また異世界移転
なぜだろう。
マトモに成立する気がしない異世界ストーリーになりそうです。
先に謝っときます。
ゴキブリって汚いと思う?
その文字を見ただけで気持ち悪いと思う人もいるかもしれない
もちろん俺もめっちゃ気持ち悪い
なんか暗い部屋で出会った時なんて内股で悲鳴上げそうになったもん
カサカサって音がして、気づいたら目の前に飛んできてた
あいつら、顔に飛んでくれば攻撃されないと思ってるらしい
でもそれがめちゃめちゃキモイ
いや、ゴキブリは高性能なのは知ってる
ゴキブリの体表面はゴキブリ自身の分泌物で驚くほど清潔なのは知ってる?
それに足も驚くほど速いし、水も平気なんだよ
みんな、あまり知らなかったでしょ?キモいってだけで、ゴキブリ君たちのこと
いや、何の話だよって?
俺も何の話だか分からない
でも、まとめるときれいごとだけの社会は、汚いものを隠している顔を持ち
汚いだけの社会は、ふと綺麗な顔をみせるようなんだ
え?ゴキブリ君の話、意味あったのかって?
特に意味はないけど、ただ思いついただけ
ふと思うことを言っているだけさ
毎日毎日、退屈としがない暇つぶしの中で
どうやら、この世界は
綺麗と汚さに分かれ、善と悪がはびこっているようだけど
でも、毎日朝を迎えるし、夜は寝床につく
寝れない夜もあるけれど、明けない夜は存在しない
分かり切った日常は、退屈と興奮を混ぜ合わせ、ゴタゴタと過ぎ去る
でも、そんな日常が、非日常が、いつの日か肩を並べたら
そんな世界が訪れるなら
自分は自分のままでいられるだろうか
それは、自分の目が見た、自分の物語
これは、自分の耳が聞いた、自分の世界
今日はそんな、自分の手で触れた、汚くもあり、綺麗でもあった非日常の話をしたいんだ
のどかな草原が広がる
綺麗な青空に、ときたま、雲が流れる
どこからか羊たちの声が聞こえる
羊が近づいてくるようだ
遠くには家々が軒を連ね、煙突から煙を吐いている
お昼時だ
そよ風は、耳にここち良い音楽を届けてくれる
ふと眼を閉じる
「ゴブッ!!??」
羊に突進された
脇腹死ぬかと思った
こいつらスキを見せると、すぐに襲ってきやがる
改めて目を閉じる
今見ていた景色は、どこまでもどこかへと続いているかのようだ
穏やかで満たされた心
そして再び目を開ける
自然と微笑みがこぼれた
遠くでほほ笑む白い服の髪の長い、爽やかな、あの娘が見えたから
これが幸せであり、守りたい日々
それは、綺麗でもあり、汚さを隠しているかもしれない
それでもいい
この心の温かさがあるなら
日常は続いてほしいのだ
それが、日常という言葉を知る者の願いであり
勤めでもある
娘は、手を振りながら近づいてくる
あいかわらず、さわやかさがよく似合う娘だ
その子は人差し指を可愛らしく立て、こういった
「さぁ、家に帰りましょう。お昼ごはんができているの」
そして、こう切り返す
「ああ、今日は何だい?」
彼女は慈母のように微笑みながら言うのだ
「今日は、シチューとセミの抜け殻とクルミのパンよ」
「セミの抜け殻」
「おいしそうでしょう?カブトムシの幼虫も入っているの」
「幼虫」
ふへってなんか変な声出そうになった
悩んだあげく、斬新すぎて逆に高級料理にありそうだね、と言おうとした
言おうとしたのだ
足元の青い召喚陣が見えなかったら
その娘の足元に、それが展開されているのが見えなかったら
とっさにその娘を突き飛ばす
その瞬間、自分の体がどこかへと連れていかれる感覚を覚えた
「ああ」
思わずつぶやく
「またかよ、くそったれええええええええええええええええええ!!!!」
そして、俺は、違う世界へといざなわれることになった