プロローグ
「せんせ~。大好き~」
身長140センチメートル、小学4・5年生ぐらいであろう金髪碧眼の美少女が僕の胸に飛び込んできた。
ここはどこだ?そんなことを一瞬考えるが今は関係ない。なぜなら金髪碧眼の美少女が僕に抱きついているのだから。ここがマグマの中、だって太陽の中だって関係ないのだ。幼女、美少女が僕の全てなのだ。
「僕も大好きだよ」
そう言って僕は飛び込んできた美少女の背中に両腕をまわし抱きしめる。
「キスして~」
「はいはい。分かったよ」
子どもらしく、だが色っぽく可愛らしい仕草で唇を突き出してくる美少女の誘惑抗うこともせず、僕はその唇に自分の唇を近づける。
唇と唇が触れた瞬間金髪碧眼の美少女が両腕を僕の首に回し、抱きついた。
舌?僕の口内に美少女の舌が入ってきて歯や舌を舐めまわす。
「ん」
苺の味。先程まで飴を舐めていたのだろうか?いや違う。この美少女の唾液の味が苺味なのだ。
僕も負けずに美少女の口内に舌を入れた。
その瞬間。周りの景色が一変する。僕と美少女はどこまでも続いていそうなほど真っ白な空間にいたはずだ。だが今は、まるでコンサート場のステージの中央でスポットライトをあびて立っている。観客席には老 若男女。たくさんの人が設置されている席に座りながら僕達を見ている。
まずい。今僕は小学4・5年生ぐらいの金髪碧眼の美少女とキスをしているのだ。それもねっとりディープなものを。それを他人に見られたら・・・。
観客席からひそひそ声が聞こえてくる。
「あんな小さい女の子が」「可愛そうに」「脅されて無理やりやらされたんだろう」「これだから最近の若い者は」「警察に・・・」「ロリコンだわ」
無理やりじゃない。合意の上だ、たぶん。最近の若い者全員がこんなのじゃない。警察に通報するのは止めてくれ。確かに僕はロリコンだが。
唇は惜しいが警察に通報されるかもしれないので(もう手遅れだが)、離れてくれと美少女を引き離そうとするが、首にしがみついて抱きつき、唇も離さない。
そしてステージの上にはいつのまにか警官がいて、美少女を引き剥がそうとしている僕の両腕を押さつけ、銀色の手錠を俺の手首に近づけ・・・
「うわ――!」
僕は跳ね起きた。寝巻き全体が汗でびっしょりとぬれていて気持ちが悪い。
「はぁはぁ」
肩で息を整える。何だったのだ今の夢は。僕はぬれて気持ち悪い寝巻きを脱ぎながら夢を思い出す。小学4、5年生ぐらいの美少女唇、柔らかくて気持ちよかったな。唾液はバラの味。初めてのキスを美少女と出来るなんて・・・ってそうじゃない。僕は何を考えているのだ。
だが、本当に夢でよかった。初めてのキスを女の子(強調)にもらって欲しいけど、警察には捕まりたくない。
僕がこんな夢を見たのはたぶん浮かれていたからだと思う。高校生になった直後ロリコンこじらせた僕は、合法で少女に触れ合える職業を探した。幼稚(保育)園の先生でも良かったが、幼稚園じゃいささか年齢が低すぎる。だから僕は美少女と学校で触れ合える小学校の先生を目指すことに決めたのだ。
必死に勉強し、小学校教員養成課程のある大学に進学し、小学校で教える9科目全てにわたる教科専門科目と教職専門科目から構成される単位を修め、小学校教員免許を取得した。その後、私立の可愛い女の子の多いと言われている青柳学校の採用試験を受けられるように自分の持てる全てのコネを使った。
そのおかげで採用試験を受ける事ができ、少子化のために狭き門となってしまった教師職につくことが出来た。
そして今日は入学式である。新しい教師を生徒に紹介する日なので第一印象をよくしようと小学生に人気の髪形を選び、美容院で散髪してもらったのだ。そのため昨日の夜には興奮して寝付けなかったし、ずっと小学校の少女のことを考えていたからだ。
それはさておき、今日は待ちに待った入学式である。背広を着てネクタイを締め、鑑で自分の髪型を確認する。完璧だ。鞄を持ってアパートの自室を出て、自転車で学校に向かう。アパートは学校から徒歩十分。 自転車なら3分で行ける。家賃は結構高かったが、小学校で少女と触れ合えるのだから安いぐらいだ
学校につき、教員専用の駐車場の端に自転車を止める。そして教員専用の玄関扉の暗証番号を入力し、中に入る。下駄箱に入っている新品のうち履きに履き替え、外履きをしまう。
赤い廊下を歩き同じく赤い階段を上る。踊り場で黒髪ロングヘアの若い女教師に出会った。確か僕と同じ新教員だったはずだ。
「おはようございます」
「おはようございます」
にっこりと挨拶をすると、向こうも挨拶を返してくれる。僕は普通の女には興味は無いので、今挨拶を交わした女教師には何の感情も無い。ただ、お互い新教員同士頑張りましょうと思うだけだ。
そのまま階段をのぼり、2階の職員室に入る。
「おはようございます」
この学校の校長や教員の僕の印象は真面目で誠実な人柄のはずだ。これで少しは生徒にスキンシップをしても、変な感情は抱かれないだろう。僕は別にそんな少女を誘拐して、とか点数を上げてやるからゲへへへ、なんて事は思ってはいない。確かに少女を愛しているが、無理やりなんてことは絶対にしないし、犯罪になることも絶対にしない。ただ、少女と触れ合えればいいのだ。
「「「「おはよう(ございます)」」」」
まだ来ていない教員はいるが職員室にいる人全員に挨拶を返された。少なくともこの中には僕を悪く思っている人はいないはずだ。もし僕を悪く思う人がいれば分かる。僕は昔からそういう特殊な能力を持っているのだ。感情の色が見えるのだ。この特殊能力のおかげで昔から誰にも嫌われずたくさんの人に好かれ生きてこれた。そのコネのおかげでこの学校の教員になれたと言っても過言ではない。
まあ、特殊能力についてはまた機会があれば説明するとしよう。
自分の椅子に座り机に持っていた鞄を置く。ノートパソコンを起動させ、メモに書いてある自己紹介パターン一覧を見る。
「(おはようございます。皆さん。私の名前は大宮 大樹。大きいの大に宇都宮の宮。大きい樹木の樹と書きます。皆さんこれから一年間一緒に頑張っていきましょう)」
これが一番いいと思うのだが。なんか面白みがない気がする。だが真面目で誠実な印象を与えるにはこれがいいか。よし、これでいこう。
今日は授業をしないのでどんな内容にしようかと考えなくていいので気持ちが楽だ。
今日の予定は入学式で、生徒達に校長が僕達新教員を紹介し、どのクラスにどの先生がつくか発表した後、僕が担当するクラスの生徒達の元へ行き、与えられた教室に引っ張っていけばいいのだ。
その後僕が自己紹介をして生徒達に自己紹介をさせ、前期に使う教科書を配り名前を書かせ、その後明日の予定を書かせ、解散だ。
生徒達にどう思われるか分からないため緊張するが、僕には特殊な能力がある。少し変な感情を感じれば対処できるし、そのための臨機応変さは持っていると思うのだ。
その他あれこれ考えていると、白髪で六十過ぎの校長先生が入ってきた。どうやらもうすぐ入学式が始まるようだ。
僕達新教員は入学式の途中で校長先生の後について入場し生徒達が並んでいる中央を通ってステージへ上がるのだ。万が一にも間違える可能性は無いだろう。
元からいた教師達は入学式会場の体育館へ移動し、校長先生と新教師達は職員室に残る。今年の新教員はたったの3人である。僕と先程会った女教師、そして後1人他の学校から移動してきた40台の男の教師である。
職員室には校長先生を含めて4人しかいない。誰も喋らず沈黙している。少し体育館で喋っているであろう先生の声が聞こえるだけだ。
「緊張するかの?」
校長先生が口を開いた。どうやら何も喋らないのは緊張からだと思ったらしい。
「ええ、少し。大学で緊張と言う感情はほとんど無くなったと思ったのですが・・・」
「ほっほっほ。誰でも初めは緊張する。約40人のクラスの子らを受け持つのじゃからな」
「そうですよね。でも楽しみと言う感情もありますね。子どもの頃からの夢だったのですから」
「夢が叶うと言うのはいいことじゃろ」
「えぇ、凄く」
「ほっほっほっほ。おっと、そろそろ準備するかの」
どうやらもうすぐ出番のようだ。職員室を出て体育館へ向かう。
体育館の入り口に校長先生、僕、女教師、男教師の順番で並ぶ。
「では、新しい先生の紹介です。どうぞ」
入学式司会担当の先生の声で校長先生が体育館の扉を開け、中へ入る。
「パチパチパチパチ」
拍手が僕達を迎える。生徒達が左右に分かれて座っていて、その真ん中を歩いてステージへ向かう。ステージに登るために付けられた階段を上がり、設置されたイスに座る。
校長先生が司会の先生からマイクを受け取り、話し出す。
「皆さんおはようございます。」
「「「「おはようございます」」」」生徒達の元気のいい声が返ってくる。
「いい挨拶ですね。さて、新入生の皆さん緊張しているでしょうか?二年生の皆さん先輩になり後輩が出来ましたね。3年生の皆さん下級生の一番上になりました1、2年生を引っ張っていってくださいね。4年生の皆さん上級生の仲間入りで小学校生活の折り返し地点に来ましたねこれからも頑張ってください。5年生の皆さん。下級生を引っ張り6年生になるために一年間頑張りましょう。最後に6年生の皆さん。とうとう最上級生です。皆のお手本になるように頑張っていきましょう」
「では今年から新しくきた先生の紹介をします」
「大宮 大樹先生です」
僕は席から立ち上がり、一礼する。
「大宮先生は大学卒業後この学校の先生になることになりました。4年2組の担任です」
そう。僕は4年2組を受け持つことになった。男女の比率は6:4だ。
校長先生にも一礼してから席に座る。
その後校長先生が2人の新教師の紹介をし終えた。その後は自分の受け持つクラスの列に移動し、生徒達を引き連れ退場することになっている。
クラスは全ての年に2クラスずつで大体人数は四十人。小学校にしては多い方だ。
4年2組の列の前に移動し笑いかける。
6年生から順に退場し、次は僕のクラスの番だ。
「起立。回れ右。じゃぁ、ついてきてね」
そう言うと、生徒達の前を歩き体育館を退場し、そのまま三階にある4年2組の教室へと向かう。
階段を上り目の前にある教室に生徒達を先に入らせ、その後に僕が入る。
「席は黒板に書いてあるとおり番号順で座ってください」
昨日学校の会議の後書いておいたのだ。番号順と言うのは苗字の頭の文字であいうえお順になっているのだ。
皆が席につきみんなの顔を見渡す。結構たくさんの可愛い女の子がそろっている。当たりの年とクラスなのも知れない。だが1つ席が余っている。名前は確か青木 美崎だ。その子の3年生のときの担任に話は聞いていた。夏休み明けから学校に来なくなったらしい。吃音と言う障害を抱えていていじめられていたようだ。 これは助けないといけない。綺麗な女の子だそうだ。絶対に助けなければいけない。3年生の担任の先生に話を聞いて入学式ぐらいは来るかなと思ったがどうやら来なかったようだ。
「ではまず先生の自己紹介をします。先程の校長先生にも紹介されましたが大宮 大樹と言います。苗字は大きいの大に宇都宮の宮。名前は大きいの大に樹木の樹です。一年間よろしくお願いします」
少し考えていたのとは違うが、これはこれでいいだろう。今の所僕に悪い感情を持つ生徒はいない。
「では次に皆の名前を教えてください。一番からお願いします」
39人の自己紹介を終え、頭の中で可愛かった女の子の名前と顔をメモする。
「ありがとう。では、先生に対して何か質問はありますか?」
ここで無いと言われたら教師的な面でも女の子好き(ロリコン)な面でもショックは大きい。だがその心配は杞憂だったようだ。
「「「「はいはいは~い」」」」
一気に10人くらいの生徒が手を上げる。このクラスで2番目に可愛いと思った子が手を上げていたのでその子を当てる。
「では、では奥村さん」
「はい。先生に彼女はいますか?」
ふっ、僕にほれたのか?いけないね。火傷するよ。・・・冗談はさておきこれが小学4年生の発言なのだろうか。僕はもっとこう子どもっぽいことを聞くと思っていた。例えば年齢は?とか好きな食べ物は?とか。だが聞かれたものは仕方が無い。
「残念ながらいません」
君が僕の彼女になってくれるかい?・・・・・・え?
そう答えた直後奥村さんの感情の色が変わった。今見えるのは嬉しいである『黄色』だ。何故嬉しいのだろうか?彼女がいない僕をいじめる標的に出来ると思ったからか?それにしては悪い感情の『黒色』が見えない。
う~ん。なんでだろう。あ、つぎ当てなくちゃ。
「じゃぁ、次は太田君」
サッカーをやっていそうな雰囲気が出ている元気な男の子だ。
「先生はサッカーは得意ですか?」
ふふふ。実はこう見えて小学校からずっとサッカーをしていたのだよ。一年生から大学生まで。
「えぇ、小学校から大学までやっていましたよ」
「じゃぁ、つえーんだな。今度一緒にサッカーしようぜ」
太田君敬語なくなってるよ。
「そうですね。体育の授業や休み時間に一緒にしましょうか」
学校のクラブで監督をするのもいいかもしれないな。
「では、もう質問は終わりです。教科書やプリントを配るので手伝ってくれる人はいますか?」
そうクラスの子達に聞くと、10人ぐらいの子が教壇に集まってくれた。
9科目の教科書や資料集、ワーク、プリントを配り終え、教科書や資料集、ワークに名前を書かせる。その 後、明日の予定を黒板に書き、予定帳に写させる。
1、2時間目はクラスの仲を深めるためにレクリエーションをし、3、4時間目は総合で係り決めをする。そしてご飯を食べずに解散だ。持ち物は体操服と予定帳、筆記用具だけで十分だ。
「では終わりましょうか。起立。先生が礼と言うのでお辞儀をしてから皆で終わりますと言いましょう」
「では、礼!」
「「「「「終わります」」」」」
「はい。さようなら。気をつけて帰ってくださいね」
いっせいに後ろのロッカーへ行き、ランドセルを取って教科書や筆箱などを入れ早足で教室を出て行く。
帰り際に僕に挨拶してくる女の子達に挨拶を返しながら、全員帰るのを待つ。
「ふう。1日目が終わったな。じゃ、ちょっと早い家庭訪問といきますか」
行く家は青木さんの家だ。僕が担任になったからには女の子が楽しく過ごせるクラスにするのだ。もちろん男子もだが。
家の住所や電話番号が書いてある紙は手元にあるし、後は青木さん宅に連絡し、伺ってもいいか許可を得るだけだ。青木さんの教科書やプリントを持って職員室に帰る。
職員室に行き教科書やプリントを袋に入れ、教員一人一人の机に設置されている電話の受話器を取る。番号を押し、むこうが出るのを待つ。
「もしもし。青木です」
少し待った後、受話器がとる音がして、女の人の声が聞こえてきた。
「あ、こんにちは。私は青柳私立小学校学校の大宮と言いますが、えっと、美崎さんのお母様でよろしかったですか?」
「は、はい。もしかして美崎の担任の先生ですか?」
「はい。4年2組の担任になりました。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「それで、渡さなければいけない教科書やプリントがあるので、そちらに伺ってもよろしいでしょうか?」
「えっ!来てくださるのですか?」
「えぇ、美崎さんともお話がしたいですし・・・」
「ありがとうございます」
「いえいえ。学校からも近いですから。では5分後に伺います。では」
「はい。ありがとうございます」
受話器をおき一息つく。
青木さんの家はこの学校から歩いて5分くらいのところにあるのだ。僕は子どもの頃遠くてたくさん歩かなければいけなかったので、正直羨ましい。資料に手書きの家の場所までの行き方が書いてあるし、迷うことは無いだろう。
じゃあ、初めての家庭訪問。行きますかね。