第16話 正義という『悪』
どうも皆さん。Coボレッタです。
いや本当にお待たせいたしました。
構成がとにかく大変で、考えるだけで一ヶ月も使いました(笑)
これが同人活動なら超が付くほど極道入稿ですよ!
それでも、皆さんが見てくれることに感謝して、さあお待たせいたしました最新話!!
それでは、どうぞ!!↓↓
雪が降っているのすらお構いなく、オレは警専に向かって飛び続ける。
何秒経った。何分経った。何時間経った。
いいや、そんなの関係ない。
一刻も早く、助けにいかないと。
ただ一心不乱で向かい続ける。
瞬間的に真空になった空気は、雪に触れた時に雹となるほど。
彼はがむしゃらに、突き進んでいた。
「―――!!」
彼が目にしたものは、多くの人が校舎を破壊し、生徒たちを襲っている光景だった。
建物は炎上し、瓦礫も多く、まさに惨状まっしぐらという感じである。
「ヤロォ・・・!」
急降下した彼は蒼色の軌跡を纏い、彼は鉤爪を一人の男に突き立てる。
「ギャアアア嗚呼アア!!!!」
爪は肉に食い込み、速度を落とすことなく飛び去っていき、掴んだ部分はもぎ取られていた。
「チィ、心臓じゃなかったか!!」
男は旋回し、そのまま男の身体を貫いた。
貫かれた男はその場に倒れ伏し、蒼色の軌跡が残ったまま空に残る。
「なんだ今のは!?」
「うろたえるな!一人やられても関係ない!!奴を撃ち落とせ!!」
飛び去った若鷹に向かって、弾幕は吹き荒れる。
「チッ、小賢しいマネを!」
あまりの速さに、彼らの放った弾幕は、掠りもせず空に消えた。
「なんだアイツ!?早すぎるぞ!!」
「奴は放置しろ!それよりもターゲットの破壊を優先しろ!!」
「は、はい!」
襲撃者は休むことなく、建物の破壊と生徒の襲撃に尽くす。
「取り敢えずはしのげたが…問題は数だ。」
「ひぃ・・・ふぅ・・・みぃ・・・よ・・・」
「ダメだ、とてもじゃないが多すぎる!!」
上空から見渡しても、その数は圧倒的だ。
―――考えろ、考えるんだ!
建物は半壊状態、被害も著しい。
ティアを助け出すのは第一優先。その後は被害を抑えること。
邪魔する奴らは片っ端から殺していく、助けられるなら何人だって助ける。
だが、これじゃああまりにも人数が多すぎる!!
これじゃ、ティアを助けに行っても他の人の被害が出てしまう!
「―――ええい、なるようになれ!・・・だ!!」
オレは家に、シェアルームに向かって飛んだ。
きっとティアはそこにいるはずだ。
「あの青い光は…」
「奴だ!急ぎ向かって殺せ!!役に立ちそうなものはさらってでも連れてこい!!」
「はい!!」
襲撃者は琉輝の向かった方向に進軍した。
「―――っと。」
オレは玄関前に立った。
幸いにも、人は来てないようだ。
「今のうちにティアを助ける!」
身体を液体化し、隙間から入り突入する。
まだ何も荒らされてない様子を見ると、きっとティアは無事なんだろう。
「ティア!!」
自室の前で叫ぶ。
ティアはオレがいない間はそこで過ごしていたからだ。
すると、小さな声が聞こえてくる。
「お···にいちゃん、ですか?」
微かに聞こえる声は、間違いなくティアのものだ。
「ティア、オレだ!今行くぞ!!」
オレは勢い良く扉を開ける。
そこには170cmもある(そこそこ)大きな身体なりに隠れているティアの姿が。
「お···おにいちゃん············うわーん!!!怖かったですぅぅぅ!!!」
ティアはオレに抱き付いてきた。
その(そこそこ)大きな身体でオレへ向かってダイビングハグをしたのである。
これには流石のオレも押し倒されるばかり。
「――んな、ぐぁっ!っつぅ~···」
「大丈夫ですか!?おにいちゃん!!」
尻もちを付いたオレを気遣うティア。
オレはティアの頭を優しく撫でた。
「大丈夫だ、ティア。兄ちゃんなら平気さ。」
「それなら良かったです···」
「ティア、しっかりと隠れてるんだぞ。兄ちゃんとの約束だ。」
「はい!頑張ってくださいなのです!!」
「―――あぁ、行ってくる。しっかり隠れてろよ。」
そうして青年はその場を後にした。
―――ガラスが割れる悪夢の福音は、その時には聞こえなかった。
「お、にい―――」
少女はあっけなく無力化された。
「―――さて…」
ここからどうするか。
確認出来た限り、30人くらいはざっといるのは分かった。
この数をどう凌ぎ切るか。
―――考えてる暇なんてない。
どんなに普段は使うのをためらうような技でも、人命と比べれば遥かに軽いもの!
早速、戻った記憶の有効活用だ!
「―――頼んだぞ、オレの蟲達。」
オレは自分の胸をなで下ろした後、その躰を貫き開くことで、自分が秘めてる蟲を飛び出させた。
「くぉ、うぅ…」
と言っても、蟲には種類がある。
戦闘特化した「狂気の鍬形」。
寄生・洗脳・苗床はもちろん、内部レーダーや強化要員としても活躍する「傀儡の蠕虫」。
そして、両者のハイブリッドである、記憶や肉体まで内部から食い荒らす「破滅の魔蟲《ルイン・インセクト》」。
もちろん放つのは、戦闘員のクワガタだ。
自らの肉体がこじ開けられる。
骨が開く音と痛覚を堪え、肉を引き裂くクワガタを放った。
「―――行ってこい!マッド・スタッグ!!オレの敵を食い荒らせ!!」
まさしく蠢くという言葉が似合うような光景だった。
クワガタは四散し、襲撃者を喰らうことだろう。
「―――クヒュー、クヒュー…」
呼吸は細くなり、胸からは血と肉片が零れ落ちる。
暫くした後、かっぴらいた胸は自然と再生していき、呼吸を整って来た。
「さて、しばらくは様子見…と行きたいが、巡回しないと気が収まらないな。」
オレは一息ついてから、学園内を飛び回った。
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「―――見えた!学園だ!!」
桃色の髪をした女性が指差す。
「よし、気流を止めろ!」
風力車両は正門前で止まり、そこから人が出てきた。
「こりゃひでぇ…」
「一刻の猶予すらなさそうだな。」
「丁度いいや。久々に大暴れと行くか!!」
若き隊員たちは、気合十分といった雰囲気であった。
「さて、あいつらは来てるか…」
男は燃え盛る建物の前を見渡す。
その時、無線に通信が入る。
「こちら大葉。何か進展は?」
『―――ちら、…柳。―――いま、クワ…らしき生物を目視。』
「どうした、もう一度報告を!」
『こちら白柳。ただいまクワガタらしき生物を目視。被疑者らしき人物らに向かって、襲撃しています!』
「なんだと!?」
耳を疑う情報だ。
クワガタが暴漢達に向かって襲い掛かるなどということは。
そして、彼は思い出した。
琉輝との会話を。
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「寄生虫?」
「はい。オレはそれを使って被害を出してました。」
「少しまて。君のスキルは液体状になることだったよな?」
「はい…、確かにオレは身体を液体化する能力です。」
「そうだよな。…………じゃあ何で蟲を使うようになったんだ!?」
彼は琉輝に対してそう言った。
「えぇと…蟲と言っても、オレの細胞から作り出したもので、血と細胞だけで生成は出来ますよ。」
「血と細胞だと…!?そんな化け物じみた能力も使えるのか、君は!」
「はい。肉食のクワガタ、さっきの寄生虫のワーム、そして、記憶処理も兼ねた人喰い蟲の3種類です。―――名付けるなら『おぞましい虫籠』ってとこすかね。」
「テラー・バグ・バスケット…………聞いただけでも恐ろしいな。」
「はい。例えば状況によりますが、護衛してる時に大勢でかかってきて、どうしても護衛が間に合わないって時には、クワガタでサーチandデストロイってとこすかね。」
「使い道ってのが何事にもあるんだな。」
「はい。これの欠点を挙げるとするなら、自分の身体から出さなきゃ行けないってことと、しばらくは一種類しか出せない点なんすよね。」
「大したデメリットだな。」
「まあ、使いどころっスよ。」
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「そうか…今が使いどころか。」
「景虎?」
「いや、何でもない。ただの独り言だ。」
「そっかー。…………ところで突っ込んでいい?」
「―――却下をしないわけがない。全員、直ちに救助に迎え!!」
「「「了解!!」」」
景虎がそう宣言すると、三人の若者は散っていった。
一人は風を纏い。一人は全速力で駆け、一人は事態の把握に専念した。
「頼んだぞ、若き希望達よ···!」
銀髪の男は強く願うようにそう言った。
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燃え盛る建物の中で、襲撃者は凶行を働く。
今にも生徒達にその凶刃が振り下ろされるであろう。
―――だが。
「な、なんだ!?ヒィ、ギャアアアアアアアア!!!」
「どうした!う、うわああああああああ!!!!!」
突然飛んできたクワガタムシに、全身を千切られ、刻まれていく。
小さな存在になすすべもなく貪られ、人だったものがそこら中に散らばる。
まさしく、恐怖の光景だった。
「な、なんなの…!?」
「い、今だ!全員脱出しろ!」
その場にいる全員が阿鼻叫喚の地獄と化した悪夢の日。
その危険性はとても直視出来るものじゃないだろう。
その様子を、蒼き鷹の青年は見下ろす。
「よし、なんとか片付いたか。さて、後は合流するだけ―――」
その刹那だった。
「・・・ターゲット補足。」
遠くの電波塔から一人のスナイパーが、彼の翼目掛け、ライフル銃の引き金に指を掛け―――
「―――な、ガァha…」
その翼と共に、紅い飛沫を背中からまき散らした。
〔な・・・ん・・・で―――〕
翼をもがれた鳥は、そのまま地面に叩き付けられる。
白銀のクッションもあるが、液体人間の彼からすれば―――
「あ―――からだガ……………」
新雪の地面でも、彼にとってそれは死の氷床でしかない。人の形を維持していた彼の身体はたちまち凍てつくだろう。
「そういえば…………雪、降ってたんだった…………。」
無敵の能力とされた彼のスキルにも、唯一無二にして決定的な弱点があった。
それは、低温の空気である。
彼のスキル上、肉体を構成するには莫大なエネルギーを必要とする。
その性質上、彼はたまに大食いチャレンジグルメで、消費エネルギー分の元を取るが、「肉体を構成する反動で、凝固温度への条件変化」を引き起こしたことは、どうしても防ぎようがない。
肉体の機能低下を引き起こすの低体温症の温度も、3段階目にまでなるのも35℃になると発症してしまう。
故に、低温こそ彼の絶対的な弱点である。と言えるでしょう。
「や…べ…………目が……霞んで……きた…………からだも…………うごかねぇ…………」
彼が倒れ伏していると、襲撃者たちのリーダーらしき人物が彼に向かってきた。
「対象の撃墜を確認。」
「お見事です、サルガタナス司令。」
「うむ。対象の拘束は可能か?」
「はい、辛うじて。」
「これより拘束を行え。」
「了解。」
「私も直ちにそちらに向かう。」
「サルガタナス司令自らが…!?」
「そちらの被害の確認もしておきたいのでな。」
瞬く間に、彼は拘束され、上空のヘリコプターに連れてこられた。
〔ひと、じち……?〕
微かに意識が残っている彼は、人質という言葉に反応した。
「……どうやら意識が残っているみたいだ。折角だから見せてやれ。」
「ハッ!」
そう言うと、男達は人質と共に現れた。
「…………ッ!」
朦朧とした意識下でも、彼は受けた衝撃と激しい怒りを忘れなかった。
「ティア…………!」
「お兄ちゃん…………皆…………!」
妹のティアが、人質となって現れたからだ。
ヘリコプターからモニターで映し出される光景は、一切の真実しか映し出していない。
「おはよう。壱原琉輝くん。」
「てめぇ、ら…………!何をしたのか、分かってんのか……!!」
「貴殿はそこで大人しくしてもらいたい。我らが神祖《ELo》が、貴方を必要としてるからな。」
「神祖だと…!何訳分かんないこと抜かしやがる…!ティアを離せ!!下手に傷は付けるな!!」
彼は主犯らしき男に向かい、そう叫んだ。
「そうだな…少々、掠り傷程度で済ましてやろう。」
「!!!」
掠り傷、という言葉に彼は激昂した。
「てめぇら、絶対ぶっ殺して―――ウグッ…!」
「功を急くと、助かった命を無駄に捨てる事となる。傷口が開いても知らんぞ。」
背中の傷が開く。
もがれた翼の痕が紅い血潮を噴き出す。
必死にもがくが、もがいたところで傷口は開く一方。
その内彼は、抗うことを止めた。
「いいか…これだけは言っておく。―――撃ったらすぐ逃げろ。」
「そうか。進言に感謝しよう。だがその必要はない。どこから撃たれたのか。彼女には見当が付かないからな。」
「なんだと…!?」
「―――私の能力は完全隠密。一度気配を消したが最後、私自身はおろか、私の所有物ですら検知は不可能なことだ。例え、それが放たれた銃弾だろうとな。」
「!?…じゃあ、さっきオレを撃ち抜いたのは…」
「そう私だ。決して私からは逃れられない。」
「く、クソぉ…!」
圧倒的無力感に打ちひしがれる琉輝。
こうも無力だったのかを痛感したことは一度もなかったであろう。
ただでさえ動きが鈍かったのが、完全に停止した。
「では―――」
「や、やめ―――」
その言葉の後、彼方より放たれた銃弾が、彼女の掌を撃ち抜いた。
「うあ・・・」
「ティア!!!」
「着弾を確認した。急ぎその場を離れよ。」
苦痛に歪む二人の顔。
冷静に、正確に右手を撃ち抜いた直後に、捕らえていた男達は彼女から遠ざかっていく。
「―――それで、何があるというんだ?」
「ク、クフフフ……―――なあに…すぐに始まるさ。地獄のショーがな。」
そう言って不敵な笑みを浮かべる琉輝。
しばらくもせず、通信が入る。
『サ、サルガタナス司令!!緊急事態です!!』
「どうした、状況を報告せよ!」
『た、対象の容態が急変!!現在―――』
「おい、何が起こった!!」
『―――現在、周囲のマナエネルギーの放出量が爆発的に増加!!』
『ハザードレベル―――もとい、ADvレベルS、パターン:異能暴走を確認しました!!!』
「―――!!」
異能暴走。異能力の制御が甘い人が何らかの形で衝撃を受けると、周囲に対しスキルの暴走を引き起こしてしまい、引き起こされた超常現象による二次被害があるという、極めて稀に起こる超人災現象である。
「痛いぃ!!!いたいよぉ!!!なにがどうなってるのかわからないよぉ!!!!!!」
幼子のように泣きわめくティアは、周囲の雪を溶かし、植えられている植物が急激に肥大していく。
「な、なんだ、これは…………!!」
「バ…バケモノだ…………あんなの、我々が対処出来るレベルじゃない!!!」
傷口は既に塞がっているのにも関わらず、余りにも超常的な事態を引き起こす程のヒステリックな感情と共に慟哭する少女を前に、周囲の隊員は慄く他なかった。
『サルガタナス司令!!迅速なご決断を!!!』
『このままでは、周囲に多大な被害が発生します!!!!』
その声を聞くや否や、サルガタナスは琉輝の方を向いた。
「貴殿…これが狙いか!?」
「ご名答。一か八かの賭けだったんだが、上手く行ったみたいで良かったぜ…」
「あのように殺意を向けるほど、過保護とも取れるレベルで愛していた妹を、この状況の打破に使うとは…!」
「正直言えば、ぶっ殺そうとしてんのは変わらない。だが、アンタにだけは話してもいいかなって。」
「…何故私に話そうとする?そして何を話す気だ。」
「知り合いんだろう?ティアと、何故オーバーロードを引き起こせるのかを。」
「あの少女と、オーバーロードの関連性についてか…」
「悪くはないだろ?そして、アンタはあんなゴミ共とは違う。信念と《・》し《・》て《・》の《・》悪を感じたんだ。アンタ自身の正義という『悪』をな。」
「…正義という『悪』・・・・・・か。面白い。いいだろう。話したまえ。」
「にっしし。そうだなぁ…あれはオレが14の時だ。」
そして、彼は過去を振り返った。
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【あれは、母さんの葬式の後の話だ。…オレは今思うと、廃人みたいになってた頃かな。】
「――――――。」
「なあ、アイツは大丈夫か?」
「無理もない。身内が二人も死んだんだ。まだ青二才のあの小僧には、到底受け入れられんだろう。」
「だとしても、あのように涙一滴も流さないとか、流石に心配するわね…」
「奴はもう使い物にはならんな。あのような傷を負って、心に孔が空いてしまった。再起は出来んだろう。」
【身内からは散々な言われようだったよ。】
【PTSD…心的外傷後ストレス障害の類か。】
【大まかに言えばそんな感じかな。なんというか、そん時は悲しむこと自体が馬鹿馬鹿しく思えた。】
【アレキサイミア―――貴殿の症状としては、悲しむという感情の表現方法の欠落と言うべきか。】
【だけど、親父はそんなオレでも手を差し伸べてくれた。】
「よ、琉輝。」
「――――――。」
「いやぁ、しばらく見ないうちに随分と無愛想になったな。」
「アンタはしばらく会ってないが、能天気なのは相変わらずだなという感想しか持ってないがそれでも?」
「うーんこの。もう俺の知ってる琉輝じゃないわな。」
「そんで?オレになんか用?まさかとはと思うけど―――」
「そうだな、取り敢えず―――」
「「俺の家に来ないか?(って言うんだろ?)」」
【奇跡的なシンクロだったよ。】
【そう言うものなのか…】
【んで、とんとん拍子に話は進み、一ヶ月後には親父んちに引越すことになった。】
【なるほど。】
【んで、アイツと引き合わされた。】
【真登河帝亜か。】
【そうそう。そん時は、ティアー・マーガレットだったけな。ま、話した方が分かりやすいか。】
【では、聞かせてくれ。】
【ああ。そんで、オレが今の実家にきた直後の話だ。】
「ウェルカムIS壱原家へ!!こんなこざっぱりしたとこだけど、ゆっくりしていってね!!」
「うるせえ。実の息子を引き込んでおいて自分だけはしゃいでいるんじゃねえ。」
「Oh、辛辣ゥ。まあ実はもう一人の家族がいるんだけどね。」
「不実の恋人か?もしそれなら最大級に軽蔑してやろうか?」
「お前は俺をなんだと思っているんだ!?」
「ぼんくら。不誠実。天性のヒモ。経歴の割には普段がダメ人間。オレがいなきゃろくに家事もできやしない一生インスタント食品人間と思っていますが何か?」
「思った以上に辛辣過ぎるのは流石に笑うしかないww」
「んなこたぁいいからさっさと紹介しやがれ、ダメ親父。」
【散々な言いようだな。実父ならいい所くらいはあるんじゃないのか?】
【サルガタナス。オレの名誉の為にも言わせて貰う。こいつマジでダメだから。】
【そういうものか?】
【ああそうだよ。何かとあればキャバ嬢の名刺をポケットに忍ばせたり、オレが修学旅行でいなかった時は部屋が有り得ないくらいに滅茶苦茶になってたし、その休みもゴミ出しゴミ出しゴミ出し…!ああ思い出すだけで頭が痛い…!】
【なるほど。本題に戻ってもいいか?】
【そうしてくれ。そっちのほうが気が楽だ。】
「いいか?この先に家族がいる。お前の家族だぞ。」
「・・・・・・なんか銀行の賃金庫みたいな扉だな。」
「そりゃそうだろ。ビデオ通話ぐらいで勘弁してくれ。今は調整中なんだ。」
「おい。オレに会わそうとしてんのは人間だよな。これでロボットなら本気で勘当も考えるぞ。」
「人間だから!!人間だから安心しろよ!!!」
「まあ、最後通告って事にしておこう。」
「よし。それじゃあ・・・・・・おし、繋がった!」
『お父さーん!!待ってたのですー!!』
「よぉ~しよしよしよしティアー。お前はホントに可愛いなぁ。」
『それでそれで!?新しい家族って誰ですか!?』
「・・・。」
「は?」
【初見で思ったことは、拉致監禁した高校生に、お父さん呼びさせて幼女プレイとか、ホントに人として終わってんなと思いました。】
【私は貴殿の辛辣さに驚きを隠せない。】
【まあ、そんなこんなでティアとの初対面だ。】
『お父さんお父さん!!この人が新しい家族ですか!?』
「ああそうさ。今日からは、この人が君のお兄ちゃんだよ~。」
「勝手に話を進めんな。」
『お兄ちゃん!お名前を聞かせてください!』
「…………言わなきゃダメか?」
「どうしてもだ。安心しろ。こう見えて安心出来る。」
「―――。壱原琉輝、14歳。趣味は読書と……家事かな。」
『琉輝って言うんですね!私はティア!ティアー・マーガレットと言います!』
「ティア………ちなみに年齢は?」
『12歳です!』
「は?」
『12歳です!』
「いや言ってる意味が分からん。頭大丈夫か?」
『はい!至って健常だと、お医者さんに言われました!!』
「お~う親父ィ・・・オレは悪い夢でも見てるのか?」
「まあ気持ちは分からんくもない。だがしかしこれは現実だ。可哀そうだが、受け入れろ。我が倅よ。」
「ふざけんなてめえぶっ殺すぞ。高校生かと思ったら予想以上に救いようがなかったなてめえゴラァ。コンクリートにぶち込んだ後東京湾に沈めてやろうか、あぁん?」
「手口が余りにもレトロで笑うw」
「―――ところでティア。何でそこにいるんだ?」
『まぁ…………詳しい事情は話せません!』
「よし家族会議だ。ティアを立会い人としてじぃぃぃっくり話そうかぁ親父ィ^^」
「うーんこのナチュラル893。」
【とまあなんやかんやで話は進んで、そん時は、オレと同じ孤児を拾ったって事になってたらしい。】
【成程。では、異能暴走についてはどう説明する?】
【そこも追々話すとしますか。あれから一ヶ月後の話だけどな。オレはいつも通り、学校から帰って夕飯を作ってるところだった。】
「さて、今日はトマトスープに豚の生姜焼き…そうだ、生姜焼きにはキャベツ千切りが欠かせないからな。」
ピピッ―――
『お帰りなさい琉輝さん!今日は何を作ってるんですか!?』
「ただいま、ティア。今はトマトスープにコンソメスープの素、豚バラ肉の仕込みをしてるところなんだ。」
『おおー!美味しそうです!!』
「あ、そうだ。せっかくだから近くで見てみないか?」
『いいんですか!?―――ぶえっ。』
「あっはは。画面に向かって走っても見えないだろ。モニターを遠隔操作に切り替えて―――」
『ふわっ!琉輝さん大変です!』
「どうした?モニターが壊れたとかか?」
『いえ、その…ま《・》た《・》暴走しちゃったみたいで、出来れば、その場から離れて欲しいなぁーって…』
「おいおい、何で離れる必要が―――」
【言葉の意味が分からなかったが、すぐさまその意味を思い知らされることになった。】
ゴポポポポ…ボン!!
メキメキメキ…………
「―――ぁ、うわあああ!!!」
【調理中の鍋が急激に沸騰し、野菜も急激に成長を始めた。それはまるで、生きてるかのように。それに驚いたオレはその場から急いで立ち去った。】
「おいティア!一体どうなってんだよ!!」
『すみません…………ちょっと鼻血が出ちゃって。そのせいで、急激に生命力が爆発的な増長を始めたみたいで…』
「言ってる意味が何一つ分からん!!!とにかく、今は逃げるしかない!すまないが、今日の夕飯はお預けだ!!!」
『え…ええええええええええ!?!?!?!?』
「仕方ないだろ!!こんな状況で飯なんか作れるか!!!」
『私、琉輝くんのごはんずぅぅぅぅぅっと楽しみだったんですよ!!!それなのに、お預けってありですかー!?!?!?!?!?!?!?!?』
【その声に応えるように、生命力は爆発を強めた。】
「ダァーッ!!泣くなぁもーう!!分かった!!飯は作るよ!!何が食べたい!?」
『ふぇ!?いいんですか!?』
「ああ、なんでもだ!!好きなものなんでも作ってやる!!!」
『…………』
「おい、どうした!?」
『わぁぁぁぁぁぁい!!!!じゃあ、ハンバーグが食べたいです!!あと、ステーキに、パフェに、お寿司に、それから…ええっと……』
「なんでもとは言ったがそこまでしろとは言ってないからな!?」
『ふえ?そうなんですか?』
「ああいや、そうじゃないんだ。よし!!ハンバーグだな!!!今日はハンバーグを作ろう!!」
『わぁぁぁぁぁぁい!!!!琉輝くん大好きー!!!!』
「だから――――――」
『?』
「この暴走を止めてくれええええええええええ!!!!!!!!!!!」
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「てことがあったってわけよ。」
「…確かに、話を聞く限りではオーバーロードの状況と一致してるな。」
「あの後聞いた話でティアのスキルを聞かされ、そっから適切な対応を取ったわけ。」
「成程。『生命力を異常なまでに活性化させる』能力。であれば、暴走のリスクも相応なものとなり、範囲もまた広大なものとなるのか。」
「お陰様で能力をコントロールできるのに7年も掛かりました。ようやく外に出られるようになったというのにお前らさぁ…」
「―――我々の目的はあくまでも不滅剤の回収。ごろつき共を雇い入れ、邪魔するものを排除しただけの事だ。」
「なるほどねぇ。エリクシールってのがよく分からないが、ようはディオルガの目的はエリクシールで、それを回収する為に学園を襲ったと………腐りきってんな。てめぇら。」
「まあ、そのエリクシールもまた、我々の目の前にいるのだからな。」
「どういうこったよ。」
「―――壱原琉輝。我々の探すエリクシールとは君のことだ。」
「は?」
「良ければ君の身体を提供してくれないか。なに、細胞さえ取れれば十分だ。」
「あー……そういう感じ。んじゃ遠慮なく……」
そう言って琉輝は、指を切り取り、サルガタナスに渡した。
「!?」
「これでいいんだろう?」
切られた指が即座に修復していくのを見たサルガタナスは、彼に対し畏敬の念を込めてこう言った。
「―――提供に感謝します。我々の悲願及び、我らが神祖《ELo》の望みに一歩近付きました。」
「さて、次はオレからの依頼だ。」
「私に出来ることならばなんでも。」
そう言った矢先に、彼の顔にはにやけた表情が写る。
「―――じゃあ、オレを落とせ。」
「……はぁ?」
「オレをティアのとこまで落とす。そしたらオーバーロードも止まると思うし、なかったことになる。お互いにwin-winだろ?」
【この者……どこまで計算済みなのか…………。確かに、それならお互いにリスクは低く、リターンのみが返ってくる。…………やるしかないか。】
「―――了解。それではいいフライトを。」
そしてヘリコプターから琉輝を叩き落とした。
落下地点は見事にティアの真上だった。
「ティア、ただいま。」
彼はティアの涙を拭った。
「もう安心してくれ。お兄ちゃんが守ってやる。」
「うん…………。ありがとう、おにい、ちゃん…………。」
そして、ティアは安らかに意識を失った。
「とまあこれで形成逆転だぜ、サルガタナスさん?さ、どうするぅ?」
大胆不敵に笑う琉輝。
「・・・負けたよ。取り敢えず君達を病院に搬送することを約束しよう。」
「そ、そうか…」
その言葉を聞き、彼は安堵の余り気を失った。
『サルガタナス司令、オーバーロードの鎮静化を確認しました。』
『この後、どうしますか?』
「今すぐ別班に搬送を急がせよ!そして、今回の襲撃は奴らに責任を負わせよ!!」
『ハッ!』
そして、全ての事は解決した。
琉輝・ティアは病院で治療を受け、彼らに雇われたごろつきは、全員実行犯として逮捕された。
これで万事解決…………かに思われた。
「…………へぇ。思ったよりやるじゃん。」
銀髪の美しき人物が、彼方より事の顛末を見届けていた。
男とも取れ、女とも取れる神懸かりの美しさの底に、無垢なる狂気と邪悪を秘めていた。
「こりゃエコロも嬉しいだろうね。同じ存在として誇らしげにする顔が目に浮かぶよ。」
彼方を眺めるこの人物―――八十神磊徒は、物思いにふけっていた。
「しっかし、あの薬を直に取り入れるとはね。入院したってニュースを聞いた時はどうなるかと思ったら、案の定、深淵を破って覚醒したんだからね。ま、いいか。」
「取り敢えず、ここの余った空白で、ここでしか描かれない描写を入れまーす。それでは、どうぞ!!」
下町の雪空をヘリコプターが飛ぶ。
「…これで上手く行くのだろうか。」
そう悩む青年。
そこに一つの通信が入る。
『サックんおつかれー!!』
「お嬢様、サックんとは呼ばないでくださいとあれ程…」
『えぇー!いーじゃんいーじゃん!!わたしとサックんの仲じゃーん!!』
「はぁ…それで、無線を通してまで言いたいことは何ですか?」
『うん!わたし、あの子を家に雇う!!』
「あ、あの子って誰ですか!?」
『まあ来てから分かる!そいじゃあまた今度ねー!』
「ちょ、ちょっとお嬢様―――…………切られた。」
サルガタナスはため息をついた。
「本当に、アスタロト様の我儘には困ったものだ。見た目は淑女だというのに、いつまでも子供らしいというか…ネビロス様になんと報告しよう。」
「はいおしまーい!!どうだった?
あ、そうだ。この物語はここからが佳境だから、評価や感想、レビューもよろし
くね。今後とも、Enemycircular《エネミーサーキュラー》をよろしくお願いいたします。以上、八十神磊徒でしたー!」
というわけで皆さん!!ほんっっっっっっとうにお待たせいたしました!!!
最新話いかがだったでしょうか!
さっきも言われたように、評価やレビュー等、よろしくお願いいたします!!
そしてここからは、小説家になろうでしか書かないスペシャルエディションとなります!!
カクヨム版や、ノベルアップ+版でも、よろしくお願いいたします!!




