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死んだと思ったら、別の人生が始まりました。

初投稿ですので、どうかご容赦を。


光さえ届かない深く暗い闇は、どこまでも続いていて…その果てさえも見ることができない。

うんざりするような暗く、長い廊下をただひたすらに歩き続けた。


――― 逃げなければ。あいつに捕まる ―――


背中の激痛に耐え、手探りで前に進んでいく。すると突然、背後から千切れそうなくらい強い力に引っ張られてしまった私の腕は、完全にとらわれてしまう。

いやだ、しにたくない。

しゃん、という金属音と共に、氷のように冷たい刃がピタリと吸い付く。


「お前がどこにいこうと、何をしようとこの必然からは逃れられない」


次の瞬間、灼けつくような衝撃とともに、闇を舞う翡翠色の剣と、赤い花びらのような雫が目の前にばあっと広がる。そして私は唐突に理解する。

ああ、私は死んだのだと。


 ***



「きぃゃああああ!!!」


…と、いうような恐ろしい夢を見たような気がして、私は目を覚ました。


「はーっ…はあっ…。び、びっくりした。」

「お嬢様、大丈夫ですか?」


気遣わしげな声が聞こえ、大丈夫、と答えようとしたが、言葉にならない。


「真っ青です。どこか具合でも悪いのですか?」

「だい、じょうぶです。」何とか声に出し、深呼吸をする。ゆっくり息を吐くと落ち着いてきた。しかし、体は思うように動かないのなぜだろう。まるで重たい鎧を着ているのかのようだ。


( …首が重い。しいて言うなら耳とか頭も。)


じゃらん、と音がしたので首元を見ると、派手な虹色の宝石が目に飛び込んでくる。ぶっとい黄金の鎖には、握り拳位の宝石がぶら下がってる。


(なんで私、こんな格好。)頭はぼんやりしていて思考がうまく回らない。けれども確かなこともある。今のこの格好、致命的におかしいわ。

派手派手しい腕輪や真っ白な…これは何かしら?裾が長くて、重たいびらびらした服。特に頭の羽飾りは相当な重量で、思考力さえ奪っていく。


「重たい。どういう趣味よこれ」

「えと、…その、お嬢様が自らお選びになった衣装でございますが…」


隣に座っていた彼女は遠慮がちにそう教えてくれた。

私が選んだってそんな馬鹿な。

異論を唱えようと、改めて彼女を見やる。…金色の髪に青い瞳。


(…めずらしい。)


私が知っているのは真っすぐの黒髪で色白の人間ばかりなはず。うっかり見とれていると、彼女は不安そうに眼を伏せてしまった。


「あなた、とても素敵な髪の色をしてるのね?いいなあ。」


私としては本当にごくごく普通の感想を述べたつもりだった。他意もなければ悪意のない。 

…にもかかわらず。 


「…お嬢様?どこか頭でもうちましたか?それともねぼけていらっしゃる…?!」

彼女はその白い顔を更に青白くして目をぱちくりさせている。


「え。何をいって」るのと言いかけて、ふと、我に返った。 

そういえば私はここで何をしているんだろう。状況を整理しなければ。頭を切り替えようとするが…

「重い…。」せめて首飾りだけでも外そう。頭もいたい。

強引に括り付けてあった簪?みたいなものをもぎ取り、ぎっちぎちに縛り付けてあるまとまった髪をほどいた。これで少しか楽になったわ。ふう、とため息をつくと、右隣から上ずった変な声が聞こえてきた。


「お。お、お、おおお嬢様…何がお気に召さなかったんですか?!もう王宮についてしまいますよ?!」

「え、おうきゅう…。」

「アルヴェール商会ご一行、ご息女シャンイー・アルヴェール嬢、ご到着!!」

カランカラーン、と小さな鐘の音とともに重々しい音が聞こえた。


ハっとなって窓を見やると、白亜の壁に煉瓦つくりの橋が見えた。その先には大きな金色の門。開かれた門の先には…まるで見たことのないような円柱状の建物が見える。優雅な佇まいはとても美しい。昔に読んだ異国のお城に似ている。

いや、似ているというより、そのものだ。広々とした庭の先には、仰ぎ見るほどに高く豪華な文様の柱が立っていた。


(あれ?何か変だわ?!)


ここで、初めて今の自分の異常を再認識する。見慣れた長い黒髪は、銀色の…それこそ光を束ねたような髪に変貌?している。一瞬苦労の末に白髪になったのかと思ったが、どうやら様相が違う。


「え なにこれ。どういうこと?まだ夢??か、鏡っ!!鏡を私に!!」

「は、はい!お嬢様!!」


隣の女性(もしかして侍女?)に鏡を持ってもらい、映った姿をまじまじと見る。

銀色の髪、ヒスイの瞳。あ、良かった目の色は変わってないわ。

…じゃなくて、鏡に映っていたのは昔物語で聞いた西方の人形のような顔立ちの少女だった。


「誰よ、この人。ね、ねえ。私は一体誰?!」

うつろな私の問いに対して、真っ青な顔をした彼女はこう答えてくれた。


「あなた様はエサルエスでも一番大きなアルヴェール商会の三番目のご息女、シャンイー・アルヴェール様でございます。本日はわが国エサルエスの第一王子と第3王子のおふたかたの将来の花嫁を決める大事な舞踏会に行く最中です。…ほ、本当にどこかで頭をぶたれてしまわれたのですか?!」


「は…?え。ええ?は…はぁあぁぁあ??!!」


飛び跳ねるように立ち上がると、がこん!という衝撃音ともに目の前が真っ暗になった。


「お…お嬢様?!!」


そうよね、ここは確か馬車っぽい乗り物の中にいたものね。天井が低いのなんて当然よね。

ああ、どうか夢であれ。どうだっていいから、とにかくこの現状から逃げ出してしまいたい。

…ってさっき見ていた夢の続きだとしたら、絶体絶命すぎるけど。

そんなことを考えて私は瞳を閉じた。



最後まで読んでいただきありがとうございます。なるべく間を開けずに今のうちに進めていきたいと思います。

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