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番外編:アルテミスの考察

14部:手紙のアルテミス視点です。

 昼食時間、いつも通りエレノアの向かいに着席したアルテミスは、先週末の華耀との魔力吸収の修行を思い返していた。


 ――確かに、魔力結晶こそが魔力の性質を理解する近道な気がする。それにしても、見た目はそっくりに模倣出来たのに音が違うと言うのはとても興味深いわ。いえ、それ以前に魔力が音を発していると言う事自体が驚きね。吸収適性と言い、魔力視や魔力聴だなんて、華耀君は本当に興味深いわ……。

 是非もっと仲良くなりたいけれど、色々と気になることもあるし、どうなるかしら。


 そんな事をつらつらと考えていると、斜向かいに座っていたニーナが口を開いた。


「エレノアと華耀君って会った事あったっけ?」


 ――二人が一緒に食事してる所を見た事が無いのは、私だけでは無かったのね。


 ニーナの疑問に対して、エレノアが何と答えるのか。アルテミスはさり気なく聞き耳を立てていたが、エレノアの口からその答えが得られる事は無かった。


「エレノア」


「あら、ヨハネス。お久し振りです。今日はどうされましたか?」


 突然現れた青年は、ループタイの色からして上級生である。


 間接的とは言え彼の口から、エレノアと華耀が知り合いらしい事は窺えた。


 ――単純に時間が合わなくて面識が無いのか、二人の関係が余り良くないが故に御互い避けてるのかと思ったけれど、今の先輩の発言からしてそれは違うわね。少なくとも協力して何かを成し遂げるだけの関係性……。


 エレノアと華耀、それぞれと初めて顔を合わせた時、アルテミスは二人が同一人物だと思った。


 それ程似ていたのである。似ていると言っても姿かたちでは無い。


 華耀は精悍な男性顔であるし、エレノアは美しい女性顔である。


 身長もエレノアがおよそ百七十五センチ前後に対して、華耀はそれよりも十センチは高いだろう。


 とてもでは無いが男装、もしくは女装と言った異性装や化粧をした所で出せる違いでは無い。


 それでも同一人物では考えたのは、(ひとえ)に放っている存在感、言うなればオーラが一致している事、そしてアルテミスを見る目がどちらも恋愛特有のそれだった事である。


 望むと望まざるとにかかわらず、その容姿故にアルテミスは昔から人々の注目を浴びてきた。悪意や羨望、恋慕等、色々な感情をぶつけられて来た。その所為で人の視線に含まれる感情を的確に読み取れる特技が身についてしまった。


 自慢では無いが、アルテミスは男性からはそう言う目で見られる事は少なくないが、同性からその様な視線を受ける事は初めてであった。むしろ嫉妬もしくは蔑みのそればかりである。


 二人の共通点と相違点が浮き彫りになるにつれて、好みが似通う事が多い、双子や兄妹等、近い血筋かと考えた。だが、二人が一緒に居る所を見た事が無い。


 アルテミスは食事を共にする様になってからまだ日が浅いのでたまたまなのかと思ったのだが、ニーナの発言でそれが裏付けされた。


 ――それに、エレノアさんの腕にあった打撲痕……、週末華耀君の腕にもあったのよね。偶然にしては出来過ぎでは無いかしら?


 考えた所ですぐに答えが出る訳では無い。分かってはいたが、昼休みの間中考えてしまうアルテミスであった。


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