最終話 再度深淵より帰還する part3
どうも、Coボレッタです。
今回で最終回となります。
自分を知る機会ってのはあるのだろうか。
こうして、自分と対話する機会はあるだろうか。
これは決して、心理学的な話しではない。
こうして、紛れもない自分自身と会話するのは滅多にないだろう。
目の前の自分と、死んだ自分が話し合うのは。
―――これは、一つの物語の終わりでもあり、また新たな物語の始まりでもある。
「こうしてまともに話し合うのは、これで初めまして。だな?」
「・・・・・・」
確かに。
前に話したとはいえ、あれはまともに話せるテンションでもなかった気がする。
だとするのならば…
「・・・・・・そうだな。初めまして。もう一人の自分。」
「おーこりゃあご丁寧にぃ。こちらこそ初めまして。自己紹介とかいるか?」
「一応あった方がいいかもしれない。何よりお互いのことを改めて知る機会ではあると思うからな。」
「そっかー、そりゃそうか。んじゃあこちらから・・・」
そう言って、あいつは口を開いた。
「オレの名前はヤム。んでヴリトラ。そんでもって、ポセイドンにしてルキフグスってところかな?」
「い、一体何を言っているんだ?」
「これはお前の名前でもある。神と悪魔が融合した、神魔名っていう立派なもんがなぁ?」
「ク・・・クロス、ネーム?」
「そうだともぉ、フォカロル・エナリオス君。君にはこぉんな立派なクロスネームがあるじゃないかぁ。」
「フォカロル・・・エナリオス?それに、クロスネームってなんだ?」
「クロスネームとは、オレ達敵が持つ、神であり悪魔である事を示す照明みたいなもんだ。」
「サタン・・・神であり、悪魔・・・」
「つっても、神も悪魔もサタンも、実はそんなに大差はねぇ。ただ『こう在れ』と望まれ零落した宇宙の意思に過ぎない。つまりは誰かが押し付けた幻想なんだよ。」
・・・言っていることが一つも分からないが、分かる範囲で話しを纏めるとこうだ。
オレの本当の名前は『フォカロル・エナリオス』。
そして、そんな名前のことを、クロスネームというらしい。
そしてあいつが出した名前。
どっかの書籍で見た程度の知恵しかないが。
ヤム。ポセイドン。
恐らくは、海の神様って共通点があったぐらいか。
ヤムは確かウガリット神話に出てくる海の神様。
ポセイドンはギリシャ神話の海の神様。
海のゼウスという意味の『ゼウス・エナリオス』とも言われる有名な神様だ。
そしてヴリトラとルキフグス。それにフォカロルだったか。
こいつらは確か「悪魔」の分類にあったはずだ。
ソロモン王が使役する海魔フォカロル。
インド神話に登場する蛇の魔神ヴリトラ。
そして、地獄の宰相と呼ばれるルキフグス。
そして、これが全て『=』の関係性だと照明するのが、神魔名らしい。
また、フォカロルとルキフグスはアナグラムの関係性から同一視されているらしく、色んな共通点を見つけて融合しているらしい。
つまり表に表すと―――
ヴリトラ=ヤム=ポセイドン=フォカロル=ルキフグス らしい。
「そーだ、よくできました馬鹿野郎。100点をくれてやる。」
「褒めるのか貶すのかどっちなんだよ。」
とまあこんな感じらしい。
「そんでぇ?次はお前の番だぜぇ?」
「ああ、それじゃあ。―――壱原琉輝。2029年1月1日時点で22歳。誕生日は12月11日。一応、警官見習いの学生でした。好きなものは家事と、トレーニング。
―――それから、平穏な生活が好きでした。」
「そーいやお前学生だったな。それと、『平穏な生活が好きでした』ってぇ?わざわざ過去形なのどうしてぇ?」
「まあ・・・こうして死んでしまったわけだし、後はこのご時勢、異能犯罪者が多かったから、一時の平和を楽しみたくて警官を志したからな。」
「でも死んだと。ガスを吸ってコロリと。」
認めたくはないけど実際そうなんだよなぁ・・・(^^;)
「それで…その―・・・」
「ルキでいい。そっちのほうが呼びやすいだろ?」
「あぁ…じゃあルキ。」
オレがなんて呼べばいいのか迷っていたところで、あいつは自分を「ルキ」と言った。
実にありがたいのだが、ここでまた新たな疑問が浮ぶ。
「どうしてそこまでオレに親しくするんだ?」
「それってどういう意味だ?」
「どういう意味って・・・そのままだよ。」
「そのまま、とは?」
「ルキは壱原琉輝の半身である以上に。」
「以上に・・・?」
「―――オレはぁ、お前のことが好きだったんだよぉ。」
それを聞いた以上、正直ドン引き以上に恐怖が先行した。
オレの事が好き。
それを言うために、わざわざ近寄ってきたことからキモさがあふれだした。
は?なに?半身とはいえ自分が好き?
「いやキモいキモいキモいキモい。」
「思考が漏れ出てるぞー。・・・ったく、素直に後退りしやがって。」
「いやだって自分が好き好きとかナルシストならまだ理解出来なくもないよ。ただスルーするだけだから。まさか自分の半身に欲情するとか思わなかったから素直に気持ち悪いと思っただけだから、うん。」
「流暢かつドストレートな罵倒ありがとな、この野郎。」
とまあこんな感じで疑問が解消されたことで本題に移りたいと思う。
「さて・・・お前さんは『三皇五帝』、それから『五行思想』って知ってるか?」
その言葉に対して、オレは首を傾げた後横に振った。
「・・・しょうがない。まあ、ざっくりと説明していくか。」
一拍置いて、ルキは三皇五帝と五行思想に付いて語り始めた。
「まず、この二つのワードについてだが、どれも、中国の古い言い伝えとして言われてきたものだ。―――『三皇五帝』。三皇は神、五帝は聖人としての性格を持つとされてる。三皇とはそれぞれ、天王星、冥王星、そしてオレたち二人のオリジナルである海王星。この三つの王の名を冠した存在が三皇。次に五帝・・・の前に、『五行思想』について説明しとくか。」
「うんうん。」
オレは黙って首を縦に振った。
「『五行思想』ってのは、木・火・土・金・水の五つの元素によって万物が成るという思想の中で語られた、概念の一つだ。木は火を生み、火は土を生み、土は金を生み、金は水を生み、水は木を生むという相生と、木は土の上から生え、土は水を堰き止め、水は火を消し、火は金属を溶かし、金は木を切り裂くという、相克という二つの法則性を持つ。」
「五帝ってのも、その五行思想に関わってくるのか?」
「関わるどころか、五行そのものを体現してると言ってもいい。お前ならもう分かるだろ?」
ルキがオレに試練らしきものを吹っかけてきた。
オレの勘と知識が間違っていなければ、これらに当てはまる存在はこの五つだ―――。
「―――順番に、木星、火星、土星、金星、水星。この神々が五帝と言われる存在なんだろ?ルキ。」
「イグザクトリー!大正解だ!」
やっぱりか。
三皇がギリシャ神話に語られる神々の名前を冠していたことから、残りもそれに呼応したものではないかと予想した。
星として語られる天空神ゼウス、軍神アレス、時空と農耕の神クロノス、美と愛を司る女神ヴィーナス、多くの権能を司るヘルメス。
これらの神はそれぞれ、木星、火星、土星、金星、水星として語り継がれてきた。
だとすれば、それが五行を体現した五帝以外のなんであろうか。
「それで?それがこの状況と何の関係性があるんだ?」
「お前は、サマエルとルシファーに会ったって聞いたぜぇ?」
「ああ。・・・稲志田がルシファーだったなんて、今でも受け入れがたいけどな。」
「あいつら、なんか言ってただろ。」
「・・・・・・」
確かに。
そう言えばこんな事を言ってた気がする。
[「―――サマエル。火星の守護者にして、その大いなる天敵。荒神と畏れられし闘争の狂神よ。汝はどのような理を持ってこの世界に降りた。」
「それはこっちのセリフだぜぇ、ルシファーサマ?明星の化身たる美と愛、そして闘争と豊穣を司る金星の大いなる天敵が物理世界に降りるなんて、滅多にないことだからなぁ?」]
「―――まさか、あいつらが五帝だと言うのか?」
「その通りだ。五帝のうちの、火星のサタンと金星のサタン。それがあいつらの正体だ。」
―――サタン、か。
そのサタンが何なのかまだ分からないんだけどな。
「サタンってのは分かりやすく言えば、この世界に対する終末装置みたいなもんさ。」
「・・・・・・はい?」
「そして、世界の再生と運営に大きく関わる循環管理者でもある。」
「はいぃ???」
「これでも分からないなら、ざっくばらんに言わせてもらおうか。」
「さっさと言え。」
「ま、ようは世界の擬人化だ。擬人化・・・っていうよりは、擬神人化の方が正しいのかもしれないけどなぁ。」
「擬神人化・・・?」
「人の姿を取ってはいるが、中身は全くの別物。むしろそれは、神や悪魔と言った方が納得がいくものを擬神人化と言う…という、意味付けだ。」
「意味付けかよっ!」
「ま、神話の中の神様ってのも大抵こういうもんだし、あまり深く考えない方がいいぞぉ。たった一人で世界を滅ぼすことができて、その次の世界を創り直すことが出来る奴らって思おうぜぇ?」
「そーいうのを一番最初に説明して欲しかったなぁ!!!!!(# ゜Д゜)」
まあ、これでサタンについて知ることが出来たし、これでOKか。
いや、全然良くないけどな。
「ていうかこれからどうすんだよオレ達!!」
「どーするって、何をだぁ?」
「いや、このままのんびり話してる場合じゃないんだって!!外は大丈夫か!?皆はどうなっているんだ!?!?」
「落ち着け。まずはゆっくり話してくれ。」
ルキに宥められた後、オレは現状の全てを語った。
「―――なるほどね。自分のいる時間が早く進んだため、他の皆が気になると。」
「ああ。それに、世界がどうなっているのかも知りたい。・・・戻れればの話だけどな。」
「戻れるぜ。」
まあ、そう簡単に上手くいくはずもないか。
あの時はティアが救いの手を差し伸べたからなんとか助かったものの、今回はガチで死んでしまったんだ。
そんなまさしくご都合主義みたいな手段なんて存在しない―――
「は?今なんつった?」
「戻れるっつったの。元の世界にな。」
「ほんとに?」
「本当だよ!じゃなきゃこんなとこに神様介して招待しねーよ!」
「時間が惜しい、方法は!?」
「そこに大きな樹があるだろ!?そこに手を付けろ!」
「よし、分かった!!」
「いいか、オレの気に合わせろ!波みたいな感覚があるからその波が高くきたタイミングで力入れろ!」
「分かった!波に合わせて力だな!」
こうして大慌てでエデンの園の樹の向かい側にお互い立った。
そして、手を付けた瞬間、波が確かに来た。
[確か、一番高いタイミングだから…]
激しい揺れる波に気を流しながら、そのタイミングを計り、そして―――
[―――来た!ここだ!!]
―――その波に向かって、オレは手をに全力を込めて勢い良く樹を押した。
「―――ちょ、うわぁ!」
樹を押したその瞬間。
オレの身体が樹に吸い込まれていった。
やがて、遺伝子が混ざり合うような光景が浮かび上がり、男のシルエットが、その遺伝子に重なり一つとなる。
そして、果実は大樹より零れ堕ち、やがて人の姿を取り始める。
さながら、知恵を得た人形が『人間』となるように。
―――人間だった男が、今ここに『魔神/魔人』と変生した瞬間である。
「・・・行かなきゃ。」
こうして、褐色の肌と群青の髪を持つ男は、深淵を飛び出し、現世に降り立った。
海の化身たる悪魔が、世界にその魂を降ろした瞬間でもある。
―――これは、一つの物語の終わりでもあり、物語の始まりの始まりでもある。
どうも、Coボレッタです。
この話しをもって、Enemycircularはひとまずおしまいとさせていただきます。
ここでは書きたかったものを書けなかったですが、それでも、次の物語までお預かりという形にさせて頂きます。
そんな続編ですが、掲載予定は未定です。
少なくとも、今年中はここに来ることはありません。
続きが気になるのならば、また違うEnemycircularをよろしくお願いいたします。
それでは、紳の花が咲き誇ったところでお別れといたしましょう。
また大きな余罪が堕ちた時に、またお会いしましょう。
それでは、ひとまずさようなら。
評価やレビュー等、よろしくお願いいたします。




