校内トーナメント戦①
『夏に備えて』
俺には、生まれつき体が動かない友達がいる。
1年に1度会える時その子が、いつも決まって俺に言うことがあった。
「僕はね、夢の中で踊ってるんだ」
初めてこれを聞いたときは、かなり驚いたものだ。
人間の夢は、自分の願望。つまり、将来こうしたい、こうなりたいなどといったことが、よく夢に出てくる言われている。
もし、人生に前世や後世が存在するとしたら、俺は彼の後世が素晴らしいものになるように祈る。
「後世で、逢えたらいいね」
シズが羽愞に転校!?
国上の方は、大きな戦力を失ったことになるけど、いいのか?
「山口は、ステージ2のアグロ・キュートを単独で討伐することができる。小柄だからといって、油断してるとすぐに足元をすくわれるから気をつけろよ」
シズは先生に「小柄は余計です」とツッコんでいたが、そこがかわいいんだから俺は気にしなくていいと、思うんだけどな。
まあ、そこは俺が関わるところではないな。
「今日からは、チーム『フォアフロント』に入って活動してもらう。古谷は、間違いを起こさないようにしてくれよ」
最近、先生の俺いじりがひどい気がする。
楓守は悲しいです。
先生の発言によって、周りからは「俺のロリ返せよ!」「あいつには渡せん!僕が貰うに等しい」と声が上がっていたが、犯罪者に渡すのは絶対にできんわ。
「すまんが、今日1日席がない。どうする?」
確かに4人席のままだ。
シズが何か思いついたのか、俺の方に走ってくる。
「こう!」
そして、俺の上にちょこんと座った。
恥ずかしさで、頬が少し石楠花色に染まる。
「古谷はいいのか?」
「構いませんけど・・・」
もう乗ってるのに、拒否できる訳ないでしょ。
ぬいぐるみみたいで、かわいいし。
それを聞いたシズは、俺に完全に体をあずけた。
「みんな見てるぞ」
「いいの」
シズは、周りの目を気にしないようだ。
男子群は、「俺の妹返せよ!」「マジ萌え・・・・・。ありがとうございます!」などと叫んでいる。
誰のものでもないわ!
「はいはい、静かに。今日の授業の説明始めるぞ」
「ごめんなさい」
ごめんなさい。
「今日は、夏の2校戦に向けて校内トーナメント戦を行う」
めんどくさそうな響きだ。
「校内トーナメント戦といっても、実際に戦うのは各クラスのトップだけだ。つまり、このクラスからは古谷が出る」
俺もみんなと一緒に試合を傍観したかったわ。
しかも、校内ってことは2、3年生とも戦うってことだ。
かなり疲れそうだな。
クラスの仲間の大半は、応援してくれているが結果どうなるか分からないぞ。
過度な期待は、ともに絶望も大きくなっているということだからな。
「頑張れよ。期待してるからな」
この時の先生の目は、いつもより真剣に見えた。
「HRが終わったら、すぐにアリーナに移動だ。古谷は説明をするから、こっちに来い」
「キーンコーンカーンコーン」
授業が終わって、校内の生徒が一斉に動き出す。
俺は、チームの仲間から応援の言葉をもらって、指示通り先生の所に行った。
「説明って、何ですか?」
「単刀直入に言う。お前が優勝しろ」
何言ってるの?
もしかして、俺をいじってる?
「2、3年生もいるのに、そんなの無理ですよ」
「本気で行けば、絶対に勝てる。お前、まだ本気を出したことないだろ?」
先生は人を怪しむ鋭い目で、俺のことを見る。
!?
どこで俺がそんなそぶりを見せた!?
何で先生にバレてるんだ。
「はい・・・」
ここは、正直に言わないと、さらに問い詰められそうだ。
危険な人だな。
「負けそうになったら、本気出せよ」
「分かりました」
いつまでも隠して置ける秘密じゃないし。
これがいい機会だ。本気でやってみよう。
「そういえば、何で俺が優勝しないといけないんですか?」
先生がなぜか口を閉じてしまう。
何で?
「理由言わないんだったら、俺は1回戦で負けますよ」
ここには、生徒に脅される先生の姿があった。
条件を付けてくるなら、こっちの方が立場は上だ。
さあ、言うがいい。
「それは、その・・・・・・・・」
「何? 聞こえないですよ」
いつも煽られてるお返しだ!(ダーク楓守)
いい気持ちだぜ!(ダーク楓守)
「優勝した人の担任の給料が上がるからだ!」
・・・・・・・。
よく言えたな!!
しかも、自分の為かよ!!
その後は、先生が俺に何度も頭を下げてくるので、許すしかなかった。
先生、協力はするけど、担任としての恥を知ってください。




