18話 もう一度聞こう・・・どうしてこうなった?
「イーサが悪いんだ、イーサが悪いんだ」
呪音を呟きながら部屋に籠ること3日がたちました
どーも皆様、現在ひきこもりニートのアキラです。
前回、S級魔獣のフリーズドラゴンとバトルしましたが、実はそのドラゴン、ナルとルカの幼なじみでした。
何故二人の幼なじみとバトルすることになったか?
寝ぼけてたんだよ!
寝ぼけて遠出って何?
夢遊病か?あれが有名な夢遊病なのか?
・・・すいません、取り乱しました。
兎に角、そのドラゴン、いやイーサのせいでランクアップは失敗、そのショックでひきこもりをすることになりましたが、4日目の朝にアルメア達が部屋に飛び込んで来ました。
「アキラ様!急いで起きてください、早く」
俺が丸まっているベットの毛布を引っ張るアルメア達、何を焦っているんだか?
「嫌だ!俺は心の傷が癒えて無いんだ、ほっといてくれ。」
この4日、この言葉で引き下がるアルメア達が今日は違った。
「そうは参りません、聞いて下さい・・・アキラ様はギルドのランクが上がります。」
その言葉を聞いた瞬間、アキラの中の何かが覚醒した。
「なぁ~にぃ~!」
毛布を一気に跳ね上げる。『きゃあ!』っと毛布を引っ張っていたアルメア達が転ぶ、ナルとルカ、欠伸をしながら立ち上がる。アキラ服を脱ぐ、アルメア達が目を手で隠す(勿論、指の隙間からアキラの全裸を覗く)、桶に水を出し顔を洗って濡らしたタオルで体をふく、新品の服を着て準備完了!
準備完了までの所要時間は・・・1時間
・・・ながいわ!っと言う皆様の心の声は拒否しますので悪しからず。
「よし!ギルドに行こう、今すぐ行こう!」
この4日間が嘘の様な覇気を体から発しているアキラ、そんなアキラを見ていたアルメア達は、
「わかりました、今から行きましょう」
笑顔でアキラと部屋を出ようとする。
「そう言えば・・・さっき俺の着替えを指の隙間から覗いてたな♪」
アキラはニヤニヤしながらアルメア達を見る、
「「「「あの、その」」」」
4人は、頬を赤く染めしどろもどろになる。
「今度、アルメア達の裸が見たいなぁ」
アキラからの爆弾投下に、更に顔を赤く染めるアルメア達、
「機会があれば良いですよぉ~」
メルの爆弾投下上乗せに、
「「「私達も機会があれば!」」」
もじもじするアルメア、妹に対向するメイ、何にも考えてないメル、空気を読み姉とアルメアに合わせるメラ、興奮してしまった自分を恥ずかしいと思い、笑いを取ろうとしたアキラ・・・失敗だ
部屋の中は何とも言えない空気に満ちている。
色で例えるならば・・・グレー?
この空気の色に関するご意見を御待ちしております
「ねえ?ギルドに行かなくて良いの?」
そんな空気をぶった切ってくれたのはナルだった。
「そうですね、早くギルドに行きましょう」
アルメアも再起動、
「そうだな、早く行こう」
俺も再起動、
皆無事に再起動?をはたし階段を下りると、一階の空気は冷えきっており、その一階に繋がる階段の下にはジーナさんが仁王立ちしていた。
「やっと起きてきたか、後1日引きこもる様なら私が叩き起こしてやったのに」
顔は笑っている、確かに笑っているんだ、だが何だろうか?ジーナさんの後ろに・・・きっと幻覚だ、
「アキラ様・・・ジーナさんの後ろに」
「言うな、アルメア、それはきっと幻覚だ」
アルメア達にも見えているんだろうか?
ジーナさんの後ろに立つ三つの顔に六本の腕を持つ鬼神が、
俺とアルメア達が怯えていると、鬼神は消え去りいつものジーナさんが立っていた。
「まあ、今回はランクアップも無事にできたからこれくらいで許して上げる。」
元の?ジーナさんに戻り、笑顔で俺を送り出してくれた。
「あれはいったい何だったのでしょう?」
森のサムソン亭を出て少し歩いたところでアルメアが話しかけてきた。
「私も生きた心地がしなかったわ」
体をブルッと震わすナル、
「うん、一瞬死を覚悟した・・・アキラ、二度とジーナさんを怒らせたらダメ」
ルカも尻尾が地面に着くほど垂れ下がり怯えている
「あんだけのオーラを放てる人が、何で宿屋の女将なんだ?ギリムのおっさんなら何かしってるかもな、聞いてみるか?」
俺の提案に全員頷いた。
そんな会話をしながら歩いていると、回りの目線がおかしい?
「ほら、アイツだよ!」
すれ違う冒険者パーティーの声が聞こえ、
「嘘だろ?あんなひょろい奴が?」
ガチムキの体に鎧を纏ったオッサン達がビックリし、
「可愛い顔してるのに・・・残念だわ」
女性冒険者のパーティーからは・・・ちょっと
待て、どういう意味だそれ?
ともかく冒険者達からの視線が刺さる、アルメア達はそんな中、胸を張り誇らしげに歩いてる。
「アルメア、冒険者の人達の視線が刺さるんだけど理由を教えてくれないか?」
アルメアに教えて貰おうとするが、笑顔で、
「ギルドに着くまで秘密です!」
笑顔で交わされてしまった。メイ、メル、メラに聞いても、
「「「秘密です!」」」
笑顔で断られてしまった。
「まあ、ギルドに行けばわかるか」
俺は諦めてギルドに向かう。
数分でギルドに到着し、中に入ると酒場で酒を飲んでいた者、受付で依頼を受けようとする者、依頼の報告に来ていた者全てが入ってきたアキラに注目し静まる事数秒、
「「「『雷神』だぁ~『雷神』が来たぞぉ~」」」
ハアッ?『雷神』ってなんだよ?
ちんぷんかんぷんな俺は、話を聞こうと受付に歩き始めると、
「「「ヒィィィィ殺される」」」
俺がギルドの入口から離れた途端に、全員がギルドから飛び出していった。
「エェ~~!」
その様子を呆気に取られて見ている俺を、クスクスとアルメア達とローザさんが笑っていた。
「あの~ローザさん?この状況の理由を教えてもらえませんかね?」
「それはワシから説明する!」
声がした方を見るとチッサイオッサンがいた。
「誰がチッサイオッサンじゃ!」
うお!心を読まれた。
「アキラ様、声に出てましたよ」
笑顔が可愛いアルメアが優しく教えてくれた。
「アキラ君、また声に出てる」
ローザさんは我慢できなくなったのか大笑いし始めた。
アルメアの顔は勿論、真っ赤になっていた。
「ラブコメやっとらんで説明してやるから上がってこい、ローザ!いつまでも笑っとらんで仕事をせんか!」
ギリムはローザに渇を入れてから、ギルドマスターの部屋へ歩き始めると、慌ててアキラ達はついていく。
「ここがワシの執務室じゃ、入れ」
部屋に入ると3人が同時に座れる皮張りのソファーが二つあり間には長机、その奥には仕事机とギリムの体格に合わない大きな椅子、そこに座るギリムを想像し少し笑う、ギリムに睨まれたので笑いを頑張っておさめる。ちなみに仕事机の後ろには本棚が並び、中には本と依頼の羊皮紙がところ狭しと並んでいた。
「さっさと座れ小僧、今酒を入れてやる」
「いや、お茶じゃ無いのかよ」
「うるさい!酒でも飲まんと説明なんかやってられるか!」
いやいや仕事中に酒かよっと言い合っているとアルメアがボソッと、
「奥様に言いつけますよ」
その次の瞬間には部屋の扉を開け、大声でお茶を用意させていた。
「さて、今回のお前のランクアップじゃがな」
何事も無かったかのように俺達をソファーに座らせ自分は仕事机に座り話を始めた。
「アキラ、お前のギルドランクは・・・Sランクに上がる」
えっ?
「ゴメン、オッサン今何て言った?耳になんか詰まってたみたいだ、もう一度たのむ」
「じゃからお前のギルドランクはSランクじゃと言ったのじゃ」
耳をかっぽじったから聞き間違いじゃないな、
「エッSランク!何でだや、俺はこの前の依頼失敗してFランクのままだったんずら、説明を要求しもうす」
急なランクアップにパニクる俺は、色んな方言が混じった話し方になった。
「落ち着かんか、それを今から説明すると言っとるじゃろうが」
ランクアップの理由はこうだ。
あの日、俺以外にもEランクへのランクアップ依頼を受けていた奴が5人いた。
ランクアップ依頼は全く同じもので、ランクアップを目指す全員が同じ日に受ける。
あの日、ドラゴンの咆哮が森と街に響いた。
コトスの森側の見張りをしていた者がフリーズドラゴンを発見、即王宮へ連絡、非常事態になり近衛騎士団、騎士団、魔法兵団、歩兵団の準備が大急ぎで行われたがフリーズドラゴンは一向に街や城に近づかない、それどころかその場に留まり何かと戦っていた。
(それ、俺だな)
話を聞きながら核心した。イーサとの戦い?を見られていたのだ。まあ、街から直ぐの森だったし派手にやり合えば見えるよな。
その戦いの中、一筋の雷光が走り見張り達は目をやられた。
見張り達の視力が回復が回復したとき、フリーズドラゴンは北へ飛び去っていった。
その数時間後、俺がアルメア達に連れられて帰って来たのを見張りの兵士達が見ていた為、フリーズドラゴンを撃退したのはアキラと言うことになった。
他の冒険者はドラゴンの咆哮の後、直ぐ様街に逃げ込んだらしい。
成る程な、イーサとの事がそんな勘違いを生んでるのか、
「それでアキラ、お前を飛び級させSランクにする事になったわけだがな、依存あるまい。」
(全然違うんだが、勘違いをしてくれてるならそれでいっか!)
アキラは軽く考え、二つ返事で承けた。
「ちなみに、二つ名だが雷の魔法から取って『雷神』にした!良い二つ名じゃろ?」
ここでアキラは1つの疑問が浮かぶ、
「なあギリムのオッサン、俺の二つ名の『雷神』はどこの国の言葉だ?」
雷神、俺の前にいた世界の神様の名前、
「メルの『魔弾』やメラの『金獅子』ならわかるが、アルメアの『白夜叉』やメイの『紅姫』そして俺の
『雷神』はこの国の言葉では無いだろ?どこの国の言葉なんだ?」
アキラの質問に、ギリムは少し笑いながら答える
「フム、確かにメルとメラの二つ名はこの国の言葉じゃ。だが、アキラ、アルメア、メイ、この3人の二つ名は数百年前に滅びた東の大国、ヤポングと言う国の言葉じゃ」
アキラ少し驚いた、こちらの世界に昔日本に似た国があったようだ。
「その国は完全に滅びたのか?」
アキラの更なる疑問にギリムは、
「そうじゃ、国は滅びた・・・だが人は滅びておらん。」
「どこかに生き残りの子孫がいるのか?」
アキラの変わった顔色に驚くギリム、
「いるぞ、しかもお前はそいつに会っとる。」
アキラの頭に浮かんだのはジーナさんだったがまさかな、
「まさか、ジーナさんとか言わないよな?」
「その通りじゃが何故じゃ?」
アキラは何かガッカリした。
「そっか、ジーナさんか話聞けるかな?」
「何故じゃ?まさかお前もヤポングの生き残りの子孫か?」
「俺は違う、ただその国に興味がわいてきたから調べてみるよ」
アキラ達は立ち上がり部屋を出ようとするが、もう一つの疑問を聞いてみた。
「なあ、ギリムのオッサンはジーナさんが怒ったら浮き出てくる三つの顔と六本の腕を持つ鬼神を見たことあるか?」
それを聞いた途端、ギリムは俺に飛び掛かり口を押さえつけ自分の人差し指を口に当てる。
そして、回りを確認した後アキラの口から手を離す
「アキラ、森のサムソン亭で見たことは忘れろ、誰にも聞くな誰にも話すな、良いなこれはワシからの大切な忠告だ」
ギリムの必死の顔に押さえつけられた怒りは消え去り静かに頷く事しかできなかった。
「この王都アルムの街の暗黙の了解の言葉を教えてやる」
ギリムは俺の耳に小さくその言葉を教えた。
『アルムの街に住む鬼神には逆らうな!』
俺達はその言葉を胸に刻みギルドマスターの部屋を出た。階段を下りながら、
「そんな暗黙の了解が有るなんて知らなかった、これからは気を付けよう。」
「そうですね、私達も気を付けます。」
4人も頷きナルとルカも静かに頷く。
ジーナさん、本当に何者なんだ?
考えながらギルドを出た時
トン!
何かが腹の所にぶつかり痛みが走る。
腹の部分は真っ赤に染まり、今なお赤いものが腹から流れている。
膝をつくアキラ、何が起きたか理解できないアルメア達とナルとルカ、アキラの目の前には両手で持った一本のナイフを血で染め、憎しみのこもった目でアキラを見る少年がいた。
「父さんのカタキだ・・・死ね、『雷神』」
少年の言葉に、何を言われたのかわからないアキラはその場に倒れた。
もう一度聞こう・・・・どうしてこうなった?
感想と誤字脱字の指摘をお願いします。
途中のアキラ達の空気の色も募集します。




