ハートの世界 再 -1
~再びハートの世界~
どすんと降り立った私。毎回この瞬間は目が回って大変。森の小道だ。遠くに街が見える。
「あ、アリスじゃない。どうしたの?」
そう言って声をかけてきたのは茶色の髪は肩までで、丸く大きな目。笑顔が素敵なそう、萌えな彼女、ミクだ。水色を基調とした服に白いフリフリがついているワンピースを着てそこにいた。
「お久しぶり、ミク」
私はそう言った。ミクは私のカッコをみて言って来た。
「アリス、良かったら私の家に来ない。私の服で良かったら着て欲しいな」
私は自分の姿を見た。服は白だったワンピースはチェシャの血によって赤黒くなっていた。走り回っていたせいか泥だらけの髪。私はリリィがくれたポシェットに入れた銀の懐中時計を出した。ポシェットには不思議といつもチョコレートが入っていた。食べてもなくならないから不思議だった。温かさを感じた。いつでもリリィが近くにいるみたい。
私はちょっと笑顔になって時計を見た。時刻は5時を指していた。あのキングの庭園を出て2時間が経っている。ミクが話しかけてきた。
「もし急ぎなら呼び止めないけれど、どうするアリス?」
私はこくりと頷いた。そして、これだけは伝えた。
「このワンピースは、捨てないでね。私の思い出がいっぱいだから」
私はそれだけを伝えてミクの家に向かった。
久々に浴びるシャワーは気持ちよかった。どれくらい私はこの『ワンダーランド』にいるんだろう。
考えたこともなかった。長くそれこそもう何週間もいるような気持ちにもなる。けれど、ついさっきチェシャに名前をつけたかのような気にもなる。私は体を洗ってミクが用意してくれた服を着た。ミクが用意してくれた服は白を基調として水色のフリルがついたワンピースだった。ミクが話してくる。
「なんだか、つい同じような服を買っちゃうんだよね」
その気持ちはわかった。そういえば、私も気がついたら色違いや、ちょっとだけ形が違う服を買ってしまうことがある。私はチェシャがはかせてくれた赤いくつ、赤いリボン、そしてイアリングをした。着替え終わって、ミクをみたらミクも同じように赤いリボンをつけていた。ミクが話しかけてくる。
「ねえ、こうやって見たら私たち双子みたいじゃない?」
ミクは背丈も似ている。見間違える感じじゃないけれど、雰囲気が似ていると思った。
そう思うとなぜだか私に妹が出来たみたいに思えた。私はミクに笑いかけならが話した。
「ホント、双子みたい。魂のね。どこかで思いが繋がっているのかも。私もミクも」
私はそう言ってミクの部屋の壁にかかっている時計を見た。6時半をさしている。私は自分の銀の懐中時計をみる。懐中時計の時間は6時。ひょっとして、この懐中時計は壊れているのでは。私は怖さを感じた。私は多分この世界で会わなきゃいけない人物は想像がついていた。
「赤の女王」
ダイアの世界にはいなかった。右目のチェシャの、右目の渦に引き寄せられて赤の女王は赤の世界に飛ばされていた。ダイアの世界にいると思っていたがそこにいたのはジャックの心だった。ならば、赤の世界。そう、このハートの世界に『赤の女王』はいるはずだ。
私はミクに聞いてみた。
「ミク、このハートの世界に今『赤の女王』はいるの?」
私の問いかけにミクの表情はどんどん曇っていくのが解った。なんとも言えない空気。
ミクは重い口を開いてくれた。ゆっくりと。
「アリス。確かにこのハートの世界は女王が、クイーンが治めている。いや、治めていたが正解かも知れない。そう、私たちが開放された後にやってきてクイーンは別人だった。容姿は前のままのクイーンだけれど、何もかもが違っていた。アリス。赤の女王はあのお城にいるわよ。たぶん、会えると思う。すぐに」
そう言って、窓から丘にある城をさしてくれた。そこは、私がハートの世界で見た不思議な絵、あの絵が置かれていた場所にお城はあった。ミクが続けて話してくる。
「もしかしたら、アリスならクイーンを前のような慈愛に、そして威厳あるクイーンに戻してくれるかも知れない。私も一緒に行きたいけれど・・・」
そう言ってミクは困った表情をした。解っている。これは私がやらないといけないこと。
私はミクに伝えた。
「ミク、その気持ちだけでうれしいよ。ありがとうね。私は大丈夫。私は一人じゃないから」
私はそう言った。目を閉じればチェシャのぬくもりも感じられる。体は傍にいないけれど、心はすごく身近に感じられる。それに、ポシェットを見るとリリィも助けてくれるように思える。この服を見たらミクが守ってくれているように感じられる。
私はそう言って、ミクの手を力いっぱい抱きしめた。私はミクに伝えた。
「行ってくるね。ありがとう」
私は丘にある城に向かった。




