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最弱学校の異端児「ルデア」  作者: 烏猫秋
第1章〜異端児、夏の2校トーナメント戦に向けて〜
17/35

VP、休日に街へ出る④

 

 アイスクリームでを食べ終わって、次の店を探しているときだった。


「山口じゃないか。久しぶりに見たよ」


 誰だ、俺の妹に気安く話しかけるのは。

 声の主の方に顔を向けると、そこには肩幅が俺の1、5倍くらいある、大きな男が立っていた。

 身長は、2メートルに届くか届かないか。

 !

 あの制服、国上の・・・!

 

「お久しぶりです。佐和先輩」


 シズが一礼する。

 先輩ってことは、2・3年生のどちらか。

 何が目的で話しかけた?


「そいつは誰だよ」


 強い威圧がこもった眼光が、こちらに向く。

 圧がすごいな。

 一筋の汗が、頬を滴る。


「俺は・・・・」

「楓守は、私の大切な人」

 

 なぜに割り込んだ?

 構わないけど。妹だし。


「ほぉ~」


 人に凝視されるのは、苦手だ。

 こんな大きい人に見られたら、何か暑い。

 それに、今思ったけど、大切な人っていうのは意味深じゃないか。

 勘違いされそうで、怖い。


「まあ、どうでもいいや。そんなことを話したいわけじゃないしな」


 どうでもいいんかい!

 冷や汗かいた俺がバカでした。


「何が用ですか?」


 自分の時間が、奪われるのが嫌なのか、シズの声が少し大きくなる。

 シズを怒らせたら、怖いんだぞー。


「そう焦るな。忠告みたいなもんだよ」

「どういうことですか?」


 確かに意味分からん。

 シズに何を忠告するんだ?


「夏の2校トーナメント戦、お前も出るだろ?」

「多分ですけど」


 2校トーナメント戦のことか。俺も、関わってきそうだな。

 隠れて聞いておくか。


「今の俺は、絶対にお前より強い。もし、戦うことになったら、素直に降参することだな」


 1年生のシズに向かい、3年生の先輩が自分の方が強いと宣言。

 本来であれば、3年生の方が強いのが当たり前だが、シズは国上の校内で常にトップを走っていたため、上級生から妬みをかうことも多いそうだ。

 まさに今、妬みを持った先輩が後輩に、意地を張っているのだ。

 それは、他人から聞けば滑稽に聞こえるが、この場に居る人からしたら、緊迫感で押しつぶされそうになるほど、強い意志がこもっていた。


「分かりました」


 えっ!?

 いいのかそれで!?

 でも、俺は口出しできなしなぁ。


「それでいいんだ。トーナメント戦で、また会えるといいな」


 皮肉じみた口調で、その場を去る。

 性格悪すぎる。

 めっちゃ嫌いなタイプだわ。


「シズ、いいのか?」

「私は、楓守との時間を潰されたくなかっただけ。もちろん、戦うことになったら正々堂々する」


 愛らしいな、シズは。

 それに、かっこいいな。

 

「さあ、次の店いくぞー!」

「おーー!」


 スキップで、歩き出す。

 恥じらいなんか知らないぜ!!

 その後は、串カツ、みたらし団子、串カツ、みたらし団子と食べ進めていった。

 え? 

 ループしてる?

 そんなの気にしない気にしない。

 甘辛ループは、最強だ!


「ふぅー。お腹いっぱいだよ」

「いっぱい、いっぱい」


 近くにあったベンチに腰をかけて、天を見上げる。

 シズなんかは、妊婦さんみたいにお腹が盛り上がっていた。

 無理したのか?

 

「ゆっくり歩いて帰ろうか」

「うん、そうしよう」

 

 ナマケモノのように、腰を上げた俺たちはゆっくりと足を前に進めた。

 今日は、学校と違って楽しかったな。

 こんな日々が、ずっと続けばいいな。


 楓守は、そんなことを頭に思い浮かべながら、歩いていた。


   次回は、いよいよ2校トーナメント戦①です!!

   

  

 

 

 

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