Ex02 シュンとレイカの話
この作品のいい所は故人であってもキャラクターとして成立する所ですよね。
レイカもそうですが、重要な手がかりを持っている人もいます。
その情報を共有できるのは霊感のある人間を集めたシャトランスぐらいなものだと思います。
『ねー、シュンまだ待たないといけないの。シルフ疲れたんだけど』
「待っている人がいるんだ、無闇に動くのはよくないだろう」
同じ寮のワットさんに頼まれ、シルフとここで待っていて欲しいと言われた俺は食堂で待機していた。
その時だった、入口の方で人影が見える。
いや、少し違うだろうか?よく見ると、人の霊だった。
シャトランスに来て、人の霊を見るのは初めてだった。
担任のミッシェル先生と同じぐらいの年齢の女性だろうか?
しかし、その肌は白く黄緑のワンピースを着ている。
そして1番印象に残ったのは顔と髪の色だった。
何故かその顔が歪んで見える。
まるでパズルのピースをバラバラにした様に、顔が鮮明に写っていないのだ。
そして既視感のあるオレンジの髪、その容姿に断定はできないが自分の身近にいる友人の姿を思い浮かべた。
扉をすり抜け、食堂に何歩か踏み入れると俺に気付いたのか途中で足を止める。
その姿をみたシルフが彼女を手招きし、声をかけている。
『レイカ、シルフ退屈なの。一緒にお菓子食べよ。それかお話聞いてよ』
「シルフ知り合いなのか?」
『だって創立当初からいるんだもん。校舎に遊びに来たら何度だって会えるでしょ?』
そのシルフの声に彼女が恐る恐る近いてくる。
『シルフ様、こんばんは。でも、きちんと待っていられるなんてとても偉いですね。とても良い子だわ』
と頭を撫でている、まるで母と娘の様だ。
『シルフは良い子だもん。当然でしょ。今日も校舎の見廻り?」
『夜中に来たら食堂に灯りがついているから気になってしまって。貴方はもしかしてニホン人の生徒さん?和服をきている人は初めてみたわ。お隣のチュウゴクの服を着ている女の子なら話した事があるのだけど』
口元はかろうじて原型があるのか、優しい声で話しかけてくる。
怖がられるのがわかっているから、余計に優しい声で話しているのかもしれない。
「はい、シモダイラ・シュンと申します」
『シモダイラ…もしかしてシャトランスの融資をしているシモダイラ家のお子さん?貴方も苦労しているのね。家の事に対してズケズケと言うのは良くないでしょうけど、貴方は何も知らない子達に隠し事をしながらここで過ごしているんでしょ?それってとても苦しい事だと思うの』
「いえ、祖父の決めた事ですから。でも、祖父も疑心暗鬼になっているのは確かです。シャトランスを信じていいのか?数年前、大切な人が亡くなってからの事です。祖父も疑いはじめて、俺は祖父から「内情を調べて来る様に」と言われました」
その言葉に彼女は目を見開いている。
『ねぇ』
「はい?」
『それって、初対面の人に言ってはいけない事なんじゃないかしら?要するにスパイなのよね貴方は?なんだか心配になってしまったわ。私じゃなくても他の人にベラベラ情報を流してない?』
「スパイ?別に調べてこいと言われただけで、他に何も言われてないからそれでいいのかと思っていた」
その言葉にシルフやレイカさんが笑っている。
何がおかしいのだろうか?
『貴方って天然というか鈍感なのね。お爺様もそれがわかってて敢えて言わなかったのかもしれないけど、貴方は利用される側じゃなくて逆に相手を利用出来る人なのね。面白いわ』
「俺はそんな大層な人間じゃありませよ」
『そんな事ないわ。貴方は台風の目のような物ですもの。内側、仲間なら頼もしいけど、外側、敵になると1番怖いタイプよね。凛々しくて頼もしそうな守護霊がいるなら尚更だわ。鷲?鷹かしら?』
「隼です」
そのやり取りにやはり友人の面影を感じる。
何と言えばいいのだろうか?
似ている所と似ていない所が半分半分あるような不思議な感じがする。
その俺の返事に顔を赤らめている。
この前の食堂でのやり取りと一緒だ。考え方や仕草がそっくりなのだ。
『ごめんなさいね。守護霊学の研究者とは言っても動物は専門外だから分からなくて。昔、実家で犬を飼っていた事があるから犬種とかならわかるのだけど』
「…カンナさん?」
その名前に体を硬直させている。
表情は分からなくても、動揺しているのがわかるぐらいだった。
『…どうして。どうして、娘の名前を知っているの!?まさか娘に何かした訳じゃないでしょうね!!あの子は私の宝物なの。あの人だってそう思っているはずなのに…』
「カンナさんは今の所大丈夫です。でも、今後利用する人が出てくるのは確かだと思います。俺はスクール側じゃない、家族の味方なんです。それにもう大切な人を失いたくない。友人だって一緒です。お爺ちゃんが何も言ってこない限りは大切な人を仲間を守りたい。…それには大きな力、武器が必要なのも確かです。お爺ちゃんは守護霊が武器になれる事に目をつけてニホンに大量の武器と人を運ぼうとしている。…結局、お爺ちゃんとやる事は一緒だな。俺も武器を求めているんだから」
『坊っちゃん…』
『そんな事ないわ、貴方には戦う意志があるのね。よく状況を把握出来てると思うわ。武器を持つ人間には武器で立ち向かうしかない。そうしないと、都合のいいように利用されるだけですもの。それに貴方は仲間や家族を守りたいというしっかりとした考えがある。どうか悪い大人達の様に使い方を誤らないで。自分や家族を守る為にその武器を使って頂戴』
「…はい」
『沢山話し込んでしまったわね。娘ももう高校生なのね。月日が経つのはあっという間だわ、生まれた時はあんなに小さかったのに』
と首元を触り何かを探しているが、何かに気付いたのかそっと手を離した。
『そういえば、私に似た女の子がロケットペンダントを持っているのよね。よかったらその子に見せてもらって。中に家族写真が入っているから』
「ママ!!」
と話している途中で聴きなれた声が聞こえる。
その時だった、レイカさんの顔がピースがドンドンはまっていく様に鮮明に見えてくる。
カンナさんにはそんな風に見えていたのだと初めて知った。
瞳の色は異なるがオレンジの髪は一緒だ。
2人が母娘である事に間違いはない。
2人が抱き合うのを見守った後、俺はそっと声をかけた。
Ex02を読んでいただきありがとうございました。
レイカは八代 礼華と言います。霊化を意識した名前でもあります。
カンナちゃんと同じような発言だったり、仕草がありましたが意図的なものですね。
親子ですので似た所はあってもいいだろうと思って意志して入れていました。
チュウゴクの服をきた女の子、これはシャンランです。
シャンランはレイカの話を聞いて、シャトランスが恐ろしい存在だという事を知りました。
No.20の時に「逃げるのは恥ではないわ、この島を離れた方が身の為」などレイカが発言していましたが、シャンランはその言葉に従い、避難という形で休学を選びました。
ですのでシャンランはレイカと同じ情報や生徒会関係の手がかりを持っている重要なキャラでもあります。
ですが、そういうキャラは序盤では出しにくいのでファースト!の最後の方で合流させたいと思います。
主人公の母親に心配されるキャラクターなんてシュンぐらいなものだと思います。
元々、シュンを天然キャラにしたのは2つ理由があります。
まず、主人公が女の子である事から女の子1人、男の子1人のトリオと作りたいと考えていました。
ですがそうすると、女の子同士で喋る事が多くなり男の子が輪に入れないという問題が生じました。
シュンが初期クール系なので尚更そうなると思って、どんな状態だろうと輪に入っていける天然キャラに調整しました。
もう1つは情報を落としてもらう事です。
沢山情報を抱えているキャラはいますが、かなり口が固く重要や情報ほど話してくれないキャラが多いです。
そうすると、終盤はいいものの序盤の状態で手がかりが何もないのはダメだろという事でシュンは例外としてかなり情報を喋らせています。
メタな話になりますが、情報を落としすぎると死亡する場合が他作品でもあると思います。
ですがシュンの場合、終盤まで必要な情報をもっています。ですので作者としてはかなり殺しにくいです。
もう最強の天然キャラとしていてもらおうかなと思っています。本当に坊っちゃんは恐ろしいです。
レイカも言っていましたが、作者にとっても台風の目みたいな存在になっています。
というか、台風の目って文中みたいな言葉の表現をしませんよね?
ダークホース的な意味ではあっているのでこのままでもいいかな?と思ってます。
次はNo.21「不思議な客人」をお送りします。




