はじまり Ⅰ
ヘリは予定通り、20時前に第3会場に着いた。
同じ 909 の人たちがゾロゾロと集まっている。
「全員ミーティングなんて久しぶりだなぁ〜、
最高官もココに入った時しか会ってないなぁ〜」
「そうね… 全員そんな感じだと思うわ…
だから始まる前からザワつくのもわかるわ」
確かに500人くらいの会場はザワザワしていた。
すると、壇上からアステル最高官が出てきた。
その途端… 嘘のように静まりかえった…。
「日々の任務ご苦労である。
私は909のアステル最高官だ。
今日は全員集まってくれてありがとう。」
とても能力があってすごい人なのに、
みんなを気遣うなんてね…
慕われてるし、部下として働こうと思うよ…
「今日ここで話す事は任務ではない。」
あぁ、任務じゃないの…? なんだろう…?
「ティナとレンを909を辞めてもらう趣旨である。」
え…………
辞……める……?
「おいっ!何がどーなってんだ!
ティナ!レン!」
「辞めるにしても、
全員呼ぶ必要なんてないでしょ…!?
あと、2人は成績優秀者よ…!!」
沈黙だった会場がまたザワつき始める。
バートとセイラが怒りからか大声で言っている。
私とレンは驚きのあまり、
現実と捉える事が出来ない。
「とにかく、もう決定事項であるのだ。
ティナ、レン、私の部屋で話がある。」
その意志は私たちにはないのか…
信頼していた最高官もそんな事をするのか…
「何があっても2人の事は信じてるからな。」
「大丈夫よ貴女たちだもの。
アステル最高官も何か考えがあるんだわ。」
バートとセイラが別れ際に言ってくれた。
とても嬉しかったし心強い…
直々に指名され、
たくさんの人の注目も浴びながらも、
レンと一緒にアステル最高官の部屋に向かった。
厳重なセキュリティの扉を開け、
最高官の後に続いての部屋に入った。
レンがギュッと手を握ってくれたのが、
私に安心感を与えてくれる…
「急な話で、すまない。
本当は君たちにも知らせようと思ったんだが、
そうはいかなかった。
全員集めたのにも意味があってね…」
「僕達は何か不良な成績でしたか…?
改善しますので教えて頂きませんか?」
レンが思い切って言った。
私も同じことを思っていた。
「そんなまさか…!
君たちは909でも成績優秀者だ。
不良なんて言葉はありえない。」
「じゃあ何故、909を辞めるという…?」
「簡単に言えば、愛しさ故でな…
とにかく、今すぐ909を辞めて、
2人は別の所へ逃げてほしいのだよ。」
?????
辞めて、逃げる?
「突然ですまないが、
これから、909ではなく別の機関の諜報員になってほしいのだよ。
もちろん、話はつけてある。
私の知り合いの下だから安心してほしい。」
ほえ…?
諜報員…?
「僕ら2人ともでーーー」
ドカッーン
とんでもなく大きな爆発音が聞こえた。
音の方向からして会場…!?
「やはりな…」
「「何がです?」」
あっ、レンとハモった…
え?緊急事態じゃない?
「事態の詳細は時間がないから言えないのだけども、
君たちの意思を無視して辞めるとなってしまったことは本当にすまなかった。
君たちを守りたかったんだ。
909でも最年少の君たちを。
まだ、16と17だろう?
私がココに迎えたのは8と9の時だったね…
君たちの事は忘れない。幸運を祈る…」
そう言ってアステル最高官は扉を開けて会場へ向かった。
私達も行こうとしたが、
「ティナ!レン!時間がありません!
こちらに乗って下さい!
ここから逃げますよ!」
アステル最高官の秘書である
カルウィングが私達に向かって叫んだ。
どれに乗れって…
え?! まさかそれは…
「本当に乗る事なんて無いと思っていたよ…
戦闘に行くのかい?」
レンが思わず言っていた…
「まさか!違いますよ!
戦闘機ですけど、戦いじゃなくて、
高速でここから逃げる為ですよ!さぁ!早く!」
私とレンは訳もわからず小型戦闘に乗り込んだ。
間もなくして
カルウィングの操縦で闇の空へ飛んだ。