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第五十六話 ワイバーン・リーダー

 鉱山で掘られた銀が村の銀座に運ばれてきた。

 見に行くと銀座の棟梁から声を掛けられる。棟梁の顔は冴えない。


「銀塊の純度が悪いです。一工夫必要ですね」

 コボルドたちは採掘が得意でも精錬は苦手か。


 対策は早いほうが良い。

「銀山へ技術指導の人は出せますか?」


 棟梁はとんでもないと首を横に振った。

「モンスターの棲み処なんて誰もいきませんよ」


 一般人の反応だな。銀が回ってきただけよしとするか。

 家に帰ると、北の村の伝令がきていた。

「北の銀山に食料を運んでいた輸送体がワイバーンに襲われました」


 餌を求めて人里の近くにきたか。銀塊の流通もピンチだが、北の村が心配だ。

「わかりました。冒険者を派遣しましょう」


 伝令は険しい顔で意見する。

「冒険者ではダメです。軍を派遣してください」


「数が多いのですか」

「群れの中にワイバーン・リーダーがいます」


 ワイバーンは通常、番で行動し群れをなさない。だが、ときたま群れになる。

 群れに体格の良いリーダーがいれば群れの規模は大きい。


 群れの大きさは被害の大きさに直結する。

 空を飛ぶワイバーンの集団を追い払うのは大変だ。


 ラジットに相談に行く。ラジットは澄ました顔で語る。

「大空を翔るワイバーンの群れを狩るのはいまの村では無理です」


 相談すればどうにかなると思っていたので、ショックだった。

 ロシェの軍は強いが、陸での話だ。


 ラジットの言葉は続く。

「ただ、ワイバーンの天敵は火竜や氷龍といった大型の竜種です」


「ドラゴン・テイマーなら対策を知っていると」

「知恵を貸してくれるでしょう」


 竜舎に行きコジロウに会う。

 相談を受けたコジロウはそんなことか、と教えてくれた。


「ワイバーンにきてほしくない場所に氷竜の糞を置きなさい」

「竜種の縄張りと勘違いさせて追い払うんですね」


 コジロウが顔を曇らせる。

「もし、これでワイバーンが移動しないなら竜士が誘導しているでしょう」

 山にはダーク・エルフのドラゴン・テイマーがいる。

 極東の国にも竜士がいる。陰謀ならこっちの策に、対抗策があるか。


 北の村に急ぎ氷竜の糞を詰めた袋を送る。

 冒険者を雇い銀山から北の村からへ続く道端にも糞を撒いた。


 だが、銀山から北の村への間の被害が止まらなかった。

 そのうち、物資が届かないとコボルド族から不満の手紙が届く。


 まずいね、せっかく仲間に付けたコボルドが離反する。

 銀山を要塞化して立て籠られると、完全な失態だ。


 頭を抱えていると、若い世話人が走り込んでくる。

「たいへんです庄屋様。空飛ぶモンスターの群れがきました」


 北に注意を向けている間に、ここを強襲したか。

 だが、不審に思う。襲撃を知らせる銅鑼は鳴っていない。


 不思議に思い外に出る。村は騒然としていたが、兵士は慌てていない。

 村の外に行くと鷲の頭と翼を生やしたモンスター・グリフォンの集団がいた。


 数にして二百から二百五十だな。

 グリフォンは馬具を装着しており手綱もついている。手綱は兵士が持っていた。


 銀の鎧を着た兵士が門衛長と話していた。

 近くにいた門衛に話を聞く。


「彼らはいったい何者ですか?」

「帝国が新たに獲得して北の領土からきた援軍です」


 グリフォンに乗る空軍なら、ワイバーンを駆除できるかもしれない。

 不審にも思う。タイミングが良すぎるな。罠ではないだろうか。


 ここで実績を作り味方の振りをして決戦時に裏切るのではないか。

 門衛長はユウトを指し示す。銀の鎧を着た兵士が近づいてくる。


 兵士は十六くらいの若い男性だった。顔には幼さが残り、銀色の髪をしている。

 肌は白く。眉も白い。北方人特有の目鼻立ちがはっきりした顔をしている。


「庄屋殿、キリク・ニコルスキーです。代官のミラ様から紹介状を預かってきました」

 紹介状によるとキリルは領主様の母親の親戚だった。


 このたび、援軍としてきてくれたので便宜を図ってほしいとあった。

 費用負担は書かれていないから、村持ちだな。領主様の親類なら無碍にはできない。


 紹介状は本物に思えた。こういうところで偽手紙を使ってもばれる。

 初めて、領主様が村を救ってくれるかもしれない。


 グリフォンがいると馬が怯える。

 村の外での待機となるがキリルは嫌な顔をしなかった。


 キリクを屋敷に招いて、食事を振舞い頼む。

「実はいま村が困っておりまして。力を貸していただけないでしょうか」


 キリルは愛想よく応じる。

「ワイバーンの件ですね。いいですよ。ただで逗留するのは気が引けていました」

「ワイバーン・リーダーもいるんですよ」


 キリクはなにも心配していない。

「我が騎士団なら問題ないでしょう」

「ワイバーンも誘導しているドラゴン・テイマーも裏にいますよ」


 キリクの自信は崩れなかった。

「ドラゴン・テイマーがいても問題ない。大船に乗った気でいてください」


 頼もしい言葉だけど、本当に大丈夫かな。

 キリルが若いだけに心配だった。また、自信に溢れるがゆえに不安になってきた。

 ここで出撃したはいいが、返り討ちにあって全滅したら問題だ。


 翌朝、朝食を終えるとキリルがやってきた。

 キリクは申し訳なさそうにしていた。

 なんだろう、依頼のキャンセルかな?


「庄屋殿、後になってから言い出すのは心苦しいのですが、報酬はもらえるのだろうか」

 お目付け役から安請け合いするなと小言を言われたか。


「出ますよ。おいくらですか」

 キリクの提示額は良い金額だった。騎馬隊を持つ傭兵を雇うより高い。


 正規軍だから傭兵よりも高いな。

 グリフォンは肉食だから馬より維持費がかかると見た。

 少し躊躇するが銀山が稼働しないと金が入ってこない。


 資金繰りが厳しいが頼むか。

「提示金額ならお支払いします」

「少しでいいので、前金でもらえますか。それと兵糧もわけてほしい」


 領主様の親類なら金の持ち逃げはない。食事はどのみちこっち持ちだからよい。

 報酬の二割を前金で渡した。

 キリクはほっとしていた。


「これは助かる。朗報を待っていてください」

 不安だがキリクたちを送り出した。

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