さあnightmare…
プスッ
ツツッ…
ギ―
狭い部屋の中に虫たちの壊れる音が響く。
(嗚呼そっか)
――君たちも助けを呼べないんだね。
じゃあ同じだね。——
俺は羽をむしりながら無表情でその余韻に浸る。
「命は大切にしないと」
俺は自分のやっている行為とはまさに真逆の言葉を口にしながら羽をもがいていく。
この虫たちは一体どんな気持ちなのだろうか。
悲しい?
苦しい?
痛い?
それとも虫に生まれた時点でそんな感情なんてないのか。
俺は蝶の原型がなくなるまで分解したとことで手を止める。
…部屋のドアが開いたからだ。
「母さん」
「何やってるの?」
冷たいその声は耳になじんだものだった。
母親の目に光なんて、いつ以来見てないだろうか。
反射的に腸の死骸を背後に隠す。
「何やってたのよ」
無表情にそう聞く母はロボットのようだった。
「何やってたの!?」
「何でも…」
言い終わる前にその人は俺の手を掴んで自分の前に掲げた。
僕の手から落ちる蝶の頭。
「…!」
口に手を当て、蒼白のその人。
目の前の人が青ざめていくのが俺でも分かる。
俺は、子供ながらに大人びた子供だったのかもしれない。
見えない心を人に言わずとも理解してほしいというひねくれた子供だったのかもしれない。
でもこれがきっかけでこの人と、溝ができたのは明らかだった。
小学校5年生の夏。
これが俺が母親に絶望した出来事の一つ。
人を信用しなくなり始めたころだった。




