第3話 戦闘
長らくお待ちしております。まあ見ていってください。
「ハァ・・・・・・・」
・・・・どうしてこうなった。
『電波塔』の頂上。もうあからさまに嫌な予感しかしない。
「・・・・・早めに終わらすか。」
特別指令。オレへの依頼内容は、組織内に異能犯罪者の内通者がいるらしい。オレはスカイツリーの深夜警備員として潜入し検挙。
詳しいことによると、どうやらここが奴らの取引現場らしい。
取引場所はスカイツリーの頂上。何を考えてるやら。
「・・・・・誰もいないな。」
周りを確認し。オレは能力を使った。
―ドロドロドロ・・・・ベシャ。
「これでよし・・・っと」
―液状人間。オレの異形能力。
身体を液状化させる能力。それをゼラチン質にすることで、ゲル―謂わばスライムのような状態にし、人間体じゃ出来ない動きが出来る。
他にも、ゾル状になることも出来るが、ゲルのほうが使い勝手がいい。いや、ゾルも使いやすいんだが・・・・
まあ気分だ、気分。
「さて・・・隠密形態、オン。」
潜入、逃亡用の風景同化によって、カメレオンもびっくりな擬態っぷりだ。
オレはそのまま見張りと思わしき男の目をかいくぐり、その現場に居合わせた。
「ぐあぁ!」
「逮捕な、お前。事情聴取は、検察庁・司法警察署の仕事だしな。」
―ついでにそいつには眠ってもらうことにした。さりげなく手錠もかけた。
ゾル状態とゲル状態の使い分けによる高速手刀。オレでなきゃ出来ない所業だね。
そいつを天井に吊らし、オレは先に進んだ。
「ホ、ホントにやるんですか?」
「ああ、当然さ。俺たちの計画には必要なステップだしな。」
―そこにいたのは、小太りの警官の服を着た中年男性と、フードを被った男だった。
「で、でも、そんなことしたら、バレやぁしませんかねェ?」
「大丈夫だって。その場合はアイツが通しゃしないだろ。」
「そ、そうなんですかい?・・・・・!?」
―必殺のズームアタック。腕を伸ばして小太りを先に気絶させた。
「あぁ、あいつはコウモリ男。超音波センサーで索敵はおろか、妨害まで出来るからな。」
「へぇーそいつは凄い。でもそいつ眠ってましたぜ?」
「チッ、アイツ居眠りなんかしやがって。暇を持て余しすぎだろ」
「いいや、そいつはバッチリ起きてましたよ。ここに転がっているブ男みたいに、すぐ眠っちまったけどね。」
「ふん、どいつもこいつも。だらしないったらありゃ・・・・・・・・ッ!?」
ー扉なんて意味ないんだよな。オレは液状だから。
そして、オレはすごいことをしたらしい。
なんせ相手のレーダーを潰した。そして気絶させた。一瞬で。
そして今その主犯格と相まみえた。ならば言うことは1つだ。
「―こんばんは、異能犯罪者。警察・・・・いや。―特異班の者です。大人しく投降しなさい。」
特異班。
世界各地で、異能犯罪者を検挙する組織。
警察の中でも、特別な枠組みのエリート集団。
―正直、オレには荷が重い。なんせ始めてだからな。だけど・・・・・
「待て、リュウ!」
「なんだよ!姉ちゃん!」
「・・・・・いつも通り、やってこい。」
「・・・・・わかった。」
覚吏の言う通り、いつものオレで、仕事を果たそう。
大胆に、そして敬意と少しの皮肉を交えて。
「なんだァ~てめえ・・・・邪魔すんじゃねぇ!!!!」
相手は腕を鎌のような、それでいて、のこぎりみたいな棘を生やしたものに変えた。
「ヒュ~。カマキリ男か。イカすねぇ。」
―ザシュ!
その腕は肉を捉えた。相手の肉を引き裂くかのようにそのまま彼の腕を斬り飛ばした。
ーしかし。
「―ありゃりゃ。どうすんだこれ。再生まで時間掛かるんだぞ?」
彼はケロッとしている。
まるで動じておらず、機械の不調で愚直を言うプログラマーのように顔をしかめた。
「・・・・・・!ふざけてんじゃねえぞテメエエエエエエエエエエ!!!!!」
男は激怒した。まるで遊ばれていることに怒り狂った。
―ザシュ!ズバッ!
男は両腕の鎌で彼の身体をバラバラにした。
—ベシャ!
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・」
肉が、血が、当たり一面を赤く染めた。
―しかし。
「!?」
切断した肉片が蠢きだす。
それは自我を持って、重なるように這い初めて、やがてそれは人型を取る。
「よいしょっと・・・・」
―歪な姿で。
「あ~あ~あ~。どうすんのコレ?無抵抗の人間を一方的に殺して、挙句血まみれじゃない。罪状重くなるよ、コレ。」
「!?」
「あっ、今驚いたでしょ。そうだねー。切断口をゲル化させて再生し易くしたの。便利でしょ?」
―彼は、いとも簡単に蘇った。
肉片から再生し、腕は再生の代償に無くなっているが、まるで何事もなかったかのように会話し始めた。
衣服も、傷も、全部。
「ハァ・・・ハァ・・・バケモノめ・・・!」
「そりゃあ異能者だからバケモノでしょ。オレも、君も。」
―男が疲れ気味なのに対し、彼は平然としている。
圧倒的な差が、そこにはあった。
「無理やり再生すんのは結構疲れるんだけど、ま、仕方ないか。・・・腕なしで行くけど、構わないね?」
「ナ・・・ナメてんじゃあねぇぞ・・・・クソ野郎・・・・!」
「クソ野郎ねぇ~・・・・」
そして、彼は一瞬で距離を詰め。
「!?」
「―クソ野郎はどっちだよ。犯罪者。」
ガシィ!
「アガァ!!」
―滑らかな動きから一瞬で背後を取り、そのまま男の肩に踵をたたきつけた。
降ろされる脚は、男の身体を沈めた。
「・・・・・ん・・・おおおお!!!・・・ふぅ。」
ジュルリ!ジュルジュル!
ー彼、壱原琉輝はそのまま腕を再生した。
「えー、1時11分37秒、小場トオル、久井原オウ。それから森田イチキ。えーっと・・・・めんどいからいいや。そんじゃ、もろ込みの容疑で逮捕する、っと。」
こうして、初任務ながら、大きな被害が出ることなく。壱原琉輝は、異能犯罪者達の検挙に成功した。
「やれやれだ・・・・。こんなとこ、さっさと出ようぜ。」
※注意 グロ要素あります。