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私の父は陽キャな幽霊  作者: 悠月かな
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第二話

  私は、あの道と同じくらい嫌いなものが、もうひとつある。

1人きりの夜だ。

お母さんは看護師の為、夜勤がある。

その時は、私は1人きりで夜を過ごす。

孤独感が胸を覆い、苦しくなる。

そして、嫌でも思い出す事故の事…


「お父さん…なんで死んじゃったの?幽霊でも良いから会いたいよ…」


自分でも、馬鹿馬鹿しいと思う。

でも、今夜は寂しさから呟いてしまっていた。

その時、私以外誰もいないはずなのに声が聞こえた。


「……だ…よ…」


(え…今、何か聞こえた?ううん。私しかいないから、そんなわけない。気のせいだよ)


私は、頭を振って気のせいだと言い聞かせる。


「結衣…」


また、声が聞こえた。

背筋に冷たいものが走る。


「え!何?怖い!」


私は耳を塞ぎ俯いた。

何も聞きたくないし、何も見たくなかった。

声が再び聞こえる。


「結衣。お父さんだよ」


想定外の言葉に、私は思わず顔を上げた。


「え…お父さん…?」

「そうそう。お父さん。結衣、こっちを向いて」


私は、恐る恐る振り返った。

すると、目の前に懐かしいお父さんが立っていた。


「お父さん!」


私はお父さんに抱きつこうと手を伸ばしたが、すり抜けてしまった。


「あ〜結衣。ごめんな。お父さん、幽霊なんだわ」

「ええ!!幽霊!何?お父さん、成仏してなかったの?」


私は、衝撃の事実に頭が真っ白になった。


「そうなんだよ。お母さんと結衣が心配でさ、そばでソーッと見てたんだよ」

「お父さん…それ…怖いって…」

「え〜!だって、お父さんだよ。怖くないだろう?」


(頭がクラクラしてきた…このお父さんのノリっておかしくない?)


「お父さん…何で今になって姿を見せたわけ?」

「だってさ、結衣が幽霊でも良いから会いたいって言うからさ〜嬉しくなって姿を見せちゃったんだよね〜」


お父さんが、ニコニコしながら答えた。

やっぱり、ノリがおかしいと思う。


「幽霊って、こんなに明るく出てこないんじゃない?お父さん、陽キャなの?」


私の言葉に、お父さんは首を傾げながら問い返す。


「ヨウキャ?」


どうやら、陽キャの意味が分からないらしい。


「え〜と…陽キャは、明るい性格って意味だよ」

「へぇ〜今は、陽キャって言うのか〜お父さんが生きてた頃は、そんな言葉なかったからな〜ハハハハ」


お父さんは、満面の笑みだ。

私は、思わず頭を抱えた。

まさか、本当にお父さんが幽霊になって現れるとは思わなかった(しかも陽キャで…)


「お父さん、結衣が心配なんだよ。ずっと、あの事故がトラウマになって、あの道を通るのを嫌がってるだろ?」


突然、真顔でお父さんが言った。


「うん…あの道、大嫌い」

「だからさ、結衣にとって、あの道が良い思い出に塗り替えられるまで、成仏しないって決めたんだ」


お父さんがニコニコしながら、私を見ている。


「いや…お父さん、成仏しないって、そんなに明るく宣言する幽霊なんていないでしょ?」

「そうか〜?ハハハハハ!」


豪快に笑うお父さんを、私は複雑な気持ちで見つめた。


(やっぱり陽キャだ)


お父さんは、ニコニコしながら私を見ている。


「いや〜結衣と話せてお父さんは嬉しいよ。これから、あの道をクリアすべく2人で頑張ろう!」

「う…うん」


1人で盛り上がるお父さんに、私は引きつった笑顔で答えるしかなかった。


(これから、いったいどうなるんだろう?)


お父さんに会えた嬉しさよりも、不安が胸に広がっていった。


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