表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/64

No.42 別れと変化

次の日の午後、休日にも関わらず皆んなで制服姿でバスに乗り込む。

行き先は中央の島の庭園にある教会だ。

アポリナルさんも今日は赤いローブではなく、黒い制服姿という事もあって私達の今着ている制服が喪服のように見えて仕方ない。


葬儀と言っても簡素な物で、私達はミランダさんに百合の花を送り別れの言葉をいうだけだ。

そのあとはミランダさんの故国であるイギリスで本格的に葬儀が行われる。

バスの中で誰も言葉を発する事なくそのまま全員で降りて教会へと向かった。


教会までの道のりには沢山の生徒たちが私と同じように、百合の花束を持って暗い表情をしながら足を進めていた。

ミランダさんの死は私だけじゃない。

シャトランスの人達全員が悲しみにくれているのだ。


教会に向かう途中、見知った顔を見かけた。

どうやら大人達に囲まれながらルイスさんが話をしている。

多分、スチュアート家とフォスター家の方々なのだろう。

その中には金髪に黒いワンピースを着た女の子がいた。

大人の輪に入れないのかなんだが退屈そうにしている。

それを見たルイスさんがなだめているようだ。


その様子を眺めていると、ルイスさんも私に気づいたのか女の子と手を繋いでこちらに近寄ってくる。

「カンナも来てくれたんだな、ありがとう。姉貴は明日にはイギリスの方に送る予定だ。これで最後になるから見送ってやってくれ」

「おにいさま、おねえさまはものじゃありません。ジュリエットのように、かんおけのなかでうんめいのひとをまっておられるのでしょう?おねえさまのうんめいのひとはだれなのかしら?はやくおねえさまのもとにきてほしいわ」

とこの状況にも関わらず、女の子は嬉しそうに言っている。

その様子にルイスさんは小声で私に言った。


「すまない、アリスは姉貴の死を理解出来てねぇんだ。だから、この葬儀も演技か何かだと思ってる。俺達はエキストラか何かだと思ってんだ」

「あぁ、成る程。でも、無理ないですよね。アリスちゃんは今何歳ですか?小学生ぐらいですよね?」

その言葉にアリスちゃんはスカートを摘み上げ挨拶をしてくれる。


「ごきげんよう。わたくし、フォスター・アリスともうします。ことしで7さいになりますわ。すきなことは、おにいさまとおねえさまといっしょにピクニックにいったり、ボートにのっておはなしをきくことです。おにいさま、こんどおねえさまといっしょにいきましょうね。またおはなしがききたいわ」

「…アリス、それはもう出来ないんだ。お姉様は遠くに行かなくちゃいけないから会えないんだよ」


「まぁ、おねえさまはうんめいのひととかけおちするきなのね!さみしいけど、おねえさまがしあわせならそれでいいわ」

その噛み合わない会話に私は何故か救われる。

もし、アリスちゃんが言うようにこれが何かの演目で、私達はその役者であったらならどんなにいいだろうか。


「ねぇ、アリスちゃん。ミランダさんの運命の人ってどんな人なのかな?」

「ロミオはたんけんをもっていたそうです。ですから、けんをもつひとがうんめいのひとだとわたくしはおもいます!」

とアリスちゃんは嬉しそうにそう言う。

確かに、このスクールなら短剣や剣ならラトゥーシュカさんやライアンさんも持っているので当たっているのかもしれない。

しかし、そのあと悲しそうな顔をしている。


「でも、そうするとロミオとジュリエットはしんでしまうんです。わたくしはそんなことぜったいにいやです。みんながすくわれるけつまつをみたいんです」

「うん、私も一緒だよ。もう、大切な人を失いたくないんだ。皆んなで一緒にこの悲劇を終わらせようね」

その言葉にアリスちゃんは嬉しそうに頷いてくれる。


「アリス、カンナの邪魔しちゃ悪いだろ。これからスクールの方で色々と手続きがあるんだ。夕方頃にまた教会に顔をだす。どうか、姉貴の最後を見届けてやってくれ。また、どっかでひょっこりと顔を出すかもしれないけどな。霊感があって本当に良かった。また、会えるかもしれないしな」


「そうですね。じゃあ教会に行ってきます。アリスちゃんも元気でね」

そのあと、教会へ足を踏み入れると沢山の百合の花に囲まれたミランダさんがいた。

棺桶から顔を覗く事ができ、死際の青白い顔ではなく綺麗に化粧が施されている。ルイスさんがやってくれたのかもしれない。

白いドレスを着ているようで、これが結婚式ならどんなに良かっただろうかと思うぐらい綺麗だった。


その遺体を見て、ミランダさんが亡くなった事を改めて実感する。

こんなにも綺麗なのに、今でも動きだして笑みを浮かべてくれそうなのにずっと眠ったまま動かない。

その今まで感じた事のない違和感に、私は恐怖を覚えた。


こうやって私はこれからもずっと、大切な人達を見送るのかと思うと怖くて仕方がないのだ。

私は耐えれるだろうか?死を受け止められるだろうか?

そのわかりもしない答えに私は恐怖し、涙を流すしかなかった。


私もみんなと同じように花束を添えた後、教会の椅子に腰掛けミランダさんの棺桶をじっと見つめた。

こうすれば、いつしか彼女の死を受け止められるのではないかと感じたからだ。


(…これから私に出来る事ってなんだろう)

このスクールに来てもうすぐ1年が経とうとしている。

同級生や生徒会、裏生徒会の皆さんと交流し、自分がこのスクールにおいて重要な存在である事を自覚した。


(私はお父さんがしている事を止めないといけない。お父さんが何をしようとしているのかわからないけれど、沢山の人を犠牲にして何かしたい事でもあるの?10年もニホンに戻らずしたい事ってなに?それは重要なことなの?)


何となく家族である自分を置いてこのスクールにいるなんてよっぽど大切な事なのは理解出来る。

でも、10年間も私を置き去りにして私がどれだけ寂しい思いをしたのか、それを理解して欲しいと思う自分がいる。

そう考えているとある答えに辿り着く、自分がこのスクールでやらなければいけない事が。


(私はお父さんを止めないといけない。このスクールの秘密を暴いてママの言う悪い大人達と戦わなくちゃいけない)

それはとても大変で苦労の連続だろう。

でも、誰かが暴かなければその先、何年もずっとここのスクールの皆んなは怯えながら過ごして行かないといけない。

理事長の娘である私が父を止めなければいけないそう思うのだ。


(でも、私1人の手じゃどうにもならない。だからミランダさんは私を裏生徒会に入れてくれたんだ。利用される為に入れられたのかもしれないけど、仲間がいてくれて頼もしいと思ったのは間違いない)

そのあと、ミランダさんの棺桶に向かう。


「ミランダさん、私は感謝しているんです。頼もしい仲間に引き合わせてくれたのは紛れもなくミランダさんなんです。だからどうか私に力を貸して下さい。私はもうこれ以上、貴方の様に大切な人を失いたくないんです」

そうやって一方的に話かけても返事が返ってくるわけでもない。

でも、それでいいと思った。

自分の決意がミランダさんに届いてくれたならそれでいい。

そのあと、何故かずっとミランダさんに向かって自分の決意を一方的に話していた。


「私は貴方の意志を継いで、このスクールやお父さんがやろうとしている事を暴き出しますから。どうか見守っていて下さい」

1人と1羽しかいない教会に足音が近づいてくる。

扉が開かれ、そちらを向くとルイスさんがいた。


「カンナお前、いつまでそこいたんだ!?もう5時だぞ、3時間ぐらいいんだろ!?」

「ミランダさんに話を聞いてもらってたんです。私の決意表明を聞いてもらっていました」

その言葉にルイスさんは首を傾げながら近づいてくる。


「私はミランダさんがくれた仲間達と一緒にこのスクールと父がしようとしている事を暴き出します。凄く困難な道のりになると思いますけど諦めません。それが私の宿命だと思っていますから。私は戦います。どんなに強大な敵が待ち構えていようと、世界を敵に回そうとこの手で平和な日常を取り戻します」

その言葉にルイスさんは頷いてくれる。


「よく言った。姉貴も喜んでくれると思う。その気持ちを忘れないでくれ。姉貴の事もそうだ、あいつも仲間に入れてやってくれ。一緒に戦わせてくれねぇか?」

「勿論です、ルイスさん」

そう話をしていると八咫烏さんが急に飛び立ちミランダさんの棺桶に止まる。


「ちょっと何してるの、八咫烏さん罰当たりだよ!!」

『俺様は高貴な存在なんだから罰なんか当たんねぇよ。どかしてみろ、そっちの方が罰が当たんぞ』

その言葉に諦めるしかない。八咫烏さんは何をしたいのだろうか?


『おい、アホのバカンナに問題だ。蛇が倒された時、その体内から出てきた物は何だか知ってるか?』

「えっ、急に変な質問しないでよ」

『いいから答えろ、その頭をこねくり回して答えをいいやがれ。戦う意志があるなら尚更だ。お前に新しい武器を与えてやる」


「えっ、それって繰り上がりって事!?えっと、えっとペガサスが生まれるとか?」

『…お前本当にニホン人かよ。ギリシャにでも行ってこい』

「お願い、ちょっとだけ待って。ニホン神話でしょ?蛇…八岐大蛇(ヤマタノオロチ)?その体内から出てきたって事?何だっけ?」

ヤマタノオロチはどこかで見た気がする。いつの事だ?

どこで見たのだろうか?本の中?

何かと一緒に載っていたはず…武器?


「ねぇ、八咫烏さん。それって三種の神器と一緒?鏡はもうなってるから後1つしかないよね?純性の武器って」

『お前がそう思うなら顕現させてみろ。それで答え合わせだ』

その次の瞬間、八咫烏さんの周りが金色にキラキラと輝いている。


「すげぇな、繰り上がりなんて初めて見た。こんな感じなんだな」

「顕現せよ!!」

その言葉と共に武器へと変わり、手元へとやってくる。

私の思った通り、細長い物の様だ。


「八咫烏さん、ありがとう。私の気持ちが伝わったのかな。私は戦うよ。この剣で闇を切り割いて見せるから」

その言葉にミランダさんが微笑んでくれたような気がする。


「どうして八咫烏が鏡から剣になれんだ?何か関係でもあるのか?」

「ヤマタノオロチが倒れた時、体の中から草薙の剣が出てきたんです。草薙剣は三種の神器の1つで八咫鏡や八尺瓊勾玉と関係があるんです。だから八咫烏さんは剣に顕現出来た。そうだよね?」


「バカンナにしては、まともに説明できてんじゃねぇか。俺様に感謝しろよ。もう大会まで時間がねぇんだ。武器が変われば戦い方も変わる、一からやり直すぞ!!」

「あっ!?そっか、もう大会まで何週間もない。1年生は5月の下旬からだけど間に合うかな」

その言葉にルイスさんが笑っている。


「前途多難だな、カンナ。成る程な、姉貴にとって運命の人ってのはカンナの事だったのかもしれねぇな。アリスの言う通り、剣も持ってるしな。お前なら姉貴の意志を継いでくれる。頼んだぞ。明日から特訓だな。俺はしばらく、イギリスに戻るけど、皆んなにお披露目してビシバシ鍛えてもらえ」

「は、はい!!」


そのあと、ルイスさんと一緒に教会を出て寮に戻る事にした。

大会前に武器が変わり嬉しい様な、大変なような。

でもこれでよかったと思う。ミランダさんと一緒にいられる気がするから。

そんな事を思いながら帰路へと着いた。


No.42を読んでいただきありがとうございました。

カンナちゃんの武器が鏡から剣に変わりました。弱体化したとか言わないで下さい。

鏡がチートすぎただけです。主人公に相応しい、バランス型の王道の武器ですね。

カンナちゃんの場合、すでに4回大会のチャンピオンやライアンが使用している武器と被るので他のキャラクターとはまたタイプが違うかなと思います。

ミランダが死亡キャラとなったのもこれが原因の1つですが初期設定では裏生徒会もなくミランダは単体で行動し、生徒会の裏切り者みたいなポジションでした。

自殺も追い込まれて毒蛇に噛んでもらったみたいな感じでしたね。

初期からミランダは死亡キャラ扱いでした、ですがこのギミック考えて主人公にとって仲間となる存在でいて欲しいと思い、色々な要素を組み合わせて出来たシーンです。

ライアンが死亡キャラ候補にあったのもこの為です。

同じ剣を持つ同士共通点があり、ライアンの死によってカンナの武器が変わるギミックも考えていました。

作者としてもキャラクターが簡単に死んでいくより、何か残してくれた方が気持ち的に楽です。

アリスちゃんがピクニックやボートの話をしていましたが、これは原作のアリスのモデルであるアリス・リデルさんとキャロル先生のエピソードですね。

フォスター家もリデル家をモデルにしていて、教育関係者を輩出していると言っていましたが、リデルさんのお父様が大学の学寮長をしていた事に由来しています。

偶然にもリデル家は男爵家がルーツの家系だそうで、その当主はトーマスさんと言うそうなのですが実はミランダやルイスの父親もトーマスと言います。合わせてないんです本当に。親戚設定も偶然でした。

スチュアート家の男性がゴードンやエドワードと呼ばれていたと思いますがそれに合わせたらトーマスになったんです。青い機関車で合わせたらこうなりました。

詳しい話はBo.04「ケリー家について」でご紹介します。

こちらではローザ、ミランダ、ルイス、時々トーマスで各キャラの情報や伏線の解説をしたいと思います。

伏線は裏生徒会やミランダとルイスのバックボーンについてですね。

現在制作中なのでNo.43「特訓」と同時投稿にしたいと思います。

次は8/22の16時投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ