2校トーナメント戦②
2校トーナメント戦
それは、力と力のぶつかり合い。小細工などは、まったく通用しない。
ⅤPにされた人間が、必ず通る道。
何でⅤPなんか作ったんだジュノーは。
ⅤPさえ居なければ、世界は平和のままだったのにな。
『行き過ぎた進歩は、いずれ頽廃を生む』か・・・・。
いよいよこの日がやってきた。
今まで、自ら努力をしようと思ったことはなかったが、出場が決まってからは努力の日々だった。
思い出すと、良かった記憶なのか、苦しい記憶なのか分からない。
つまり、記憶が残らないくらい励んだということだ。
チームのみんなは、全面サポートしてくれて、シズとは一緒に切磋琢磨した。
悔いが残らないように、悉皆悔いの残る原因になるようなことは、しっかりと修正したりもした。
とにかく、俺が言いたいことは、
「コンディション最強!」
だとということだ。
まあ、こんなこと外で言えるはずもないので、心の中で叫んでおいた。
「楓守、早く行こうよ」
「おう、行こうか」
シズに呼ばれて、俺は選手控室に向かう。
もちろん、喧嘩沙汰が起こらないように学校ごとに分けられている。
「今日は、みんな頑張ってよ~!」
「先輩に付いていきます!」
部屋に入った瞬間に、猫石生徒会長の元気な声が聞こえてくる。
さすがは、羽愞のムードメーカーってところだな。
「先輩方こんにちは。今日は、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
俺たちが、学年的に一番下だからな。
礼儀として、挨拶をする。
「古谷君、逢いたかったよ~。シズちゃんも、今日はよろしくね」
「古谷、お前は俺を負かした最強の1年生だ。しっかり勝ってくれよ!」
「兄貴、遅いですよ~。先輩方の中で孤立してたんですから」
生徒会長も、虎居先輩も酒木君も優しいな。
これなら、シズも馴染みやすそうで兄として安心だ。
右を見ると、シズは少し笑みを浮かべていた。
「さあ、15分後には試合が始まるんだから、休憩して休憩して」
会長が長椅子に誘導してくれる。
あと、15分で始まるのか。けっこう早いな。
「後輩に見られるのは、緊張するもの?」
?
どういうことだシズよ?
俺たちは1年生だぞ。
後輩なんて、居ない居ない・・・・・・。
あっ、居た!
「中学部の子にか?」
「うん」
我が校は、中学部と高等部が合体してる訳だから、
高等部1年の後輩と言うことは、中学部の1・2・3年生だ。
マジで見に来てるのか!?
だとしたら、めっちゃ緊張するじゃん!
「多分、戦ってるときはそんなこと考える暇、ないんじゃないかな」
「そうだね!気にする暇ないよね!」
うん!
そうだぞ、我が妹!
「1年生代表の部の選手は、会場に向かってください。繰り返します・・・・・・・」
アナウンスが、選手控室に響く。
よしっ!
気合い入れていかなきゃな!
「1年生、まずは勝ちを取って羽愞に勢いをくれよ!」
「後輩たち、頑張ってきてよ~」
先輩に、エールをもらう。
「はい!頑張ってきます!」
「行ってきます!」
「ふうま~」
はじめから、相手に流れは渡せない。
絶対に勝つ!
試合会場に移動した俺たちは、会場が思ったより大きいことに驚いていた。
「大きくて、戦いにくそう」
「確かに、なんか無駄に大きいな」
「兄貴と同感です」
会場は、半径35メートルの円型になっている。
1対1で戦うにしては、やっぱり大きいな。
「1回戦目は、シズだろ。しっかりと勝って来いよ~」
「当然」
試合は、1回戦目シズ。2回戦目俺。3回戦目酒木君の順になっている。
早く終わらせて、その流れを次の2年生代表の部に送ろうという作戦だ。
「じゃあ、行ってくるね」
「おう」
手を振って、会場の真ん中に走っていく妹に俺も手を振り返す。
ちなみに、今戦わない俺たちは会場の1階の端で待機だ。
2階には、約1000人のオーディエンスが観戦している。
すごい熱気を感じる。
「では、これより1年生代表の部、一回戦。国上、微紙古和 対 羽愞、山口静紅の試合を始めます!双方準備は良いですか?」
女性審判の高い声が、会場に響く。
無言で双方がうなずく。
シズの相手は、すべてが平均ですって感じの少年だ。
まあ、ここに立っている時点でただ者じゃないのは分かっているが。
もちろん、俺はシズが勝つのを願う。
だが、この試合の結果ではなく過程も気になる。
「それでは、・・・・・始め!」
地面を蹴る音が2方向からする。
「鬼人化!」
「加速!」
赤い光と、青い光がぶつかる。
ドゴォォーン!!!
衝撃で砂煙が高く舞う。
ドサッ。
!?
どちらか片方が、倒れた・・・・!?
ゆっくりと砂煙が消える。
・・・・・・・。
「ふうま~、勝ったぞ~」
煙から姿を現したのは、俺の妹だった。
会場に居る全員が、驚愕の表情を見せて、静まりかえる。
「し、試合終了・・・!勝者、羽愞山口静紅」
「ウォォォォォォー!!!」
かつて、国上に勝ったことのない羽愞が、初戦勝利を収めたとき、観客席が一気に沸いた。
煙の中での戦いか。
本当の歴戦の猛者だな。
2校トーナメント戦③につづく




