。

 バジリスクは死んでも爆発はしない。山の民か極東の国の罠だ。


 負傷者の治療は行われたが、続々と人が死んでいった。

 ヨアヒムの館で待つと、暗い顔のヨアヒムがやってくる。


「ロシェ閣下が、いましがた息を引き取った」

 覚悟をしていたが辛い知らせだ。苦しかっただろう。


「他に被害は出ていますか?」

「駐屯軍二百名の内、百名が亡くなった」


 戦争であれば百名の死者は少ない。大局から見れば小さな敗北。

 だが、亡くなった兵士は古参の勇士。率いるは万夫不当の名将とくれば話は違う。


 敵は確実に戦果を挙げた。悲しんではいけない。ロシェの覚悟に水を差す。

 一晩、ヨアヒムの家に泊まった。


 ロシェにはとても世話になった。きちんと葬儀まで見届けたいがそうはいかない。

 村から離れていると、老婆・ロードの力は段々と薄れていく。

 訃報を伝えるため、ユウトはヨアヒムの村を後にした。


 村に戻ってハルヒに伝える。

「ロシェ閣下が村を守るために戦死された。皆に伝えてくれ」

 ハルヒは悲しみ、涙を流し「わかりました」と答えた。


 エリナの村から報告書が届いていた。蝙蝠は太鼓で予防できた。

 だが、どうもエリナの村の付近にはよくわからない魔獣がいるとの報告だった。


 駐屯軍はロシェと百名の兵を失った。エリナの村で犠牲を出せば治安がまずくなる。

 小さな敗北も重ねれば治安に影響する。

 放置すれば危険だった。冒険者を出して調査を続けるか。


 南の村からチンチラの取引の報告がくる。悪い予想が的中した。

 チンチラの毛皮は安く他の商人に押さえられていた。


 北の村では野兎の駆除を銀狐にやらせているが、追いつかない。

 銀狐があまりいないためだともわかった。


 ユウトが担当する北の村、南の村、ヨアヒムの村は収穫がおぼつかない。

 他の村が豊作で穀物価格が下がるので、村の財政も厳しい。


 お金に困っていると、カイファの村よりバルカンがくる。

 バルカンの表情は芳しくない。


「オーガが攻めてきた。撃退には成功したが、これ以上に数が増えると危険だ」

 マオ帝国は秋の戦争を想定して軍事行動を起こしている。


 まだ本隊は集結していない。

「駐屯軍は司令のロシェ閣下が亡くなり、再編に少し時間がかかります」


 バルカンは怒って非難する。

「村にはマリク大佐の兵がいるが、見ているだけで働かない」


 あの問題児か。気位は高そうだからな。

 軍人だから命令がないと理由を付けて動かない気か。村がいよいよピンチになるまで静観とは、底意地が悪い。


 ロシェがいれば総督経由でマリクを動かせたが、ロシェはもういない。

 キリクなら人がいいので助けてくれる。だがここで兵を戻すと村の北がまずい。

 金があれば傭兵でも雇って送る。しかし、現状で金はじわじわ減っている。


 バルカンが困った顔で頼んだ。

「兵を送るか、金を用立ててくれ」


 やっぱりそうなるか。収穫が終わって穀物があれば、取引所で金にできる。

 だが、収穫はまだ先。秋まで待って、とはバルカンの頼みを断れない。


 秋の大戦までに前線になる村が焼かれでもしたら、軍事行動に支障が出るのにな。

 止むを得ないと、バルカンに金を渡した。バルカンが帰るとウィンがくる。

「庄屋殿、研究資金の件はどうなりました?」


 こっちも待たせたままだったよ。ユウトはウィンにも金を渡した。

 銀行に預けてある預金残高を確認すると不安になる。


 今年の納税が終わったら、いくら村に金が残るんだろう。

 村の外に酒場ができた。こちらは一般人が利用しない。主に荒くれ者が集う。


 荒くれ者は傭兵希望者である。秋には大戦がある情報はもう隠しきれない。

 傭兵志願者は国際色豊かである。帝国に負け領地を失った軍人だ。


 酒や肉の価格が上がった。鹿の食害で困っていた村から鹿が消えた。

 肉の価格があまりにも高くなった。武僧たちが寺で養鶏を始めるほどだった。


 本隊が通過すればまだ需要は伸びる。さりとて、家畜はすぐに増やせない。

 氷竜も成長期なので餌代に困るかもしれなかった。


 バジリスクの素材は売れた。だが、村の修理に金がかかったので収支はマイナス。

 キリクが退治にいっているワイバーンは喰えるらしい。あまり美味くないとの噂だった。


 数日後、キリク率いる騎士団が帰還した。

 雇った冒険者が荷車を引いてワイバーンを持ってきた。


 キリクが堂々と報告する。

「ワイバーンとワイバーン・リーダーを討ちました。検分をお願いします」


 少し腐敗臭がするが、戦果を確認する。

「ドラゴン・テイマーはどうしました?」

「いませんでしたよ」


 敵の首魁は取り逃がしたのか。詰めが甘いな。

 キリクは人柄も良く役に立つ。だが、ロシェと比べればまだまだ、だな。

 とはいえ、ドラゴン・テイマーはいるって断言できないからな。


 ここで言い争うわけにもいくまい。

「ワイバーンの肉はどうします?」

「グリフォンの餌にします」


 野に捨てるよりはいいか。少しくらい腐っても、動物が食うなら問題ない。

 しばらくすると、銀塊を積んだ護送馬車がやってくる。


 荒くれ者共の餌食にならんように護衛を付けた。

 やりたい奴は多いので事欠かない。銀塊は銀貨に鋳造される。


 金貨の使用に慣れた商人は、交換比率で揉めた。

 だが、銀行がきちんと機能したのですぐに混乱は収まる。

 村では銀貨による取引が活発になった。

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