第15話
この話からスマホでも見やすいレイアウトに心がけました
今まではスマホ画面での確認は一切しなかったので…
【これで終わりだ】
その声は、その場にいる全員に聞こえた。
ただ、ハイアサースはそれでも線を引くのを止めない。思わず辺りを見回した康大と違い、彼女は本当にすべきことを完全に弁えていた。
しかし、物理的な障害が発生すればそうはいかない。
「ハイアサース!」
それに気付かなかったハイアサースを、康大は強引にその場から追いやる。
その直後、本格的にそれが現れ始めた。
「な、なんだべ!?」
「アレを見ろ」
ハイアサースが線を引こうとしたその先で、不意に地面が光り始める。
その程度なら康大もハイアサースを止めたりはしなかっただろうが、さらに盛り上がり始めたら、もう放っておくわけにもいかない。
床の盛り上がりはどう考えても人間サイズでは収まらない大きさで、そこから何が出てくるにせよ、ただのスペクターでないことは明らかだった。
【古の竜よ、全てを屠れ!】
悪霊の不快な声に応え、それがついに床からその全容を見せる。
体長は首を伸ばした現在の状態で10メートルほど。比較対象がないので康大には分からないが、悪霊が言った通りどこからどう見ても、ドラゴンだった。
……ただし、腐りかけではあるが。
(さしずめドラゴン・ゾンビか……)
悪霊だけあって、生身のモンスターは召喚出来ないのだろうか。そんなことを考えながら、康大はドラゴンの様子を窺う。
現れた時は大きくその首を持ち上げたが、今は体力温存でもしているのか、ぐったりとその場に蹲っている。
それでもその牙と爪は康大に強い恐怖心を与えた。腐りかけで骨が見えている肌から防御力は低そうだが、それを率先して試す気にはなれない。
「また面倒くさいものを……」
フォックスバードが舌打ちする。
「あれはどういうものなのでござるか?」
「腐竜といって攻撃力も素早さも大したことは無い。見ての通り腐ってるから、ナイフでも簡単に切り裂ける。ただ、その再生能力はすさまじく、指1本でも残っていればそこから元に戻ると言われている」
「外見は全然再生してないように見えるのでござるが……」
「あくまでこちらの攻撃に対する再生さ。あの化け物にとって、腐りかけている場状態が正常なんだ。さらに問題なのは口から出す瘴気で、長時間嗅いでいると身体が蝕まれ死に至る。屋外なら離れれば良いけど、この密閉された空間だと……」
(ああやっぱり!)
2人の話を背中で聞いていた康大は、甘い考えを一瞬でも抱いたことを猛烈に後悔した。
「コータいい加減離してくれ」
「悪い、けどこれ以上は無理だ」
「そのようだな」
ハイアサースも現状を理解する。
2人のすぐ前には腐竜が鎮座し、完全に道を塞いでいたのだ。
「腐竜を迂回して描くことはできないか?」
「無理だ。"神の御城壁"は完全な十字でなければ効果が無い」
「だよなあ……」
無駄だとは予想していたが、とりあえず言ってみた。ハイアサースのことだから「気付かなかった!」と言われる可能性は捨てきれない。
「ならば拙者が吹きとばしましょう」
いつの間に近づいたのか、圭阿が突然答える。状況を考え、フォックスバードのフォローよりハイアサースのフォローを優先したのだろう。
「吹き飛ばすって、まだ爆裂苦無のストックがあるのか?」
「ふぉっくすばーど殿の家に材料が豊富にありましてな、前回の倍近く用意できたでござる」
「頼もしいな。じゃあ頼む!」
「委細承知!」
圭阿は康大とハイアサースに少し離れるように言うと、何かしらの道具で点火させた苦無を腐竜に向けて放る。図体も大きく、動きも呪い腐竜に、それを避ける術はない。
――GYAAAOOOOOOOOOO!!――
腐っているようでも痛覚はあるのか、腐竜は絶叫を上げ、ゆっくりと背後に倒れていく。
そうなったのも当然で、圭阿の放った苦無は、爆発と共に腐竜の腹に風穴を開けていた。元のセカイの地球ならあらゆる生物が即死する一撃だ。
「今でござる!」
「わかった!」
腐竜が気絶したかのように倒れている間、圭阿がハイアサースに続きを書くよう指示した。
ハイアサースはそれに答え、すぐさま再開する。
だが腐竜の復活は予想以上に早く、5メートルも進まないうちに傷はほぼ回復し、同じ場所に再び立ち塞がる。
「なんて回復力だ! 圭阿、こうなったら木っ端微塵に出来ないか!?」
「そんなこをしたら、拙者達もただでは済まないでござる! この空間はで今の攻撃が限界でござる!」
「っくそ!」
康大は唇を噛みしめた。
【ハッハッハ、愚かな人間共よ、絶望に打ちひしがれるがいい】
勝利を確信した悪霊の不快な声が脳内に木霊する。これならミーレの愚痴の方が未だマシだ。
腐竜を呼び出したことで力を使い切ったのか、悪霊の攻撃は止まったが、現状は以前よりさらにひどい。部屋は順調に冷え続け、スペクター達も漆黒の眼窩に殺意を込めながら徐々に距離を詰めている。
さらにこちらの攻撃が引き金になったのか、それまでただじっとしていただけの腐竜が、急に首を回し、何かを始めていた。
「あれは瘴気を放つための空気を集めているね。やれやれ、さすがに大分まずい状況になった。この部屋で実際に瘴気を放たれたら、そう長くは生きられない」
フォックスバードがあまり聞きたくない事実を、積極的に教えてくれた。
できれば現代日本人並みの律儀さで正確なタイムリミットを教えてもらいたかったが、残念ながら時計のない世界でそれは期待出来ない。
「ただ、おそらく康大君は最後まで生き残れるんじゃないかな。"ういるす"? の体内の浸食を抑えているぐらいだから、君はかなりの耐性を持っているはずだ」
「言われてみると……」
ハイアサースが花壇で毒を受けた時、康大には全く影響が出なかった。なにより康大はまだ死んでいない。毒に強いという話は納得出来る点が多かった。
尤も。
「俺1人生き残っても意味は無いんですけどね……」
スペクター達の襲撃は回避出来ても、悪霊に直接的な干渉は出来ない。逆に悪霊には例の魔法がある。もはや敗北以外の未来しか見えなかった。
(結局今回も追い詰められてるじゃねえか……)
心の中で愚痴る。
だが、康大を待ち受ける窮地はこれだけでは無かった。
「……コータ」
珍しくか弱い声で、ハイアサースが呼ぶ。
「ん、どうした?」
「こんな時に申し訳ないのだが、多分私はもうすぐ死ぬ。以前死んだ時と同じ感じになってきた」
「だったら回復魔法を――あ」
そこで康大は気付いた。
何故今までスペクターのまっただ中にいながら、平然と字を書き続けることが出来たかを。
ハイアサースがゾンビ状態だからこそ、スペクターは攻撃をしなかった。助かるためにそれを解除すれば、生身の健康な身体が手に入ると同時にそのアドバンテージを失う。今度は彼女を護衛し、スペクターを倒しながら出ないと書けなくなるのだ。
(ああもう! どうすりゃいんだよ!)
康大は神にもすがる思いでフォックスバードに「この状況を一変するとんでもない魔法とかありませんか!?」と聞いた。
その答えは、
「まずその魔法がどんなものか教えて欲しい。もしかしたらこの状態でも使えるかもしれないからね」
普段通りの表情で、やんわりと窘められた。
「前回以上の絶体絶命だ……」
康大はその場でガックリと膝を折る。
もう何も思いつかなかった。
しかし仲間達は康大がそうやって絶望することすら許さない。
「コータ、お前ならこの状況を打破する素晴らしい策を思いつくさ。何といっても私の婚約者だからな」
「康大殿が頼りでござる!」
「・・・・・・」
2人の期待が重く、痛い。
自分はそんな大した人間でないと、声の限り叫びたかった。
だがそうすれば本当に終わってしまう。終わらせていいセカイでは無かった。
「まあそう思い詰めることもないさ」
追い詰められた康大の内心を慮ってか、フォックスバードの口調は気楽なものだった。もし強く言われたら、「そもそもアンタがどうにかしろ!」と反論したが、それすらも許されない。
「腐竜なんて所詮文字通りの腐りかけの竜。死を超越しているような君の敵じゃない。そのうち腐りきって勝手に死ぬような存在さ」
「死ぬ……つかぬ事を聞きますけど、あの竜って死んでないんですか?」
「いちおう生きてるね。この世界では死んだ生き物は再生しないよ」
「・・・・・・」
康大は見た目の思い込みから、腐竜をゾンビ化したドラゴン――つまりスペクター同様魔法で操られている死体だと思っていた。そもそも"腐竜"という呼び方も、耳で聞いただけでは字まで分からない。
生きているならまだなんとかしようがある。
フォックスバードが絶賛する、ゾンビ的な解決方法が康大には残されていた。
「……生きているなら、俺がゾンビ化させるという手が残されています」
「ふむ、ようやくそのことに気付いたか」
「知ってたんなら言って下さいよ!」
フォックスバードのあまりに暢気な態度に、康大は思わずつっこみを入れる。
ただ、何もフォックスバードが無駄にもったいぶって言わなかったわけではなかった。
「あの規模の生き物をゾンビ化させるとしたら、それこそ致死量の血液が必要になるかもしれない。ただ図体がでかいだけじゃなく、あの回復力だからね。それを僕から「僕達を助けるためにやれ」とは言えないよ。君自身がその気になるまで待つ義務があったんだ」
「……出血死の強制ですか」
確かにそこまでの血を流したら死んでしまうだろう。
しかしフォックスバードは知らない。
ゾンビには血液など使わなくても、対象を感染させる典型的な方法があることを。
「皆聞いてくれ、これから俺があの竜に近づいてなんとかする。ハイアサースはもう回復魔法を使って、フォックスバードさんと圭阿はその援護をして欲しい」
「康大殿1人でいくのでござるか!?」
「ああ、多分こっちは俺1人で何とかなると思う。まあヤバかったら助けを求めるけど」
「……その様子を見る限り、死ににいくつもりではないようだね」
「そういう状況まで追い込まれたら俺は逃げます」
「コータ……」
最後の力を振り絞るようなか細い声でハイアサースは言った。
「がんばれ」
「……お前もとっとと回復しろ、そして名目上とはいえ婚約者を信じろ」
「ふっ……別に名目上と思っているわけではないのだがな」
ハイアサースはそう言って苦笑し、康大の頰が少しだけ緩む。
「……さて、それじゃあ行くぞ。あのクソ野郎に一泡吹かせてやろうぜ!」
康大は3人に笑いかけ、腐竜に向かって走り出す。
腐竜は康大の接近に気付くと、首を振り回すのを止め、今まで集めてきた空気を康大に向かって瘴気として吐き出した。
(臭え!!!)
瘴気は鼻がひん曲がるほどの強烈な悪臭を放っていた。小動物ならこの臭いだけで即死するだろう。
康大も生身の状態であったのなら、即死したかもしれない。フォックスバードの言う通り、毒の耐性が人間のそれを簡単に凌駕していた。
その一方で後ろの3人は、状況を的確に判断したフォックスバードの指示の元、康大の背後から既に移動していた。
それでもハイアサースあたりは、かなり嘔吐いていたが。
(しかしあの薬草と比べれば!)
そう自分に言い聞かせ、康大はさらに近づく。
腐竜は息だけでなく体臭そのものも凶悪で、まるで肥だめに自分から突っ込んでいるようであった。これからすべき事を考えると、くじけそうになる。できれば全て終わったら一連の記憶を抹消したいところだ。
瘴気が効かないと判断したのか、腐竜はその大きな腕を初めて振り上げる。
腐りかけの筋肉では大した力も出せないのか、その一撃はほとんど重力任せだった。
その程度の攻撃なら、さすがに康大でもそれほど問題ではない。
「おっとぉ!」
明らかだった落下地点から距離を取り、康大はその爪を全く活かせていない攻撃を避ける。
遅いとはいえ地面を叩き付ける際の風圧は強烈で、もし当たったら即死していただろう。
康大の背筋に冷や汗が流れる。
(こういうキャラじゃないのに……)
仲間のために命がけで怪物に立ち向かう――そんなキャラクターになりたいと思ったことは、今まで一度も無い。そういう自己犠牲は偽善的で胡散臭いとさえ思っていた。
しかし、環境が才能もやる気も全くない康大に、その役をはめ込んでしまった。
そして日本人的に、与えられた役職には可能な限り真面目に取り組まざるをえなかった。
「よし!」
ついに康大は腐竜に取りつく。
悪臭も最低にひどくなったが、興奮しているせいか逆に気にならなくなっていた。
「足元じゃ駄目だな……」
康大は腐竜の身体をよじ登る。
肉球と化してしまった掌のせいで微妙に登りにくい上、腐竜の身体は強く掴んだそばからそぎ落ちてしまう。さらにそこから強烈な悪臭が発生し、本当に肥だめの山を登っているかのようであった。
それでも康大は登る。
幸いにも腐竜は緩慢で、振り落とされるほど激しくは動かない。
肉球があるんだから、せめて爪もあれば便利なのにと心の中で愚痴り、腐竜の身体を削りながら、康大は手と脚を動かし続けた。
その心の片隅で、
(もしこれが現実世界だったら、ここまで他人のためにがんばれたのかな)
と思いながら。
そしてついに康大は目的の場所、腐竜の首筋あたりまで到着した。
あとは予定した行動をするだけ。
「・・・・・・」
それが分かっていても躊躇してしまう。
これからしようとしていることは、康大にとってあまりに不快感を伴うことだった。下手をすると、自分が病気になって倒れてしまうかもしれない。
ここで自分がどうにかしないと全滅してしまうと分かっていても、あと一歩だけ踏ん切りがつかなかった。
迷っている康大の視界に、3人の姿が映る。高いところに登ったおかげで、その様子がよく見えた。
ハイアサースは回復魔法を使ったのか顔色が元に戻り、足取りもしっかりしている。
その代償であるかのようにスペクター達に隅に追い詰められ、まさに絶体絶命という風であった。
小さく軽いフォックスバードだけならまだしも、鎧を纏っているハイアサースを担いでスペクター達を飛び越えるのは、如何に圭阿でも無理そうだ。廃墟の時のようになぎ倒しながら進むには、助走距離が足りなさすぎる。
それでも3人の顔に諦めは見られなかった。
康大がどうにかしてくれることを信じて疑ってはいなかった。
(もし元の世界なら……)
康大はさっき考えていたことを、また改めて考える。
(誰も俺にそんな期待はしなかった。俺に頼る前に、警察とか消防とか、俺なんかよりはるかに頼れる人達を頼った。そんな連中のために命がけになれないのは、むしろ当然だ。自分から頼れって言うのも馬鹿馬鹿しい)
康大は覚悟を決めた。
もうそこに迷いはない。
(でもこの世界では俺だけが頼られてる! だからがんばれるんだ! やるしかないんだよ!)
康大は大きく口を開けた。
そして腐竜の腐りかけの首すじに、勢いを付けて噛みつく。
映画に登場するゾンビのように。
――そう、より安全で効率的にゾンビウイルスを感染させるのは、噛みつくことだった。
そもそもフィクションの世界では、それ以外の要因で感染することの方が珍しい。何より他ならぬ康大自身、噛みつかれてゾンビになってしまったのだ。
廃墟でそうしなかったのは、逆に1人1人噛みつく方がリスクが高かったからである。1人に噛みついている間に、別の誰かに攻撃されたらその時点でおしまいだ。
しかし対象が1体で、さらに巨大なら、噛みついた方が遙かに効率がいい。
ただし、一度の噛みつきだけでは足りないだろう。
長期戦なら1回の噛みつきで身体にウイルスが浸透するまで待てば良いが、今は時間が無い。多くの場所から一偏にウイルスを注入し、より早く発病させなければならなかった。
康大は首筋付近を中心に、何カ所もその腐った肉を食いちぎる。
――GUUUUUUUUUUUEEEEEEE!!!――
腐竜が痛みに暴れる。
そこまでされても鈍いあがきは、康大を振り落とすほどまでではなかった。
(ああもうくそまずい! でも――!)
何度も噛みつくと、どうしても腐竜の肉を食べてしまう。そのことで病気になることを康大も心配していた。
だが、フォックスバードは毒には強いと言っていたし、
(なんだかんだ言ってもあの薬草よりは遙かにマシだ!)
あの思い出したくもない経験が康大に力を与えてくれた。
やがて腐竜の動きが、激しく、そして俊敏になっていく。
それは以前見た薬草の最後と同じようなものだった。
ただし、薬草と違い腐竜には脅威の回復力があり、肉が腐り落ちたそばから再生していく。
――GGUUUUURUUAAAAA!!!!!!!!――
ただその再生は元の腐った状態に戻るのではなく、赤黒い、異質の筋肉による補填で、それが苦しいのか腐竜は絶叫する。
(もう充分か)
康大は腐竜に振り落とされる前に、急いで身体を降り、途中で飛び降りる。
康大が転げ落ちるのと同時に、腐竜は突然空に浮かんだ。
今までは飾りだった穴だらけの翼に、ウイルスによる筋肉が構成されたことで、浮力が生まれたのだ。もちろん何トンもある巨体が浮くにはそれだけでは足りないので、おそらく魔術的な力も働いているのだろう。
事実として腐竜は高く飛び上がり、そこで暴れ出した。
【な、なんだと!?】
この腐竜の行動は悪霊にとっても完全に予想外で、明らかに取り乱した声が4人の心に届いた。
4人はこの不快な声を聞いて、初めていい気分になった。
「大丈夫か!?」
「なんとかな」
地面に落ちた康大は、力を取り戻したハイアサースに抱えられる。
知らぬ間にスペクターの動きが止まったことで、生身となったハイアサースでも康大の元まで近づくことが出来たのだ。
「まさかあのドラゴンを感染させるとはな。恐れ入ったぞ! 臭いけどな!」
「そこは我慢してくれ。ただ反応が完全に予想外だ。飛ぶかよ普通」
空中で暴れ回る腐竜を見ながら、康大はあきれ顔で言った。
腐竜はどんどん高度を上げ、やがて天井まで持ち上がった本棚にまで攻撃しようとする。
康大のような部外者は、「まあ本棚がぶっ壊れても中の本が読めればいいだろう」程度にしか考えていなかったが、悪霊は違った。
【ええいこの駄竜が! 私の言うことを聞け!】
悪霊は必死で腐竜を宥めようとする。
だがウイルスによる神経浸食はそんな戯れ言が通じるほど甘くはなく、さらに激しく暴れるようになる。
こうなると康大にも、腐竜がどういう結末を辿るのか想像がつかない。
【ええい、スペクター達よ、この出来損ないを止めろ!】
もはや帰還させることも不可能になったのか、悪霊は地面にいるスペクター達に武器を投げつけさせる。
この時点で康大達は完全に攻撃対象から外れた。
――GIGGGUUUUUUUUUUUU!!!!!!!――
全身にスペクターの武器を受け、さらに暴れる腐竜。
しかし、結局致命傷を与えることなど出来ず、与えるそばから回復していく。
悪霊も事ここに至って氷塊を腐竜にぶつけるが、全く効果は無い。
むしろ本棚に対する被害が増え、取り乱しているように見えた。
そんなとき、フォックスバードの目が怪しく光った――。