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女神のサイコロ  作者: チョッキリ
第10章 オハイ湖
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第11話 グラシアナ

———— オハイ湖 魔神教アジト 実験場 午前 (クエスト20日目)————



「姐さん・・・嘘でしょ・・・?」


 ルッカはグラシアナの上半身を抱きしめながら問いかける。


 ユージンの魔法弾の威力を吸ったジルベルトの剣は、その威力を丸ごと喰らい、そして刃の鋭さへと変換し、グラシアナを斬り裂いた。


 右肩から左の腰の付け根にかけて、内臓ごと綺麗に切断されている。


 斬られた衝撃で、左肩に開いていた大穴から下———つまり左腕も千切れてしまい、今、ルッカの腕の中にあるのはグラシアナの首と胸と左側の腰だけだ。


 弱まった心臓の鼓動に合わせて、切断面から大量の血が噴き出る。


「・・・ル・・・カ・・・・・・そ・・・無事ね」


 グラシアナは虚ろな目を開け、ルッカの安否を確認し、口を(わず)かに緩めた。


「・・・グラシアナ!!!」


 ルッカが声をかけるが、グラシアナの目にはもうほとんど光が入ってきていない。


 脳の損傷を免れたため、大量出血による意識喪失までの1分に満たない(わず)かな瞬間を手に入れることができた。


 その時間をグラシアナはレベル3の強靭な精神力でなんとか引き延ばす。


 彼女に・・・


 ルッカにだけはこれを伝えなくては・・・


 グラシアナは身体の全ての力を唇に回す。


 すでに顔や右腕を動かすもない。


 大量出血による血圧低下により、強い悪寒と猛烈な眠気がグラシアナを襲い、目を(つむ)りたい欲求に駆られるが、それに全力で(あらが)う。


 ルッカもグラシアナが最期になにかを自分に伝えたいということを直観的に理解できた。


「姐さん・・・」


 ルッカは目を閉じ、グラシアナの耳元に耳を近づける。


 全神経を集中させ、彼女の最期の言葉を聞き取ろうとする。


 グラシアナはもうほとんど思考できなくなった脳で、ありったけの力を込めて、なんとか唇を動かす。


「ごめ・・・なさ・・・」


 グラシアナの目から涙が(こぼ)れ、ルッカの腕をつたう。


 そして、直後、グラシアナの瞳孔(どうこう)が開き、呼吸が完全に停止する。






 ごめんなさい。






 ルッカは確かにその言葉を聞いた。


 なにに対する謝罪だったのか、ルッカにはわからない。


 冒険の途中で力尽きてしまったことへの謝罪なのか、それともルッカを守るという約束が果たせなかったことへの謝罪なのか・・・。


「なんで・・・なんで謝るんだよぅ・・・」


 ルッカは天井を見上げて涙を流す。


 この数か月の彼女との思い出が頭の中をよぎる。






———— 大都市ネゴル Bar『Honey Bee』 数か月前 ————



 その日もルッカは彼女の姉、へレナの消息を調べるためにギルドに足を運んでいた。


「・・・申し訳ございません。「風神」の消息については、今のところ情報がありません」


 ギルドの職員の男性がルッカに頭を下げる。


「じゃあ、せめて「魔神教」の情報はないですか?」


 ルッカは尚も食い下がるが、ギルド職員は困ったような顔をして、首を横に振る。


 連日同じやり取りを繰り返している。


 それでもなにか情報がないか、ルッカは必死だった。


 姉のヘレナがあの後、どうなったのか・・・意外にもかなり有名な冒険者だったので、驚いたが、彼女はどうやらエルフの里に来る前から公の場には姿を現していなかったらしい。


 もう1年以上も前のことだったと聞く。


 その理由も全く分からなかった。


 分かったのは「桜花」(おうか)というヘレナの所属していたパーティがミノタウロスとの戦いに敗れ、ヘレナを除いて全滅したということだけ。


 ヘレナはその依頼(クエスト)失敗の報告後、消息を()っている。


「風神」はその責任を感じて冒険者を辞めたのではないか、という噂や、ミノタウロスとの戦闘がトラウマになり、戦うことができなくなったという噂、結婚して引退したなど、当時は様々な噂が行き交ったが、どれも信頼に足る情報ではなかった。


 ギルドには毎日沢山の冒険者が依頼を受けに訪れる。


 上級冒険者から入りたての新人まで、毎日色々な人の声をかけ、姉の消息と魔神教について聞いて回ったが、全員反応はほぼ同じ。


「知らない」「聞いたことないな」「アンタが「風神」の妹か。お姉さんには世話になった」等々・・・。


 たまに「俺についてきたら教えてやるよ」という誘いもあって、何度かついていったが、(ろく)な目に遭わなかったので、もう2度とそういう誘いには乗らないことにしている。


 身に着けていたエルフの里の装飾品も生活のために徐々に手放していき、身も心も削る毎日。


 エルフの里で育ったため、ネゴルには頼れる人は誰もおらず、見た目も幼いので、仕事もなかなか決まらない。


 こんな生活が続くのならば、もういっそ物好きに身体でも売って生計を立てるしかない、という自暴自棄な思考に(とら)われ始めた時、ギルドの職員から「気分転換にバーにでも行かれたらどうですか?バーは冒険者がよく利用するので、ギルドにはない情報がある場合もありますよ」と『Honey Bee(ハニー・ビー)』の名刺をもらった。




 大通りに面したそのバーはオシャレで、静かで、大人の雰囲気があった。


 バーのドアを開けるとカランカラン、とベルの音が鳴り、カウンターに座っていた狼の獣人がこちらを振り返る。


『あら、アンタ、見ない顔ね。・・・浮かない顔だけど、なんかあった?』


 それがグラシアナとの出会いだった。


 彼女は丸みを帯びたロックアイスの入ったウィスキーグラスを片手に笑いかける。


 綺麗な人・・・


 というのが、彼女の第一印象だった。


 大柄で、男性的な体つきだが、頭の先からつま先まで手入れの行き届いている感じがあった。


 女性的な洗練されたシルエットの美しい服を上手に着こなし、派手なメイクも身に着けている装飾品も(いや)らしさがまるでない。


 どこかセレブのような上品さの(ただよ)う魅力的な狼だった。




 だが、荒み切ったルッカは当時、すぐに心を開くことはなかった。


「すみません。「風神」のヘレナのことを知りませんか?」


 いつものようにトントゥのマスターと狼の獣人に必要な情報を尋ねる。


『・・・アンタねぇ。ここはバーよ。まずは注文するのが礼儀よ』


 狼の獣人が目を細めてルッカの不作法(ぶさほう)(とが)める。


「うるさいなぁ」とルッカは心の中で舌打ちする。


 ・・・常連ぶって。


 バーのマスターに指摘されるならばまだわかる。確かに不作法だった。


 でも、この狼にとやかく言われる筋合(すじあ)いはない。


 というか、さっきから()()れしい。


「・・・白ワインをください」


 酒のことは全然わからないが、とりあえず白ワインを頼む。


 エルフの里ではワインが好まれていたが、彼女は酒を飲んだこともなかった。


「・・・失礼ですが、年齢を確認できるものはありますか?」


 バーのマスターがルッカの姿を見て確認する。


「エルフの方は見た目よりも大分、お若く見えるので、申し訳ございませんが、年齢確認をさせていただいております」


 ・・・くそ、意外としっかりしてる。


 ルッカは実年齢を教えてやりたいが、残念ながら年齢を証明するものはなにも持っていない。


『マスター、意地悪しちゃダメよ。ヒューマンの年齢でいったら絶対、成人年齢は過ぎてるわ・・・ね?』




「・・・」


 トントゥのマスターは目を(つぶ)り、しばらく考えた後、頷く。


「・・・わかりました」


『流石!良かったわね』


 狼の獣人はルッカにいたずらっ子のように笑ってウィンクする。


「ワインリストをご覧になりますか?」


「え、ええ」


 生まれて初めてワインリストなるメニュー表を受け取るが、産地やブドウの品種、生産日などを見てもさっぱりイメージがわかない。


「うーん・・・」


『お酒飲むの初めてなの?』


 狼の獣人はルッカの隣にグラスを持って座り、メニュー表を覗き込む。


「うん・・・。お店では」


『共通語は読める?』


「あ、うん。一応・・・」


 最初は馴れ馴れしくてうっとおしいと思ったが、パニックになっている今、この助け舟は少しありがたい。


『甘いのが好きならこの辺ね。この「ミァト・デ・リーニョ」は値段も手ごろで味も悪くないわ。多分飲みやすいと思う。香りが良いのが好きなら「デルパ」・・・このリストならこれ一択ね』


 狼の獣人はリストを指差しながら、ワインに詳しくない彼女にもわかる言葉で丁寧に説明してくれる。


 腕からフワッと香水の良い香りがする。




 ———あの時は聞けなかったが、昔、聞いたら教えてくれた。


『ああ・・・これ?ジャスミンとバニラ・・・自分で調合してるのよ。身体の匂いが気になることがあるから』


 彼女が体臭を気にしていたというのは驚いたが、臭いと思ったことは一度もない。




 ルッカは彼女に勧められた「ミァト・デ・リーニョ」を注文し、乾杯する。


『アタシ、グラシアナ。見ての通り、オネエよ。よろしくね』


「私はルッカ。よろしく」


 ・・・そして、見事に2口目で潰れた。


 情報収集もできないまま、店のトイレを占有し、最終的には狼の獣人が『アンタ、弱すぎるでしょ』と(あき)れながらも、『しょうがないわね』とルッカを宿泊先まで送ってくれた。


 翌日、店に謝罪に行くと、当たり前のようにまたカウンターにグラシアナが座っていて・・・。


『アンタは今日から酒はダメよ。ミルクにしな』


 その時は不満だったが、結果的にはルッカはミルクで十分に酔えた。


 パーティに入るまで、ほとんど毎日バーに通い、グラシアナとミルクを片手に色々な話をした。


 主には自分の話ばかりだったが、グラシアナは聞き上手でいつも楽しそうに聞いてくれた。


 冒険者になる少し前に彼女は自分の話を初めてしてくれた。


「男性」だった彼女を「女性」として初めて認めてくれた、「グラシアナ」の名前をくれた彼・・・。






———— オハイ湖 魔神教アジト 実験場 午前 (クエスト20日目)————



「そうだよ・・・姐さん、彼氏さんがいるじゃん・・・。置いて行っちゃダメだよぅ」


 ルッカが泣きじゃくる。


 その服はグラシアナの真っ赤な血で汚れていた。


 しかし、血に(まみ)れながらもグラシアナのジャスミンとバニラの香りが薄っすらとわかる。


 その匂いからも彼女とのこれまでの記憶が呼び起こされて苦しい。




 回想の時間は時間にすればほんの一瞬だ。


 人間は心臓や呼吸が停止しても数分、脳死にまで猶予(ゆうよ)があるという。


 実際、呼吸も止まり、目も見えなくなったグラシアナに、ルッカのその声は届いていた。






 かれし・・・


 でぃみとり・・・・・・


 そうか・・・あのひとを・・・あたしはおいていってしまうのか・・・


 ごめんなさい・・・


 あたし、あなたのやくにたてなかったわ






 あー・・・・・・






 できたらもういっかい・・・




 もういっかいだけ




 あいたかった・・・なぁ・・・






 ・・・






 さいごにあったの・・・いつだっけ・・・






 ・・・






 グラシアナは頭の中で最愛の人の姿を思い浮かべようとするが、その前に意識が描き消えて・・・






————————————— ??? —————————————



『おい』


「!?」


 そこは何もない真っ白な空間だった。


 突然、グラシアナの意識レベルが引き上げられる。


「誰?」


 グラシアナは何もない白い空間を見回す。今、最も聞きたかった人の声がした。


『よお』


 グラシアナがその声に振り返ると、後ろには金色に輝く髪、ブルートパーズのように澄んだ水色の瞳を持ったヒューマンの美青年が立っていた。


「!? ディミ・・・トリじゃないわね」


 グラシアナはすぐにそれ(・・)が最愛の人ではないことを見抜き、睨みつける。


 ディミトリにしては若すぎる。


 目の前にいる彼は彼女が出会った時の姿そのままだ。


 それ(・・)は『おっと・・・バレたか』と美しい顔を歪めて笑い、舌をペロリと出し、肩をすくめる。


 同じ顔でも「彼」(ディミトリ)とは所作が全く美しくない。


「その姿でアタシの前に立たないでって、前にも言いませんでしたっけ?ウロス様(・・・・)


『おっとぉ~、そう邪険(じゃけん)にするなよ。これでも俺はお前の願いを叶えてやったんだぜ?』


「願い?」


 最愛の人の姿を模した魔神はウィンクする。


『最期にもう一度()いたかった・・・ってね』


「・・・殺すわよ」


『ちょま・・・死んでる!むしろお前がもう死んでる!』


 ウロスは首を振り、両手を前に突き出して、「落ち着け」のジェスチャーをしながら後退る。


『も~・・・乱暴だな、俺の信者のくせに』


 ウロスはディミトリの顔で頭をボリボリと掻きながらため息をつく。


「勘違いしないでよね。ディミトリがいるから信者やってんの。アンタはおまけ」


『お、この発言・・・ツンデレ~』


 ウロスは両手の人差し指でグラシアナを指差してニヤニヤと笑う。


「・・・次、ディミトリの姿でふざけたら本当に殴るわよ」


 グラシアナが怒りを押し殺しながら低い声で(うな)る。


『冗談冗談・・・冗談だって。契約の時と会って2回目なのにアグレッシブだな~、グラちゃんは』


 ウロスは『ふー』とわざとらしくため息をついて額の汗を(ぬぐ)うフリをする。


 しかし、こんなん(・・・・)でもウロスは仮にも魔神だ。封印されている身でグラシアナに会いにくるのはなにか理由があるのだろう。


「・・・で?魔神様が何の用ですか?」


『あー・・・グラちゃんさぁ、生き返る気ない?』


 ウロスはまるで「どうする?今晩の夕食、外食にする?」くらいの気軽さで復活を提案してくる。


『魔神の加護』を使うか、と尋ねているのだ。


「嫌ですよ。醜い化け物に成り下がるつもりはありません」


 グラシアナは首を振る。


 他の神々の加護以上に強力で、1日1回の制限もなく復活するデタラメな力を持つ『魔神の加護』は当然ノーリスクで発動できるわけではない。


 復活の条件は2つだ。


 まず、魔神ウロスの気が向いていること。これが大前提になる。お気に入り以外は『魔神の加護』を付与される機会すらない。


 付与されていても発動できるチャンスを与えるかどうかは彼の気分次第だ。


 そして、もう一つが復活する度に魂の一部を(ささ)げること。


 ・・・こちらが今直面している問題だ。


 魂に一度でも魔神の手が加われば、「人間」ではなくなってしまう。


 魔物や魔獣と違って、人間の魂はデリケートだ。少しのバランスの変化で記憶や人格、姿形に大きな影響が出てしまう。


 分かりやすい例でいえば、グラシアナを殺した張本人であるジルベルトがまさにそうだ。


 人工的に魔物との合成生物(ごうせいせいぶつ)にされたが、本来、『魔神の加護』が発動すれば、元の魂の形であるジルベルトの姿になるはずだ。


 しかし、そうならずに無理やりくっつけられた醜い姿のまま復活するのは魂自体が自分の原型を忘れているからに他ならない。


 実際、「組織」の信者たちで『魔神の加護』を発動した者を何人か見たことがあるが、誰一人として人間の形を保っている者はいなかった。


『あー・・・もしかしてヴィジュアルが「ちょっとファンキーな感じ」になっちゃった子たちのようになるの心配してる?』


 ウロスはバツが悪そうな顔をして、自分の人差し指と人差し指をくっつけ、上目遣いでグラシアナを見る。


『あれは~・・・ちょっとカッコいいかなって』


「お前、ぶっ殺すよ?」


 グラシアナが男の声で威嚇(いかく)する。


「やれば普通に生き返せるの?」


『あ、できますできますぅ~。いやいや、ホントホント。お気に入りの子たちはちゃんと真面目にやってっからさ』


 ウロスはふざけた声でおどけて見せてから、真面目な顔に切り替えて『うんうん』と頷く。


『大丈夫。俺、やればできる神。実はこの間超上手くいってね。コツ掴んだ・・・じゃなかった。オホン。任せとけ』


「・・・」


 グラシアナは全く信用できない、という顔をして魔神を睨みつける。


 「彼」(ディミトリ)の顔をしていなければ、本当にぶん殴っていただろう。


『・・・ぶっちゃけさ、アマイアに負けないためにお前という駒が必要なんだわ。アイツら結構良い駒揃えてんじゃん?こっちも負けてられないわけ』


 ウロスはふざけた口調だが、真剣な目でグラシアナを見る。


「・・・・・・・・・」


『まあさ、俺が復活させたいって思ったらさせるんだけどな。・・・ということでいってらっしゃい♡』






———— オハイ湖 魔神教アジト 実験場 午前 (クエスト20日目)————



「!?」


 最初に異変に気付いたのはユージンだった。


「おい、ルッカ!それ(・・)から手を離せ」


「わっ!!!」


 ユージンの鋭い声に、涙を流して呆然(ぼうぜん)としていたルッカは我に返り、グラシアナの上半身から思わず手を離す。


 錆色の金属質の床にできた血の水溜まりへ、ベシャッとグラシアナの上半身が転がる。


「あ・・・」


 ルッカは慌ててグラシアナの上半身に手を伸ばそうとしたが、それ(・・)を見て、なぜユージンが「手を離せ」と言ったのか遅れて理解する。


 グラシアナの切断面から黒い煙(・・・)が噴き出していた。


「!?」


 見覚えのある黒い煙。


 忘れるわけがない。ルッカもユージンもこれを以前に何度か目にしたことがあった。


「角つき」と「羽つき」が死んだ際に立ち昇った煙・・・。


「死」という賢神ライラが作った絶対的な世界の理を否定する反魂の煙だ。




 ズァァァァァアアアアア・・・




 黒い煙がグラシアナの上半身と、離れた下半身を(おお)い隠す。


 黒い煙の中でグラシアナの千切れた臓器が逆再生のように元の位置に戻り、上半身と下半身がそれに合わせて元の位置へと戻る。


 焼ききれた左肩や切断面でも千切れて足りない部分については、黒い煙が集まり、なにもなかったかのように完全修復してしまう。


 最後に『オマケ♡』とばかりに、グラシアナの左目の下に蜂の巣のような模様が一筋の涙のように刻まれる。


 まるで魔神ウロスが『俺のお気に入り』と主張するかのように。


「・・・」


 黒い煙が晴れるとそこには復活したグラシアナが立っていた。




「・・・ねえ・・・さん?」


「・・・」


 グラシアナは信じられない顔をしてこちらを見つめるルッカの視線に耐えられず、(うつむ)く。






「姐さん・・・「魔神教」だったの・・・?」


 ルッカが(かす)れるように小さな声でそう呟いた。


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[一言] グラシアナが甦ったのは良かったけど、 まさかこんな形でバレるとは。
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