校内トーナメント戦②
『席巻の猛者』
俺がメイと一緒に3年間修業をしていた時に、メイはいつも武勇伝を話してくれた。
その1つを紹介したいと思う。
「人間わね、極限状況に追い込まれたら、自分を兵器にするんだ」
かつて、メイのチームメイトだった女の子が、自らアグロ・キュートに特攻した時の話をしてくれた。
その子が特攻したということは、最後まで匙を投げなかったということだ。
しかし、それしか手段がなかったのか?
俺は、そう思ってしまう。
未熟者の俺に教えて欲しい。もし、俺がその場に居たら何ができるのか。
助けられる命を助けられないのは、とても苦しいことだ。
「父さん、母さん・・・」
俺はあの日、何ができたの?
俺は、甘んじて担任の闇を受けることにした。
本当は、嫌だよ。でも、メイの妹ということもあるし、普段は世話になってるからな。
結果は、保証できないよ。
俺の戦闘力が、どこまで通用するか分からないし。
各クラストップが出てくるとなると、生徒会長も出てくるだろうし。
トーナメント生徒控室で、俺たちは出番を待つ。
控室には、モニターがあり普通生徒と同様に観戦することができる。
トーナメント表は、
1回戦 1-A対2-A 1-B対2-B
となっており、2回戦は1回戦目の勝者が戦う。
そして3回戦、決勝は生徒会長の3-A猫石歌恋と2回戦勝者が戦う。
トーナメント表を見て分かったことが、1つだけある。
それは、3-Bのトップが辞退しているということだ。
やはり気になる。生徒会長の強さ。
戦うためには、決勝まで上がらないといけない。
早く終わらせて生徒会長と戦いたい。それが、楓守の頭を埋め尽くしていた。
先ほど1-Aの酒木君が、出て行った。
2年の強さを確認しないとな。
俺は、モニターに目を向ける。
「そこまで!!試合終了!!」
!?
試合が終わった・・・!?
モニターには、傷だらけで立つことができない酒木君の姿が映っていた。
オーディエンスも、唖然とした表情だ。
さっき出て行った所だぞ!?
早い・・・早すぎる。
瞬間で試合が終わる。気合を入れないと!!
俺は、自分の頬をパンパンっと叩いて、臍を固めた。
「古谷君、試合です」
スタッフに呼ばれて、俺は会場に向かった。
「これより、1-B古谷楓守対2-B佐藤轟の試合を始めます!」
オーディエンスが盛り上がる。
正面に向かい合うと、相手が強く見える。
緊張するぞ、これは。
「楓守頑張れ~!!」「負けんな~!!」「頑張ってください!」「ふうま~、にゃ#”*ぞ;!」
チームのみんなの声かな。
嬉しいけど、約1名、シズかな。
何言ってんのか分からないよ。頼むから日本語喋ってくれ。
審判の手が挙がる。
よし、お手並み拝見だ!
「試合開始!!」
未来視をさせてくれる隙は無いだろうから、活性化で突撃するか。
体の全身に活性化をかける。
「ハァ!!」
頭を狙って、蹴りを打つ。
「融化!」
佐藤先輩は、制服のポケットに隠していた金属を、融化して刀に形を変えた。
そして、その刀で俺の蹴りを軽く止めた。
おっ、危ない!
靴に少しの刀傷がつく。
「先輩、それはフェアじゃないですよ」
「それをこの世界で言っていいのか」
こわっ!
確かにVP同士の戦いでは、そんなの通用しないわな。
ここは、冷静に隙を見て反撃を狙うのが良さそうだな。
自慢のスピードを生かして、佐藤先輩の周りを走る。
先輩は、いつ攻撃が来るか分からないのか、刀を振って身を守っている。
まだ隙ができないな。
スピードを上げるか。
俺は、足と両腕を中心に活性化して、スペードを上げる。
「!?、早くなってる・・・!」
よし、刀のブレが出てきた。
もう少しだ。
・・・・・・・・。
「ここだ!!」
この試合最大のブレが出たところで、俺は懐に入り込んで右手をチョキの形にして、左手で刀を押さえる。
そして、チョキの指にした手を先輩の眼前においた。
その勢いで、先輩の後ろに突風が起こる。
「!?、・・・・・・・降参だ」
「試合終了!! 勝者1-B古谷楓守!」
ゆっくりと指を下ろす。
・・・・1回戦は勝てたな。
試合終了の合図が鳴ったとき、オーディエンスから大きな喝采が起こった。
「楓守!!楓守!!楓守!!楓守!!」
まただ。
自分の名前コールされるの苦手だから止めて~。
1年生が上級生に公式試合で勝利するのは、とても珍しいことなのか、かなり長い間喝采が続いた。
恥ずかしいよ~。
俺は小走りで控室に戻る。
すると、そこには
「流石です、兄貴!」
両足両腕を包帯している酒木君がいた。
「大丈夫なの?」
同級生だから、めっちゃ心配する。
「心配しないでください。それより、話があるんですが聞いてくれますか?」
彼の声が、一気に真剣になる。
「うん、聞くよ」
俺は、彼の座っている椅子に腰を預ける。
「俺が負けた相手。2-A虎居佐樹先輩は、かなり強いですよ」
俺が、この後戦う相手。
ちゃんと聞かないといけないようだな。
「能力は、予測するに『空走』。兄貴の担任のミク先生と同じ能力です」
!?
教員と同じ能力をもっていいる!?
この前、ステージ3のアグロ・キュートが学校に、襲撃してきたときに共闘したけど、かなりのスピードだったぞ。
雲行きが怪しくなってきたな。
「俺が勝てると思うか?」
「・・・・。絶対に兄貴なら勝てます!」
ありがとう。
これで自信が持てた。
「じゃあ、勝ってくるよ」
俺は、酒木君に手を振って会場に向かった。




