VP、休日に街へ出る④
アイスクリームでを食べ終わって、次の店を探しているときだった。
「山口じゃないか。久しぶりに見たよ」
誰だ、俺の妹に気安く話しかけるのは。
声の主の方に顔を向けると、そこには肩幅が俺の1、5倍くらいある、大きな男が立っていた。
身長は、2メートルに届くか届かないか。
!
あの制服、国上の・・・!
「お久しぶりです。佐和先輩」
シズが一礼する。
先輩ってことは、2・3年生のどちらか。
何が目的で話しかけた?
「そいつは誰だよ」
強い威圧がこもった眼光が、こちらに向く。
圧がすごいな。
一筋の汗が、頬を滴る。
「俺は・・・・」
「楓守は、私の大切な人」
なぜに割り込んだ?
構わないけど。妹だし。
「ほぉ~」
人に凝視されるのは、苦手だ。
こんな大きい人に見られたら、何か暑い。
それに、今思ったけど、大切な人っていうのは意味深じゃないか。
勘違いされそうで、怖い。
「まあ、どうでもいいや。そんなことを話したいわけじゃないしな」
どうでもいいんかい!
冷や汗かいた俺がバカでした。
「何が用ですか?」
自分の時間が、奪われるのが嫌なのか、シズの声が少し大きくなる。
シズを怒らせたら、怖いんだぞー。
「そう焦るな。忠告みたいなもんだよ」
「どういうことですか?」
確かに意味分からん。
シズに何を忠告するんだ?
「夏の2校トーナメント戦、お前も出るだろ?」
「多分ですけど」
2校トーナメント戦のことか。俺も、関わってきそうだな。
隠れて聞いておくか。
「今の俺は、絶対にお前より強い。もし、戦うことになったら、素直に降参することだな」
1年生のシズに向かい、3年生の先輩が自分の方が強いと宣言。
本来であれば、3年生の方が強いのが当たり前だが、シズは国上の校内で常にトップを走っていたため、上級生から妬みをかうことも多いそうだ。
まさに今、妬みを持った先輩が後輩に、意地を張っているのだ。
それは、他人から聞けば滑稽に聞こえるが、この場に居る人からしたら、緊迫感で押しつぶされそうになるほど、強い意志がこもっていた。
「分かりました」
えっ!?
いいのかそれで!?
でも、俺は口出しできなしなぁ。
「それでいいんだ。トーナメント戦で、また会えるといいな」
皮肉じみた口調で、その場を去る。
性格悪すぎる。
めっちゃ嫌いなタイプだわ。
「シズ、いいのか?」
「私は、楓守との時間を潰されたくなかっただけ。もちろん、戦うことになったら正々堂々する」
愛らしいな、シズは。
それに、かっこいいな。
「さあ、次の店いくぞー!」
「おーー!」
スキップで、歩き出す。
恥じらいなんか知らないぜ!!
その後は、串カツ、みたらし団子、串カツ、みたらし団子と食べ進めていった。
え?
ループしてる?
そんなの気にしない気にしない。
甘辛ループは、最強だ!
「ふぅー。お腹いっぱいだよ」
「いっぱい、いっぱい」
近くにあったベンチに腰をかけて、天を見上げる。
シズなんかは、妊婦さんみたいにお腹が盛り上がっていた。
無理したのか?
「ゆっくり歩いて帰ろうか」
「うん、そうしよう」
ナマケモノのように、腰を上げた俺たちはゆっくりと足を前に進めた。
今日は、学校と違って楽しかったな。
こんな日々が、ずっと続けばいいな。
楓守は、そんなことを頭に思い浮かべながら、歩いていた。
次回は、いよいよ2校トーナメント戦①です!!




