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第2話 ぼくと魔女会長

俺はどっかのラノベみたいに異世界転生したいと思っていた。


そんな素晴らしい世界があるなら行ってみたい、と。


魔法とファンタジーが溢れ、自分は強く、美少女ハーレムパーティーなんか結成して、悪の大魔王を倒して姫と結婚してめでたしめでたしみたいなそんな世界行ってみたいのが男子の性よ。それに憧れて、交通事故で異世界転生出来たところまではよかったんですよ。


ですが、この魔法世界で僕は凡人でした。異世界歴三年のペーペー。


この身体のユウがナバーゾっていうやつを倒したらしくその時は祭り上げられたけど


その後に、ユウがぽんこつ化したんだから、多くの人はがっかりしたよね。


うん、俺も英雄には興味ないし。


……俺とか言ってみたりしちゃって、調子に乗ってすいませんでした。


……だけど、こんな僕にでも、幸福は、あります。


「ニコルくーん。朝だよー。起きて学校いくよー」


3年も聞いた聞き馴染みのある声に僕は胸を躍らせながら布団の中で待つ。


「ほーら、早く起きてよー、ご飯も作ったんだよ」


そんな催促にも耳を貸すはずがない。欲しがりません、布団を捲るまでは。


「もう起きないなら布団捲るからねー、ええい」


布団をとられたが、いやまだ起きない。寝たふり作戦だ。さぁ、どうする?


「もー、絶対寝たふりしてるでしょ。だったら」


唐突に下半身に柔らかい重みが伝わってくる。


「お、おい。ちょっとまて、なにしてるんだ」


「起きないのが悪いんだよおー。もう遅いよー」


「ちょいまった、ギブギブ!」


僕の下半身の上で馬乗りに躍りだす少女を制止させようとする。


「あやっ、なんか当たってるよ」


「ええい!いいからどいて!」


少女をどかした。


「いたたたた、痛いよ。幼馴染に厳しいよお」


ダークブラウン色のロングヘアーに、猫のヘアピンをつけて、制服の上からエプロンを纏った少女、ミルル=レインハートがそこにいた。


「朝から不健全なんだよ!」


「不健全てなに? ユウくんは不健康なんだよお」


「健康の健しか合ってないぞ」


「似たような意味じゃないのかな」


「それでいいのか、魔法少女」


この世界の魔法少女は言葉に厳しいはずなんだが。


「い、いいんだもん。成績は悪くないし」


「実技はどうなんだ?」


「実技だって、合格してるもん」


「あのなあ、ギリギリじゃんか。いつか、落第しても知らないぞ。


僕の卒業式に、涙ながら在校生として残るなよ」


「もう、イジワルなんだから。ユウくんはいつも」


「ごめん、僕もう学校いくから」


「うん……」


ユウ=ニコール。それが僕の今の名前だ。ラザフォード魔法学校一年生で、生徒会の書記をやっており、イケメン長身……までは知っているんだけど、日記とかないし、この身体の持ち主がどんな性格かまでは正直つかめてない。


本当は違う。本当の名前は、鈴木涼真。純正日本人だし、短足短身長で、メガネかけて教室の隅で、誰にも声をかけられず、過ごしてきた。自分もこの世界も無くなってしまえばいいのにと思ってたから、こんな状況、有り難みしかないんだけど。


まあつまり、三年前にここにやってきて以来ユウと名乗ってるというのが正しい。


僕は、正直ラッキーなのだが、元のユウは僕と人生が入れ替わったんだろうから


それは悲惨なんじゃないかって思う。とはいえ、三年も経って、今更どうしようもない。


だから、なんだかメルルとの関係に気が引ける。


昔の自分から考えたら贅沢な悩みかもしれないけど、あんな可愛い子を傷つけたいなんて思ってないんだ。


「愛しき後輩よ、どうした。幼馴染とうまくいってないのか」


「会長、その話はしないでくださいよ」


「そういうわけにもいかないよ。有能な君がきちんと仕事してくれないと、


我が生徒会は崩壊する。君がいるから融通がきく事もなにかとあるんだ」


「それは買いかぶりすぎですよ、会長の実力が素晴らしいからですよ」


「本当に、そうなればいいんだが」


「人口減少化問題だって、会長が魔法大臣になれば」


「それでは遅いのだよ、近年多くの人々が長寿魔法「ロングロングゴー」を使用し、なりふり構わない老人が増えた。年功序列制度もあるがゆえに、私ら若者が口出しするわけにもいかない。実に、私は無力なんだ」


「そんな無力なんて。いつも会長は図書館に篭って遅くまで調べてるじゃないですか」


「だが現状何も手がかりは見つかってないんだ。この魔法世界なら、こういった人類未曾有の危機に直面したことぐらいあったと思っていたのだが、魔王に世界が支配されるほうがこの世界にとっては脅威だったみたいでな」


「僕が手を貸してあげられたらよかったんですけど」


「ふふっ、君は本当に変わったな、なにかあったのか」


「あ、その……いえ」


「ま、そこまで君を詮索するつもりはないよ。今が良いからそれでいい」


こんないい人に、ユウはどんなふうに関わっていたのか、うーんわからん。


「わかりました、でも僕で力になれることがあったらなんでもいってください」


「頼りにしてるよ、書記君」


「あの、会長」


「なんだい?」


その顔は、どこか儚く見えて、僕の心がぎゅっと締め付けられた。


「あ、やっぱりなんでもありません」


僕は元々この世界の人間じゃないことを言えば、信じてもらえるだろうか


そんなことをふと思ったけど、忙しい会長に言うべきじゃなかった。



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