VP、休日に街へ出る②
『優先すべきは』
走る。
モール内を駆け回る。
「くっ・・・!どこだ?」
全く見つからなくて、イライラを表面に出してしまう。
俺の所為で、今も誰かが・・・。
「こっちです!楓守君!」
シビーが手招く。
!?
子供が逃げ遅れている!?
俺たちは2階にいる。その状態で、下の階を見たときそこには、1人の子供の女の子がアグロ・キュートを目の前にして、恐怖で立ち尽くしていた。
「シビーは、周りの人に見られないように隆起で、俺とアグロ・キュートを囲ってくれ!」
子供を狙うなんて、本当に悪辣だな。
「分かりました!」
ステージ2だったら行ける。
全身活性化を使い、2階から一階に飛び降りる。
「ドォォーーン!!」
四方に壁がそそり立つ。
これで、思う存分できる。
まず、子供を端に退避させてから、活性化を両腕両足にかける。
「すぐに終わらせる」
瞬き1つの間に、15メートルの距離を詰める。
その速さで、空気が切れる。
「ゴギィ!」
前脚を振り上げて、俺を攻撃しようとする。
見えてたのか。
まあ、いい。
「隙だらけだ!」
前脚を左手で上に弾き、急所を狙いやすくする。
「ハァァ!」
力いっぱい握った右手で、黄色い腹を叩く。
「ガガガギーー!!」
・・・・ドンッ。
やはり、ステージ2のアグロ・キュートは1撃で十分か。
「シビー、隆起を戻してくれ」
四方の壁がなくなり、視界が開く。
「ウォォォー!!」
ショッピングモール内が沸く。
嬉しいんだけどさ、ちょっと晒されてるみたいで恥ずかしいんだよね。
俺は、端に退避させていた女の子を親に返して、シビーの居る2階に逃げた。
「まだ拍手が続いてますよ」
「早く寮に帰るぞ」
こんなの居たたまれないよ。
シビーに笑われたような気がするが、今日のところは許す。
悪いのは俺だからな。
「はぁ~。やっと着いた」
ダッシュで学校まで逃げてきたが、けっこう長かったな。
息も上がってるし。
「ただいま~」
「ただいま戻りました」
「おかえり~、2人とも。これ届いたんだけど」
「!、それは私のです!」
慌てふためいて、ジェリーの持つ箱を奪い取る。
届くの早いな。
仕事が早い。天晴れだ。
「あれの中身って何?」
「あれは、ワンピースだよ。真っ白の」
シビーは自分のベッドの上で、箱を開けてワンピースを広げて嬉しそうな笑みを浮かべている。
「シビーらしいわね」
「楓守君が買ってくれたんです」
やっぱり、かわいい娘の笑顔は癒しだな。
「もう、お嫁に行けません」
顔を赤くして、下に俯きシビーが呟く。
ちょ、ちょっと待って。
今の爆弾発言だよな。
「どういうことかな?」
背中が熱い!
真後ろからとんでもない熱気を感じる。
「誤解だ、ジェリー!俺は何にもしてない!」
「お嫁に行けないようなことしたんでしょ?」
怖い、怖いよ・・・。
鬼の形相のジェリーに、すべてを説明して弁明し、誤解を解くまで約1時間を要した。
もう俺、お婿さんに行けないよ~。
ⅤP、休日に街へ出る③につづく




