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ついに婚約者(仮)~これって逆プロポーズなんじゃ~

登場人物


シャンイ嬢(私)→転生?入れ替わり??した。黙っていられない性分でしたね。

シスリー王子 → ネガティブ、投げやり人生選択王子。でも王子オーラは強い。


 静まり返った部屋には私と私の婚約者(仮)が見つめあっている。

 つい先ほど、衝撃(?)の事実を聞いた私なのだが、どうにも納得いかない。 


「…ふーーん。宿命と来ましたか。」

「何が言いたい?」


シスリー王子は形の良い眉を不満そうに動かした。明らかにむっとした様子だったが、そんなことは知らない。そして私も明らかにむっとした顔をしているのに気が付いたんだろう。不信そうにこちらを見た。


「後ろ向きで投げやりで、そのくせなんて自分勝手な考えなの?」

「……は?」


メラメラと、反骨精神が沸き起こる。あれ?今口に出ていたかしら。


「あ・の・で・す・ね!!!さっきから聞いてりゃ、なんなの?!あなた結局自分のことしか考えてないじゃない?!!」


 あ、しまった。一応腐っても身分は格上だし、丁寧語を使っていたつもりだったけど、すっぽり抜けてしまった。…いいやもう。

 案の定、彼は呆けた顔でこちらを見ている。ふふん、まさか反論されるとは思ってもいないでしょう。ひとたび口から出ると止められない。


「お兄様大事!それは結構!形だけの体裁の奥様も結構!でもね、どれもこれも貴方本位の考えで、周りの気持ちが置き去りなのよ!!!それがね、も―――本っと!!!めちゃくちゃ重い!!重すぎるのよ!!」


「お、重い??」

「そうよ!!あなたが一生懸命大事な人を守って、満足して死ぬのはいいわ?でもあなたに思いを寄せた人たちはどうするの?お兄様は?私だってもしかしたら情が移ってあなたを大事に思うことがあるかもしれないじゃない?! そういう人たちは悲しむわ。その人たちの気持ちを考えたことある?」


 この人から感じる他者のない孤独はきっと、自分と関わることで相手が傷ついたり、肯定された時に自分が苦しくなるからだわ。きっと、自分は亡霊のように他者に関わることはしないで見てるだけ。究極の自己満足ってことよ!!


「か、考えてるからこそ、今できる最大現のことをだな…!」

「しーるーかっつーの!!!22歳で死ぬ?!はっ!!死ぬのがどういうことかわかってる?!」


 私は知ってる、暗闇で光る剣を。闇に浮かぶ鈍い光、あれは私を殺すために振り落とされる。そして痛みよりも衝撃と絶望だけが残される。…それで終わり。


「死は恐怖よ!絶望よ!それを宿命で片付けるなんて、卑怯だわ!!全部を受け止めて立ち向かって抗って!!!それでもダメで、初めて宿命だったって言えるはずでしょう?!!」

「偉そうなことを!じゃあお前は死んだことがあるのか?!わかったような口をきくな!!」

「わかってるからこそ言ってるのよ!!!私は一度死んだからここにい‥‥」


 はっ!!しまったつい口が滑った!!売り言葉に買い言葉…言わなくてもいいことを言ってしまった気がする…!?急激に熱が引いていくのを感じて、自分に冷めてしまった。


「…は?一度死んで…??」

「とぉにかく!!!!…本当に諦めてしまうつもりですか?!」


 私はずずい、と前のめりになってテーブルから身を乗り出した。ちょっと強引だったかな?!まあいいわ、突っ込まれる前にうやむやにしてしまおう!!


「諦める前に、やること全部やってみませんか?」

「…何をする?原因も何も不明な呪いだ。…呪いかどうかも定かではない。」 


 もしかしたら、わざわざ私に合わせてくれたのか、本当に別のことが気になるのか、シスリー王子はそれ以上突っ込んでこなかった。


「じゃあ、呪いかどうかを調べましょう。過去の文献でも、伝承でもなんでも調べてみませんか」

「…城にある書庫の文献や草書は大体調べた。どれを読んでも、三番目に生まれた者は22歳で命がなくなる裏付けを見せつけられるだけだった。」


 彼自身もいろいろ調べたのだろうけど、一人で調べ続けてそんな暗い情報ばかりを仕入れてきたのなら、後ろ向きな考えになるのは分かる気がする。


「シスリー様はご自身で言ってました。噂なんて国のいいように流されるものって。22歳で寿命なんて、考え方によっては王位継承権なり、貴族の跡継ぎなり狙ってる側からすれば対抗馬を確実に減らせる手段じゃないですか。…ほら、現にあなたも」


 私はどうしても、陰謀とか策略とか、そういう考えになじみがあるかもしれない。間違いなく言える、これはシャンイ嬢ではない、『私』のものの考え方だろう。…元の私にがぜん興味が出てきた。


「…そ、それは。確かに。」


 周りの人間が、呪いでもなんでもないと誰も言わず、間違いなく三番目に生まれたからには22歳で寿命を迎えるんだと言い続けているのだとしたら…、私だってそれを受け入れる準備をしてしまうかもしれない。


「ならば私がはっきり言います。貴方は22歳でなんて死なない。絶対に。」


 王子は一瞬何かを考えこんだようだが、虚ろだった瞳が静かに煌めいた。…今まで誰も、別の考えを示唆する人間はいなかったんだろうか。彼の環境をおもうと、少し胸がいたい。


「…俺は、3番目は22歳で死ぬ、ということだけに囚われているということか?」

「残念ながらそうです。間違いなく、シスリー王子は死なないし、死なせません。」


 よし、決めた。 


「…は?死なせないって…どういうことだ?」

「シスリー王子、あなたは長生きして、お兄様をずっと支え続けるんでしょう?」

「それは、俺の望みでもあるし、願いでもある…唯一兄だけが俺の味方でいてくれた。」


そう宣言した王子の目には、先ほどの曖昧な光を微塵も感じない。


「なら、私が新たにあなたの味方になります!!」

「味方…貴方が?」

「ええ!新しい未来の可能性を私と一緒に探してみませんか?貴方が22歳でどうにかなりそうなら、私がずっと傍にいて、無理やりにでも引き戻します!」


 自分でいうのもなんだか、おかしな宗教の勧誘の文句のようで怪しまれないか少し心配になった。でも、王子は怪しむどころか今まで見た中で一番変な顔をしてる。少し顔も赤いみたい?


「ほ…本気か?それはつまり…」

「?あの~…私変なこと言いました?あ。やっぱり怪しい勧誘文句みたいだったか…」

「… …いや。…今の言葉に嘘偽りはないな?」 


 え?ていうか嘘偽りってなんの話?私は単純に、この人の未来がもっと拓ければいいなあって。人間、生まれてきたからには誰だって幸せになる未来は探せるはずだもの。

なんて考えていると、突如私はシスリー王子の腕の中に閉じ込められた。


「?!!」


 テーブルから身を乗り出していた為、それ以上身動きはとれず、されるがままになってしまった。思いっきり抱きしめられて、少し苦しい。


「い、いきなりなんですか?!くるし…」


しかもそのあと、首が外れるんじゃないかってくらい顎を持ち上げられた。 


「…俺が長生きするように見張りながら、ずっとそばにいて、一緒に新しい未来を探してくれるんだよな?」


 うーん、確かにそういった。大事な部分が少し端折ってるけど、大まかにはそんな感じ。…さっきまで面白い顔をしていたのに、今はすっかり王子オーラが戻ってる。


「嘘…もなにも??まあ大体そんな感じ…かと。」

「…くく、あはは!わかった!じゃあこれからよろしく頼む!」 


 曖昧にうなずくと、彼はそれはそれは楽しそうに笑った。そのまま私を抱き上げてくるくる回されてしまった。ね、眠気で頭のねじが飛んだのかしら、この人。


そしてなにかしら、このやってしまった感??

そう、私はここである重大な人生の選択のミスをしてしまっていたのだが、そのことにはまだ気づいていなかった。




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