やわらかな言葉なんかじゃだまされませんよ
「きさらぎ型戦艦きさらぎ
如月側呼称はピースボートきさらぎ
排水量13万6000t
主兵装 60口径464mm1基主砲3門を5基
20mm周密対空機銃24門
対空・対潜ミサイル発射基4基
機関 BN型加圧水型原子炉2基 蒸気タービン4基 スクリュー6軸
全長 340m 速力 最大38ノット
兵員 約2000人
竣工は4年前で、表向きは艦隊打撃戦力の中核とされているが、その実は沿岸都市を破壊するために作られた悪魔の戦艦だ。」
イルは呆然とそれを聞いていた。呆然の理由はきさらぎの圧倒的スペックではなく、島烏の興奮気味の早口説明にあった。
「「きさらぎ」には公開されていないが、観察から得られる更なる悪魔的諸元がある。それは自分が知る限り主要なもので18個あり、その一つにして最大の特徴である高周波探知装置が世界最大級のもの・・・」
「わ、わかりました島烏さん。わかりました。しかし、そういっぺんに説明されては私も頭がこんがらがりまして。」
「ああ、すまない。つい興奮してしまったよ。
節花さん、きさらぎだけではないよ。如月の23は他にも共和国に仇なす邪悪で強力な兵器をいくつももっている。ほら、あれ!あれだ。
ああ、なんてこった!こんな間近にナイスボートまで。
いいか節花さん、ナイスボートというのは航空母艦のことで、如月のそれはヘリや短距離発着艦載機運用の軽空母といえる。その諸元は、ほら、あれだみろ。」
激しい身振り手振りの島烏の顔は紅潮をきわめている。
イルはあきらめて島烏の説明を聞くことにした。
茂みに体を隠し、低い姿勢をとる3人であったが、島烏だけは身を乗り出してひたすらしゃべり続けている。
「(叔父さん、島烏さん興奮してますね。)」
「(島烏は昔からそうだ。兵器マニアなんだよ。)」
カンが島烏の喋りを手振りで抑える。
「島烏、そう興奮するな。せっかく隠れてるのに丸見えだぞ。」
カンに制された島烏はようやくしゃべるのをやめた。
「島烏、ナイスボートなんだが、あれの艦名はわかるか。」
「まこと型空母まことですね。このへんじゃなかなか見ません。」
「どうもみあたらないが確か同型のナイスボート、なんていったか。」
「「ことのは」ですね。現在3隻目の「せかい」を建造中です。
本来なら「ことのは」がこの演習に参加していると思うのですがねえ。」
双眼鏡を目からはずし、島烏は疑問をなげかける。
「指揮系統が違うな。」カンに嫌な予感が走る。
スケッチ用紙に艦艇の配置概観を描く。
「ここに「きさらぎ」「ことのは」そして「あすま」「のあ」」
「あちらには「たわば」「とりさか」「さんご」」
「ちょっと待ってください。するとなんですか。」
艦名入りの概観をみたイルが言葉を挟んだ。
カン「イル、お前も思ったか。」
「当たりまえです!」
島烏「だろうな。確かにおかしい。もしかしたら・・・」
イル「如月人は!」
イルが怒気をはらんだ声でいい放った。
「ひらがなにすればなんでも和らぐとでも思ってるんですか!あんな殺人兵器でも!」
カン・島烏「そこかよ」