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最弱学校の異端児「ルデア」  作者: 烏猫秋
第1章〜異端児、夏の2校トーナメント戦に向けて〜
19/35

2校トーナメント戦②

 

 2校トーナメント戦

 それは、力と力のぶつかり合い。小細工などは、まったく通用しない。

 ⅤPにされた人間が、必ず通る道。

 何でⅤPなんか作ったんだジュノーは。

 ⅤPさえ居なければ、世界は平和のままだったのにな。


『行き過ぎた進歩は、いずれ頽廃を生む』か・・・・。


 

 いよいよこの日がやってきた。

 今まで、自ら努力をしようと思ったことはなかったが、出場が決まってからは努力の日々だった。

 思い出すと、良かった記憶なのか、苦しい記憶なのか分からない。

 つまり、記憶が残らないくらい励んだということだ。

 チームのみんなは、全面サポートしてくれて、シズとは一緒に切磋琢磨した。 

 悔いが残らないように、悉皆悔いの残る原因になるようなことは、しっかりと修正したりもした。

 とにかく、俺が言いたいことは、


「コンディション最強!」


 だとということだ。

 まあ、こんなこと外で言えるはずもないので、心の中で叫んでおいた。


「楓守、早く行こうよ」

「おう、行こうか」


 シズに呼ばれて、俺は選手控室に向かう。

 もちろん、喧嘩沙汰が起こらないように学校ごとに分けられている。

 

「今日は、みんな頑張ってよ~!」

「先輩に付いていきます!」


 部屋に入った瞬間に、猫石生徒会長の元気な声が聞こえてくる。

 さすがは、羽愞のムードメーカーってところだな。


「先輩方こんにちは。今日は、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 俺たちが、学年的に一番下だからな。

 礼儀として、挨拶をする。


「古谷君、逢いたかったよ~。シズちゃんも、今日はよろしくね」

「古谷、お前は俺を負かした最強の1年生だ。しっかり勝ってくれよ!」

「兄貴、遅いですよ~。先輩方の中で孤立してたんですから」


 生徒会長も、虎居先輩も酒木君も優しいな。 

 これなら、シズも馴染みやすそうで兄として安心だ。

 右を見ると、シズは少し笑みを浮かべていた。


「さあ、15分後には試合が始まるんだから、休憩して休憩して」


 会長が長椅子に誘導してくれる。

 あと、15分で始まるのか。けっこう早いな。


「後輩に見られるのは、緊張するもの?」


 ?

 どういうことだシズよ?

 俺たちは1年生だぞ。

 後輩なんて、居ない居ない・・・・・・。

 あっ、居た!

 

「中学部の子にか?」

「うん」


 我が校は、中学部と高等部が合体してる訳だから、

 高等部1年の後輩と言うことは、中学部の1・2・3年生だ。

 マジで見に来てるのか!?

 だとしたら、めっちゃ緊張するじゃん!


「多分、戦ってるときはそんなこと考える暇、ないんじゃないかな」

「そうだね!気にする暇ないよね!」


 うん!

 そうだぞ、我が妹!


「1年生代表の部の選手は、会場に向かってください。繰り返します・・・・・・・」


 アナウンスが、選手控室に響く。

 よしっ!

 気合い入れていかなきゃな!


「1年生、まずは勝ちを取って羽愞に勢いをくれよ!」

「後輩たち、頑張ってきてよ~」


 先輩に、エールをもらう。


「はい!頑張ってきます!」

「行ってきます!」

「ふうま~」


 はじめから、相手に流れは渡せない。

 絶対に勝つ!


 

 試合会場に移動した俺たちは、会場が思ったより大きいことに驚いていた。


「大きくて、戦いにくそう」

「確かに、なんか無駄に大きいな」

「兄貴と同感です」


 会場は、半径35メートルの円型になっている。

 1対1で戦うにしては、やっぱり大きいな。


「1回戦目は、シズだろ。しっかりと勝って来いよ~」

「当然」


 試合は、1回戦目シズ。2回戦目俺。3回戦目酒木君の順になっている。

 早く終わらせて、その流れを次の2年生代表の部に送ろうという作戦だ。

 

「じゃあ、行ってくるね」

「おう」


 手を振って、会場の真ん中に走っていく妹に俺も手を振り返す。

 ちなみに、今戦わない俺たちは会場の1階の端で待機だ。

 2階には、約1000人のオーディエンスが観戦している。

 すごい熱気を感じる。

 

「では、これより1年生代表の部、一回戦。国上、微紙古和 対 羽愞、山口静紅の試合を始めます!双方準備は良いですか?」

 

 女性審判の高い声が、会場に響く。

 無言で双方がうなずく。

 シズの相手は、すべてが平均ですって感じの少年だ。

 まあ、ここに立っている時点でただ者じゃないのは分かっているが。

 もちろん、俺はシズが勝つのを願う。

 だが、この試合の結果ではなく過程も気になる。


「それでは、・・・・・始め!」

 

 地面を蹴る音が2方向からする。


「鬼人化!」

「加速!」


 赤い光と、青い光がぶつかる。

 ドゴォォーン!!!

 衝撃で砂煙が高く舞う。

 ドサッ。

 !? 

 どちらか片方が、倒れた・・・・!?

 ゆっくりと砂煙が消える。

 ・・・・・・・。


「ふうま~、勝ったぞ~」


 煙から姿を現したのは、俺の妹だった。

 会場に居る全員が、驚愕の表情を見せて、静まりかえる。

 

「し、試合終了・・・!勝者、羽愞山口静紅」

「ウォォォォォォー!!!」


 かつて、国上に勝ったことのない羽愞が、初戦勝利を収めたとき、観客席が一気に沸いた。

 煙の中での戦いか。

 本当の歴戦の猛者だな。 

 

 2校トーナメント戦③につづく

  

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