表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/329

体育祭当日 9:35

暇なアンに見つかっているとは露知らず。

会場の上空を横断したライヤは明らかに怪しい奴らが動いている森に到着する。


「そこでなにしている」

「!? 話がちげぇぞ……? 来ても十数分後という話じゃなかったか?」

「とりあえず、持ってるものを置いてもらおうか」

「あ!? なんで先生ごときに従わなきゃいけないんだよ!」


小声になったかと思えばいきなり大声を出す男たち。

恰好から見るに、それほど身分のある者たちでもないだろう。

だが、その手にある武器はどこで調達したのかわからないものだ。

しっかりとした作りの剣をこのためだけに買うだろうか。


「普段なら従う謂れはないけどな。今は会場周りに限って軍と同様の権限を持ってるんだよ。そもそも、体育祭の会場周りで剣を持ってうろうろしている奴らを放っておけると思うか?」


ニヤリと笑う男。


「そうだな。だが、武器持ちのこの人数を一人で相手に出来ると思うか?」

「ま、やってみればわかるだろ」


気軽な様子でライヤは構える。





「う……」


例の店の地下倉庫でミランダは目を覚ます。

本来なら女性に男性の当て身が当たれば起きるまでに時間がかかるものだ。

しかし、ミランダも軍人であり鍛え方は一般人のそれではない。

ついでに当て身をした側の男も素人であり、1時間にも満たない気絶で済んだ。


「ふむ……」


周りの光景から自分の居場所を察する。

後ろ手に縄で結ばれているが、無詠唱とはいかずとも1人で放っておかれれば水魔法でも風魔法でも切ることは可能だ。


「これではライヤ様にご迷惑をかけているかもしれませんね……」


どれだけ気を失っていたのかはわからないが、一定時間連絡がつかなくなっているのは確定だろうと考えるミランダ。


「しかし、時間がかかったなりに役に立つ情報を持って帰れそうです」


諜報において一番難しいのは対象のいる場所に潜入することである。

今回はその手間を向こうから省いてくれている。

そして、ミランダが気を失っていると思っているので見張りもいない。

もしくは、見張りを立てることも出来ないくらいに人が足りないのか。

どちらにせよミランダが動きやすいことには変わりない。


「何をしようとしているかくらいは調べて戻るとしましょう」





F級(クラス)の皆さん凄いですね」

「普段から体を動かしているわけではないのです、お姉さま」


一方、生徒たち。

S(クラス)とF(クラス)連合は序盤の個人種目に臨んでいた。

S(クラス)は人数の関係上こういった個人種目ではF(クラス)に頼らざるを得ないのだが、普段から畑仕事や山仕事などを手伝っている彼らの体力は凄いのだ。

体の動かし方というものを心得ている。


S(クラス)もライヤの方針によって体育の時間にしっかりと体を動かしているので、簡単に他のクラスに引けを取ることはない。

だが、宣戦布告をしてきたA(クラス)は苦戦していた。

学園はあくまで魔法のための学校であり、昨今の傾向として魔法が評価の中心となることが多く、S(クラス)を超えることを目標としている彼らは魔法しか学んでいないのだ。

実はしっかりと体育の授業もあったのだが、教師が押しきられて魔法の授業だけをするようになっていた。


「ちょっと貴族様。ポイントが稼げないのだけど」

「団体種目で取り返せばよいのだ! 貴族の僕に逆らう気か!?」

「学園では身分は関係ないって何回言ったらわかるの……?」


A(クラス)E(クラス)連合は今までの生徒たちも通ってきた仲たがいの道を順調に進んでいた。

今年はE(クラス)の代表の女子生徒が大人だったことでぎりぎりチームとしての形を保っているが、例年であれば崩壊していてもおかしくない程であった。


「それにしても、こんなに生徒がいたのですね」

「……(フルフル)……」


各学年の人数が多いこともあり、各(クラス)の校舎は単独で存在している。

よってウィルもS(クラス)とF(クラス)の人達しか把握していなかった。

学年全体が集まると壮観である。

そして、観客席には彼らの父兄が来ているのだ。

今まで彼らが見たこともないような人数が集まっている。

人見知りのシャロンが端っこで小さくなって震えているのも無理はない。


「シャロンさん」

「……ぁい……」

「すぐに慣れろとは言いませんが、午後の団体競技までには動けるようになっていてくださいね? みんなでライヤ先生を驚かせるのでしょう?」

「……がんばる。……がんばるけど、うぅ……」

「ゆっくりで構いませんから」


シャロンがこうなるのもウィルは予想していた。

だがS(クラス)の力は絶対に必要であり、特にシャロンは現状魔法に対する適性がエウレアの次に高い。

大事な戦力を眠ったままにはしておけないのだ。


「やはり、無理を言って先生に来てもらった方が良かったでしょうか……?」


先生がいればシャロンも勇気づけられるはずだから。


ここまで読んで頂きありがとうございます!

良ければブックマーク、評価、感想お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ