クラブの世界 -1
~クラブの世界~
私が見たのは森だった。けれど光も差し込む気持ちの良い場所だった。私はなぜかその光を浴びてくらっと倒れた。どこからか声がする。
「**先生、人が倒れているよ」
子供の声がする。私が目をあけると、小学校に行くか行かないかわからないくらいの子供が6人ほどいた。そして、先生って言われてやってきた女性がいた。少しパーマがかかったショートヘアの可愛らしい女性。優しい感じがする人。ピンクのエプロンをして、エプロンの真ん中には白いウサギが書かれていた。ウサギは不思議と懐中時計をもっていた。なんかとなふわふわするカンジで私はこの女性をみていた。
「大丈夫ですか?あれ、***さんですよね?」
ピンクのエプロンの彼女はこう言ってきた。名前はやっぱり音にもなってくれなかったけれど、それは私の名前だってわかっていた。私も彼女が誰なのかがわかる。いや、会ったことはないけれど、彼女のイメージ通りだからわかるんだ。
「**先生、この人も一緒にご飯食べり?」
茶色のくるくるになった髪をした男の子が私を見つめてきた。ほっぺたがぷにぷにしていてカワイイ子だった。私はその子に向かって、
「一緒に食べたいから連れて行ってくれるかな?」
って、話しかけた。その子は笑顔で「聞いて、聞いて。ボク今日はニンジン食べたんだよ。えらい?」って、言ってきた。
私はその男の子の頭を撫でながら「えらいよ」って伝えた。その男の子と話していたらピンクのエプロンの彼女がこう言っていた。
「その子の面倒御願いしてもいいかしら?」
私はこくりと頷いてそれから、その男の子と手をつないで一緒に歩いていった。その先にあったのは、ピンク色で出来た小屋だった。
「はい、みんな。今日のご飯はクリームシチューだよ」
ピンクのエプロンの彼女がそういった。手をつないでいた男の子がすこし怪訝な表情になる。
「ボク、今日にんじん食べたからもう、食べなくていい?」
そう言ってきた。涙目でもう訴えてくるその表情に負けそうになったけれど、「ちゃんと食べなきゃダメだよ」って、伝えた。
クリームシチューを食べて、その男の子がにんじんを食べきるところを見続けていた。
「えらいね~」って頭をなでていたらその男の子は「**先生はケーキ大好きなんだよ。出てくるかな~」って、そわそわしだした。
ピンクのエプロンの彼女は手をたたきながらこう言ってきた。
「はい、ケーキは明日食べるから、もうみんな寝ましょうね~」
私もつかれていたせいか、いや出された布団が柔らかくてきもちよかったからかわからないけれど、すぐに寝てしまった。眠りに陥る瞬間に声を聞いた気がした。ああ、この声はチェシャのような気がする。私はそのまま眠りについてしまった。そう、眠りに。
目を覚ますとそこは森だった。私は一瞬何が起こったのかわからなかった。差し込む光が優しいことだけはわかった。どこからか声がする。
「**先生、人が倒れているよ」
子供の声がする。昨日にんじんを頑張って食べた男の子だ。そして、先生って言われてやってきた女性がいた。少しパーマがかかったショートヘアの可愛らしい女性。優しい感じがする人。これも昨日と同じだ。ピンクのエプロンをして、エプロンの真ん中には白いウサギが書かれていた。ウサギは不思議と懐中時計をもっていた。なんかとなふわふわするカンジで私はこの女性をみていた。
「大丈夫ですか?あれ、***さんですよね?」
まるで、昨日のことがなかったかのような状態。私はきょとんとしていた。
「**先生、この人も一緒にご飯食べり?」
私はまだ状況を飲みこめていなかった。けれど、男の子は続けて話してきた。
「聞いて、聞いて。ボク今日はニンジン食べたんだよ。えらい?」
まるで、私の返答なんかどうでもいいかのように物事が進んでいく。不思議な気分だった。
「その子の面倒御願いしてもいいかしら?」
そう、ピンクのエプロンの彼女に言われた。一瞬彼女の表情が曇ってみえた。いや、ひょっとしたらずっと曇っていたのかも知れない。
私はまるで決まっていたかのように男の子と手を繋ぎ、歩いていった。ピンク色で出来た小屋に。
「はい、みんな。今日のご飯はクリームシチューだよ」
ピンクのエプロンの彼女がそういった。手をつないでいた男の子がすこし怪訝な表情になる。
「ボク、今日にんじん食べたからもう、食べなくていい?」
まるで一緒。一体何が起きているんだろう。私はわからなかった。なにも言わなかったけれど、その男の子はにんじんを食べた。そして、こう言ってきた。
「**先生はケーキ大好きなんだよ。出てくるかな~」
そのあと、ピンクのエプロンの彼女は手をたたきながらこう言ってきた。
「はい、ケーキは明日食べるから、もうみんな寝ましょうね~」
全て一緒。しかも、私がここにいてもいなくても同じようにすすんでいく。不思議と少し前に眠ったはずなのに、明かりが消えると猛烈にねむくなってきた。そうだ、寝る前にチェシャが話しかけてきたんだ。私は周りが寝はじめる中、猛烈に睡魔がおそってくるけれど、頑張って起きていた。
周りが寝静まると私の影がくにゅって動いた。そして、そこからチェシャが出てきた。
チェシャは、前は紺のブレザーを着た女子高生だったが、今回はピンクのチャイナ服を着ていた。チャイナ服なのに、あいかわらず猫耳をつけていた。そして、右目は金色の髪で隠れている。
「アリス、大丈夫?」
チェシャは私に話してきた。私はチェシャに聞いた。
「ここは一体なんなの?昨日とおなじことが起きてる」
チェシャはこう言ってきた。
「アリスが現れたんだ。ホントならばキングもクイーンもジャックもお茶会に誘うんだ。でも、今はどの世界も何かがズレている。この世界を正せるのもアリスともう一人しかいない。アリスなら、この世界をもどせると思うよ。それもアリスにしか出来ない方法で。それに、もうすぐ来るんだ。『アイツ』が」
チェシャはそう言って扉の方を向いた。そこにある闇は一つに固まって何かの形になっていく。黒いフードをかぶった何かが現れた。黒いフードの奥には真っ白な骸骨が現れた。そして、手には大きな鎌をもっている。まるで死神みたいだ。
「僕らの『アリス』僕をつかって欲しいんだ」
チェシャはそう言って私の言葉を待っていた。私はコクリと頷いた。チャシャが満面の笑顔で私に抱きついてきた。
「では、行くよ」
そういうとチェシャの体はぐにゃってまがってナイフになった。いや、相手は鎌なのに、なんでこんな小さなナイフなのよ。私はもっと戦いに適したものになってくれると思っていた。チェシャが頭に直接話しかけてくる。
「まだ、アリスは何の力も身につけていないから。何もしてないから。だからこんなちっぽけな力しかもてないんだ。ゴメン」
チェシャを責めても何も始まらないそれに、その間も死神は鎌でなぎ払ってくる。不思議とこの部屋にいた子供たちもあのピンクのエプロンの彼女もいなくなっていた。私はとび跳ねながら逃げていた。しかたなく私はあの死神に向かってナイフを投げた。鎌ではじかれてナイフはどこかに飛んでいった。ごくりと私はつばを飲んだ。もう無理だ。鎌が私に向かってくる。
避けきれない。もう無理って思ったとき私は吹き飛ばされた。何かに。そして、気を失ってしまった。