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ダイアの世界 再 -1

~再びダイアの世界~


世界にどすんと落ちる。その感触がやってこなかった。黒い渦からはじき出された私はゆっくりと落ちていく。まるで水中にいるみたい。空気がぬめりと体にまとわりついてきた。気持ち悪い。私は目を開いた。世界は白黒の世界になっていた。どろりとした空気がまとわりついて体がゆっくりとしか動かない。自分の手を見ても灰色でしかなかった。服もポシェットも何もかも。私はゆっくりと動いているのに、地面に立つことも出来ずそのまま地面にたたきつけられた。衝撃はいつもと同じ。ただ、世界が白黒でゆっくりと流れていた。私は街並みを見ていた。遠くに『終わりの始まりの塔』が見える。あそこにチェシャが右目のチェシャがいる。私はゆっくりと足を動かした。でも、なかなか体が動いてくれない。まるで体が鉛で出来たみたいだった。重い。足を動かすのも辛い。私は一人街並みを歩いていた。声がした。聞き覚えのある声。私は耳を澄ました。


「アリス。順番を違えたアリス。人の話を素直に信じてしまったおバカなお嬢さんだ。ふはははは」


笑い声が聞こえた。振り向いたそこには黒い帽子を深く被った人物。帽子屋のそう、私は「ムーン」と名づけた彼がそこに居た。私はムーンに聞いた。


「一体ダイアの世界はどうしたっていうの?」


ムーンは話して来た。


「どうしたかだって?ただアリスが刻印を押さずに去っただけ。おかげでもっと狂っただけさ。刻印も押さず何も疑わずに塔なんかに登ったんだ。狂った世界ほど面白いものはない。いつも同じ世界だと飽きて死にそうだろう。アリスだって知っているはずだ。終わらない苦痛という時間を」


あいかわらず帽子屋のムーンが話すことは解るようで解らない。ムーンはさらに続けた。


「まあ、もうすぐ鐘もなる。あと少しだ。12時まで」


私はムーンの言葉にポシェットから銀の懐中時計を取り出した。時刻は11時を指していた。後1時間でシロウサギを見つけてあの『終わりの始まりの塔』になんて行けない。

私は泣きそうになった。

でも、時計を見ていると時間が動いていない。いや、一秒の間隔がおかしいのだ。秒針がゆっくり動いている。私は気がついた。体が重くなったのではない。今のダイアの世界は時間の流れが変わったんだ。でも、どうして。時計を見つめていたらムーンが話して来た。


「時間について聞きたいのなら時計屋にいけばいいさ。時計を扱っているんだ。時間くらい進めることも戻すことも出来るだろう。だって、ここはアリスのワンダーランドなんだからな」


私はムーンのセリフを聞いてあたりを見渡した。確かこの街には時計屋があった。私は時計屋の扉を開けた。そこには石になった人物が座っているだけだった。ムーンが話してくる。


「引きこもっているのかと思ったら、ダイアの世界に拒絶されたんだ。こんなダイアの世界今まで見たいことない。最高だよ。アリス。君はこんなに世界を狂わしてくれたんだ。拍手したいよ」


そういって、帽子屋ムーンはステッキで地面をたたき続けた。世界が揺れる。どうにかしなきゃ。私はこの世界を変えなかったから。でも、どうやって。私はそっと石になったその男性に触れた。温かい。脈打っている。生きているんだ。私はその男性の顔を良く見た。眼鏡をかけた渋い男性。理知的だけれど優しさを感じる。名前が降りてきた。『ライト』

どうしてなのか解らない。でも名前が思いついた。私が名前を呼んだその瞬間その人が石から変わっていく。声がした。チェシャの声だ。私は嬉しくなった。声はこう言っていた。


「アリスが名づけないと、その人はその世界に居られない。でも、存在も消えることも出来ない。だからアリスが世界に刻印を押す。その世界が存在していてもいいというね」


チェシャの声はすぐに消えていった。私はライトに聞いた。


「このダイアの世界を、時間の流れの変わった世界を戻すにはどうしたらいいの?」


ライトはこう言って来た。


「時の狭間」


それだけを言ってライトはまた固まりだした。名前だけじゃダメなんだ。私は気がついた。その時後ろに誰かの気配があった。そっと振り向く。時計屋の中に白いウサギのフードを被った男性がいた。「シロウサギ」だ。シロウサギは話して来た。


「まさか今回の『アリス』はここまで頑張るとはね。さあ、どうする。時の狭間に落ちてみるかい?」


シロウサギはキレイな顔を私に近づけてきた。吐息を感じる。目が大きく優しい顔。でも、表情はかわいくも見えて、攻撃的にも見えた。私はシロウサギに聞いた。


「あなたは一体何なの?」


私は解らなかった。私をこの世界に、このワンダーランドにつれてきた人物。私から名前を奪った人物。たまに現れてはすぐに消える人物。ナゾだった。敵ではない。でも、味方とも思えなかった。シロウサギは目を丸くさせてこういった。


「ここまで頑張ったアリスだ。答えてあげるよ。ただし質問は3つ。今の質問が1つ目でいいのかい?」


私は聞きたいことはいっぱいあった。私は聞いた。


「じゃあ、一つ目よ。なぜ私をワンダーランドにつれてきたの?」


シロウサギはくすっと笑ってこう言って来た。


「それは、君がアリスでそして、このワンダーランドを望んだからだよ」


答えとは思えなかった。でも、シロウサギが嘘をついているとも思えなかった。私はシロウサギに聞いた。


「じゃあ、二つ目よ。どうして名前を奪ったの?」


そう、私は不思議だった。どうして私から名前を奪ったのだろう。解らなかった。シロウサギはまた顔を近づけてきて笑ってこう言った。


「ここはワンダーランド。つまり不思議で愉快じゃないとダメなんだ。現実はいらない。不思議の世界。でも『アリス』から奪ったのは名前だけじゃないよ。気がついていないの?」


私はそのシロウサギのセリフに私が奪われたものが何かわからなかった。何を奪われたのか。気になる。でも、最後に聞くことは決めていた。私は深く息を吸い込んでシロウサギに聞いた。


「じゃあ、最後よ。『彼女』は一体誰?」


その時、世界に何か大きな音がした。私は時計屋を出て空を見た。黒く渦巻いている。

私を呼んでいるのが解る。シロウサギが話して来た。


「『彼女』が誰なのか。それは会ってみれば解る。アリスが一番知っていて、一番知らない人。それが『彼女』だ。では、質問の見返りを頂くよ」


そう言ってシロウサギは私の持っている銀の懐中時計を手に取った。裏を向ける。蓋をあけた。歯車がいっぱいだった。不思議と白黒の世界なのに、一つだけ赤い歯車があった。

その色だけが鮮やかに見えた。シロウサギはその歯車を取り出した。全ての歯車が動きを止まる。シロウサギが自分の懐から同じような銀の懐中時計を取り出した。蓋を開ける。そこには赤い歯車のある場所に何もなかった。私から取り出した歯車をそこに入れた。

シロウサギの懐中時計の歯車が動き出した。その時世界が変わった。白黒だった世界が一気にカラーに変わった。体の重い感じもなくなった。私は自分の手を見た。色はついていった。だが、どんどん私の体は透明になっていく。輪郭線もなくなって消えそうになる。

シロウサギがいう。


「この世界の、ダイアの世界のどこかに赤い歯車がある。『彼女』が私の時計から奪ったものだ。この懐中時計が時を止めたからダイアの世界も時が止まっていた。今はアリスの懐中時計からこの核となる歯車を抜いた。さあ、アリス。アリスの時が止まる前に赤い歯車を見つけ出しておいで」


私は消え行く体を見ながらシロウサギを睨んだ。シロウサギは笑ってこう言って来た。


「こうするしかダイアの世界は救えないよ。刻印は正しく押さないといけないのだから。それがアリスの使命でもあり、伝説の継承なのだから。それにこの意味はすぐにわかるはず」


アリスの継承。私はわからない事だらけだった。ただ、消え行く体は自由に世界を飛びまわれた。私は空高く飛び上がった。その時私は不思議な光景を見た。そう、帽子屋から飛び出している私がいる。チェシャもいる。そう、初めてこのダイアの世界に来た時と同じ。時が戻っている。刻印を押さないといけない。私は私がこの世界、そうダイアの世界を離れる前に刻印を押さないといけないことが解った。けれど私自身探さないといけないものがある。あたりを見渡す。数ミリの歯車。この広い世界のどこにあるのだろう。私は考えていた。時の狭間。なぜ狭間なのか。私は見渡していた。街並み、森、湖。丸い湖は時計みたいに見えた。湖に向かってみる。そこに映っているのは終わりの始まりの塔だった。太陽の光が影を映す。湖映る塔と影が重なってみる。まるで12時を刺しているかのようだ。時の狭間。何の狭間なんだろう。日付の変わる瞬間。私は影がと塔の重なりを見ていた。まるで12時を刺しているみたい。もし、歯車として存在するのならばその針の中心。私は湖に降り立った。湖の中心。塔と影が重なり合う瞬間。そこに赤い歯車は現れた。私は赤い歯車を手に取った。瞬間、体が強い力で引っ張られる。気がついたら私は時計屋に居た。手に赤い歯車を持って。シロウサギが笑って言って来た。


「おかえり、アリス」


その笑顔がシロウサギの笑顔がキレイすぎたから私はつられて笑ってしまった。私は歯車と銀の懐中時計をそのままポシェットに入れた。


それから私は町中の人に名前をつけていった。皆、石になっていた。名前をつけると石じゃなくなり元に戻っていっている。急がなきゃ。チェシャに会うために。まだ今ならチェシャが傷つく前に間に合うかも知れない。私は一生懸命走った。血だらけのチェシャは見たくない。赤く染まった剣も盾もいらない。もうチェシャを傷つけたくないもの。塔の近くに来た。そこに一人の女性が立っていた。アヤだった。


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