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日の出で続く異世界流転 delaying  作者: 花見和の如く(&蜥蜴)
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序章׳ה:移動の途中で……


出発して数分、俺は早速息絶えていた。


「どうしたちゃん~? まさかもう疲れたとかないちゃんよね~」

「そのまさかだよ」


 そう答えるとアニーは驚く。

 まさかそれ程魔力ないの!? と。

 言い方からして、とても失礼なことを言っているのだろう。しかしそうか、道理で皆そんな高速移動できると思った。

 一方俺は出発してずっとダッシュである。むしろ魔法に追いつけていること、褒めて欲しいくらいだ。


「いや~~、まだまだだねぇ、ルイちゃんも。どうする、手伝って……そもそも運んであげようか~?」


 ……年下の女の子に運ばれること自体、癪ではあるが。

 仕方が無い、運ばれよう。


― ― ― ― ― ―


 魔法……。この世界の魔法は、どのようなものなのだろうか。

 どうやら詳しく観察してみると、それは俺が想定したものとは少し違うことに気付いた。

 まず、詠唱がない。

 まあそもそも詠唱魔法というものがあるのかすら分からないが、やはり詠唱というものは必要ないものなのだろうか。否、多分詠唱が必要なものとは仕組みが違うというのだろう。

 ……その魔法は、俺でも使えるのだろうか。

 ふと疑問が思い浮かぶ。

 ラノベやらなんやらで言えることだが、普通こういう時俺のような転生者的ポジションにいる人は何かしらの才能を持っているものである気がする。それって俺もワンチャン……。


「あの、魔法を使うためのコツとかありますか?」


 少し訊いてみる。


「コツ……?」


 また不可解そうな顔をするミシュリーヌがいる。

 あれ? 俺なんかしちゃいました?

 そのような展開を思わず予期してしまう。


「いや、ちょっと魔法苦手で……」


 そう言うと少しミシュリーヌは何かを察して納得したようだった。

その後に返ってきたのは普通のアニーの答えである。


「ぱーってイメージして、その後じっくり考えることが大事かな」


………………。

 なるほど分からん。

 というか。


「説明になってないんだが……」


 俺の言葉にミシュリーヌは苦笑いする。

 そっか、アニーだから仕方ないよな! と俺に思わせる。恐らくというか絶対にアニー、言語能力が乏しい。

 ……ミシュリーヌ、頼んだ。

 俺はすぐさまミシュリーヌに説明を求めた。

 ミシュリーヌは戸惑いを見せる。


「そうだよね~。ミシュリーヌちゃんはそんな魔法得意じゃないもんね」


 え、そうなのか?

 俺が見るとミシュリーヌは小さく頷いた。


「じゃあロラン……教えてくれ……」


 だがロランもこれまた困った様子。

 どうやらロランもそれ程得意でないらしい。

 …………。

 ――困った。


「そもそも魔法にコツとかあるのかな? 才能じゃないか??」


 ロランは言う。

 そういうことならば、やはり俺には魔法が使えないのかもしれないのだろう。たとえ特典があったとしても、それは魔法が使えることではない、ということだ。


「そうですか……それなら」


 いつの間にかまた敬語になっている。

ひょっとしたら、どこか緊迫感を俺は覚えているのかもしれない。


「まあ仕方ないな……。コツがないなら」


 コツ……あるんだけどな~。

 アニーは言葉をつまらせる。

 大丈夫だ、無理して言葉を引き出さなくていい。

 そう言うと、アニーは「ありがと」と言いながらさらに考える。


 間。


 ここで間が発生した。


「ところで――」


 ここでミシュリーヌが切り出した。


「ところでルイはどこから来たのか、それは憶えているのですか?」


 何を気にしているのだろう。それはよく分からないが、取り敢えずある程度俺は画さなければいけない。感覚がそう言っている。


「すみません、憶えてません」


 嘘だ。本当は憶えている。

 俺がこの世界から想像出来ない、現代日本で生まれたことを。


「そうですか……」


 アニーに運ばれている俺に、風の音が聞こえてくる。

 結構な速度のようで、風音が煩い。


 そういえばと、ここで一つ訊きたかった質問を思い出す。


「えっと……それじゃあこっちももう一個質問を……」

「どうぞ」


「……その、ここにいない二人? 三人? ってどういう人達なんですか。これから合流しなければいけないのだから、把握しておかないと」


 一応彼女らの目的は彼らとの合流らしい。ならば、この質問は妥当である。


「グレゴワールちゃん、マチルダちゃん……かな?」


 あ、はい。

 そう答えながら二人なのかと理解する。


「えっと、グレゴは老爺の剣士だよ。その刀裁きは一級品、居合い斬り、ワープなどの奇術を会得していて、いつも冷静だ。このグループの、まあ主な戦力だね。得意魔法は誰も知らない」


 ロランが続けて説明する。

 グレゴワール=グレゴで、どうやら良さそうだ。


「マチルダは主に補助を担当としている人です。機械とかプログラムとかがとにかく好きで、いつも研究している気がします。優れた頭を持った可愛い女の子なんです」


 ミシュリーヌが更に続ける。

 その話し口調からして、どうやら二人とは大分ここにいる三人、皆仲が良い感じらしい。


「……なんでグレゴワールさんは、単独で勝手に動いたのか?」


 ここで質問をする。

 ロランは、よく訊いてたねと言い、次の言葉を放った。


「さぁ、分かりかねないよ。彼はそんな自分勝手じゃ無かったはずだけど……」


 ……ほら、着いたよ。

 そうロランが言う。

 いつの間にか魔法での移動も、大分減速していた。


 そこにあるのは何とも変な動きを見せる洞窟。どうやらそこが目標地点だったらしい。

 I-8ダンジョン、到着である。


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