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17.最終話

 事件から数日後、ザットンの店に隣接した住居にある狭い一室に、ブルーが横たわっていた──





 ユノはぶつぶつと文句を言いながら、スープを運んできた。


「ほんと、しばらくは安静にしてよ。次撃たれたらもう知らないから」

 言葉とは裏腹に、その顔はどこか喜びを隠しきれないように見える。


「了解。命令として受理した」


「今更ロボットのふりしない!」


「冗談だって」


 ユノは一度ため息をついて、それから小さく笑った。


「……でも、ありがとう。生きててくれて嬉しい」



 ***



 ユノも知らなかったことだが、リックの死んだ父親は、戦争で産業用ロボットに殺されたらしかった。

 通りでのザットンとブルーの会話を断片的に耳にしてしまい、ブルーがロボットだと思い込んだらしい。

 押さえ込んでいたはずのロボットへの恨みが、ブルーへの憎悪という最悪の形で噴出してしまったのだった。 


(お母さん二人だとは聞いていたけど、いつも明るくて生意気なあの子がそんな苦しみを抱えてたなんて…)


 ユノはリックの苦しみに気づいてやれなかったことを申し訳なく思う気持ちと、ブルーを傷つけた彼をどう受け止めればいいのかという戸惑いが入り交じって、どんな態度でリックに向き合えばいいのか煩悶していた。


 リック自身は、あの後すぐに街の人間に取り押さえられて、今は保安官の監督下に置かれている。

 ただ、被害者であるブルーが『自分を狙って撃たれたものでは無い』と主張しているため、今後ブルーの傷が回復次第、詳しい取り調べが行われることになるだろう。



 ***



「初めから正直に話さなかった俺が悪いんだ」


「俺の昔の話を聞いてくれるか」


 そう言うと、ブルーは過去のことをポツリポツリとユノに話し始めた。


 少年時代のこと、右腕を失ったときのこと、そして、戦争で自らが行ったこと──



 ***


 銃創は通常の傷と違って特殊なため、多少治療に時間がかかったものの、ある程度動けるようになると、ザットンの家を出て街外れの二人の家に戻った。

 しばらく続いた戦争のおかげで、銃創の治療法がこんな地方の街にまで浸透していたことは、皮肉なものである。

 

 『やっと頼ってくれたと思ったら、すぐ戻ってしまうのか。まあまた困ったことがあったらいつでも寄ってくれ』

 

 ザットンはそう言って、二人を見送ってくれた。


 リックはと言えば、まだ直接面会は出来ていないものの、『ブルーを狙って撃った』と主張しているという。

 そのため、すぐに無罪放免という訳にはいかないが、未成年であり被害者である筈のブルーがリックの主張を認めておらず、また街の人々の陳情もあり、重い罰は科されない見込みである。


 ブルーは傷が完全に癒えたら、かつて自分が手にかけた兵士の家族を探しに行くつもりだと言う。

 彼がどこの街から来ていたのかも聞いていないから、捜索には時間がかかるかもしれない。

 

 ユノはそのことを告げられてすぐに、ブルーについて行くことを決めていた。

 生半可な気持ちですることでは無いと自分でも分かっていたが、迷いは無かった。

 ブルーには反対されるだろうし、傷が治らないうちにこっそり出て行かれるとマズいのでまだ伝えていないが、翻意するつもりも無い。

 


 ***



「なあユノ」


「うん?」


「もし俺が、本当にロボットだったらどうしてたの」


「私だけ年老いていくのは耐えられないって思ったんだけど、それよりもブルーがいなくなる方が辛いって気づいちゃったから。

 私が死ぬまで一緒にいてもらうつもりだった。

 途中からは、お願いすれば聞いてくれそうだったし」


「あーなるほど」

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