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無冠の王と幻想の魔王  作者: アクイラ(°Д°)
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【Episode1 証を持つ者】 妖精演舞(フェアリーダンス)②

【翠宝の森】

 肩まで伸びた金髪と琥珀色の瞳の少女に連行されるまま到達した都市。


「初めて見たって感じね?もしかして他の都市から逃げてきた人?」

「???」


 少女の言っていることが見えてこない望月。


「そもそもここはどこなんだ?」

「独立都市の『翠宝(すいほう)の森』だけど。あなたどこの都市から来たの?」

「東京?」

「トウキョウ?どこそこ?」


(どうしよう、言葉は通じているから日本ではあると思うけど、どうにも噛みあってないな)


 望月は粗方の状況を整理する。

 封筒を開いた瞬間、摩訶不思議な場所にいて、獣に襲われて、そして目の前にいる金髪の少女に出逢った。


「もしかして、他の都市からのスパイとか?」

「ち、違う。黒い封筒を開いて、気づいたらあそこにいたんだよ。ってか、他の都市もあるのか?」

「もしかして記憶喪失?でも都市の結界外にいて助かるってのはありえないし、数日経ってるってのもないと思うし、ついさっきあそこに転移したのなら辻褄は合うけど」

「話づらいからとりあえず自己紹介しとく。俺は望月紫苑」

「それもそうね。私はマリア=ステファニーよ。まぁ立ち話もなんだし、とりあえず私の家に来なよ」

「ありがとう」




   【マリア=ステファニー宅】


 再び連行されるままマリア=ステファニーの家。

 外観は小さなログハウス。扉を抜けると、少し広めのワンルームといった感じだ。

 内装はパステルカラーで統一されていて、女の子らしいといえばらしい。

 ・・・自分の腕に嵌められた光で構成された手錠さえなければ、胸躍る光景だっただろう。


「どうしてこうなった?」

 本日二度目の言葉をマリア=ステファニーに突き付ける。


「だって、知らない人を家に招いてるんだからこれくらいの警戒はいいでしょう。襲われたくないし」

「ってかコレなんだよ」

「束縛術式よ。魔術も見たことないとなるといよいよ怖くなってきたわね。クリスタ様のところにつれて行ったほうがいいわね。ちょっと来なさい」

「ちょ、ま、」


 腕を鎖で縛られている望月を引きづったまま家を出る。

 地面に靴や服を削られ、抵抗の声も虚しく三度連行される。


(マリアの家の周りを見るとログハウスが並んでいるけど)


 ゲームセンターなどの娯楽施設。

 憩いの場として設けられている酒場。

 その他にも呉服店、雑貨店。

 そして中でも目を引くのが、この都市の中心部に聳え立つ宮殿と時計塔。今回の連行もそこが目的地のようだ。


「ついたわよ」


 重厚感を感じる扉が開けられる。

 扉を開けた先、その左右にメイド姿の女性が立っていた。


「マリア=ステファニーですね。女王陛下にお目通りでしたらアポイントメントを取っていないようですが」

「申し訳ありません。ですがこの者が『アビスの森』で倒れているところを保護しましたが出自が不明のため、クリスタ様の力添えをお借りしたく参りました」

「いいでしょう。では転移(ジャンプ)!」


 マリル=ステファニーに腕を掴まれ、番兵というか近衛兵がそのマリル=ステファニーの腕を掴んだ瞬間、景色が一変した。

「うおっ!


 煌びやかな装飾が施された内装。家具などもアンティーク調で揃えられ、足元には赤いカーペットが敷かれている。


「お、汚いのをつれてきたなマリア」

「急なお呼び立てをすみません。こいつが、」

「異世界の人間だな」

「―――ッ!」


 その人物は威風堂々と玉座に座って足を組み、腰まで伸びている黒髪を携え、赤い着物を着込んでいた。


「少し考えれば分かるだろ。先程の転移魔術にとても驚いている様子から魔術を視た経験が少ないというよりはないと考えていい。魔術を知らないなんてありえないから、おそらく異世界の方だろ?」

「クリスタさんって言ったな。言葉づかいが間違ったら悪いが、ここの説明をお願いできるか。さっきの口振りだと魔術なんてファンタジーを信じなくちゃいけなそうだし、あんたが『翠宝の森』で1番偉い人なんだろ。さっきマリアの実力は見せてもらったからそれ以上って時点で危なそうだし」

「馬鹿な猿ではなさそうだな。異世界の者ということで無礼は許してやろう。察しの通り妾はこの『翠宝の森』の領主にして《六星の聖者》の1人。《修羅姫》のクリスタです。お前を元の世界に戻してやってもいいが条件がある。『ユグドラシル』の攻略に力を貸してほしい」

「『ユグドラシル』?世界樹的な何かか?」

「そうだ。この世界の説明からしてやらんと分からんだろうから一応しておいてやる。マリア、紅茶を持ってきてきれるか」

「あ、はい」


 クリスタに従うまま、外に出るマリア=ステファニー。

 彼女が扉を出たのを確認したクリスタが指をパチンと鳴らすと、ガチャと扉に鍵がかかる。


「どういうつもりだ」

「異世界からの放浪者などと普通は信じられない。魔術に対して知らないフリをしている可能性もあるからな。他の都市の使者ではない保証もない。だからマリア抜きで話をしたいと思っただけだ。固くならなくていい。疑いがあるというだけで決まったわけではない」


 クリスタは言外でこう語る。

 疑っているうちは命を保証してやるが、確証にかわった瞬間に命はないと。

 今回掛けられた疑いは2つ。

 ・望月が他の都市の密偵ではないか?

 ・望月が異世界から来たのか?

 命を賭けた存在の証明を強いられているのだ。


「なら俺からも問いたいことがある。もし俺の身分証明ができたら教えてもらうぞ」

「かまわんよ」

「第一に俺が異世界から来たことを証明できれば、他の都市の密偵ではないことはイコールだ。まずそこを確定させておくぞ」

「いいだろう」

「じゃあ大前提として俺は魔術の存在を知らないが、それを証明するだけの材料を持っていない。だが俺が魔術の知識がない。それは裏付けにはならないか?」

「難しいな。知識がない証明ができない。脳の中の情報は誰にも見せられない絶対の領域だ。見えないものを証明することは不可能だ」


 いわゆる悪魔の証明。

 圧倒的に望月のほうが不利とされる状況だが、彼は生きるために相手を論破するだけの材料を得なければいけない。

 だが決して不利なだけではない。

 望月はたった1つ。

 たった1つでも相手に返答のさせない証拠を突きつければいい。対してクリスタは一変の疑いもないほど論破しなくてはいけない。


「まずは枠組みから固めたい。この世界についての説明をお願いできるか?」

「すまんが出来ぬ」


 当然だ。

 情報を渡すということは、それだけ相手にこの世界に対しての言い訳を用意させるのと同意義。何も知らないと証明するならば変な思い込みを刷り込ませないのが得策だ。


「なら嘘混じりでもいい。俺がその中で言い訳をして矛盾があれば俺の証明になる。矛盾がなければ俺を殺せばいい」

「・・・いいだろう。まずは6都市の説明に入ろう。前提として我々は生き残り。そこには人類種を含め、多種多様な種族が『ユグドラシル』に住まう《魔王》達によって滅ぼされかけた。だが妾を含む《六星の聖者》の先祖達が6都市をその形状から『アスタリスク』と名付けて建造し、周辺の民を守ったんだ。だが《魔王》は天災のようにやってきては世界を滅ぼす。そのたびに英傑達がやられてしまったんだ」

「話を挟むようで悪いが、《魔王》っていうのは?」

「『ユグドラシル』には『オーブ』と呼ばれる願いを叶えるとされる結晶があるとされている。その『オーブ』が生み出す魔力が人の形を成した時、必要悪として《魔王》が生まれる。その対処をするために《六星の聖者》を始めとして多くの英傑が命を失ってきた。だが、その連鎖を断ち切るために妾はこの代で『オーブ』を破壊しようと思う」

「だったら6都市で協力した方がいいはずだ。それなのにお前は俺を他の都市の使者として警戒している。つまり他の都市と敵対関係にあると言っていい。理由が過去の裏切りや蹴落とし合いなんかが含まれるだろうが、それでも利害の一致はあるはずだ。『オーブ』には叶える回数制限があると思っていいんだな」

「その通りだ」

「だとしたらおかしな点が2つある。まずはお前がその回数制限のことを知っているのか?それとどうして『オーブ』は今もなお『ユグドラシル』にある。最初に願いを叶えるという効果が判明したならばそこにある必要はないはずだ。そこでしか願いが叶えられないなんて条件があったにせよ。それを願いで叶えてしまえばいい」

「頭は回るようだな。そうだ。『オーブ』を持ち出すことは叶わなかった。だがその条件は、妾も知らぬ。だが『オーブ』が生み出した《魔王》や魔獣が世界の破壊をしているのは変わらない。だからこそ破壊を目指す。それが領主としての役目だ。そのために弊害となりうるものを除外する」

「ならこの辺で俺も証明しておきたい。だがそれを証明する材料を俺は持っていない。だが俺が“異世界から放浪者”って呼んだからには何かしらの確証か前例があったんだろ。この世界に俺以外の奴が」

「・・・・・」

「俺の身分はお前が証明しろクリスタ」

「よかろう。お前の潔白は妾が預かろう。ここで変に追及して妾が死ぬようなことがあればマリアにも迷惑が掛かるだろうからな。だがその見返りとして、妾の騎士となれ。お前の頭は使える。『アビスの森』で魔獣を撃退したという報告もある。お前の待遇も良いモノにしてやる。どうだ?妾に飼われてみないか?」


 何かを企んだ笑み。

 ハッキリ言ってここで素直に頷くのは癪だ。


(かといってここで断ったとしても・・・逃げ道がないな)


 望月はしばし考える。

 仮に飼われてしまえば万が一の時に自由に動けなくなる。

 だがここで従っておけば、この世界のことを概ね把握できるだろう。

 目の前の安全を取るか、今後の自由を取るか。


「仕方ない、騎士になってやるよ。その代わりいくつか譲歩してもらいたいものがある」

「モノによるな」

「まずはこの世界の情報。さっき言ってくれた事の他に知っている限りのことを教えてくれ。中には教えたくないものもあるだろうから粗方でも構わない。他に武器をもらいたい。さっきマリアが持っていた刺突剣での戦闘は明らかに普通の人間のものじゃなかった。だから魔術についても教えてもらうぞ」

「いいだろう。だが武器については保証は出来ない」

「???」

「この世界には魔力を通さない武器が存在しない。『ユグドラシル』から出る魔力は我々の生活の恩恵を

与えているのもまた事実。だがそれを断ってでも《魔王》という存在は大きすぎるのだ」


 マイナスの要因が大きすぎるため、数世紀の生活を賭けたとしても排除したい。

 数々の英傑を屠ったとされる《魔王》という存在はそれだけ大きいのだろう。

 だが。


「その《魔王》は確かに脅威だと思うが、生き残った英傑はいないのか?」

「2人いる。だがそれはここではなく他の都市の領主だ。『紫雲(むらくも)(やしろ)』に《雷帝》、『紅玉(こうぎょく)の城』に《灼炎の王》がいる。《魔王》と闘える存在がいるというのは心強い。だがこの都市にはいない。たとえ妾であっても勝てる確証など無い」

「不確定要素が多すぎるがとりあえずは《魔王》ってのが当面の障害になるのは分かった。そして他の都市と鎖国状態にあることもおおよそ。6都市の位置関係は?」

「『ユグドラシル』を中心に*(アスタリスク)の形だ」

「なら、まずは隣の都市との交易を計るべきだ。いまはとりあえずの頭数が必要になる。打倒《魔王》の名目だと保守派だった場合に交渉が不利になる可能性がある。まずは英傑を揃えなくちゃ話にならないからな」

「他の都市との協力を仰ぐことは賛成だ。だが交渉材料がない」

「協力関係を結べばいい。《魔王》襲来時に駆けつける盟友になればいい。この時代ならそれだけでもかなりの交渉材料になるだろ」


 《魔王》の実力は望月には分からない。

 だが決して1つの都市で対処できる相手ではないことを理解し、強者を集めようとしている。

 だがここで弊害が生まれる。


「ネックになっているのは『オーブ』の破壊を他の都市が是としているかどうかだ」


 望月の言葉にクリスタは言葉を詰まらせる。

 他の都市では『オーブ』を生活の必需品としているところもあるのだろう。

 それを断つことは愚王として罵られる覚悟があるということだ。

 だがそれを他に強要することはできない。

 それぞれの都市の領主は民の安全を維持したい保守的な考えだった場合、交渉の余地はない。

 片方は生きるために守ることを選んだ。

 片方は生きるために過去を捨て闘うことを選んだ。

 どちらが正しいかなんて分からない。そして現代での行為は未来に生きた者にしか分からない。


「クリスタ、俺はお前の騎士になった。だが犬になるつもりはない。だけどお前が助けて欲しいって言うなら実力はまぁ足りないが、出来る限りのことはしてやるつもりだ」

「生意気な奴め。まぁ信用はしてやろう」


 クリスタは不敵に笑い、パチンと指を鳴らす。

 すると扉の鍵が開き、マリア=ステファニーがやってくる。


「随分と仲良くなったみたいですねクリスタ様」

「あぁ、こいつを妾の騎士にすることにした」

「―――えっ!」

「そんな驚くこともあるまい。こいつの頭はかなり切れる。戦闘力も魔獣を知恵でやりすごしたのだろ?ならば、お前にとってもそこまで悪い話ではないだろ?」

「どういうことだ?」

「マリアは妾の『白麗騎士団』の軍団長だぞ」

「といっても私を含めて3人なんですけどね」

(こいつ人望ないんじゃないか?)


 それだけクリスタの思想に賛成する者が少ないということだろう、と納得する望月。


「この都市にクリスタ賛同派は騎士団以外にどれくらいいるんだ?」

「・・・・・」

「おい、こっち見ろ」

「い、いない」

「・・・・・」

「し、仕方がないだろ。これは見方を変えれば世界への反逆者だぞ。そんな奴の仲間になりたいなんて奴がいると思うか?今までだって反対派を力でねじ伏せ《魔王》に対抗できる『可能性』を示して、ようやく安定したのだぞ。これだけでも頑張ったほうだ」


 たった4人でこの都市を守ってきたんだ。

 それはつまり、この都市には《魔王》に対抗できる『可能性』を持った人員が4人『しか』いないことになる。


(そこに俺を加えた5人で《魔王》をどうにかしなくちゃいけないなんて詰みゲーもいいところだろ)


 比較的、絶望的な状況。


「確認したいことがいくつかあるし。ここから1番近い都市を目指したい。どこだ?」

「『聖水の都』だな。統括している領主は《雀泡(じゃくほう)巫女(みこ)》と呼ばれる女王だ。何があっても闘いだけは避けろ。相手は人間種ではなく神族種。神の加護を受けた巫女。才気だけで言えば英傑内でも1、2を争う。機嫌を損なえば命はない。ただあいつは人を覚えるのが苦手でな、最年少の英傑だが妾を含めた9人しか覚えていない」

「お前は行けないのか?」

「当たり前だ。仮にも『翠宝の森』の領主が離れるわけには行かない。だからマリアを連れて行け。それでも《麗翼》の名を冠する騎士だ。実力はかなりのものだぞ」


 たしかに刺突剣の実力を見れば分かる。魔獣を一瞬で吹き飛ばし技はおそらく体技だけではなく魔術と呼ばれる力が上乗せされての事だろう


「出立はどれくらいがいい?」

「そうだな。マリア、望月を守りながら闘えるか?」

「できるとは思えますけど、完全にとは。アリスがいれば違いますけど」

「アリスとクーナは妾の護衛だ。さすがにこれ以上の人員は割けない。かといっていつまでも待っているわけにはいかないから最低でも明後日には向かって欲しい」

「じゃあ武器の用意だけお願いしたい。魔術の知識はマリアに聞くから」

「分かった。夜には準備を済ませておく。マリアの部屋を貸してもらえ」



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