第一章 四話 「動画投稿」
アパートの一室、カズ宅。
今日は土曜日。カズの学校も休みで、午前中はのんびりしていられる。
今日のカズ宅は、いつもと違う。ビデオカメラが置いてあるのだ。
しかもビデオカメラは、三脚の代わりに本を山積みにし、その上にビデオカメラが乗っているのだ。
そして、自撮りでもするのかと思いきや、手元だけしか映さない、というなんだか少し表舞台に立ちたがらない、カズらしい配置だった。
ここからが問題だった。カズは撮影を始めるのかと思いきや、ビデオカメラをAC電源経由で起動させたまま何もしていない。
カズは今日、午後からユウマと話したいことがあるので、時間が全くないのだ。そして、カズは今、とても動画を撮りたい。だが、初めてなので緊張して中々録画開始ボタンに手が伸びない。
「あ~!!もう!何かあったら編集で何とかしてやる!!(やったことないけど....。)....エイッ!」
勇気をもって録画開始ボタンを押してみることにした。
「ハイ...。ドウモミナサマ...。ハジメマシテ...。Kデス。」
一応マンションなのだが、上下左右、周りにはだれも住んでおらず、大きな声を出しても問題はない。
ただ、初めてながら、長時間会話が途切れることなく、動画を進めるカズは、センスがあるのかもしれない。
「と、いうことで、今回は『初めての動画投稿』ということで、自己紹介をしていきたいと思います....。」
段々、カズも慣れていき本調子でしゃべれるようになってきた。ちなみにKはカズのKでもあり、川村のKでもある。
「はい、ということで今回から、動画投稿をさせていただきます。よろしくお願いします。...と、お堅い挨拶はここで終わりにして、このチャンネルの形式を話していきたいと思います。」
はきはきとしゃべっていくカズはもはやプロだ。そして抑揚のつけ方も非常にうまい。
何しろ、カズは顔を出して投稿しているのではないので、緊張もほぼしないのだ。
「...。はい、ということで、今回の動画は終わりにしたいと思います。私、Kのことは理解していただいたでしょうか?今日はこんな形で締めさせていただきます。ご視聴ありがとうございました~。」
一通り、カズは話し終え、動画を終了した。会員登録などは、あえて無理強いしない。すると逆に登録者が減る可能性があるためだ。
「これから、編集ですか...。やったことないから、不安だけどやってみよ!」
カズはカメラをUSB経由でノートパソコンの繋いだ。動画ファイルをパソコンの中にインポートするためだ。
その後、PCにカメラのファイルを全て移したカズは編集作業に入る。
編集ソフトは、無料で使い勝手の良さそうな物を選択した。本当は有料版も触ってみたかったのだが、それをやると、カズの家計が財政破綻を起こす。
だが、編集を言ってもそこまで時間がかからなかった。そもそもラジオ動画なのでほとんどカットするところもないし、途中で会話が止まったこともなかったし、唯一編集したものといえば、
録画開始を押してから、撮影が始まるまでの、数秒間だろうか。
そして、エンコードが始まる。カズは内心、もっと編集したかった....。と思いもしたが、編集するようなことが本当に無かったのである。
30分後、エンコードも終わった動画がmp4ファイルで出力された。パソコンのシステム上、一番低容量で、動画投稿サイトも対応していて、動画が再生できるファイルは、mp4ファイルだったのだ。
そして、動画を投稿した。どうやら収益化もできるようだが、新たなアカウントを設定しなければならないそうなので、今回は収益化は行わなかった。
動画を投稿完了し終えた瞬間、ユウマからカズのスマホに電話がかかってきた。
「もしもし。どうしたの?」
カズが能天気に電話に出ると、
『どうしたのじゃねえよ!!もう約束時間30分も過ぎてんだけど!』
相手のユウマは相当キレていた。
「え...。でも、まだ.....。あっ時計が止まってる!!!」
カズのいつも時間を確認するはずの時計が止まっていたのだ。カズは、急いで準備を始める。
「ごめん!今行くからそこで待ってて!!」
カズはスマホを片手に高速で準備を始める。
『急いでくれよ~。俺は今お前のマンションの下にいるから。』
カズは急いで、下に降りる。
『早く降りろよ~。あと十分したらモモたちも来るから。』
その言葉を聞いた瞬間カズの足がぴたりと止まる。
「なんで、モモがこっちに来るの?」
今日はモモとの予定はなかった。なのになぜモモがこちらに来るのだろうか。
『さあな、またどっか行くんじゃないの?』
「あっそう。」
気づいた時にはカズもユウマの目の前にいた。
「で、俺に話って何なの?」
30分も待たされたユウマはどうでもいいことだったら、お前今すぐ死刑に処する。という目でこちらを見ている。
「いや...。その....。オレ....なんか....。モモを見ると胸の奥が熱くなるんだよね....。もしかしたら、オレ、モモのこと好きかも。」
カズが頬を赤くし、顔をユウマからそむける。
ユウマは、まさかカズに恋愛感情が芽生えるとは?!という目でカズを見てから、にやりといつも通りの不敵な笑みを受かべ、
「ほほ~う。カズはあのキス以来、モモのことが好きになってしまったと...。」
ユウマが興味深そうにカズを見る。残念ながら、ユウマが少し驚いたことには気づいていないらしい。
「いや...。そういうわけじゃなくて...。その...。あ~もう恥ずかしいからヤダ!!」
カズの頬がどんどん赤くなっていく。
「もうカズキュ~ン。そんなに照れてるようだと、モモが彼女じゃなくて、カズキュンが彼女になっちゃうよ~。」
ユウマがカズを茶化す。まるで、モモがユウマにカズが好きなことを伝えた時のように。
「そんなこと言うな~!!第一、オレ男の子だから!!お・と・こ!」
カズは顔を真っ赤にして、反抗する。
「いや~、もう、男の子とか言ってる時点で、アウトだから〜。そもそも、カズには身長がないからねぇ~。」
ユウマは、カズと身長差をアピールするように、カズの身長を測る真似をする。
(懐かしいな、なんかあの時を思い出す。)
ユウマはあの時を思い出す。
―それは、カズ達が、小学六年生の時だった。
そのころは、ゲンちゃんも一緒にいて、四人で遊んだいた頃。
モモが、俺に向かって、カズが好きで、どうすればいいか、相談しに来たのだ。
(当のモモは自分がカズのことを好きだと、気づいていたなかったが。)
その時、ユウマがモモをからかっていたのだ。
まるで、今のユウマとカズのように―。
「第一、身長あるから!一応150センチ後半はあるから!」
「あ~でも、どうせ155センチだろ。カズキュ~ン。」
ユウマがカズを一方的に茶化していると後ろからモモがひょっこり出てきた。
「もう、二人でなに話してんの?」
「「!!」」
まさかの本人がひょっこり登場する。まさか本人には聞かれていないだろうか。
不幸中の幸いながら、会話の内容はモモには全く届いていなかったようだ。
「ねえ、カズくん。何の話してたの?ねえ、ねえってば!」
モモがカズの後ろに回り、ほっぺたを突っつく。
カズは頬を少し赤くして、顔を背けている。
「なるほど...。こうも白状しないとなると...。こうじゃ!!」
モモが後ろから右手をカズの胸に向かって―。
と、行動に移そうとした途端、美鈴が後ろからやってきた。
(フ~。助かった。)
カズが安心して肩を落とすと、突然前から、人差し指でカズの胸をつつく。
「また二人でじゃれあってんの?早くいくよ。」
カズの頬が少し赤くなる。その様子を見たモモが俯く。
「カズくん。もしかして今ドキッとしたでしょ。」
それは、嫉妬だった。
「何言ってんだよ。早くいくぞ。」
カズは適当にあしらうことにした。
すると、モモは頬を膨らませて、カズに怒りをアピールする。
勿論、カズはモモの行動に気づくわけだが、正直対応に困る。
(うわっ、モモ、頑張って怒ってることを気づいてもらうような行動してるけど、意味ない....。)
「あ!今、カズ君ちょっと距離を取ろうとしたでしょ!カズ君ひど~い!」
「は?そんなわけないだろ!なんで距離を置かなきゃいけないんだよ!」
「ほう、じゃあ、ずっと一緒にいるって約束できる?」
「あ~、約束してやるよ!ずっと一緒―。」
途中まで言い終えると、カズの顔が次第に赤みを帯びていく。
(これじゃあ、ただの告白じゃん...。)
このことに気づいたときには、もう遅かった。
「ほう、カズくんは私とずっと一緒にいると。告白と受け取っていいのかな?」
「そんなわけ...ないだろ..。」
カズの顔がもうすでに真っ赤だった。
「まあ、カズくん照れ屋さんだし、第一、カズくんには告白する勇気すらないからねえ。」
話の主導権がモモに移っていく。
「オレだって....。やるときはやるし....。」
カズは頬を赤くして反論した。自分はかっこいいと思っているが、
(カズくん....。それ、かっこいいというよりもかわいい....。)
結局、カズにかっこよさを求めるのは間違っているのかもしれない。
「おい、さっさと行くよ~。」
美鈴がが二人を呼ぶ。
隣りでユウマは、二人共両思いなんだけどな~。と考えていたのだった。
「おい、モモ、どこ行くんだ?」
ユウマがモモに質問する。ちなみに、四人は道路を歩いていた。前列と後列に分かれて歩いていて、前列はユウマと美鈴。後列はカズとモモに分かれている。
最近はクラスメイトに見つかることも多く、カズとモモって付き合ってんの?と聞かれることも増えてきた。
そして、先程からカズとモモが気まずい雰囲気になっていたところ、ユウマが空気を読んでモモに話をかけたのだ。
「そうそう、来月修学旅行で、沖縄行くでしょ。その準備のために、服を買うので~す!」
モモが元気に宣言をする。ただ、この宣言の裏には今日は閉店まで解散しないということも含まれているのだ。
「モモ、服、たくさん持ってただろ。別にまた買い足す必要ないだろ。」
カズがモモとは正反対の方向を向いて異論を放つ。
その言葉を聞くと、モモは頬を膨らまして、怒ろうとしていたが、“あっ、そうだ!”と何か思いついたかのようにニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「色々買うものがあるんだよね~。あっ、そういえば、カズくん、この前スマホあげたよね。」
モモが芝居がかった演技をカズに披露する。その一方で、カズはモモから発せられる、嫌な空気を敏感に感じ取っていた。
「じゃあ、カズくん。今日、下着売り場に付き合ってもらうから。」
モモがまるで暗殺者のように冷酷に告げる。
「いや、ちょっと?!オレがそこ行ったら、まじで、通報されちゃうから!!まじで、やめて!!」
カズは顔を真っ赤にして、抵抗するが、モモにはそんなこと関係ない。
「大丈夫だよ~。カズくん身長ちっちゃいから、せいぜい中学一年生くらいにしか見えないよ~。」
モモはあくまで、明るく振る舞う。ユウマや美鈴は笑っているが、モモは本当にカズを下着売り場まで連れて行かなければ気が収まらないタチなのだ。
「いや、でも、さすがに高校二年生にもなって、同学年の女子の下着を一緒に買いに行くのは、気が乗らないと言うか、その~...。」
カズは必死に抵抗するが、モモはこれで引くわけがない。
「いい、カズく~ん。私はその気になれば、カズくんの動きを止めることができるんだよ?」
モモはカズに脅迫をかける。そして、もし断ったら、という意味合いも込めて、右手を出す。
結局カズはあえなく降参したのだった―。
―ここはショッピングモール。カズたちの住んでいる町は、ショッピングモールがないため、わざわざ少し大きな駅に来ているのだ。
「いや~。久しぶりに来たけど大きいな、ここ。」
カズはショッピングモールを眺める。
「カズくんなんか、おじいさんみた~い!」
「体は子供。頭脳はおじいさん。なのかな?」
モモとユウマの二人に茶化されたカズは、いいから、早く行くぞ。と言ってユウマと一緒に店内に入ってしまった。
「あそこで、なんか反応してくれたら、カワイイのにね。モモちゃん。」
美鈴は、まるで男子の悪口を言うようにモモに話しかける。だが、美鈴は気づいていない、カズの頬が少しうすピンク色に変化したことを。
「カズくん、昔から変わってないな~。」
と、言い残しモモはカズを追いかける。
「??」
美鈴だけカズの変化には、気づいていなかった。
「てか、おい、ユウマ。オレの頭を撫でながら、女子待つのやめろよ!」
モモが走っては来ているものの、少し距離があるため、まだ到着していない。
「まあまあ、カズキュ~ン。そんなに照れないの。またモモに胸、触られるよ。」
「照れてないし!ってか、なんでそこでモモが出てくんだよ!」
いつものやり取りが続く。ユウマはカズをいじり、カズはユウマに必死になって反論するのだ。
「ねえ、私がどうかしたの?」
隣からひょっこりモモが出てくる。
「なんか、これ、デジャブのような...。」
カズくん早くいくよ!という、モモの威勢のいい掛け声とともにカズは腕を掴まれ、引っ張られていく。
「うわ~、カズキュン。女子にエスコートされてるよ。やっぱりカズキュンはかわいいでチュネ~。」
相変わらず、茶化しに入るユウマだが、カズの顳かみのあたりの血管が、ピキッと音を立てる。
「オレだって、やるときはやるし。」
そう言い放つと、カズは突然加速して、モモと並んだ。そして、モモにどこに行きたいのかを訪ねそこに向かう。
言葉だけ聞くとなにもないように聞こえるが、端から見るとカップルである。
「まあ、これでいつも通りの二人に戻るだろ。」
仕事を終えたユウマは余韻に浸っていたが、ふと、あることに気づく。
(美鈴がいない。)
先程まで、一緒にいた美鈴がいないのだ。
彼女のことだから、迷子ということはないだろう。ただ、ユウマは実際美鈴がどんなやつなのか、まだよくわかっていない。
特に、カズやモモに会わせるのには少し危険な気がする。
先ほどだって、美鈴が、カズに茶々を入れなければ、ここまで長引くことがなかったのだ。
そのようなことを考えながら、ユウマは美鈴を探しにフロアで捜索を始める。
「あれ、ユウマ見なかったか?」
カズは洋服店で、モモの好きそうなセーターを持ちながら、目の前にいるモモに話しかける。
「ああ、ユウくんだったら、大丈夫だよ~。カズくんと違って、しっかりしてるし。」
モモは他にも、Tシャツや、帽子、更には靴など、隣の店から取ってきたであろう品物まで持っていた。
「おい、それってオレが子供みたいに言うなよ!!」
カズは反論するがモモは見事にスルーし、あ、カズくん。そのセーターいいね~!と言い残し試着室に行ってしまう。
「え...。ちょっと...。お~い!」
カズは一人更衣試着室の前で取り残されてしまった。
数分後。
カシャ―っとカーテンが開かれると、少し袖が長く、萌え袖状態になっている、白の生地に赤の模様が刺繍されているセーターを羽織った、モモが出てくる。
「どうかな...。」
頬を赤く染めたモモはカズに自分の着ている服について、感想を求める。
「...かわいい...かも...。」
その姿を見たカズは頬を赤く染め、それがわからないようにモモに見せないようにそっぽを向いていた。
その言葉を聞くと同時にモモも顔を赤く染めたが、照れるカズを見て、
(やっぱり、カズくんは変わってないな~。)
「カズくんは、やっぱりかわいいね。」
モモは笑顔で、カズに声をかけた。
「おい、それってどうゆうことだよ!」
「カズくんはカズくんってこと。」
「??」
カズがモモの言っていた言葉を分析していると、モモのスマホのメッセージアプリがメッセージを受信した旨の通知音が鳴る。
いや~。でも変わらないってどういうことだ?とブツブツと独り言を言っていると、隣からモモがメッセージアプリを驚いたようなで見る。
「ねえ、カズくん。美鈴ちゃん、今日塾があったから、先に帰っちゃうって。」
モモが受信したメッセージそれは先に家に帰るという旨のメッセージだった。
「え!そうなの?!今日全然遊んでないような...。」
そう、実際三人が美鈴と一緒にいたのはここに来るまでの道のりだけだった...。
「まあ、塾だったら仕方ないしね。カズくんおなかすいてない?」
今はもう12時半。モモの買い物に付き合わされ、あっという間に正午を過ぎていた。
「じゃあ、ユウマに一応、電話掛けとくか。オレも腹減ったし。」
と、言ってカズはユウマに電話をかける。だが、ユウマのスマホにコールがかかることもなく、
スマホが電波を受信していない旨の機械音声が流れる。
「あれ、おかしいな。電池切れか?」
カズは怪訝そうにスマホを操作するが、やはり電話は繋がらない。
「カズく~ん。早く行こ~!」
モモに促され、カズはファミリーレストランで、ご飯を食べる旨のメッセージを送信してから、モモのいる場所へと向かう。
案の定、レストランは席が空いておらず、待たされることになった。
徐々に、モモの気持ちが不機嫌になっていく。
「も~!なんでここはこんなに混んでるの!!もうヤダ~!!」
モモはもう不満が、爆発寸前だった。が、カズは廊下を曲がっていった、ある少女を見かけた。
その少女とは―。
一方、ユウマはスマホの電源を切っていた。美鈴は帰ってなどいなかった。今、カズと一緒のフロアに居るのだ。そして、ユウマはスマホの電源を切っている。
もし着信音が鳴ってしまったら、美鈴に気づかれる可能性が高くなるからだ。なので、カズとモモがどこにいるのか二人共わからないのだ。
そして、美鈴は不運なことにカズのいるレストランに向かっていた。
つまり、カズの見つけたのは美鈴だったのだ。
「モモ、オレちょっとトイレ行ってくるから、先に席空いたら4人分席とっといて。」
そう言い残し、カズは歩いていった美鈴を、廊下へ走って追いかける。
「え?!ちょっと、カズくん?!4人って?!」
モモは置き去りにされてしまった。
カズは一度、ユウマと合流した。どうやら、ユウマも美鈴には気づいたらしく、ある程度情報交換をした。
「なるほど...。先に帰ったというメールを送ったが、その本人が、何故かここにいると...。」
カズとユウマは美鈴を尾行しながら、本人には聞こえないような小声で話す。
「で、お前は、ずっと岡田さんをつけてたの?」
カズは素直に不思議に思ったため質問したのだが、ユウマはビクッと体を震わせて、トイレに行ったことにして、適当にごまかした。
(こいつ、こんなに無垢な顔をしやがって...。あとで、いじめてやる!!)
ユウマはそう心に誓った。
「あ!あいつ、非常階段に向かったぞ?!もしかして、気づかれた?!」
カズがユウマを非常階段向かうように促す。
―非常階段。そこに美鈴と思われる女子がスマートホンで誰かと話していた。
「―で、被観察者の川村一輝は、買い物をクラスメイトの女子と一緒に買い物を楽しんでおります。」
その報告を見る傍らカズはユウマに目を向け、目で『どういうこと?』と訊いている。
「はい。...はい。わかりました。観察を続けます。」
美鈴はそう言い通話を終了した。美鈴が階段を昇ろうとすると後ろから、被観察者のカズが美鈴を呼び止める。
「岡田さん...。今のってどういうことだ?」
美鈴が背筋を凍らせ、ゆっくりとそちらへ顔を向ける。
そこには、カズとユウマが並んで立っていた。
なんで、カズがここにいるのかわけがわからなかった。
「岡田さん。オレを観察ってどういうこと?」
最初に札を切ったのはカズだった。勝手に監視されていたワケだから、それ相応の理由が必要なのだろう。
「いや...。その...。実は―。」
そして、美鈴は覚悟を決め、語り始めた。
それは、今から半年前―。
きっかけは、ある女性婦人からの命令だった。
『川村一輝を観察し、逐一私に報告せよ。』
実は、美鈴は小学生の時、カズ、げんちゃんに並ぶ学年第三位の頭脳を持っていた。
家系は、代々ヘッドハンターの社長として、やってきている。人選についてもそれなりに教育を受けているのだ。
なので、特に心理学においては、カズやユウマの比にはならないだろう。
ひと目見ただけで人が、それぞれ何を考えているのかがわかる。よって、依頼主の考えていることもすぐにわかった。
だが、美鈴には何を考えているのか全くわからない人物がいた。それが、ユウマだった。
よって、ユウマに警戒するあまり、カズの方が手薄となり、二人に見つかるという最悪の事態を招いてしまった。
では、何故そこまでして、その依頼主の作戦の手伝いをしたのか。
―実は、美鈴には、妹がいる。美鈴とその妹は、ある組織に属していた。妹はとても人懐っこくて、敵を口車に乗せ、自滅させる。業界内では『人喰い』と言われるほどの実力を誇る、妹がいたのだ。
彼女は、妹でもあり、仲間でもあり、パートナーでもあった。その大切な妹が、たまたま依頼を受けたミッションで、失敗をし今回の依頼主に捕まってしまったのだ。
依頼主からの妹を返すこととしての条件は、カズを観察すること。もし、命令があったら、殺すことだった。
そこで、ある疑問が脳裏に浮かぶ。それほどの実力を誇る妹がいるのだったら、そう簡単に、組織は妹を敵に引き渡すような真似をするのだろうか。
カズは、疑問を口にすると、美鈴は、あなた裏のことは全く理解していないのね。という呆れた顔で、説明を始めた。
簡単に言えば、組織と依頼主が裏でつながっていたのだ。美鈴の妹がミスを犯したのではない。そもそも、相手は自分が何をやらされるかわかっていたから、簡単に対策ができたのだ。
その上で、美鈴に依頼を持ちかけてきた。自分に実力があると錯覚させるために。
「つまり、岡田さんの妹さんは、組織に売られたってこと?」
「まあ、そうね。組織にどんなメリットがあるのかわからないのだけど。」
「じゃあ、その依頼主って、誰なの?」
依頼主がわからなければ作戦を立てられない。例えば、目的地が全くわからないGPSを渡され、GPSのみを駆使して、目的地まで到着せよ。と言われているようなものだ。
「残念ながら、私の知らない人だったわね。ただ一つわかったことは、その人は、裏を全く知らない。そして、川村くん。あなたは相当依頼主に恨まれているわよ。」
カズはただでさえ恨まれやす体質だ。更に、学年一位の称号を持つため、周りからの憎悪は並大抵のものではない。
ただ、一つ収穫があった。それは、相手がそこまで裏を知らないということだ。よって、計画にスキが生まれやすく、そこを起点に勝算が生まれる。
三人はここで、一時的に同盟を組むことにした。美鈴の妹を助け出すという同盟を。各々には目的があった。そして、誓った。絶対に美鈴の妹を助け出すのだと。
だが、まだ情報量が少なすぎるため、まずは待機することとなった。
―結局、三人はモモと合流し、ファミリーレストランに入店することとなった。
そして、三人の同盟上、の決め事が制定された。
一つは、むやみに接触をしないこと。
一つは、最終的な全員の利益を考えて行動すること。
一つは、逐一情報を交換すること。
一つは、他人を絶対に巻き込まないこと。
この決め事が、絶対厳守とされた。もし破った場合、この同盟は即座に破棄されることとなった。
「で、美鈴ちゃんはなんで帰っていくって言ってたの?」
ここで、一番疑問に思うのはモモだろう。他二名は理由を知っているが、モモのみ理由がわからないのだ。
「あれは、実は誤送信でね。財布を忘れたから、一旦家に戻るって意味だったんだけど...。」
そういうことにしておいた。そして、他二人は隣で、美鈴の対応能力にぽかんと口を開けて、驚いていた。
カズは、ユウマにアイコンタクトを取る。
「(岡田さんって、息を吐くようにウソをつくんだね。)」
「(ついさっきまで、あんなモンスターを敵に回していたとなると、背中がゾットするわ。)」
その、二人の会話術を、モモは理解しようとしているのだが、なかなか理解できない。
(なんで?私はカズくんのことなら、なんでも知ってるのに...。)
それもそのはず、カズとユウマは、いつものアイコンタクトと少しだけ方法を変えていた。
いつもは、目でわからない部分は手で補っているのだが、今回は全てを目に任せ、手では全く違うジェスチャーを送っているのだ。
つまり、今まで前者の方法で解析していた、モモは全く意味が理解できないのだ。
「(とりあえず、実験終了だな。)」
ユウマが、目で合図すると、カズは、モモの理解できる旧式のジェスチャーに置き換える。
これも、モモになるべく怪しまれないためだ。
先程の手のジェスチャーでは、食べ物の話題を表していた。なら、答えは簡単。食べ物の話題を旧式のジェスチャーに割り当てればいい。
そして、ジェスチャーを理解できるようになったモモは、再び元気を取り戻し、ファミレスへと足を進める。
―全て、計画通りだった。
すると、カズのスマホが鳴る。美鈴からのメッセージだった。いつ送ったのかはわからないが、ご苦労様と書かれていた。
ちなみに、美鈴は先にモモと一緒に入店していた。
「かずく~ん。早く早く!」
モモが待ちきれなくて、カズを急かし始めていた。
モモを追いかけている最中にカズはユウマにアイコンタクトを取る。
「(緊急時の場合はこれで連絡を取り合おう)」
「(ああ。)」
これくらいのメッセージなら、二人はすぐに送れるようになっていた。
そして、四人は座り、各々頼んだ品物が運ばれてきた。
カズはキッズサイズのパスタを注文し、ユウマはドリア。モモはオムライス。美鈴は一人でピザを注文した。
「カズく~ん。それ美味しそう。私も食べた~い。」
カズの頼んだパスタを見たモモは羨ましそうにカズを見る。
「ああ、いいよ。あ~ん。」
当たり前と言った感じでカズはモモにパスタを巻きつけたフォークをモモの口に持っていく。
「あ~ん。」
モモが美味しい!と言ってカズにスプーンにのったオムライスをカズの口に持っていく。
最初は、オレはいいよと言っていたカズだったが、結局モモの勢いに負けてしまってオムライスを食べる。
それを見ていたユウマが、リア充爆発しろ。と放つと、カズとモモは顔を赤くし固まってしまった。
「べ、別にそういうわけじゃないし...。」
モモがゴニョゴニョと文句を言っていた。カズが話題をそらそうと、モモがドリンクバーで取ってきたミルクの話をし始めた。
「でで~ん。ミルクなのです!カズくんより身長が伸びるようにという願いを込めて!」
モモのミルクトークを軽く受け流し、美鈴は三人の中学生時代について質問する。
モモ、ユウマ特にカズは中学生時代ほとんど学校に出席しておらず、履歴として残ったのは、カズが少しの間栄養失調で入院と通院を繰り返していたことだけだった。
始めは、モモとユウマは伏せていたが、カズが話し始めた。
カズ、モモ、ユウマにはもうひとり幼馴染がいた。それがゲンキだ。カズが初めて自分から作った友達と言っても過言ではない。
だが、その友達は自殺によって、亡くなってしまった。そして、ただでさえ支えとなる大人がおらず、更に精神的なショックを一番受けているであろうカズは
うつ病と同じような症状を起こしていた。
何もやる気がわかない。
何もできない。
そんなカズを温かく迎えてくれたのはモモの家族だった。
カズはうつ病でほとんど食事も取っておらす、モモがカズの様子を確かめるためにカズの部屋にやってこなければ、カズは今この世にいないかもしれない状況だった。
そんなカズを、入院、通院そして、自宅での療養を行ってくれていたのが、モモの家族だったのだ。なので、カズはモモの家族には返しきれない恩がある。
だから、モモの誘いや、恒例行事にはなるべく参加しているのだ。少しでも恩を返すために。モモの家族はあまり気にしていないようだが、カズには命の恩人以外何者でもない。
「カズ...。」
ユウマがぼそっと言った。
三人にとっての中学生時代は、まさに暗黒の三年間だったのだ。そのことをすべて話したことによって、四人のいる空間の空気のみがずっしりと重たく感じる。
だが、その暗雲を消したのはモモだった。
モモは、一筋の涙を流しながらそれでも笑顔でカズの頭を撫で、よく我慢してたね。と言った。
そして、モモは頭からカズを優しく包み込む。
今までずっと一人で抱え込んでいたものが溢れ出したかのようにカズは泣いていた。ただ、ひたすらに泣いていた。
「カズくん。寝ちゃったね。」
モモの太もも膝枕の上でカズが眠っていた。すごく、無防備で無垢な顔だった。いつもみたいに強がっていないありのままのカズだった。
モモがいたずらでほっぺたをつついてみる。だが、返ってくるのは頬の柔らかい感触のみ。
何か夢を見ているのだろうか。カズは寝返りを打つ。そして、やめてよ。お姉ちゃん。と言って、モモの腰辺りに抱きつく。
そして、お姉ちゃん、大好き。そう言って。カズはまた寝息を立てて寝てしまった。
モモの頬が赤くなる。
まず、モモの頭のなかに浮かぶのはカワイイという単語。その後、守りたいという単語の浮かんできた。
モモは覚悟を決めたように、カズの耳元に顔を近づけると。
「ずっと、お姉ちゃんが守ってあげるからね。」
そう小声で告げた。
そして、ふと気づいた。前の席にはユウマと美鈴がいない。
だが、モモはカズをおいて探しにいくわけにも行かなかった。誰にも渡したくなかったのだ。カズのことを。
一方、ユウマと美鈴はショッピングモールをでた先の、歩道を歩いていた。
「いいの?あのまま二人をおいといて。」
先に質問したのは美鈴だった。だが、ユウマはいいだろと軽く受け流し、
「それに、カズは今まで一人だったんだからな。モモはカズにとって家族だよ。」
そう言い、ユウマと美鈴は先に帰っていく。
そして、これは食い逃げとも言う。
カズはボーっと目を開けた。なぜか服のようなものに阻まれていて、全く前が見えない。
確か、オレは...。
だんだん思い出すたびに頬が少しづつ熱くなるのがわかる。
と、言うことは、カズは上に顔を向ける。モモが椅子の背もたれに寄りかかって寝息を立てて、眠っていた。
モモもカズの動きに気づいたのか、カズくん、おはよ~。といって、背伸びをする。
「じゃ、いこっか。」
机にはカズとモモの荷物がすでに準備してあった。おそらく、カズが眠っている間に準備してあったのだろう。
「ああ、ありがと。」
カズが素っ気なく返事すると、モモは、嬉しそうにどういたしまして。と言っていた。
「カズくんって、寝顔かわいかったよ!」
あのほっぺたの弾力が特に、と言っている時点で自分が寝ている間に何をされたのか段々、不安になっていく。
無事に料金を払い終えると、(美鈴とユウマの分は後で取り立てということになった。)モモとカズはモモの本命に向けて移動していた。
「でも、カズくん。たまには私を頼ってよね。」
モモがカズの前に立ちはだかって、自分の思いを伝える。
「いつも、カズくん。相手を巻き込まないようにしちゃうから。」
あ、分かった。カズは返事をし、動画投稿のことを伝えようと思ったが、伝えられなかった。
モモは気がついた。カズが試行錯誤してる途中に、自分の頭の後ろを掻いていたことを。
(カズくん―。
―まだ私に言えないことがあるの?)
そう考えていくと、自分はカズのことを全く知らないのではないかと不安になってしまうことがある。
二人には、気まずい雰囲気が流れていた。
と、カズが途中で足を止める。
「なあ、モモ様?オレ、ここで待ってちゃダメでしょうか?」
別に女性下着には興味がないカズとしては、変態と誤解を生むような場所よりも、適当に本屋で時間を潰したほうが、マシなのだ。
「ダメ。」
モモはきっぱりと言った。
(やっぱり駄目ですか...。)
―結局。
モモに女性下着を片っ端から見せられたカズは(時に、服の上から着せられたこともあったので、)疲れ果てていた。
一方、モモはとてもうれしそうに、スキップをしていた。
「もう...。オレ...。ダメかも...。」
そう言い、カズは地面に崩れ落ちた。
―医務室
ベットに横になっているカズの近くで、モモが備え付けられた椅子にちょこんと座っている。そしてモモは担当の先生の話を聞いていた。カズは一度目が覚めたのだが、すぐ寝てしまったのだ。
「まあ、おそらく貧血ですね。」
軽くカズを気遣いながら、担当の先生が診断を告げる。
「そうですか、どうもありがとうございました。」
カズが返事できない代わりにモモが返事をしていた。
「そのことはいいんですけど.....。彼をどうされますか?」
さすがにずっと医務室を開けておくわけにも行かないのだろう。一応、医務室にも人員を割かなければならないため、人員の足りない店側の意向としては、なるべく早く帰ってほしいということが、本音だろう。
結局、荷物は店側がサービスとして、送料無料でわざわざ届けてくれることとなり、カズはモモが背中におぶって帰ることとなった。
あくまでも、カズはモモよりも身長が高いため、持ち上げられるはずがなかったのだが....。
(カズくん。軽い....。)
以外にも簡単に背中にカズを乗せることができた。
実際、カズは40kg程しかない。モモよりも軽かったのだ。身長が伸びないことも、ある程度納得できるが、むしろ、これくらいの体重しかないのに、毎日生きていられるのか不思議なくらいだ。
モモはカズを背中におぶって、一応カズの家に向かう。
すると、隣に高級そうな車が停まる。その車から、見したった貴婦人の声が聞こえる。
「あら~。モモちゃんにカズくんじゃない。あら、カズくん体調悪いの?よかったら送っていくわよ。」
その貴婦人は、ゲンちゃんの母親だった。ゲンちゃんが亡くなってから、ほとんど関係を失ってしまったのだ。
ゲンちゃんの母親の好意により、モモとカズは車に乗せてもらった。
カズは眠っていたので、自然と質問はモモに向かう。
「今、カズくんはどこに住んでるの?」
カズは高校生の時に本人のみ引っ越してしまったため、ゲンちゃんの母親は、どこに住んでいるのかわからないのだ。
「ええと、三丁目のマンションの辺りです。」
モモが返答をする。マンションと言っても、事故物件なのだが。
「いや~。悪かったわね。ゲンキが、この世を去ったときは。あとで、カズくんにも悪かったって、伝えといて頂戴。」
ゲンちゃんの母親も反省していたようだった。モモもわかりました。と言うと、カズのマンションの近くについた。
「え~と。鍵はここかな?」
カズは胸ポケットに鍵を入れている。モモの攻撃防止の為でもあるのだが。
カズはお姉ちゃんやめてよ。とか寝言を言っているが、モモはゲンちゃんのお母さんにありがとうございました。と言ってカズをおぶって車を降りていった。
モモは気づいていなかった。ゲンちゃんの母親が歯ぎしりしていたを。
ガチャ。
モモがカズの家の扉を開ける。カズをベットに寝かせると、カズの冷蔵庫を開ける。
「え?!なにこれ!こんにゃくしか入ってないじゃん!買い物行ってこなきゃ。」
モモは財布を持って、近くのスーパーマーケットに超高速で走っていった。
数分後。
カズが目を覚ます。
「あれ...。ここは俺の家?」
カズがボーッといていると、急いでいて、点けっぱなしだったパソコンが通知だらけだったことに気づく。
それを見ると、全て、カズの投稿した動画サイトからだった。
カズの動画には多くのコメントが寄せられており、『初心者にしてはこれはすごい!』や、『面白い』などのコメントが六割。嫉妬コメントが二割。『つまらない』や『面白くない』が一割だった。カズの目的である、ファンは今のところ123人という数字を叩き出していた。
「初日にして、これは上々じゃないのかな?」
カズはパソコンの画面を眺めつつ、ボソっと口にする。
カズはパソコンをシャットダウンすると、モモが戻ってきていた。
「カズくん。大丈夫なの?」
モモはカズに向かって疑問を投げかけたのだが、カズもオレは大丈夫。と言って立ち上がろうとした途端に、力が抜けるように崩れてしまった。
モモが慌てて支えると、カズくん。最近、体を作るもの全然食べてないでしょ。食べなきゃ死んちゃうよ。と言われ、食卓の前の椅子に座らせられた。
三十分後。
モモの作った、肉料理やサラダ、ご飯といった主にタンパク質をたくさん取れるように肉系統の料理が多かった。
カズと、モモはいただきま~す。と言ってその食材に手を付けていく。
「と言うか、こんなにうちにこんな食材あったっけ?」
現在、カズの家ではこんにゃくしか無かったはずなのだ。
「カズくん。こんにゃくしか無かったから、私が買ってきたんだよ~。と言うか、カズくん軽すぎ。今50kgないでしょ。」
モモはカズの心配をして、わざわざ食品をスーパーまで行って買ってきてくれたのだ。
「あ~。ありがとう...。」
カズが例を言っておくと、変化は突然訪れた。
モモが大量に作ってしまったため、(といっても、カズにとって大量なだけであって、普通の人からすると、適量なのだが。)カズの胃が悲鳴を上げた。
「ちょっと..。気持ち悪い...。かも...。」
カズはそう言いトイレに向かう。モモも大丈夫?と言って、カズに同行した。
おえぇぇぇえ。
カズがトイレの便器に自分の食べたものが全て吐き出される。モモは後ろから、背中を撫でて、大丈夫?全部出しちゃえば楽になるからね。と言って、手伝ってくれた。
やっとの思いで、食べたものを一気に吐き出し終わると、ゆっくり、立ち上がる。
「はあ、なんか、疲れた...。」
カズは、まさか自分が肉も食べられないような体になっていたのかと、心底落ち込んでいた。
「カズくん。自分で食生活を整えられない子は罰として、これから一週間、うちに来てもらいま~す。」
モモが突然決めると、反論する間もなく、カズはモモに手を引かれ、モモの家に向かわせられる。
カズに抵抗するほどの力が残ってないのが、悔やまれる。
しっかり、鍵を締めてカズを担ぎ、モモはダッシュで自分の家へ向かう。
一方、担がれているカズは、目を回して、今にも死にそうな声で助けて~。と言っているが、そんなことはお構いなしだった。
どうも、西田東吾です。
今回は、カズの初めての、動画投稿と告白。そして美鈴の素性、カズの意外な一面。などなど...一話にまとめるには、もったいないくらいの量でした。
正直、三話構成でまとめようとも考えたのですが、物語が暗くなったから、少し明るいの入れたいな~。みたいなノリで書き続けていたら、予想以上の量になってしまいました。
それに、今まで見え隠れしていたキャラクター、ゲンちゃんの母親が出てきましたね。
カズは寝ていましたが...。
最後の方に書きましたが、カズの動画の反響。これも少し重要になってきています。今のところ経過は上々だそうで...。
この先、動画投稿がメインになるのかと思いきや、少し動画投稿から話がそれます。
次回は、番外編みたいなノリでのんびり見ていってください!