弟が忘れ物をしたので届けに行ったのですが私はそれよりも重要な問題を発見してしまいました
「行ってきま~す!」そう言って弟は何処かに行った。ただそれだけなら良いのだが、一つ問題が発生した。
弟の忘れ物だ。中身は分からないが、多分大事な物なのだろう。早く届けなければ弟が困る。
しかし、問題は間に合うかどうかだ。もし間に合わなかったら……いや、とにかく届けるしかない!
時間はちょうど弟が出てから二十分後。
間に合え!自分。
弟の目的地は分かっていた。家から七百五十メートルの所にあるカフェだ。何故分かるの?昨日話してたから。
弟は昨日意気揚々と話していた、明日はカフェに行くと。だが、カフェで誰に会うか、どんな目的か、等は言ってなかった。だから、この忘れ物を届けるのは
それを確かめる為でもある。
家からはちょっと離れた。多分十メートルぐらいは歩いたかな。私は今、毎分98mぐらいで走ってる。
息が乱れる。早く追いつかないかな。疲れてきちゃった。
追いついた!弟の背中が見えたから追いついたのだと私は思った。 ところが突然、私の速度はゼロになつた。ゼロになると言うことは止まったのだ。それでなんで止まったかと言うと……
転んでしまったのだ。弟のすぐ後ろで。
「いたた……」 恥ずかしながら私は転んでしまったのか。情けなや…
「大丈夫です……か?」突然一人の少女が私に話しかけた。 「あ、大丈夫……立てる。それよりあなたは?」 膝に付いた汚れを落として聞く。
「私、早くカフェに行かないと。」どうやら少女はカフェに行きたいみたい。
「もしかして、誰かと会うの?」なんだか気になって聞いた。実は誰かとはもう分かってたけど。
「あ!な、なんで分かったんですか?」驚いたみたい
「あと、もう一つ、その男の名前は"つよし"でしょ?」
「きゃっ!当たり…です!」少女は困惑した。
「実はね、私つよしの姉なの。今からつよしに忘れ物を届ける所だったの。あなたは?」
「いや……その……」目的が言えないとますます気になった。「じゃあ私と一緒に行こう!」
ふぇっ?だかはぁ?だか分かんない様な少女の表情がさだったが、「はい。行きましょう!」と言って笑顔になった。
やっと明らかになるんだ。弟の目的が。
「ここね。」 「はい、ここですね。」 カフェに着いた。カフェの扉を開けると鈴が鳴る。カランカランとなるその鈴の音を聞いて落ち着いた。
弟が座っていたのは奥から二番目のBOX席。だいたい四人掛けぐらいの席だった。
「お、来たか……え?」弟の席に行くとなぜか弟は驚いた。「忘れ物よ。」持ってきたバックみたいな物を渡す。「あ、俺ちょっと用事が……」逃げようとした弟のフード部分を掴み、席に座らせた。
「そのバックの中身。一体なんなの?」弟に聞いた
少女は私の横で小さくなってる。蛇に睨まれた蛙みたいだった。
「いやだ!開けたくない!」どうしても弟は開けたくないようだ。ならこうする
「ね~なんでこのカフェに来たんだっけ?」小さくなる少女に聞いた。「は、はい!それは……」弟は手を右目に当てテーブルに顔を埋めた。
「実は……私弱みを握られていたんです。その男にいつの間にか私の恥ずかしい写真を撮られてて、逆らったらそれをみんなに見せるって。」なるほどと頷いた。そして、私は三十キロぐらいの力で弟の頭に拳を当てた。「あんた…!最低ね!姉として恥ずかしいわ
……」 そして、少女の額にも人差し指でデコピンをした。「あなたも馬鹿よ。よりにも寄ってこんな男に弱みを握られるなんて。でも、よく今まで耐えてきたわね。よしよし」少女の頭を軽く撫でると少女は大粒の涙を流した。そして、弟も泣き出した。「まずい!
」そう思った私は会計を済ませて二人を外に出した。
分速は十メートルたまにゼロ。そんな歩き方をしながらとりあえず家を目指す。二人共ずっと泣いている。行きよりは遥かに家が遠い。これが相対性理論ってやつかな。ははは……
行きよりも十分以上経って家に着いた。「ほら、帰るよ。」泣き止んたが、目の下に涙の後がある弟の腕を引っ張る。家に入る時に少女に言った「世の中ってね悪い人ばかりだけど中には良い人もいるのよ。だからまた同じ様な事があった時のために良い人を見つけなさいね。それじゃあバイバイ。」
暫く私の方を見ていたが、くるりと帰っていった。
強い。あの少女はきっと強い。私は笑いながら家に入った。
──────
今、私は時速二百キロの乗り物に乗って弟に会いに行く。あれから、もう、二十五年も経つのか……と窓を眺めながら歳をとった現場に浸った。
少女を見送って家に入ってバックを見ると、あの少女の恥ずかしい写真が確かにいっぱいだった。私は弟が泣き止んだ後に色々聞こうと思ったが、馬鹿らしくなって辞めた。それから弟とは平生之好で仲良くしてる。それから、なんで弟にあんな事したのか聞いたら
、頬を照らして「好きだったから……」と一言呟いた
それから弟は真面目になり、地元で店を経営している
私は心理カウンセラーをやっている。だから、あの時の気持ちとか色々分かるけどそれは秘密にしとく。
乗り物は百五十、百とスピードを下げ、ゼロになった。降りる駅だ。降りなきゃ。と分速五ぐらいで乗り物を降りた。
でも、私はまだ、あの時忘れ物を届けなかった場合の出来事を知らない。街はちょっぴり変わっていて、
あの時のカフェがまだ有った。
あの席に座ってコーヒでも飲もうかな。私はまた速度を少しづつ上昇しながら歩いた。
原点に帰ってかなり前のシリーズ。