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期末テスト、迫る

翌週。

元気に学園に登校してきた生徒たちはもう体育祭の負けを引きずってはいなかった。

体育祭における後悔なんて週末に消化しきるようなものだろう。

話のタネになることはあっても、ここをこうしておけば良かったなどという検討は行われない。

そういった反省が役立つのは定期的に行われるものに対してであり、1年に1回直前に練習するだけのものには当てはまらない。


「さて、来週は期末テストだな」


生徒たちは一斉に真面目な顔になる。

学園に入って初のテストだ。

どういった形式のものなのかもほとんど情報はないだろう。

緊張するのも当然だ。


「今から緊張してどうする。大丈夫だ。授業内容さえ復習しておけば悪いようにはしない」


期末テストは全て筆記式であり、担任がそのクラスの進度に合わせた問題を作るようになっている。

その問題を他の先生に確認してもらい、初めて正式にテスト問題となるのだ。


「不安だな~」

「マロン、試験範囲に関する質問はいつでも受け付けている。他の皆も何か聞きたいことがあれば聞きに来てくれて構わないぞ」


わからないことがあれば、質問するのが一番だ。

無駄なことで悩む必要が無いし、既に理解している人から説明してもらうほうが圧倒的に理解が早い。


「だが、ここで問題がある」

「?」

「俺の時間も有限だという事だ」


通常業務に加え、テスト問題の作成。

教師として初めてのテスト監督の練習など、やることは普段よりも多い。

その上で1人1人の質問に答えていたら明らかに時間が足りないのだ。


「そこで、お助けシステムを採用しようと思う」

「先生、それは少し、そのダサいかと……」

「ぐっ……!」


やっぱりお助けシステムはダメか、そうだよな!?

体育祭の時の年相応のウィルの姿はどこにもなく、いつもの凛々しい王女様モードになっている。

あれはあれで可愛げがあったんだがな……。


「な、なんか代案はあるか?」

「内容を聞きませんと、何とも」

「そうだな。例えばだ。デラロサ。お前は魔法言語の文法が苦手だよな?」

「そうですね、ゲイル君に比べれば」


何だその答え方。


「で、エウレアはそのあたりの理解はしっかりしている」


コクリと頷くエウレア。


「なら、別に俺が教えなくてもエウレアが教えればいいんじゃないのか?」

「「!」」


ここで言う魔法言語とは昔から使われていた魔方陣や、巻物にしたためるタイプに用いられる文字のことだ。

日本では第二言語、すなわち英語を学ぶようなものだと思ってくれていい。


「もちろん、教える側は教えることに時間を取られてしまう。だから、何かしらメリットがないといけないよな? 何か教えてもらいたいことがある人は一度俺のところまで来てもらう。そしてその内容が他の誰かになら教えられると俺が判断すれば、その人に俺が割り振る。教える側に回った人はメリットとしてその教えている科目のテストにボーナス点をつけよう」


テスト前にある程度ボーナス点があることを認識できているのは心に余裕が生まれる。

評価がテスト100%の時は余裕がないが、課題40%・テスト60%の時は課題の提出状況によってある程度の点数の計算ができるのと同じ理屈だ。

流石にそこまでの割合には出来ないが。


「貰える点数はわかるんですか?」

「残念ながら、それは教えられない。教える問題の難易度によっても変動するだろうし、もしテストで950点取った人にプラスで60点あったらどうする? ってことになるだろ?」


ライヤの裁量次第というわけだ。

ちなみに各1000点満点である。


「……なるほど」


ウィルは1人で何か考え込む。


「……あの……」

「なんだ、シャロン」

「……あの、わたし、教える自信が……」

「あぁ、もちろん、強制はしない。自分の勉強を優先したいって人もいるだろうし、もちろんシャロンのように人見知りなこともある。ただ、選択肢として悪くないんじゃないかって話だ」


「いいんじゃないか?」


ここまで何も言っていなかったゲイルが賛成の意を示す。


「どうせ、デラロサとマロンには教えることになると思っていたんだ。それで点数がもらえるなら、ありがたい。それにこの話は生徒にとってデメリットがほとんどない。そうですよね、先生」

「そうだと思う。さっきも言った通り、自分の勉強時間が削られることくらいだが、それを含めて教えるかどうかの判断はしてもらっていいから、実質それもデメリットにはならないだろう」

「そうですね、私も賛成です」


ゲイルとウィル。

S(クラス)におけるリーダー格が賛成したのでそれに続いてみんなが賛成していく。


「よし、じゃあそれでやってみようか。今日から開始することにするから、そのつもりで。教師役をこの範囲なら問題なくやれるよって人も言ってくれたら優先して回すようにする。俺が全員の得意不得意を完全に把握できてるかは怪しいからな」

「それで、先生」

「ん?」

「このシステムの名前はどうします?」


いや、だから、考えてきたのを否決されたんだって……。


「『全員教師作戦』……」


ぼそりとティムが言った名前にみんなが反応する。


「いいな、それ」

「作戦って、なんかカッコいいよね~」

「……」


S(クラス)の生徒も、まだ9歳の子どもたちなんだなと実感したライヤであった。


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