出会い
「ここ何処だ?」
意識が戻って、最初の一言目がこれだった。無理もない、辺りを見渡しても何もない砂漠地帯が広がっている。空気は乾燥し息苦しい。それに頭部にはわずかであるが痛みがあった。右手で触ってみると、やっぱりと言わんばかりの血がばったりとついていた。
「頭は痛いし、体はだるい。……でも、そんなことよりここまで来た記憶がない」
流血のせいではない。湊はぼんやりする記憶をたどって思い出そうとしたが、思い出す記憶自体がなかった。自分が体験した事、自分の身の事すべてが吹き飛んでいた。ただ、『四津上湊』という名前以外の事だけが綺麗さっぱり無くなっているだけだった。来ている服は、砂まみれになったボロイ毛布をくるんでいる状態で上は白のポロシャツで下はジーンズを穿いている。一目見て不審者だ、と自身でそのことを痛感しながら、重い体を起き上がらせる。砂に手を突くと、砂とは思えない固い感触がした。湊はそれが気になり、後ろを振り返る。そこには、湊の体躯の四倍はあるだろう、巨大な人型をした、そんな機械が横たわっている。
「なんだ……これは」
全身、金色の塗装が施され、頭部にある一本の頭剣は半分に折れ、至る所に傷が見受けられる。湊は、興味本位でそれに触れると人体でいうところの胸に当たる場所の装甲が半分に割れた。滑りが悪いのか、ギギギ、と金属同士が擦れる金属音を鳴らした。
「人だ。それも、女の子だ」
装甲が全開に開くと、大きなひし形のクリスタルがはめ込まれている。クリスタルは水のようなものに満たされ、その中に素っ裸の少女が胎児のように丸まり眠っていた。
「おい、大丈夫か! おい!」
クリスタルを叩いてみたり、大声で呼びかけたりしたが少女は目を覚まさない。しかし、口から気泡が出ていることから、生きているのは間違いない。少女の安否が確認でき、湊は胸をなでおろした。ほっ、とするのはいいが、それでも現状は変わらない。自分自身が何者で、目の前のものは何なのか。そして、目を覚ました時に、なぜこの場所にいたのか、考えるが答えは見つからず混乱は増していく。
「っくそ、考えてもラチがあかない。とにかく人だ。人を探そう」
じっとしていても意味がない。その考えにたどり着いた湊は、この砂漠地帯から抜け出すために行く先もわからないまま歩き始めた。足を進めるために砂に足跡を付けていく。後ろを振り返ると、ロボットは動いた気配はなく、先ほどと同じ形で横たわっている。ロボットを見つめながら、湊はクリスタルの中で眠っている少女の事を思い出していた。彼女の素性も自分が記憶喪失の時点で知ることができず、湊は煮え切らない様子だった。
砂漠地帯を抜けるのはいとも簡単だ。地平線の先に、煙が上がっているのが見えた。獣は火を使わない。火を使うのは生き物の中では人間だけである……そういう理屈から煙が上がる場所に向かった。そして、結果は大正解だ。
推測二十メートルある巨大な門があり、門の周りは外壁で守られている。門には誰も立っていなくて、しかも扉は開いたままだ。
「なんて不用心なんだ。それに、門の意味あるのか?」
そう言いつつも、湊はその門を潜った。すると、湊は目の前の光景におお、と思わず声を出していた。周りを見渡すと黄金色に輝く、まさに金でできた建物がいくつも建っていた。人が暮らしそうな民家から湊が立つ道の一部にもその輝きは使われていた。
そして、何より湊が驚かされたのは人の数だ。道行くところに大勢の人間。しかも、どこもかしこも、色合いのいい高級感ある着物を着た人ばかりだ。地面を擦るような着物を何重にも着重ねた女性や黄金でできた重々しい装飾品を装着している色黒の男など、湊の格好がとても質素に見えてくる。白のポロシャツに故意にダメージジーンスにしているかのようにボロボロになっているズボン。道行く人が必ず振り返り、湊の姿を不思議そうに見ていた。時に笑われ、時には心配そうな顔をされた。
「はは、確かにこの格好はないわな。まるで放浪者だ。ま、実際あんな場所にいたくらいだ。放浪者なんだろか……」
自嘲気味に湊は笑っていると、コソコソとした声が聞こえた。それは、向かい側にあるオープンテラスの食事処のようで、テーブル席に二人の若い男が食事をしながら湊の方を見て話している。馬鹿にしているのか、心配しているのか湊には分からないが、男たちが話す内容に興味がいった。
「アイツも大変そうだな。こんなご時世なのにあんなボロ雑巾みたいな姿」
「なにかわけありなんだろ。ほら、親が死んだとか職が見つからな……、いや、それはないか。まだ未成年なんだろぜ、職に就けないんだろう。せめて『戦闘貴族』出身ならそんな苦労もないだろうに」
かわいそうに、ともう一度言うと、手に持っているジョッキに入っている飲み物を飲みほした。
湊は男たちが言った言葉が気になり、近づいた。近づいてくるのに気づいた男たちは、自分たちが先ほど話したなことに対して失言したと思い、湊に謝ってきた。
「あんたが流れ者だと分かるが見るからに貧しそうだったから不思議に思ってつい口走ってしまった。あんたの事情がどうあれ、失礼なこと言って悪かった」
「別に、この格好見たら誰だって同じ事を思うし、言うだろ。それよりも、ここはどこなんだ? どこの国のなんていう場所だ?」
男たちは目を開いて驚いた。お前さん、どこから来たんだと尋ねられ、砂漠だと答えると一層男たちの目は大きく開いた。
「あんた、おかしいのか? シガノ砂漠を歩いてここまで来たのか、よく死なずにすんだな。まさか、この国がジパングということが知らないっていうことは、まさか不法侵入者か!」
「待て、顔つきから見たってジパング人のそれと同じだ」
「でもよ、国の名前を知らないような奴がジパング国民なわけないだろ」
記憶喪失なんだ、と言い争う男たちを見て湊は口にした。それを聞いた男たちの争うが止まった。
「だから、教えてほしい。貴方たちが話していたこと、この国のこと」
西暦1920年、ジパングは黄金の国、黄金が生まれる大国と呼ばれるようになった。土塊を掘れば金が見つかり、山を削れば金山に生まれ変わる。誰もが金銭に困らないくらい、そんな時代なので他国との交流が少なかった。交易がなく、平和に暮らせるのは金だけではない。ジパング中に流れる『魔素』というものも絡んでくる。
魔素は、知覚不能なそれは、未だ解明されていない不思議なもので、地上にある自然エネルギーのすべてを凌駕する力を持っている。ジパングに住む人は魔素を活用、苦労も知らない生活がさらにイージーになっていった。しかし、魔素は生態系に多大な影響を与え、動物は異形の形に姿を変え、暴れまわる。もちろん、人体にも大きな変化を与えた。
人間が生涯に送る生命活動を千年に変更させ、肉体的成長は二十歳で止まった。
「ま、俺たちこう見えてもう三百年は生きているけどな」
ジョッキに酒を注ぎながら男は自慢げに言った。
「お待たせしました。プリンアラモード・ノイズ風です」
店の中から店員が男二人の座るテーブルの上に奇妙な形の食べ物を置くと、店内に戻っていった。
「なんてタイミングが良いんだ。……少年、これが話に出てきたノイズだ。当たり前と思うが、これはただノイズの形を真似したものだがな」
「これがノイズなのか?」
「まあ、いろんな姿の奴が多いよ。こいつは、魔素が生まれた当初からジパング内のあらゆる場所で見つかった。地上の魔素を食うだけでは飽き足らず、体内にある魔素を宿す人間を喰う。今までに起きた被害はそれは壮大なものさ」
愚痴を混ぜつつ、二人はその食べ物にスプーンを突き刺した。
「でも、タダでやられるほど俺たち人間は優しくない。こんなふうにノイズを片付けるために力をつけ、組織をくみ上げた。今じゃ、戦闘貴族なんて言われたりしてるがな……」
「ノイズと同じくらいの巨大な戦闘兵器、金剛機っていうんだが、戦闘貴族はそれを使いノイズを倒しまくっているわけだ」
「魔素を手放すって選択肢はなかったのか」
「ああ、俺たちはすでに魔素を頼って生活している節があるからな。だから、全ノイズの消滅は悲願でもあるんだ」
「でも、魔素も酸素のように無限にあるわけじゃない。いつかは無くなるはずだ」
「それも考えた奴は多かったな。だがな、魔素の影響を受けた人類の中に唯一、体内で魔素を無限に生成できる一族が現れた。なんでも、一族全員が女性しかいなくて、『姫』と呼ばれてるよ。この国の象徴さ」
ほら、あそこを見てみろ、と男が遠くの方を指した。そこには、銀色の壁がそびえ立っていた。
「あれも姫の政策だ。あの壁は空気上に漂う魔素を外界に漏れないように閉じこめるようにできている。俺たちは未来永劫、死ぬこともなく、魔素が使い放題なんだぜ」
下品に笑いながら、男たちはプリンアラモードをスプーンで粉々にして口に運んでいた。この国の事を大体聞いたが、湊がなくした記憶は戻ることなかった。
ここにはもう用はないなと考えた湊は、ありがとう、とお礼を言いながら自分が目を覚ましたあの砂漠地帯に記憶に繋がるものがあるかもしれない、と湊はその考えに辿りついた。
「もう一度戻ってみようか……」
そう呟きながら、歩き始めた。
湊はシガノ砂漠をひたすら歩く。今日は雲もなく、砂漠には眩しい日差しが砂漠全体を照らしている。目指す場所はもちろん、最初に目が覚めた場所だ。先ほどの話で出てきた『金剛機』、もしかしたら目が覚めた時に一緒にあったガラクタが金剛機だったのかもしれない。そんな予感が頭から離れずにいた。
「もしかしたら、俺は戦闘貴族出身なのかもしれない。とにかく、自分の事が分かる唯一の手掛かりだ。早く行こう」
先ほどいた場所に戻り、改めてガラクタを覗きながら湊は独り言を言っていた。
「しかし、この子は何なんだ? このガラクタの一部なのか?」
コンコンと二回ほど叩くが、クリスタルの中の少女は目を開かない。
湊が少女の顔を見つめていると、生暖かい風が頬を撫でる。そのとき、微かだが風と一緒に鉄臭い匂いが鼻腔をくすぐった。
紛れもない、血の匂いだ。
湊がそう思ったとき、地面が大きく揺れた。その揺れは一回だけでなく、不規則に揺れる。しして、爆発音のような音も一緒に聞こえる。
「なんの音だ?」
その音は湊の背から聞こえる。後ろを振り返ると、芋虫のような形をした奇怪生物が砂煙を巻き上げながら湊の元に近づいてくる。その異形の姿は、湊の背筋を凍らせた。遠くから見ても分かる体躯の大きさ、鎌のような二本の前足がスキーのように地面に突き刺し、スパイクのような役割をしていて、走るスピードを上げていた。
「まさか、『ノイズ』なのか? だとしたら、狙いは俺か?」
ノイズは、魔素を食らって生きる生物。魔素を蓄えている人間からしたら単なる餌にしか見えないだろう。そう予見した湊は、その場でどうすればいいのか、あたふたしながら考えていた。
とにかく隠れないと、あれがどんなものかまだ分からないし、何をされるか分からない、という考えに至り、湊はその場に散乱しているガラクタの影に隠れる。揺れは激しさを増し、地響きも大きくなる一方、その音に比例して湊の震えも激しくなる。
「誰でもいい、助けてくれ」
なるべく声を噛み殺しながら、湊は助けを願った。もうすぐそばにいるノイズ。ガラクタの山を大きな鎌で薙ぎ払いながら、獲物である湊を探していた。だから、助けを呼ぶために表に出るわけにはいかなかった。
だが、微かにノイズが暴れる音に、空を大きな鳥が羽ばたくような音が混じっていた。そのことに怯える湊の耳には届いていなかった。
☆
『10、9、8……』
「はあ、はあ」
耳元にあるインカムからカウントダウンが進んでいくにつれ、薄暗く、若干の肌寒さがあるコックピットに荒い息遣いがある。操縦悍を握りしめる少女は、もうすぐ始まるであろう戦闘に怖
気づいている様子には見えない。
『大丈夫ですよ、姫さまなら必ずやれます。この日のために頑張ってきたじゃないですか。前装備、新品にしておきました。あとは、姫様が選挙活動をうまくやるだけです』
「わかっている、雷土の腕は信用している。ただ、久しぶりの選挙活動にワクワクしているだけだ」
『それにしても妙ですね。この区域に住むノイズが全て一点の場所に集まっています。……、ちょっと、衛星から映像を――ってなんでここに人間が!』
「どうした?」
これを見てください、という声の後に少女が座るコックピットの前にあるモニターに映像が映し出される。砂漠地帯には似合わない、黄金色の光を放つ金属製のガラクタ。その陰に、衣服がボロボロの少年が芋虫型のノイズから身を隠している。しかし、ノイズには意味はない。肉体から溢れだす魔素を感じ取れる器官がある。この少年はそれを分かっているのか、と少女はモニターの少年、四津上湊を見ながら思った。
「助けるぞ、雷土。フェニカスを発進させる」
『わかりました、カメラは任せておいてください』
インカムから通信が切れる音がした。次の瞬間、頭部に二本の優角を生やした真っ赤な機体、『フェニカス』を乗せたトレーラーの荷物台のハッチが開く。
『邪魔者はこちらで排除しますから、明日香様は彼の元へ』
「了解だ。フェニカス、行くぞ!」
少女……、緋鳥明日香の掛け声とともに機体はトレーラーから飛び出した。明日香は、握っていた操縦悍を力いっぱい握る。手から、魔素が溢れ機体全体に流れ込んでいく。フェニカスの目が怪しく光ると、背中部から炎のような翼が生える。それは、魔素でできた翼だ。
炎の羽を大きく羽ばたかせ、フェニカスは空を飛ぶ。まるで、ダンスを踊っているかのように舞っていた。
「しかし、この数は本当に異常だ」
モニターには、数多くの異形の姿。強大な体を激しく振り、ノイズたちは同じ方角に向かっている。
「この少年に、何があるのだろうか……。とにかく、まずは救うことが先決だ。いくら、隠れているとはいえ、見つかるのは時間の問題だ」
そう言いながら、明日香は操縦悍を前に倒す。フェニカスは、湊がいる方向に向けて飛んだ。
記憶喪失のせいだろうか、初めて見る異形の姿に湊は恐怖し、ガラクタの影で怯えるしかなかった。ここから出たら殺される、湊の心はそんな考えで一杯になっていた。
「頼む、誰でもいいから助けてくれ。ここで死ねない、自分がどんな奴なのか思い出すまで死ねない」
湊の切実な願いが叶った。先ほどまで暴れていたノイズの動きが止まった。何故動きが止まったのか、湊はノイズが暴れていた音が止んだ理由が知りたくて、ガラクタの影から顔を出して、覗いた。ノイズと同じ大きさ、目測で十メートルはある、人型の金属性のものが空から舞い降りた。
「あれが、金剛機。なんて大きさだ」
話通りなら、あの中には戦闘貴族が乗っているはずだ。湊はガラクタの影から飛び出すと、空を駆ける真っ赤な金剛機に向け手を振った。湊は助けに来たと思い込み、ノイズの事を忘れ必死に手を振り続けた。案の定、ノイズはガラクタから出てきた湊に向け、速度を上げた。しまった、と後悔しても遅い。二つの距離が三メートルまで差し掛かったところで、空を飛んでいた金剛機が炎の翼を羽ばたかせながら、砂漠の地に足を着けた。
金剛機の目が怪しく光ると迫ってくるノイズの巨体を片手一つで止めた。
『馬鹿者! 狙われているのが分からいのか! 君は安全な場所に隠れていろ、私が片付ける』
金剛機から女性の声が聞こえた。一理ある、と女性の声に従い元いた場所に引っ込んだが、じっと金剛機の様子を伺ったままだった。
ノイズは大きな鎌のような手を使い、金剛機に襲い掛かった。だが、金剛機は背中の翼から、無数の羽をノイズに向けて放つ。炎を纏った羽はノイズの体に穴を穿つと同時に傷口から徐々に火が体中に広がっていった。
「ぎしゃあああ」
ノイズは不気味な声を上げながら、体を真っ黒に焦がしていき、ついには力尽きて動かなくなった。屍と化したノイズから金剛機は手を退かし、湊が隠れているガラクタに駆け寄った。
『ノイズは片付けた。だが、まだ無数のノイズが君に向けて迫ってきてる! 今からコックピットを開放する、私の元に来い!』
湊には声の主の通りにするしかなかった。声の主が言った通り、地響きに似た振動音が耳に届き、先程の恐怖体験を思い出した。
湊はガラクタの影から飛び出す。そのタイミンで金剛機の胸がパカリと開く。そこから梯子が降ろされる。湊は梯子に近づいて、急いで登り始めた。ある程度上まで登ると、開いた胸の中から、サクラ柄の着物を着た少女が湊に手を差し伸べた。
「君の事情は分からない。どうした、まさか金剛機を使ったのにノイズに勝てなかったのか? 君はどこの家柄だ。あのガラクタに掘られている家紋は見たことのないのだが……」
「よくわからない。気が付いたらガラクタ(あれ)と一緒に砂漠の真ん中で転がっていた。そのせいか、記憶がなくなっている」
差し伸べられた手を握りながら、機体の中に入った。金剛機内は、よくわからない機材が明かりを灯しておる。金剛機の胸が湊が中に入ったと同時に扉が閉まった。
「それは悪いことを聞いた。それならあの怪物のことは分からないはずじゃ」
「ある程度の事なら街で教えてもらった。ほんと、なんでこんな荒れた国にいるんだ、俺は……」
「――私は緋鳥明日香。この金剛機、『フェニカス』のパイロットであり、朱雀家の当主でもある」
やはり、と少女の雰囲気、服装からとても高貴な家柄だなと湊は思っていたらその通りだった。
「俺は、四津上湊だ」
明日香は、湊の名前を聞くと、聞いたことないなだ、と呟いた。
「四津上という名は聞いたことないな。君を家に連れて帰るにも、名前が分からないんじゃ――。あ! すまない、記憶を無くしているにもかかわらず立ち入ったことを聞いてしまった。とにかく、ひとまずノイズを片付ける。君は私の後ろに座ってくれ」
明日香は、操縦席らしき座席に跨った。そして、少しだけ開いた空間に湊を座らせるように、座席を二回ほど叩いて誘った。湊は言われるがまま、明日香の後ろに座った。
「この力は……、なるほどノイズたちが必死に君を狙うわけだ」
一人でそう納得しながら、明日香は目の前のスクリーンに映る怪物たちを見据えた。
「とにかく、こいつらを一匹残さずにあの世に送ってやろう。舞え! フェニカス!」
操縦桿に備え付けられたボタンを何回も押す。フェニカスの背中部が開くと、そこから一本の剣が飛び出す。
宙に舞う剣の柄を握ると、ウジャウジャと集まるノイズの軍勢に向けて、振り下ろした。
剣の刃から炎の斬撃が飛び出し、ノイズの体を切断し燃やし尽くしていった。圧倒的な攻撃力に、ノイズの軍勢はなすすべなく、フェニカスの一撃で姿を消し去った。
「す、すごい。まさか、君が……」
湊が驚くのは無理ない。しかし、驚きの声を上げたのは操縦する明日香本人からだった。