No.52 プロム
チャンピオンリーグも終了し一息ついた6月の下旬の事、朝ロッカーの前に行くと目の前にダンボールが置いてあった。
「?、何これ手紙?」
そう、そのダンボールの中には私宛に何通もの手紙が入っており、試しに一つ選んで読んでみると「プロムにパートナーとして一緒に参加してほしい」と言った内容が書いてあった。
シャトランスでは4年生の卒業式が終わった後の夜プロムという卒業パーティーが行われる。
皆んなで自由に会話やダンス、食事を楽しむがその入場条件として男女のペアである事が求められる。
学年は関係なく参加出来るので私でも参加可能だ。
よく見れば宛先の名前は全員男子生徒だ。
皆んな同じように私とペアを組みたいとお誘いしてくれているのだろう。
その手紙を見て困っているとシェパード先生がクスクスと笑いながらこちらへと近づいてくる。
「そうか、もうこんな時期なんだね。カンナ君はチャンピオンリーグの優勝者だから注目されているんだよ。ガストンも女子生徒から何度もお誘いを受けてたからね。戸惑いもあるかもしれないけど、その気持ちに応えてくれないかな。カンナ君は大変だろうけどね」
「…あはは。まぁ確かに守護者になればそれをきっかけに名前を知ってくれた人もいますよね。私もプロムに参加してみたいですけど、これだけお誘いがあると選べませんよね。ー人だけですもんね」
とシェパード先生とお話した後、授業の時間になったので別れるがそのあとが問題だった。
授業の間の休み時間に話かけられ、大会を応援していたとかプロムに一緒に参加してほしいとか初対面の人からも次々に話かけられる。
その様子を周りはいつもの事だと言うように笑いながら見守っている。
(ちょ、ちょっと!!笑ってないで助けて下さい!!)
数学の授業の時もタマミちゃんと一緒にいたのだが同じように男子生徒に話かけられ、もう校内の男子生徒半分は話かけられたのではないかと思うぐらい午前中だけでもすごい人数に話かけられてしまった。
「カンナちゃんモテモテだねー。お兄ちゃんの時はそこまでじゃなかったって聞いたんだけどなー。人によって違うんだねー面白いねー」
「タマミちゃんまで…。はぁここまで影響力があるなんて思わなかったよ。どうしよう、治るかな…」
そのあと食堂に行くとシュン君に会うが背中に何か隠してソワソワしている。
「シュン君、どうしたの?ソワソワして。…えっ、ちょっと待ってまさか!?」
「カンナさんに渡して欲しいと頼まれてな。寮の皆んなから預かって来たんだ。受け取ってくれ。1番上にある折り鶴は気にしないでくれ。綺麗にできたからこれと一緒に渡そうと思ってな」
その言葉にズッコケるようにテーブルに突っ伏してしまった。
シュン君自身からのプロムのお誘いではなく、他の人のお誘いを持って来たから思わず拍子抜けしてしまった。
「あ、ありがとうシュン君。うん…綺麗な柄の折り鶴だね」
シュン君から折り鶴と手紙を受け取り確認する。
とは言え、ここまで来ると逆に参加しない方が自分や周りの為になるのではないかと思ってしまう。
シュン君と別れ、そのあとの授業も終わり寮に帰ろうと、疲れた体を引きずりながらトホトホと歩いていた。
「はぁ…困ったな。でも断るなら理由が必要だよね。誰もが納得してくれる相手がいたらこんな事にならなかったのかな」
とフラフラしながら歩いていると大きな体とぶつかってしまう。
「おっと大丈夫か、カンナ?今度はキャッチできたな。すごい疲れた顔してるぞ。大丈夫か?」
「ライアンさん…。大丈夫…じゃないです。プロムのお誘いが大量に来て相手も決められないんです。もういっその事出ない方がいいんじゃないかとおもったぐらいです」
とライアンさんの言葉通り疲れた表情で言うと、彼は苦笑いしながらこう言ってくれた。
「優勝したら優勝したで大変だよな。そうだ、よかったら俺と一緒にプロムに行かないか?負けた奴にこんな事言われても説得力ないかもしれないが、ボディーガードぐらいなら出来るぞ」
「ライアンさんがパートナーになってくれるんですか?いや、でも良い提案ですね。これなら皆さんも納得してくれるかもしれません。ありがとうございます。当日はよろしくお願いします」
「任された。それに大事な話があるんだ。あの、大会ジンクスの事だな。シャンランにも生徒会長としてもしカンナの身に何か起きたら守るように言ってあるが、まずは本人が自覚してもらわないと困るからな。詳しい話はプロムの時に話をしよう。じゃ、またな」
そのあとライアンさんと別れ、無事にパートナーが決まった事もあり自然に卒業式が近くなればお誘いもなくなっていった。
そしてプロム当日を迎えた。
卒業式の夜、校舎の東側にある庭園の中にログハウス調の建物がある。そこがプロムの会場だ。
校舎前でライアンさんと待ち合わせをし、一緒に会場へと向かう。
中に入るとすでに何人かおり、音楽に合わせて踊っていたり会話や食事を楽しむ人達がいた。
「おーい、今日の主役を連れて来たぞ。守護者のカンナ様のお出ましだ。卒業式前にその姿目に焼き付けておけよ」
とそのライアンさんの言葉に一瞬、会場内が音楽だけになり気まずいと思ったが、そのあと口笛や歓声が上がる。
「ちょっとライアンさん。卒業生の皆さんが主役じゃないんですか!?言い過ぎですよ!!」
「そんな事ないだろ?実際カンナは来てくれと沢山の誘いがあった訳だしな。特別ゲストみたいなもんだろ」
と話をしていると、アカリさん、シーグリットさん、アスピリディオンさんが話かけてくる。
「あら、1位のカンナと2位のライアンじゃない。これじゃどっちが護衛されているのかわからないわ」
「おいシーグリット嫌味か。2位で悪かったな」
「僕は3位だからこれで揃ったね〜。…でも、ここにミランダがいないのが1番悲しいよ。最後は全員揃って卒業したかったな〜」
「…うん、本当にそうね。でも、しんみりしてたらミラちゃんに怒られちゃう。今日はミラちゃんの分まで騒いで楽しまないと」
「確かにアカリさんの言う通りですね。私も皆さんと一緒に楽しみたいです。だって4年生の皆さんとは1年でお別れになってしまうんですもん。寂しいですよ。最後に私と一緒に思い出を作ってくれませんか?」
その言葉に4人は笑みを浮かべてくれる。
そのあと、会場内を周り皆さんと一緒に写真を撮ったり、ダンスも教えてもらいながら一緒に踊った。
この会場内限定かもしれないが、今の私はまさにアイドル的存在であちこちに引っ張られてしまうぐらいだった。
そんな事をしていたら本来のパートナーであるライアンさんの姿を見失ってしまう。
これは不味いと思った私は会場内を探し周り彼を探す。
するとライアンも私を探しに来てくれたのか2つドリンクを持ってきた後、その内の1つを私に渡してくれる。
「カンナ、八方美人はよくないぞ。最終的に疲れるのは自分自身だからな。ちょっと騒ぎ過ぎだぞ。休憩したらどうだ?外にバルコニーがあるんだ、案内しよう」
とライアンさんに連れられバルコニーに向かうと、優しい風と夜空には月と満天の星空があった。
「そうだ、大事な話をまだしていなかったな。いいかカンナ、あのジンクスは必ず実行される。そのタイミングはわからないが、カンナ、お前1人の手でどうにかなるもんじゃない。仲間を頼れ。自分が一番強いと自惚れるな。Dr.ヤシロには守護者の誘拐を手助けする共犯者がいるはずだ」
「共犯者…。どうしてそう思うんですか?父が誰かに依頼して誘拐してもらっているんですか?」
「いや、それはまだ断言できない。言ってしまえば消去法だな。Dr.ヤシロの守護霊であるクラーケンは武器になれない。七不思議の一つに幽霊船があるだろ?あれがクラーケンの顕現した姿なんだ。だから実質自分自身で守護者を捕らえるのは不可能だ。」
その言葉にハロウィンでの事を思い出す。
隠す場所もないだろう幽霊船の正体はクラーケンだったというか事か。
確かにクラーケンは船に縁があるとヴァニラさんが教えてくれた。
「じゃあ、父には私が思ってる以上に沢山の協力者がいると言う事ですね?でも、守護者を捕らえるって事は、それと同等かそれ以上の力が必要ははず。…いや、待って、でも」
一つだけある可能性に辿り付いた。
でもそれはあり得るのだろうか?
守護者は全員地下で眠っているはずだ。
もし、その中に父に協力して同じ守護者と捉えた人物がいたとしたら?その考えに私は寒気を覚える。
「おい大丈夫か、カンナ?この前も疲れてだからな。もうすぐ戻ろう、夜風は体に堪える。風邪引くぞ」
「あの、ちょっと待ってくださいライアンさん。このジンクスは何としてでも阻止したいです。 守護者の皆さんは被害者でもあり、加害者でもある可能性があります。このまま数を増やし続けたら大変な事になります。私達は皆んなと協力してその根っこを叩かないといけないんです。」
その言葉にライアンさんは驚いたあと、考え始める。
「成る程な、もしカンナの言う事が本当なら今9対1の状態だ。カンナが4年生でも9対4全然数が足りない。全員捕まれば13対1だ。このままじゃ取り返しのつかない事になる。ちょっとカンナもそうだが、シャンランも集めて対策会議をする必要があるな。ここじゃ対策会議をしても監視カメラが無数あるから、やっても情報が筒抜けだ。そうだな…手間はかかるが夏休みになったら俺の家に来てくれないか?そこが1番いいだろ。安全は保証する。そこにカンナとシャンランと後ワットも今年は来るって言ってからな。守護者のデータも持ってるし、お互い情報を共有して他の協力者にも纏めた情報を渡すって言うのはどうだ?これならお互い混乱せずにすみだろう」
「ありがとうございます、ライアンさん。何とか皆で協力して守護者の皆さんを食い止めないと」
そのあと、プロムも終わりライアンさん、アカリさん、アスピリディオンさん、シーグリットさん4年生の皆さんは卒業していった。
まだまだ私にはやるべき事があるし、このスクールもまだ続いていく。
いつか、また皆さんと再会出来る日を心待ちにしている。
例えそれがどんな状況であったとしてもだ。
そして夜が更けていった。
No.52を読んでいただきありがとうございます。
第2部のスタートはこの対策会議からになります。
次期生徒会を中心として対守護者組織を作っていきます。
次で第一部は最終話となります。No.53(End)「第11期生徒会始動」をお送りします。




