No.41 異変
最初はミランダ視点で途中でカンナに切り替わります。
「・・・」と縦に入った所から視点が切り替わります。
誰かに抱えられ、引きずられるように何処かへと向かう。
(…エンジン音がする、バスに向かっているのかしら?)
少し目を開け、真下を見ると私とは違う大きな男性の足が見える。
その見慣れた靴に私は安堵した。
(ルイスが運んでくれたのね。そうよね、私を抱えられるぐらいには成長してるわよね)
幼い頃、両親や弟と離れた私はどうして私達は一緒にいられないのかと何度も疑問に思った。
父は幼い頃に病で亡くなり、母は心の病を患い自ら死を選んだ。
残された私達は共に支え合って生きていかなければいけないはずなのに、何故かそれが苦痛だと感じる時がある。
イギリスに帰っても帰る家が違う、それっておかしいと思わない?
同じ姉弟のはずなのに、どうして私達は一緒にいられないの?
そう何度もゴードンや義兄のエドワード、乳母にも尋ねた事がある。
そうしたら、その原因は私なのだと口を揃えてそう言うのだ。
私はお母様と一緒で幼い頃から心の病を抱えているらしい。
自分ではわからなかった、だからどうすればいいのかもわからなかった。
でも皆んな、いつか治ると言ってくれた。ルイスもそれを望んでいた。
しかし、それが完治したと言う自覚もないのだ。
元々その病にかかっている事自体、私には自覚がなかったからだ。
(Dr.ヤシロやライアンのお父様ならわかるのかしらね…)
そんな事を考えていると、いつの間にかバスの座席に到着しルイスが座らせてくれた。
(いつになったら家族揃ってあの邸宅に住めるのかしらね。本当にごめんねルイス。私がダメなお姉ちゃんだから、いつまで経っても自分達の家に戻れないのよね)
情けない自分が嫌になる、4thリーグの優勝者になろうともその心を満たす事は出来ない。
どうしたらこの苦しみから解放されるのだろうか?
…一つだけ思いついた。
いや、ずっと心の片隅で考えていた事なのかもしれない。
この苦しみから解放される方法が。きっと皆んなは反対するだろう。
でも、私にはこれからがない未来がないのだ。
ママなら私の考えを受け止めてくれるだろうか?
あと、私にはやらなければいけない事がある。
それを済ませてから実行に移そう。
(私はずっとこのまま大切な人達と一緒いたい。幸せになりたいの。それがどんな方法だったとしても)
決意を胸に秘め、これ以上迷惑をかけられないと寮に着く少し前に目を開き、眠たそうに目を擦る演技をする。
「…あれ、私眠ってたのね。ここはどこ?」
「やっと起きたのかよ。こっちは心配したんだぞ、試合終了直後に倒れやがって」
「ごめん、ごめん。皆んなも心配してついてきてくれたのね。ありがとう」
「ミランダさん、大丈夫ですか?ご迷惑でなければこのまま寮に行かせて下さい」
「心配してくれて、ありがとうカンナ。そうだ、カンナに大切な話があるの。そのまま私の部屋に来てくれる?」
「大切な話ですか?わかりました、すぐ行きますね」
その言葉にルイスから疑いの目を向けられる。そのあと耳打ちで話かけられる。
「おい、姉貴なんだよカンナに大切な話って」
「今、3人に調べてもらってる事よ。カンナは私達の仲間でしょ?ルイス、ワットとクレアとライアンを呼んで。皆んなを集めるわ」
「ライアンまで呼ぶのかよ。まぁ、あいつも仲間みてぇなもんか。わかった、姉貴は機械音痴だからな。頼まれた」
「頼みましたぞ、ケリー男爵」
とルイスと2人で話しているとアカリが声をかけてくる。
「2人で何コソコソ話をしてるの?」
「たとえ親友でも内緒の話よ」
(この件はアカリには絶対に知られたくないの、ごめんね。それが一番良いと思うから)
そのあとグノムアランド寮に着き、丁度電話で呼んでいた3人が来ていた。
「えっ、ワットさんにクレアさんまで試合観戦に来てましたっけ?何でここに?」
「ご命令で飛んできたの。この裏生徒会のボスであるミランダ君が、君に話があるんだってさ」
「これで裏生徒会メンバーが揃ったと思うよ?あっ、空港でも揃ってたかな?ライアンは+αだと思うよ?」
「これで全員ね、丁度良いわ。アカリには申し訳ないけど皆んなを部屋に入れるからリビングで待っていてくれる?大切な話があるの」
その言葉に動揺しながらもアカリは頷いてくれる。
それもそのはずだ、今までライアンならまだしもワットやクレアと交流があるなんてアカリは知らないのだから。
「じゃあ、私はリビングで待ってるから。後で軽食を持ってくるね」
空気を読んでくれたのかアカリはリビングの方へ足を進めている。
アスピリディオンも私達をみるがアカリと同じようにゆっくりとリビングに行くようだ。
「あ、あのミランダさん。この集まりって」
と動揺しながらカンナは言っている。
元々頭がいいのだ、私達を見れば察するだろう。
「そうよ、カンナ。私達はDr.ヤシロの仲間。そして貴方の仲間でもあるわね。ちゃんと話をするからついてきて」
「俺まで一緒にされても困るけどな。まぁ、根っこは一緒か。かくまってるのは事実だしな」
とライアンはため息をつきながら言っている。
そのあと、私とアカリの部屋に全員入れ、扉を閉めて話を始める。
「どう、ワット?守護者達の調査は進んでる?」
「さっき、GPS反応で位置を探したんだけどボスの言う通りだったよ。全員地下にいるみたいだね。でも8つしか反応がなくて残りの1つがわからなかったんだよね。それぞれの出身と世界地図を重ねるとニホンのカナガワに反応があるから最後はそこかなと思うけどね」
と言いながらワットは私にパソコンの画面を見せてくれる。
そこにはシャトランスの地図と切り替えると世界地図が映っており両方とも多数の青い点ともう一つ赤い点がある。
「おい、姉貴。ちゃんとカンナに説明してやれよ。話に追いついて来てねぇぞ」
そのルイスの言葉通り、カンナはオロオロしているようだ。
「あ、あの。皆さん何の話をしているんですか?全然話が見えないんですけど」
その言葉にライアンが説明を入れる。
「ミランダは言葉が足りなすぎだろ。連携が取れてないぞ。裏生徒会メンバーは全員理事長に対して不信感を抱いているのは知ってるだろ?人工的な繰り上がりもそうだし、守護者達が行方不明になっている事も理事長が関係している。理事長は守護者達を地下に閉じ込めている。その誘拐方法が良くわからないけどな。
ただ、GPS機能で理事長は守護者達の位置を把握できていたのは確かだ」
「父が守護者の皆さんを誘拐したんですか!?でもどうやって?それにオクトール諸島に地下ってあるんですか!?」
「カンナ君これ見て、ここの画面内の校舎の地図に地下方面に8つの青い点があるのがわかる?そして今オクトール諸島には6つの反応があるんだ。しかもこの部屋に4つ、シルヴェスタアース寮に2つ。この青い点の5人は誰のかわかる?」
その言葉の後、ルイスがジャケットにつけているバッチを取ろうとする。
「ルイスやめた方がいいわよ。外したら余計怪しまれるわ」
その言葉にカンナも答えがわかったのか目を見開いている。
「シュン君、ラトゥーシュカさん、ルイスさん、ミランダさん、そしてライアンさん。全員バッチを持ってる人ですか!?」
「正解だと思うよ?因みに赤い点があるでしょ?これってカンナのじゃないかな?」
その言葉にカンナは慌てて画面内を見ている。
「先に謝っておくわカンナ。貴方はDr.ヤシロの娘だもの、何としてでもDr.ヤシロの行動や繋がりを探りたくてワットに頼んでGPS機能を付けてもらったわ。でも結果としてカンナ自身に怪しい言動もなかったし、情報を得られなかった。私はカンナを利用したの本当にごめんなさい」
その言葉に嫌そうな表情をしながらも首を横に振ってくれる。
「私がミランダさんの立場だったら、怪しい人物もそうですけどその身内に疑いを持つ事はおかしくないと思います。私自身、理事長の娘と知らずにこのスクールを過ごしてきました。でもそれは自分だけで皆さんはご存知だったって事ですよね。疑われるのも無理ありません」
「…ありがとう、カンナ。私達の事を理解してくれて。ワット、後でGPS機能を取り消してあげて、もう必要ないわ」
「了解だよ、ボス」
「にしても、これからどうすんだよ姉貴。守護者は全員か知らねぇけど地下にいるんだろ?その人達を解放すんのか?」
「いいえ、あの人達は眠ってるの。液体に漬けられた状態で。初めて見た時怖くて逃げ出しそうになったわ。ライアンも見たでしょ?私達の知ってる人達が液体の中に入れられて当時と同じ姿で眠っているのよ」
「…それで今年もまた優勝者が決まれば同じようにされる。でもおかしいと思わないか?絶対に抵抗するだろ?素直に捕まると思えない。チャンピオンリーグを優勝した実力派揃いの人達をどうやって捕まえるんだ?」
「それも謎だと思うの?その捕まった人達がチャンピオンリーグの優勝者なら尚更。カンナのお父さんはチャンピオンリーグにこだわりがあるのかな?それとも誘拐犯側にこだわりがある人がいるのかな?それとも両方って言う可能性もあるのかな?」
「私には父の考えがわかりません。人工的な繰り上がりをしたり、人体蘇生をしようとしたり、守護者の皆さんを誘拐したり。これって繋がっているんでしょうか?父の目的が全然わからないのですが…」
部屋の中に一瞬の沈黙が走る。
皆んなで考えるもののその答えにたどり着く事が出来なかった。
「とりあえず、今日はこんなもんだろ。でも急がねぇといけないのは事実だろうな。チャンピオンリーグの優勝者が決まれば何かしら起こんだろ。俺達はそれを食い止めないといけない。裏生徒会だけで出来る問題じゃねぇな。もっと協力者を集めぇと。守護者達が俺達の誘いの乗るかもわからねぇけどな」
「…確かにそうね。じゃあ話も終わったし、皆んなはここから出て行ってよね。私はこれから一休みするわ。何だか眠くなってきちゃったし。後でアカリに声をかけてくれる?話は終わったからって」
その言葉に皆んなは素直に頷き部屋を出て行った。
そのあと、部屋で着替え寝る準備をしているとアカリが入ってくる。
「ミラちゃん話は終わった?今、サンドウィッチと紅茶を持ってきたんだけど食べる?夕食まで時間あるし、1回食べておいた方がいいんじゃないかと思って」
「ありがとう、アカリ。折角だし、いただくわ」
机の上に置いてもらい軽食を食べいる時、アカリが話かけてくる。
「ねぇ、ミラちゃん」
「何、アカリ?」
「ミラちゃんってさ、親友にも隠し事するタイプなんだね」
その言葉にギクリと体を震わせる。
普通親友なら隠し事はしないものだ。
「えっと、ごめんなさい」
「別に怒ってる訳じゃないのよ?ミラちゃんをずっと見てきたんだもの、理解はしてるつもり。ミラちゃんは入学した時からずっと悩みを抱えてた。でも私は何の力にもなれないし実際に何も出来てない。でもね、ミラちゃん。悩みを打ち明けるのと打ち明けないのじゃ天と地程の差があると思うの。だから悩みを打ち明けて欲しいなってずっと思ってた。私じゃ力不足?」
その真っ直ぐ見つめながらも悲しそうな目をするアカリの罪悪感を覚える。
彼女はずっと見て見ぬ振りをしてくれたのだろう。
本当の良い親友を持ったと思う。
「じゃあ、親友として最期に聞いて欲しい事があるの。アカリは私が死んだら悲しむ?私はそれが一番楽になれる、救われる方法だと思っているの。死ぬ事はいけない事?私は頭がおかしいのかしら?私はお父様やお母様と一緒にいたい。それがたとえ天国だったとしても」
涙声になりながらもそう伝えると、アカリが抱きしめてくれる。
「ごめんね、ミラちゃん。ずっと抱え混んでいたんだよね?死ぬ事自体は罪では無いと思うの。でも状況によっては沢山の人が悲しむし、自分自身も後悔する。ミラちゃんが良いと思っても私が絶対に許さないから。ルイス君も一緒だよ。ミラちゃんにも気づいて欲しい、自分には沢山の仲間がいて家族がいる事に。例え辛い事があっても乗り越えて先に進むしかなんじゃないかな?私はそう思うよ」
その言葉に決意が揺らぎそうになるが、私は自分の未来の絶望しか感じないのだ。
お母様も遺書にこう書いていた。
お父様が戻ってくる望みがないなら、諦めるしかない。
お父様を化け物にする訳にはいかない。そう書き残していた。
(いつになったら私の人生は穏やかになるの?いつになったらルイスと一緒に暮らせるの?そしてシャトランスは?あんな真っ黒な組織を私達子供で何とか出来るの?)
その果てのない問題に私にそれを達成させる力も心の強さもないのだ。
自分が間違ってると思っていない。
むしろ正しい事をしているはずなのに、先が果てしなく闇に閉ざされている。
凄い、苦しくて恐ろしいのだ。
何か踏み込んではいけない所まできてしまったのか、何かに飲み込まれそうになる。
「…ありがとう、アカリ。話を聞いてくれて。やっぱり持つべきものは親友だわ。ちょっと考えさせて1人になりたいの。ママもいるから大丈夫よ。何かしようとしたら止めるでしょ。私は夕食まで寝てるわ」
「そう、ママもいるなら安心ね。でも、本当に何かあったら言ってね。すぐ駆けつけるから」
「ありがとう、アカリ。部屋を出る時、電気を消してくれる?」
「わかった、じゃあまた後でね。ゆっくり休んで」
とアカリが部屋を出て足音が無くなったと同時にママに声をかける。
「ねぇ、ママ。ママだったら私の願いを叶えてくれる?」
『…勿論よ、ミラちゃん。言ったでしょ、守護霊は主の望みを叶えるものだって。ミラちゃんの最期の望みを私が叶えるわ』
「本当にママが守護霊でいてくれてよかったわ。今まで本当にありがとう。霊界に行っても元気でね。最期に私の我がままを聞いてくれてありがとう。愛してるわ。ママ、実物顕現して」
私はママに自分の首筋を差し出す。
そのあと、ママが青白い肌に牙を突き立てた。
「The suicided was a crime in that UK」
(かのイギリスでは自殺は罪だったの)
「Because it is a past ,it does not become the crime 」
(でもそれは過去の話だから罪にはならないわ)
「Because I took medicine,I commit suicide」
(私は薬を服用したから自殺するの)
「lt is with all-around medicine not the medicine for pimple 」
(それはニキビの薬じゃなくて万能の薬だけどね)
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「やっぱりミラちゃんが心配だわ。部屋に戻ろうかな」
と私は皆さんと一緒にリビングでミランダさんが心配になり、アカリさんにお茶を出してもらっていた時アカリさんがソワソワした様子でそう言った。
「私も心配ですし、一緒に見に行って見ましょうか?何もなければそれで良いですし、軽食のお皿を取りにきたでもいいんじゃないですか?」
「そうね、カンナちゃん。じゃあ行きましょうか?」
と私とアカリさん2人でお部屋の様子を見に行くことにした。
扉を少し開けると、部屋の中は真っ暗で何も見えないが誰かの声がする。
誰かが苦しくそうに悶えている声だ。その声に嫌な予感がする。
「なんですかこの声、奥の方からですよね?ミランダさんのベットの近くですか?」
その言葉にアカリさんは焦った表情で部屋の電気をつけてミランダさんのベットへ駆け寄る。
私も一緒に行くとミランダさんの姿に驚愕した。
顔を更に真っ青にして苦しそうにしているはずなのに抵抗する動作もない、体は正常に動いていないのだ。
いわゆる、呼吸困難と麻痺状態になっている。
「ミラちゃんしっかりして、何があったの!?」
とアカリさんがミランダさんの全身を調べながら見ていると、首元に何かを見つけたようでずっと見つめている。
「ねぇ、これってママが噛んだの?ミラちゃんが自分で噛めって言ったの?ブラックマンバは猛毒を持ってるんでしょ!!何でこんな事したの!?」
『私はミラちゃんが望み事をしただけよ。ミラちゃんにとって死は救いなの。それを止める筋合いはないわ。自分の死は自分で決めるものしょ?』
「あ、あの私はどうすればいいですか!!ミランダさんを助けたいです。何か方法なないですか解毒剤とかありませんか!!」
その言葉にアカリさんは目を見開いている。
「カンナちゃん、トワコ先生をここに呼んできて!ユニコーンの万能の薬なら治るかもしれない。先生なら寮に戻ってると思うからお願い呼んできて。私はここでミラちゃんを見ていないといけないから」
「はい、わかりました!!」
そのあと、すぐさま部屋を出てバス停の所まで行こうとしたが時間が決まっているバスよりすぐさま行ける車の方がいいと思いラントユンカー君を探す。
駆け足でリビングに行くと、皆さんが驚いた顔をしている。
「おい、どうしたカンナ何かあったのか?」
「ルイスさん大変なんです。ミランダさんが毒蛇に噛まれたみたいで解毒剤が必要なんです。ラントユンカー君はいませんか!!緊急事態なんです」
その言葉に皆さん慌てている。
「ラントユンカーなら部屋にいる筈だ、案内する」
とライアンさんに連れられラントユンカー君の部屋に向かいノックすると彼が出てきてくれた。
私とライアンさんで彼の両手を引っ張る。
「2人ともどうしたんだ?夕食なら7時からだろう、随分と食いしん坊なんだな」
「ラントユンカー君時間がないの!!すぐにトワコ先生を呼ばないとミランダさんが死んじゃうかもしれないの!!早く!!」
その私の言葉に状況を理解してくれたのか、一緒に来てくれる。
『どうやら緊急事態のようですね。ラントユンカー様、駆け足で参りましょう』
「そうだな。毒が体内に周るまでどのくらい時間がある?」
「ブラックマンバの毒は即効性で20分しか保たない。早く治療しないと致死率100%だ、早くしないと助からないぞ!!くそ、ずっと様子がおかしいと思ってたんだ。ミランダも夫人と同じで精神疾患の可能性がある。うつ病の症状とよく似てるしな。自殺のリスクも大きい。早く気づいていればこんな事には…」
「ライアンさん考えていても仕方ありません。まずは私の寮に行きましょう」
そのあと、3人でドラゴニクヴァルガン寮に行きトワコ先生が丁度リビングにいてくれたので事情を説明して車に乗ってもらった。
「あと10分よ。寮に間に合うかしら。ギリギリよね。何とかもって欲しいわ。でも私を呼んでくれたのは正解よね。毒や麻痺を治すなら万能の薬が一番だもの」
そのあと、薬の入れ物の状態だがユニコーンさんが話かけてくる。
『でもハニー、例え万能の薬でも人を生き返らせる事は出来ないよ。死への冒涜だからね。ハニーもそれはわかっているだろう』
「そんな事、百も承知よ。でも私に救える命があるかもしれないじゃない。私だって誰かが死んでいく姿を見たくないわ」
とトワコ先生は俯きながらそう言っている。
トワコ先生にも辛い過去があるのかもしれない。
そのあと、駆け足で寮につきミランダさんの部屋へと向かう。
中ではルイスさんがミランダさんの手を握り、涙を流している姿を見つけた。
「姉ちゃん、お願いだから俺をおいていかないでくれ。どうして俺を1人にするんだよ!!何で側にいてくれないんだよ!!姉弟で支え合ってケリー家を繁栄させてくれよ。どうして俺の気持ちを無視するような事すんだよ。姉ちゃんはお袋と同じじゃねぇかよ!!」
その言葉に胸が痛くなる。
ミランダさんはどうしてルイスさんを悲しませてまで死を選ぶ必要があったのだろうか?
1年しか一緒にいなかった私にはミランダさんの気持ちを深い所まで理解する事が出来なかった。
「ミランダちゃんお願い。この薬を飲んで」
と口を開け薬を流しこもうとするが、呼吸困難という事もあって上手くいかない。何とか無理矢理口を開け、薬を流し込む。
薬を流し込んだ直後、ミランダさんの呼吸が「ピタッ」と止まる。
薬が周り毒を消せたのかと思ったがルイスさんが叫び始める。
「姉ちゃん、お願いだから目を覚ましてくれ!!どうして、死ななきゃいけねぇんだよ!!姉ちゃんは悪人なんかじゃない、神の恩恵を受けるべき存在なんだ。そんな人が自殺するなんて神は何を考えてだ!!死は救いだとでもいいたいのか!!」
その言葉でミランダさんが今、この場所で亡くなった事が私にも自覚できた。
今そこにいるのはミランダさんじゃない。ミランダさんの抜け殻なのだ。
私は彼女に近づき手を握るが温度を感じない。
血液が通っておらず冷たいのだ。
私は涙を流しながらミランダさんに縋り付く、どうしていつも私の前から大切な人が居なくなってしまうのだろうか?
ルイスさんの言う通り、ミランダさんは悪人ではないむしろいい人の筈なのにどうして世界はこんなにも理不尽なのだろうか?
そのあと、先生方や校長のペルケレ先生も駆けつけて来てミランダさんの遺体を確認している。私はその場から動けずにいた。
もう、この場所から居なくなってしまったら本当にミランダさんが死んでしまったと自覚してしまうからだ。
その様子にペルケレ先生が声をかけてくる。
「カンナさん、ありがとうございました。トワコ先生を呼んで下さったのはカンナさんですよね?ミランダさんが亡くなった事は決してカンナさんのせいではありません。今日はもう寮に戻りましょう。ここは大人達に任せてきちんと休んで下さい。明日、教会で葬儀をやってミランダさんとお別れしましょう」
「嫌だと言ったらダメですか?」
その言葉にペルケレ先生は下を向いて悲しい表情をしている。
「確かにカンナさんの気持ちもわかります。ですが、ミランダさんが亡くなったのは紛れもない事実なんです。私達は彼女の死と向き合って、彼女を弔わなければいけない。それが残された者たちの使命だと思っていますから」
「…はい、そうですね」
そのあと私は部屋を出て、無気力になりながらも何とか寮に辿り着いた。
私は大切な人が亡くなった事実を受け止める事が出来るのだろうか?
私はミランダさんの存在を無かった事にしたくない。
今の私達に出来る事はなんなのだろうか?
そんな事を考えながらそのあとの夜を過ごした。
No.41を読んでいただきありがとうございました。
作者的にはミランダが自殺するのもそうなんですが、ルイスの反応が一番辛いですね。
ミランダが最期に言っていたセリフはイギリスを意識して言わせています。
死際は故国の事を考えるのかなと思って英語にして下に訳を載せました。
イギリスではニキビの治療薬の中に自殺衝動を引き起こしてしまう薬があると言われています。
特に10代〜20代が多いので、ミランダのセリフはブラックジョークと言うかブリティッシュジョークですね。
何故ミランダをこうして死亡キャラとした点については次の話が終わった後にご説明します。
作者は殺気が強い人なのでキャラの死亡ルートを連載前に考えていました。
その中でもカンナにとって大切な存在となる、ライアンかミランダが死亡するルートを考えていました。
それぞれ死亡のタイミングが違いますがこのどちらか1人は生き残るようにしています。
裏生徒会とライアンを一緒に出させたのはこのためです。
ライアンはカンナの仲間であり、ミランダと同じ情報を持っているからですね。
この2人どちらかかが生き残っていれば物語は進行できます。全滅すると完全に詰みます。
ライアンが死亡するルートは第2部でご紹介できたらいいなと思います。
実際に本編でやる訳はありませんけどね。
次はNo.42「別れと変化」をお送りします。




