異世界美少女エリス チート魔法で現代無双~魔法の代償と復讐の果て~
異世界美少女エリス<おんがえしコインの魔法>
山下徹は、使い古された革のソファに腰掛けて天井を眺めていた。働いても働いても成果が認められず、上司からの叱責だけが積み重なる。そんな彼のストレス発散法は、飲み屋で他人を悪く言い合うことだけだった。
「世の中は不公平だ。俺だってもっと報われてもいいはずなのに…」
そんな愚痴を呟いたその夜、不意に玄関のチャイムが鳴った。
「誰だこんな時間に?」
ドアを開けると、そこには銀髪の少女が立っていた。まるで異世界から抜け出してきたような姿で、手には金色のコインを持っている。
「こんばんは、山下徹さん。初めまして、エリスといいます。これ、差し上げますね」
彼女はそう言うと、手のひらにコインを置いた。それはピカピカに輝いており、片面には天秤の刻印、もう片面には手を差し伸べる人物の図柄が描かれていた。
「な、なんだこれ?」
「『おんがえしコイン』といいます。あなたが何か他人に親切をすると、それに応じたご褒美が戻ってきます。でも、注意してくださいね。あなたが望んだものしか返ってきませんから」
エリスはそう言い残すと、消えるように姿を消した。
翌朝、徹は昨夜の出来事が夢だったのではないかと疑った。しかし、手元には確かにコインが残っている。試しに職場の同僚が落とした資料を拾い上げて渡してみた。
「ありがとう、山下くん」
返ってきたのは、お礼の言葉だけだった。コインを手に取って念じてみたが、特に変化はない。
「やっぱりインチキか」
そう思っていると、数時間後、偶然にもその同僚がクライアントを紹介してくれた。取引成立の報告を受けた徹は、そこでようやくコインの効果に気付いた。
「本当に何か戻ってくるのか…」
徹は試しに、近所のコンビニで子どもが落としたお菓子を拾ってあげた。その際、心の中で「お菓子よりお金が欲しい」と強く念じた。すると、翌日、駐車場で千円札を拾った。
「面白いぞ、これ!」
それ以来、徹は親切心を装いながら、自分が得をするような行動を繰り返した。駅で迷子を助けるときには「臨時収入が欲しい」、スーパーで重そうな荷物を運ぶときには「昇進がしたい」と念じる。確かに願った通りの形で報酬が返ってきた。
ある日、徹は元婚約者のSNSを見つけた。そこには彼女が幸せそうに新しい恋人と写る写真が投稿されている。
「あの女、俺を捨てたくせに…」
徹はその投稿を見ながらコインを握りしめた。そして、ある計画を思いつく。
「親切を装って、あの女を苦しめてやる」
徹は彼女が勤める会社の近くに足を運び、偶然を装って再会した。表向きは礼儀正しく振る舞い、必要以上に親切を装う。
「元気そうで何よりだね。僕もまあ、それなりに頑張ってるよ」
そう言いながら、心の中では「彼女の仕事が失敗するように」と念じた。数日後、彼女がプロジェクトで大きなミスをしたという噂を耳にする。
「ざまぁみろ!」
徹は悪びれる様子もなく、次々と恨みを晴らしていった。
しかし、コインを使い続けるうちに、不思議なことが起こり始めた。職場では同僚たちが彼を避けるようになり、昇進の話も突然立ち消えになった。街を歩いていると、通りすがりの人から睨まれるような気配すら感じる。
「なんだ、みんなして俺を敵に回しているのか?」
それでも彼は止まらなかった。ある夜、さらに復讐を果たそうと念じた瞬間、手の中のコインが黒く変色し、ヒビが入った。
「どういうことだ…」
その時、不意にエリスが現れた。
「山下さん、あなたの心の使い方が間違っていたわね」
「俺はただ、自分が報われたいと思っただけだ!」
エリスは冷たく笑った。
「あなたは親切を装いながら、心の奥では憎しみを育てていた。『おんがえしコイン』はその心の反射だから、あなたの悪意がそのままあなたに戻ってきただけ」
徹は何も言い返せなかった。エリスは手を伸ばし、壊れたコインを取り上げた。
「これであなたの時間はおしまい。さようなら、山下さん」
翌朝、徹が目を覚ますと、部屋は散らかったままで、机の上にコインの欠片だけが残っていた。
「すべて失ったのか…」
彼は自分の行いを振り返り、静かに部屋を片付け始めた。掃除を終えたとき、彼の心には久しぶりにわずかな清々しさがあった。
「また一からやり直そう」
徹は小さく笑い、空を見上げた。その先にエリスの姿がある気がしたが、彼女はどこにもいなかった。