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お能登さま、ごむたいな  作者: 金子よしふみ
第一章 お能登さま、恐悦至極に存じます
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改札

 改札を抜けて駐車場へ向かう。

 俺がここまで来たのは仕事だ。出張ではない。就職の決まってない大学四年生。といっても就活をしてこなかっただけであり、かといって大学院に進学のつもりもない。もうとっくに卒業に必要な単位は取得しており、バイトに励んでいるだけなのだ。ただ情報誌やサイト経由での業務ではない。依頼主から承ったのは、居住をしてなんなら手伝いをしてほしいという漠然とした内容。とはいえ、その依頼主は別にこの土地の市民ではないのだが、何の意図があってそんな依頼をしたのかなんて詮索をしなかったのは、その人とはすでにいくつかの仕事をしたことがあったからだ。かといってそうそう信用していいかは、あの人の性格上保留にしているのだが、なにせ、報酬が十分だった。今回もバイト料は当然として居住に関わる生活費は全部先方持ちで領収書による後日請求は置いておいて、最低限な生活費はすでに渡されていたからである。秋口にってのは、小旅行気分でいられるし。

 ふいと考えてみた。依頼主からのバイト。かなりというか収入はいい。新入社員どころか役職手当がついているような、同様の額を稼ぐとしたら、どれほどのストレスを抱えていなければならないだろう。酔っぱらいを乗せたタクシー、深夜のコンビニのレジ、理不尽なことが多くあるだろう。もはや個人事業主として営業した方がいいのではと思った矢先、依頼人は開業手続きとか確定申告とか今度教えてくれるそうだ。それはおいておいて、新入社員の緊張がどれほどのものかは想像もしたくないが、依頼人からの業務は割かし理不尽はない。というか奇々怪々の方が問題である。詐欺の受け子が逮捕されたニュースもあるが、その点俺は違法なことはしていない。多分。法律に抵触してないからといって怪奇の方が幾分かましということでもない。これまでの依頼人からのバイトで呪いだとか運気が下がるとか、そんな目に見えない点でダメージを受けるかもしれない、というかすでに知らないところでライフゲージが削られているのかもしれない。身を粉なにしてとまでは言わないだろうが、それなりに体力や精神力が費やして、それこそタスクコンプリートしてぶっ倒れてしまったこともある。今のところ自覚というか、検査結果にも異状はない。若いから。それを言い訳にしておくことにして、これを本職にしようとも思ってない。とりあえず、依頼が許容内である限りは、受けておこうとは思っておくしかないのだ。


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