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風呂

潮風が揺らす船体。旅の二日目、船はゆっくりと波間を進んでいた。


加賀谷は廊下の手すりにしがみつきながら、どうにか足を前に出す。


「うぅ……これはマジで無理だ……酔い止め……効いてるのかコレ……」


顔は真っ青、額には汗。揺れる視界の中で見つけたのは、《風呂》と書かれた案内板。


「……風呂、入って、スッキリすれば……なんとか……」


ろれつも怪しいまま、ふらふらと暖簾をくぐる。目に入ったのは「男湯」の看板。だがその下には、かすれた文字で「※19:00以降は女性専用」とあった。


今は――19時10分。


もちろん、そんな注意書きは加賀谷の脳に届かない。脱衣所にたどり着く頃には、彼の思考は「熱い湯に浸かりたい」一点だった。


服を脱ぎ、ふらふらと浴場へ。湯気が立ち上る風呂に、彼は一歩ずつ近づき、そして――


「――っくぅ~~~!生き返る……!」


半分沈んだ意識の中、加賀谷は風呂の縁に頭を預け、天井を見上げる。波の音と湯の音。ゆるやかな、静寂。


その静寂を、破ったのは扉の音だった。


ガラガラと音を立て開く音、それと同時に聞き覚えの声が響いた。


「わぁ、大きいです!」


目を輝かせて風呂に入ってきたのは、まだ幼さ残るティアと


「ふーん、船上のお風呂っていうから期待していなかったけれど、中々良いわね」


真っ白できめ細かな肌、スレンダーの中にもしっかりと実った二つの果実を携えたミレイの声だった。


(…は? なんで? ここ男湯のはずだぞ!)


咄嗟に加賀谷は物陰に隠れる。


(まずいまずいまずいまずい! これはまずい! ど、どうすれば良い?)


加賀谷は、必死に何かこの状況を打破できるスキルを探すが、何も発動しない。


「ミレイお姉ちゃん、おっきいねー! 私も将来ミレイお姉ちゃんみたいになりたいな!」

「あら、ティアだってすぐ大きくなれるわよ」


ミレイとティアは洗面台にて、体を洗いながら楽しそうに話しをしている。

加賀谷は一歩も動けずにいた。少しでも音を立ててしまったらお終いであることを

本能で感じていた。


 ―――しばらくして


同じ湯舟に入るミレイとティア、そして加賀谷。

加賀谷は、湯舟の中にある柱の陰に隠れて微動だにしなかった。

その甲斐あってか


「ティア、そろそろ出ましょう」

「うん!」


加賀谷は、その言葉を聞いて安堵する。


「あ、そうそう。先に出ててティア。私、や ら な け れ ば な ら な い ことあるから」

「…? はーい」


そう言って、ティアだけが風呂場から出て行った。

そして――


「何をしているのですか? か・が・や・さ・ん?」


加賀谷の背後から殺気立った声。加賀谷は恐る恐る後ろを振り返ると

そこには、鬼の形相をしてタオルで体を隠したミレイが立っていた。


「あ、いや、違うんだミレイ。これはだな、誤解であって…」

「…誤解、ねぇ? 女湯に入るのにどんな誤解があるのかしら?」


加賀谷は、言い訳、いや真実をどう話そうかを考えながらもタオルで隠しているとはいえ

目の前に立つミレイの姿に流血しそうになるのを抑えていた。

しばらくの沈黙の間のあと、加賀谷は気付く。

(スキル真言強制しんげんきょうせいを発動!)


加賀谷の発する言葉が本能で真実だと伝わるスキル。

加賀谷はこのスキルにすべてを賭けた。


「ミレイ! 俺が入るときは確かに男湯だったんだ! 本当だ! 信じてくれ!」


加賀谷の言葉がミレイの中にすんなりと入ってくる。


「…そうだったの。何か手違いがあったのかもしれないわね。わかったわよ。信じるわ」

「あ、ありがとう」


加賀谷はこの時、スキルのありがたみを心の底から実感した。


「じゃー私も出るわね」

「お、おう」


 ミレイは一歩足を踏み出した。が、そこには石鹸が。


「きゃっ!」

「…え?」


 ミレイは石鹸に足を囚われ、そのまま背中から加賀谷に向かって倒れこむ。

タオルが宙を舞う。


 むにっ!


 加賀谷の前身全体に柔らかな感触が伝わる。ミレイを咄嗟に助けようと両手を出して掴んだ先には

二つの大きな果実があった。


「なっ! な、な、な……」


 ミレイは加賀谷にもたれ掛かるような形で顔を真っ赤にして、加賀谷の両手を見つめたあと


「ば、ばかぁっ!」


 バチンっ! と大きな平手打ちが加賀谷の頬を貫いたのだった。それと同時に加賀谷の中で何かが弾け飛んだ。


むにむにっ!


 加賀谷の手は果実を離さずに揉み続ける。


「ちょっと! な、なにしてんの、は、離しなさい。んっ‥‥」


 加賀谷はすべすべで柔らかく手に吸い付いてくるようなそれから手を離すことができなくなっていた。

密着した状態で2人きりの状況。この状況で冷静にいろと言う方が無理な話だ。


「はぁ‥はぁ‥ごめん、ミレイ。俺、なんか変だ」


 加賀谷の息が荒くなってくる。揉む手は動きをやめず、その頂にある小さな桃色の領域に優しく触れる。


「んっ‥! だ、ダメだってば! へ、変態っ!」


 そう言いながらもミレイはその場から離れることが出来ないでいた。

 加賀谷のそれは熱くなり、はがねの如く硬くそそり立つ。それがミレイの桃に密着する形で脈打つ。


「ば、ばかぁっ‥」


ミレイは擦り切れるような小さな声で言う。

普段の凛とした姿からは想像出来ないような甘い声だった。それがより一層加賀谷を奮い立たせた。


「ミレイ‥こっち向いてくれないか」

「‥‥」


ミレイは無言で加賀谷に向き直った。

ミレイの全身をじっと見る加賀谷。あまりにも美しいその姿に頭がクラクラするのを覚える。

ミレイの真っ白な肌が、潤ませている瞳が、張りのある2つのそれが加賀谷をおかしくしていく。

加賀谷はミレイの肩なら両手を置いて唇を重ねた。


「‥!」


ミレイの目が見開かれる。それはミレイにとって初めてのキスだった。甘く切ない味がする。

なぜかミレイの瞳から一筋の涙が流れた。

加賀谷はそこから、更に‥


「ひゃうっ!」


ミレイの中に侵入するそれに驚きの声をあげる。

あまりにもディープで、ミレイはキスがロマンチックなものではなく、頭をバカにさせるものだと感じた。


もう加賀谷にもミレイにも気持ちよくなることしか頭になかった。


何度も唇を重ね、それを絡ませる。

頭に電気が走る。たまらず、加賀谷はミレイを抱きしめる。

密着度MAX。


「ミレイ…やわらかいな」

「ば、ばか…」


 ミレイの顔は真っ赤に染まる。


「もうダメだ俺、ほら」


 加賀谷の加賀谷が大きく脈打っていた。それを見たミレイは、自然と手を伸ばし握る。


「うおっ!」

「…え?」


 白く輝く物が勢いよく飛び出し、ミレイの顔にかかる。


「……すごい、これが…」


 初めて見るそれにミレイは感嘆の声を漏らす。


「ご、ごめんミレイ」


 加賀谷がタオルでやさしく拭う。そんな加賀谷のやさしさにミレイはときめく。

ミレイは再び、加賀谷の加賀谷に手をやる。

「ミ、ミレイ?」

「…ちょっと、試したくなって。好奇心よ」


 そう言うとミレイは上下に加賀谷を優しく摩る。加賀谷がみるみる成長していく。

加賀谷は、なんとか我慢をしながらも反撃に出る。

ミレイの熟したミレイに指で触れる。するとミレイが濡れているのが伝わる。

優しく指で摩る。ミレイも負けじと摩る。


「んっ…加賀谷…なんか、変になるっ」

「あ、あぁ。俺も……」


 その瞬間、加賀谷とミレイが同時に噴出した。













背中に鈍い痛みを感じ加賀谷は目を覚ます。

雨が降りずぶ濡れの状態で、背中に刺されたナイフから血が流れ出ている。


「ああ‥死ぬ前の‥ゆめ‥か」


加賀谷は、32年間彼女がいなかったが、死ぬ直前に生きてきた中でいちばんの幸せを味わいながらその人生に幕を閉じたのだった。



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