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No.23 クリスマスパーティー

1学期の中で一番熱く、くだらない戦いが始まります。

というか、作者クトゥルフ神話ネタ入れすぎじゃありません?

今回は冒涜的な魔導書まで登場します。もろ、タイトル出してますからね。

消されないか心配です。

冬休みに入り、今日は12月24日クリスマスイブという事で夜にクリスマスパーティーが行われる。


「う〜ん、ちゃんと似合ってるかな?」

瞳と同じ、黄緑のパーティードレスに着替え準備をしていた。

そういえば母も同じ色のワンピースを着ていたので既視感を感じる。

服の好みも一緒なのかも知れない。


『おい、もうすぐ時間だぞ。バスに乗り遅れんなよ』

「わかってるって、なんだろう?何かしっくりこないんだよね。髪型かな?」

普段と一緒の髪型なので、こう言う華やかなドレスを着ていると違和感が出てしまうのかもしれない。

しかし、時間は待ってくれないのでバスに乗り会場である大広間へと向かう事にした。


その時だった、誰かの声がする。それと共にドタドタと足音もする。

「くそっ、こう言う時だけ調子いいよな。ダイル、逃げるぞ!!」

とルイスさんが女子生徒の皆さんに追いかけ回されている。

(えっ!?何、何が起こってるの!?)


とりあえず、助けた方がいいのかな?と思った私は脇道の方にルイスさんを引っ張り隠れるように指示する。

女子生徒の皆さんはルイスさんの名前を呼んでいるが、そのまま大きい道の方に進んでいた。


「カンナか、助かった。あいつら毎年しつこいからな。いちいち相手にしてたらパーティーなんか参加出来なくなるだろうが」

と疲れたような表情で話している。


「ルイスさん凄いですね。あんなに女子生徒さん達に囲まれるなんて。何かしたんですか?」

「何もしないから追い回されてんだろ。俺にヘアスタイルとメイクを頼んでくる奴らがいるんだよ。今年もいつも通りやってたらギャラリーが増えてこのザマだ」

「へぇ、ルイスさんそんな事までできるんですね。器用なんですね」


「姉貴は不器用だし、アリスも小さいからな。見てらんないから俺がやってやってんの。俺の理想を押し付けてるだけかも知れないけどな」

(あっ、ルイスさんがシスコンの理由がなんとなくわかった気がする)


「でも羨ましいです。ルイスさんだったら周りから見て、こう言うのが似合うみたいなのがわかってそうですから。その人のイメージに合うように、ヘアスタイルとかメイクを考えてるんじゃないですか?」

「確かにそうだな。そう考えると、カンナお前もしっくりこないな。よし、時間と顔貸せ。また追いかけ回されるより、こっちの方がいいな。カンナ、ついてこい」


そう言われ、19階にある更衣室にきてしまった。

今は誰も使ってないので人もいない、鏡台の前にメイク道具が置かれている。


「よし、始めるか。よく考えたら、お前の母親が同じような服を着てたから違和感があったのか。髪型も違うしな、同じようにしてみるか。姉貴もお袋そっくりだからな。母娘(おやこ)は似るんだろ」

とニヤニヤしながら、楽しそうに言っている。

「はい、それでお願いします」

(ルイスさん、凄い楽しそう。メイクするのが好きなのか、家族が好きなのかわからないけど)


そのあと、ヘアスタイルとメイクをお願いした。

手慣れているのか短時間でテキパキと進めている。

「よし、出来たぞ。手鏡で見るか?」

と鏡を渡されると驚愕した。

まるで、自分が自分ではないようにキラキラと輝いているのだ、しかもママそっくりに再現されている。


「ルイスさん、これは女子生徒の皆さんが追いかけ回すのがわかります。来年の予約も入れていいですか?」

「カンナ、お前もか。まぁ、いいか。1番目にしてやるから忘れるなよ」

「はい、絶対行きます!!」

そのあとルイスさんは片付けをするそうなので、お礼も兼ねて一緒に手伝い大広間へと向かった。


入り口ではラトゥーシュカさんがおり、何かを渡している。

「あの、これは?」

「ビンゴカードだ。参加しないなら他の生徒に回してくれ」

その言葉に同様しながらも、ラトゥーシュカさんからビンゴカードをもらう。


「あの、クリスマスパーティーって忘年会かなにかですか?」

「ぼうねんかい?カンナの所にはそんな物があるのか?」

とルイスさんは首を傾げている。

(多分、ニホン人じゃないと理解してもらえないのかな…)


大広間に入るとクリスマス用の飾り付けがされていて、中央にはパーティー用のテーブルがあり、その上のは美味しそうな料理が並んでいる。

椅子はないので、立食パーティーのようだ。

右側の方に大きなクリスマスツリーが置いてあり、その近くの壇上には様々な景品が置かれていた。しかもそれが5つある。

(本当にやるんだ、ビンゴ大会!!)


「あっ、カンナ君、ルイス君。こっち、こっちー」

と左端のソファーには寝そべりながらパソコンの画面を見ているワットさんとその側に紫のドレスを着たクレアさんがいた。

色々、突っ込みたい事があるが自分の心を落ち着かせる。


「…あの、ワットさんなんでスーツじゃないんですか?それ完全に部屋着ですよね」

「だってビンゴ大会やってご飯食べたらさっさと帰るもん。今、ミルクちゃんが生放送でクリスマスライブやってるからね。用事が終わったらさっさと帰るよ」

(凄い、フリーダムだな)


「えっと、そのミルクちゃんって誰ですか?有名なアイドルの方ですか?」

「えっ、カンナ君、ミルクちゃん知らないの!?カンコクのネットアイドルだよ。カンナ君だったら知ってるかと思ったのに。ミルクちゃん、なんか妖精が見えるらしいよ。キャラ付けなのかわからないけどね」

そんな話をしていると、クレアさんが話しかけてきた。


「ねぇ、カンナはビンゴする?いらないんだったらワットにあげた方が良いと思うよ?」

「えっ、どう言うことですか?」

「この会場にはビンゴ王子とビンゴの女王がいるからな。大体そいつらに渡しておけばいいんだよ」

「という事で、このビンゴ王子である僕にそのカード頂戴!!」


「えっ、嫌です!!」

ワットさんに渡すと悪用されそうなので、景品を見渡すとある物に目が止まった。

「あの大きな熊のぬいぐるみが欲しいです。ですからあげられません」

その言葉に3人は目を見開いている。


「おい、カンナそいつはやめとけ!!女王が絶対奪いにくるぞ!!」

「女王?」

「ほら、そこにいない?目も顔もキラキラしている人がいると思うよ?」

クレアさんが見ている方向に目を向けると、黒のドレスをきたミランダさんがいた。

今日は髪型を変え、ポニーテールにしており大人っぽく見えるがその目は子供のようだった。


「あれはドイツ製のテディベア!!今年も絶対手に入れるわ!!皆、カードを頂戴」

というと、男子生徒が集まりミランダさんにビンゴカードを渡している。

まさに女王様だ。


「カンナ君、ビンゴ大会はね。1学期においてリーグ戦と同じぐらい激しい戦いが繰り広げられるんだ。会場を出たらそこは戦場だよ。寮に帰るまでがビンゴ大会だからね。景品を無事に持って帰れる保証なんかどこにもないんだ。あのテディベアを手に入れようものなら女王様から(むち)が飛んでくるよ」

(お、恐ろしい!!)


しかし、立ち止まっている訳にはいかない。

私もこのサバイバルに立ち向かわなくては。

「でも負ける訳にはいきません!!私も景品を持って帰りたいです」

「…カンナ君は命知らずだね。いいよ、行ってこればいい。直ぐにシャトランスの洗礼を受ける事になると思うよ」

その言葉に恐怖しながらも、私はビンゴ大会が始まるまで会場内にいる知り合いに声をかける事にした。


1番近くにシュン君がいたので声をかけるが、着物を着ているようで会場では浮いて見えた。

「シュン君、こんばんは。今日も着物なんだね。会場で浮いたりしない?大丈夫?」

「カンナさんか、一瞬レイカさんかと思った。親子だからよく似てるな。着物はもう1人着ている人がいたからさっきまで一緒に話をしていたんだ」

とシュン君の見ている方向を見るとアカリさんがいた。

ライアンさんやヒデキチさんと話をしている。

確かにシュン君と同じように着物を着ていた。


「アカリさんだね。私も挨拶してこようかな?またね、シュン君」

と少し話をした後、アカリさんの元へ行く事にした。


「皆さんこんばんは。何の話をしているんですか?」

「あっ、カンナちゃん。今ね、ミラちゃんの話をしてたの。テディベア、コンプリートできるのかなって。ある意味凄い記録よね。4年連続でよ」

とクスクス笑いながら言っている。


「俺もビンゴカード強奪されたからな。俺の人権なんて女王様には関係ないんだろうな」

「ミランダ殿は毎年、全力で挑むからな。容赦はいらないのだろう。必ずどんな手を使っても手に入れるからな」


「す、凄いですね。女王様は」

どうしてこんなにも全力で挑めるのだろうか?逆に尊敬の念すら覚える。

3人と話しているとゆっくりと誰かが近づいてくる。

寮長のアスピリディオンさんだ。


「皆んな〜、何話してるの〜?楽しそうだね〜」

「アスピリディオン遅いぞ、いや逆にいいかもしれないな。ミランダにカードを取られなくていいからな」

「皆んなが早いんだよ〜。あっ、初めましての子がいるね。僕の名前はアスピリディオンだよ〜。よろしくね〜」

と私に握手をしてくれた。


「初めまして、ヤシロ・カンナと言います。よろしくお願いします」

アスピリディオンさんは小麦色の肌をしていて、優しそうな垂れ目をしている。

「そういえば寮長さんってイベントとかの司会、進行役をする事が多いんですか?ラトゥーシュカさんはハロウィンもやってましたよね?」


「ハロウィンとクリスマスはラトゥーシュカの担当だからね〜。僕はゆっくりさせてもらってるよ〜。生徒会も大変だからね〜ちょっとでも分担しないとさ〜」

その言葉にライアンさんが何度も感謝の言葉を言っている。

「そういえば、アポリナルさんはスペインに帰国したんですけどシーグリットさんってパーティーに参加していらっしゃるんですか?」


「シーグリットなら同じ寮の子達と一緒にいたと思うよ〜。探せばいるんじゃないかな〜」

そのあと、私は皆さんに別れを告げてまだ声をかけていない人の元へ行く。

すると、タマミちゃんやヴァニラさんがこちらに手を振ってくれている。

その中には寮長のシーグリットさんもいた。


「皆さんこんばんは。えっと、シーグリットさんは初めましてですよね。ヤシロ・カンナと言います。よろしくお願いします」

「シーグリットよ、よろしく。2人と仲良くしているんでしょ。貴方も大変ね」

(まぁ、確かに大変っちゃ大変かも…)

シーグリットさんは遠くから見ても美人だが、近くで見るともっと美人さんだ。

クレアさんよりも背が高くスタイルがいい。

青い瞳に水色のロングヘアーでウェーブがかかっている。


「シーグリット、何が大変なんですか?カンナに苦労をさせた覚えは一度も無いと思うのだけど」

「カンナちゃんは大変だったー?そんな事ないよねー?」

とお2人さんは自覚がないようだ。


「でも、2人がいると、楽しいですよね。飽きないというか、何というか…」

「まぁ、それはあるわよね。まともな人間が私しかいないのはそれはそれで問題だけどね」

(そういう人に限って1番まともじゃないんだよな…)

とオチが見えてしまったので3人と別れ、改めてビンゴ大会の景品を確認しに行った。


近くには先生方が景品の準備をしていた。

熊のぬいぐるみを近くで見たいと思い近づいて見るとペルケレ先生が側で準備をしていた。

私の姿を見て、一瞬動きを止めるが声をかけてくる。


「カンナさんでしたか。一瞬、貴方のお母様かと思ってしまいました。本当にそっくりなんですね。瞳の色が同じならどちらかなんてわかりませんよ」

「あの、ペルケレ先生って母の事ご存知なんですか?」


「勿論、数少ない守護霊学の研究者だった方ですからね。ニホンに仕事で行った時もお母様に案内をしてもらって神社にも足を運びましたから」

「そうだったんですか。私、ちょっとペルケレ先生の事が羨ましいです。仕事でも母との思い出があるのはいいなと思ってしまって。私にも思い出はありますけど、本当に少ししかないんです」

その言葉にペルケレ先生は悲しそうな、切なそうな顔をしている。


「…そうですね。でも思い出がありすぎると失った時のショックもまた大きいものですよ。だったら最初からそんな思い出が無ければいいのにって、何度も思いましたから」

「確かにそういう考えもありますよね。でも、それって悲しい考え方だと思うんです。自分勝手ですけど、私は母との思い出が欲しかったし側にいて欲しいと思っていました。私は母の存在を否定したくないんです。いなかった事にしたくない。多分、私は母の事を一生忘れる事は無いと思います」


「…そうですか。カンナさんがそう言ってくれるならお母様も喜んでいるでしょう。自分の存在を忘れないでいてくれる人がいるという事はとても幸せな事だと思いますよ」

そんなしんみりした話をしてしまったが、ペルケレ先生が元気付けようと明るく声をかけてくれる。


「カンナさん、メリークリスマス。まだまだパティーは始まったばかりですから楽しんで行ってくださいね。出張先で少しずつ集めたビンゴ大会の景品もありますからクリスマスプレゼントとして是非手に入れて下さいね。…会場の外に出たらスクール側は景品の保証はできませんので自衛という形でお願いします」

(ペルケレ先生まで!!)


そのあと、ビンゴ大会が始まるのか参加者達が集まっている。

大会は5回戦まであり、ペルケレ先生が用意している5回戦目の熊グッズの中にテディベアがある。

ワットさんはどの景品を手に入れるか迷っているようだ。


「どうしようかな…魔導書も欲しいんだよね。でも妖刀もいいよねレプリカだけど…。あっ、提灯も欲しい。木彫り熊だ!!家の玄関に飾りたい!!ダメだよカンナ君、決められないよ」

「もう1回戦目から挑戦したらどうですか?早くビンゴが揃った人から景品もらえるんですよね?結局、運な気もするんですけど」


「何言ってるのカンナ君、ビンゴ大会はね計算すれば優位に持ち込めるんだよ。出てくる玉の軌道、それで何番が出でくるのか先読みして。いち早く「ビンゴ!!」って言えるかが1番大事なんだよ」

(何でこんなに全力で挑めるんだろう…)

女王様の方は何か作戦でも立てているのかと気になった私はミランダさんにも声をかける事にした。


「ミランダさんは何回戦に挑戦するんですか?テディベア狙いだってアカリさんが言ってましたけど」

「えぇ、勿論。絶対にどんな手を使ってでも手に入れるわ。こういうのは数が物を言うのよ。5回戦目で全部のカードを使えばライバルも少なくて済むし、早くビンゴできる確率も上がる。この勝負もらったわ!!」

(す、凄い!!豪快だ!!)

不器用なのか豪快なのかはわからないが、ここまで全力でやっているのを見ると尊敬の念すら覚える。


そしてビンゴ大会が始まった。

一回戦目はトワコ先生が用意したニホンのお土産10選だ。

「はい、はい!!ビンゴ、ビンゴ!!やったよ、カンナ君妖刀貰っちゃったよ。この調子で提灯も手に入れちゃおっと」

「本当に楽しそうですね」

「こういうのは全力でやった方がいいでしょ?カンナ君も楽しんだもの勝ちだよ」


次はシェパード先生用意した絵画&本10選だ。

「ねぇ、シェパード先生ってどこで魔導書手に入れたのかな?アメリカの大学でも魔導書なんて数冊しか無いんだよ。レア物だよね」

「というか、アメリカの大学に魔導書って置いてあるんですか?そっちの方が驚きなんですけど」

魔導書の事が気になって仕方ない私はシェパード先生に聞いてみる事にした。


「シェパード先生、この古めかしい本はどこで手に入れたんですか?」

「これかい?オーストラリアの古書店で偶然見かけて思わず手に取ってしまったんだよ。何だか買って下さいって本に言われているみたいでね。でも言語がわからないから他国の子なら読めるかと思って景品に出したんだよ」


「シェパード先生、それって魔導書に気に入られちゃったんじゃないですか?」

「そうなのかい?」

とシェパード先生は首を傾げている。

そのあと、ワットさんにシェパード先生の事を話した。


「あっ、それやばいね。魔導書って魔力を持ってるものもあるから魅了されちゃったのかもしれないね。というか、誰がそんな物売ったんだろう?僕も地元のニューヨークで探してみようかな」

こんなものが身近にあっては(たま)らないが、誰かが持っていないといけないのは確かかもしれない。


魔導書の行方を見守っていたが、何とワットさんがまたビンゴし魔導書を持ってきてしまった。

「これ、タイトルなんだろう?エ…エイボンって書いてあるよ」

と言いながらページをパラパラめくっている。


「それ大丈夫なんですか、ワットさん?」

「これ何語だろ?英語じゃないみたい。古い言語っぽいよね。ラテン語とかかな。クレア君だったらラテン語の授業とってるし、わかるかもしれない」

「これ以上被害者をだすのはやめて下さい!!」

ビンゴ大会はこんなに恐ろしい物だったと初めて知った。


そしていよいよ5回戦目、ペルケレ先生が用意した熊グッズ10選だ。

「ついに来たわ!!絶対手に入れてやるんだから!!」

「ミラちゃん、頑張ってねー」

と遠くでアカリさんが応援している。


「僕も木彫り熊欲しいな。これで無事に帰れればミッション完了だよ」

「私も景品を持ち帰りたいです。一緒に頑張りましょう」

そして、ペルケレ先生がビンゴマシンを回している。

私達にも緊張感がはしる。

次々と呼ばれていく数字に私は焦りを感じていた。


「うわ、カンナ君早くない!?もうリーチじゃん」

「あと、10番だけなんです。早く呼ばれないかな」

ペルケレ先生も緊張しているのか、回す手がゆっくりになっている。

凄くもどかしい。


「えっと、次は10番!!」

「ビンゴです!!」 「ビンゴよ!!」

「えっ、同時!!ちょっと2人ともズルしてるんじゃないの」

とワットさんは私とミランダさんのカードを確認している。


「まさか同時になるとは思わなかったわ。カンナの欲しい物はなに?」

「あのテディベアが欲しいです!!」

その言葉にミランダさんは苦しそうな顔をしている。


「まさかカンナが敵に周るなんて思ってもみなかったわ。でもこれだけは譲れないの。身を引いて頂戴。お互いの為に」

「申し訳ないんですけど、私もテディベアが欲しいです。せっかくビンゴしたんですから景品を持って帰りたいです」

その様子を見ていたペルケレ先生が話かけてくる。


「申し訳ないんですが、ぬいぐるみは1つしかないんです。こんなに需要があるんだったら数個用意おけばよかったね」

「いや、この2人だけでしょペルケレ先生」


「で、どうするカンナ。私はどんな手を使ってでも絶対に手に入れるわ」

テディベアを諦めきれずそれを見つめるがある事に気づいた。

「…あ、ダメだ。持って帰れない」

「どういう事カンナ君?」


「パティーが終わった後、友達の家に行くんです。だからあんなに大きなもの持ち運べないんです。ミランダさんにお譲りします」

その言葉にミランダさんは喜んでいる。

「やったわ、カンナありがとう。この恩は絶対返すわ」

と嬉しそうにテディベアを抱えている。


私はそれをそのまま小さくしたぬいぐるみストラップを手に入れた。

「カンナ、何かお礼は出来ない?年下に我がまま言うなんて大人げないでしょ?何か変わりになるものはないかしら?欲しい物とかない?」

「欲しい物ですか?」

(なんだろうか?いや、1つだけある。でも、それをミランダさんに言っても仕方ないのかもしれない)


「いいんです、自分で手に入れないといけませんから」

「何?それって?」

「えっと、敵に立ち向かう勇気とか力とか凄い曖昧なんですけど…」

「いいじゃない、それって凄く大切な物じゃない?敵はね、多い方が燃えるのよ。ライバルだってそうでしょ?私が協力してあげるわ。カンナはその気持ちを大切にして。強くなりたいのは皆同じだから。今は無理でも模擬戦とか一緒に戦う機会を作った方がいいわね。大丈夫、約束は必ず守るわ」


「凄く頼もしいです。よろしくお願いします、ミランダさん」

ミランダさんから素敵な提案をしてもらったのでそれに承諾し、その後のクリスマスパーティーはお開きとなった。

ワットさんは先に帰ってしまったので、クレアさんやルイスさんと一緒に帰る事にした。


「本当にあの女王様は大人げないよな。怒っていいぞ、カンナ」

「そんな事、素敵な約束をしてもらえましたから十分ですよ」

「でも、本当にテディベアが好きだよね?どうしたらああなるんだろう?」

「イギリスだとな、生まれてきた子供に両親がテディベアを送るんだ。あの女王様は昔の思い出にすがりついて離れられないんだろ。いい加減、目覚せっつうの」


「そんな言い方しなくても、私も亡くなった母の思い出にすがり付いていますから」

「そうか、悪かったな。でも、親子だからと言って仲良くしなきゃいけないルールはないだろ?少なくとも俺は、大切な家族を悲しませるような奴は切り捨てていいと思ってるからな」

その言葉にハロウィンでの事を思いだす。

ルイスさんはお母さんに対して良い感情を持っていないのかもしれない。


『おい、ルイス。クールじゃねぇな。頭冷やせ。お前の方がガキに見えるぞ』

「…そうだなダイル。外に行って頭冷やしてくる。ウンディーネが雪降らせてんだろ。ロンドンだったら大騒ぎだな、あっちじゃ雪なんて見られねぇからな」

「えっ、雪降ってるんですか!?私も見たいです」

「庭園の方もイルミネーションをやってたと思うよ?カンナも行ってみる?」

そのあと、3人で外の散歩をした後寮へ戻り、帰国の準備をした。




No.23を読んでいただきありがとうございました。

やっとこれで1学期が終了ですか、かなり濃い内容になりましたね。

期間でいうなら9月〜12月の3か月でこれですからね。

クリスマスパーティーは4年生や寮長をメインに書きたいと思っていたので寮長の容姿についても触れていましたが、アポリナルは触れていなかったので追記しておきます。

アポリナルな髪はブラウンで赤い瞳をしています。髪はゆるい天然パーマみたいなイメージですかね。

とはいえ、作者もキャラクターのイメージとかまだまだ決まってない所もあるので現段階でのイメージを描写しています。自分でキャラクターのイメージを考えるのも面白いですからね。

次はNo.24「帰国」をお送りします。移動の為に1話分使いますからね。大袈裟ですが皆んなで一緒に帰ってるみたいな描写をしたかったので律儀にやってます。ドンドン人が少なくなる感じが好きなんですよね。

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